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『頭にしみこむ微分積分(瀬山先生の数学講義)』瀬山 士郎著  技術評論社 [数学]


頭にしみこむ微分積分 (瀬山先生の数学講義)

頭にしみこむ微分積分 (瀬山先生の数学講義)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2016/05/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


なんとか食らいついてモノにしたい

またまた微積分の本に手をだした。数学は苦手なのだが好きという変な性分で、デキナイだけに知りたい気持ちが強い。少し前に、ニュートン・プレス発行の『微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)』を読んで感動した。その宣伝文句に「なるほどよくわかる、すぐわかる、高校で学ぶ微積分までいっきに理解」とあるので、「ホントかね・・」と読み始めたら、ホントにわかったので驚いた。

ソレで味をしめた。当今、ほんとにイイ参考書が出回っている。当該書籍の宣伝文句は「生きた講義が読める! 算数にさかのぼってみると 微分積分の本質が見えてくる」である。当方にとって、知りたいのは『本質』の部分である。それで、読み出した。結論から言うと、ニュートンムックよりは、難しい。第一、寝転んで読んでいて、眠くなった。変な尺度で、本の良し悪しを言うようだが、やはりできれば、読んでいるうちに、どんどん分かって、嬉しくなり、寝ていた身を起こすほどまでになって、一気に読めるというのがベストである。そういう点では、ムックが勝るが、これはこれでたいへんイイ本だ。デキナイ者(つまり評者)はデキナイなりに、食らい付いて著者の論議を追い、最後までなんとかいけそうな感がある。

内容については、著者まえがき(『読者の皆様へ』)に次のように記されている。《本書は微分積分学の意味の理解と基本的な計算技術について、2部構成で書いた本です。多くの本格的な教科書が、意味の理解と計算力の向上を一体として書かれているのに対して、本書第1部「微分積分学の考え方」では一般向けの解説書よりやや踏み込んで、しかし、本格的な教科書のような厳密性は追いかけず、小学校以来の速さや速度、あるいは三角形の面積を題材にして、微分積分学の意味を解説しました。つまり、定積分の値が原始関数の差として求まるのはなぜなのか、を微分の理解を通して説明しようということです。第2部「微分積分学の計算技術」では本物の技術を鑑賞するためのトレーニングとして、いくつかの典型的な計算技術を解説しました》。

『第1章 微分学とはどういう数学か』の締めくくりは次のとおりである。《結局微分とは不均質な状態を、ある特定の小さな部分や時間に限って均質だとみなして、その小さな場所や短い時間での濃度や速度を考えようとするものです。数学はこの考え方を数式や記号を使って展開してきました。それには状態を記述するための道具としての関数という考え方が必要になったのです。そこで次章では関数について考えてみましょう》。

『終わりに』から少し引用すると、《一方で、その計算技術には想像力による意味づけが必要なのです。数学が分かるとは、「自分が今行っている計算がどんな意味を持っているのかを理解すること」に他なりません。これがもう1つの大切なことです。記号の意味を理解し、記号操作の技術を十分に習得すること。これが数学を学ぶということです》。

本書は『瀬山先生の数学講義シリーズ』のひとつということだが、他の本も見てみたいものだ。

2016年8月4日にレビュー

「無限と連続」の数学―微分積分学の基礎理論案内

「無限と連続」の数学―微分積分学の基礎理論案内

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 単行本



幾何物語―現代幾何学の不思議な世界 (ちくま学芸文庫)

幾何物語―現代幾何学の不思議な世界 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/12/10
  • メディア: 文庫



微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)

微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ニュートン・プレス
  • 発売日: 2016/04/21
  • メディア: ムック


つづく


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『 知っていますか? 日本数学者ゆかりの地-日本数学の源流を訪ねて 』 西條 敏美著 恒星社厚生閣 [数学]


知っていますか? 日本数学者ゆかりの地-日本数学の源流を訪ねて

知っていますか? 日本数学者ゆかりの地-日本数学の源流を訪ねて

  • 作者: 西條 敏美
  • 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
  • 発売日: 2016/06/15
  • メディア: 単行本


「数学のこんな楽しみがあってもよいだろう・・」

「日本の数学に貢献した、和算から洋算にいたる人物33名」と、その「ゆかりの地」が紹介されている。《本書により日本の数学者や和算への関心が少しでも高まり、各地にある史跡巡りへのガイドになれば、著者として嬉しい。現地には現地ならではの風土があって、書物だけでは得られない何かが訪問者それぞれに得られるであろう。数学のこんな楽しみがあってもよいだろうと思う》と「あとがき」にある。

紹介されている33名とは・・・《 1 わが国最古の数学者:毛利重能、2 数学の普及に貢献した『塵劫記』の著者:吉田光由、3 「算聖」と呼ばれる江戸期最大の数学者:関孝和、4 円理の研究を一新した『不朽算法』の著者:安島直円、5 関流和算の入門書『精要算法』の著者:藤田貞資、6 最上流数学の創始者:会田安明、7 算学、天文・暦学の力に蝦夷地を探検した探検家:最上徳内、8 算学、天文・暦学の知識を背景に北陸の地図を作成した男:石黒信由、9 逸材を育てる才があった教育者:日下誠、10 『算法新書』の著者:千葉胤秀、11 日本全国を遊歴した和算家:山口和、12 関東一円を遊歴した和算家:剣持章行、13 算学、暦学、弾道学などの分野で先駆的業績を残した和算家:小出長十郎、14 『測量集成』『西算速知』を著した順天堂塾の創始者:福田理軒、15 最上流佐久間派算学を開いた先駆者:佐久間庸軒、16 天文・数学を究めたのち後進の育成に尽力:阿部有清、17 日本近代統計学の祖:杉亨二、18 日本数学会社を創設した測量家:柳楢悦、19 海員教育に情熱を傾けた先駆者:中村六三郎、20 西洋数学を日本に導入した科学行政家:菊池大麓、21 地方で数学教育に情熱を傾けた教育者:武田丑太郎、22 数学・科学史で業績を残した哲学者:狩野亨吉、23 仙台数学院を創設した教育者:五十嵐豊吉、24 『東北数学雑誌』を創刊した最後の和算家:林鶴一、25 文化史上より日本の数学を研究:三上義夫、26 高木類体論の建設:高木貞治、27 数学の社会性を明らかにした数学史家:小倉金之助、28 波動幾何学を研究した数学者:細川藤右衛門、29 多変数複素関数論の創設:岡潔、30 数学で日本女性初の理学博士:桂田芳枝、31 フェルマーの大定理を証明する「谷山・志村予想」を出した数学者:谷山豊、(他に、32 下村寅太郎、33 下平和夫)。

掲載されているもののほとんどは『数学セミナー(評論社)』に「日本の数学者のふるさと」と題して連載(’05年9月~’09年9月)されたもの。各人ごと、充実した紹介文とゆかりの地の在所と交通手段に見開き2ページ、さらに石碑、墓石等の紹介・写真(モノクロ)に複数ページが当てられている。碑文の内容も知ること可。地図、索引、図書案内等も充実。

2016年7月21日にレビュー

知っていますか? 西洋科学者ゆかりの地 IN JAPAN PARTI 新しい世界を開いた西洋科学者

知っていますか? 西洋科学者ゆかりの地 IN JAPAN PARTI 新しい世界を開いた西洋科学者

  • 作者: 西條 敏美
  • 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 単行本



知っていますか?西洋科学者ゆかりの地 IN JAPAN (PARTII 近代日本の建設に貢献した西洋科学技術者)

知っていますか?西洋科学者ゆかりの地 IN JAPAN (PARTII 近代日本の建設に貢献した西洋科学技術者)

  • 作者: 西條 敏美
  • 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
  • 発売日: 2014/02/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



理系の扉を開いた日本の女性たち―ゆかりの地を訪ねて

理系の扉を開いた日本の女性たち―ゆかりの地を訪ねて

  • 作者: 西條敏美
  • 出版社/メーカー: 新泉社
  • 発売日: 2009/06/16
  • メディア: 単行本



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『微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)』 [数学]


微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)

微分と積分 増補改訂版 (ニュートンムック)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ニュートン・プレス
  • 発売日: 2016/04/21
  • メディア: ムック


ほんとに、「高校で学ぶ微積分までいっきに」わかる。

高校時代、一応、数Ⅲまで履修した。微分・積分も学んだハズだが、覚えているのは、担当教師が、出席簿(閻魔帳)の黒くおおきい堅表紙に積分の記号 ∫ を、白墨・チョーク(古いですねえ)で書いたものを180度回転させ、「まったく同じ(形状に描けた)でしょう」と自慢する姿。みんなで拍手をした記憶がある。その記号がインテグラルというのを覚えてはいるが、「微分・積分」の数学的意味内容についてはサッパリ。総じて『数学』の授業といえば、教師がテキストの問題を次々と黒板に解いていくのを、ひたすらノートに写してばかりで、履修する単元のもつ数学的意味、そのような分野が発達するに至った経緯や発想、さらには応用にまで事細かな解説を受けた記憶はない。

この本は凄い。「なるほどよくわかる、すぐわかる、高校で学ぶ微積分までいっきに理解」とあるが、半日で、目次にある 1:微積分の誕生前夜、2:微分、3:微分と積分の統一まで(4:もっと知りたい!微積分、5:発展編 は未読)読み進めることができた。「イントロダクション①微分・積分とは何か? イントロダクション②科学にいくつもの“革命”をおこしたアイザック・ニュートンの生涯」など、微・積分の創始者たるニュートンの伝記的記述や数学以前の内容部分もあるが、それらもふくめて、途中挫折することなく居眠りすることなく(しかも、寝転びながら、数式があるにもかかわらず)読み進めることができたのは、ひとえに読者が躓くであろう点をよくよく知った上での解説・編集がなされていることを意味するのだろう。

嬉しく思ったのは、「解法のテクニック」ではなく、微積分の数学的意味を知ることができたこと。さらには、現実生活への応用例を多数知りえたこと。

「この本を、高校時代に知っていたら・・」と、つくづく思う。

2016年7月3日に日本でレビュー
別冊 微分と積分 改訂第3版 (ニュートン別冊)

別冊 微分と積分 改訂第3版 (ニュートン別冊)

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2022/03/16
  • メディア: ムック



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*数学する人生 岡潔 』 森田真生編 [数学]


数学する人生

数学する人生

  • 作者: 岡 潔
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/02/18
  • メディア: 単行本



「試行錯誤する岡 “とともに” 考えること」を潔しとするか?

岡潔は、吉川英治、佐藤春夫らとともに1960年に文化勲章を受けた世界的数学者。当該書籍は、彼の思想を次の世代に継承していくために、編まれたもの。編著者は、森田真生。京大理学部数学科を卒業した在野の「独立研究者」。

岡潔は、映画『好人好日』(1960年)のモデルとされている。そこでは数学以外に関心をもたない変人として扱われている。当方はもっぱらソチラの関心から読み始めたのだが、その点で期待を裏切らなかったのは、岡潔夫人による『文化勲章騒動記』。しかし、それは、本書全体の意図からいえば、ほんの瑣末な部分で、なんといっても目玉は、最晩年、京都産業大での最終講義。録音されたものを遺族の助けを得ながら編者がまとめた『懐かしさと喜びの自然学』。


好人好日  SYK-116 [DVD]

好人好日 SYK-116 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹映画 コアラブックス
  • メディア: DVD



世界的数学者、文化勲章受賞者であることを知らずに読まされたなら、一見して「なにをたわ言を・・」と放り出しかねない内容陳述。というのは、言葉の用い方が独特なのである。そして次のような自信過剰とも思える論調。「自分という葉は、大宇宙という一本の幹の、人類という一つの大きな枝の、日本人という小枝の先に芽生えた葉です。これは本来、常識です。この常識を「心身脱落」ともいいます。心身脱落というのは道元禅師の言葉ですが、何も悟りというほどの大袈裟なものではないのです」。「大宇宙は一つの心なのです。情だといってもよろしい。その情の二つの元素は、懐かしさと喜びです。春の野を見てご覧なさい。花が咲いて、蝶が舞っているでしょう。どうして蝶が花のあることがわかって、そこへ来て舞うのでしょうか。/花が咲くということは、花が咲くという心、つまり情緒が形となって現れるということです。その花の情緒に蝶が舞い、蝶の心に花が笑む。情には情がわかるのです。情の世界に大小遠近彼此の別はないから、どんなに離れていてもわかり合うのです」。

しかし、じっくり読めばわからないことはない。というか直観的に首肯できることなのだが、論理的に筋道を辿ろうとすると難解に思えるということだと思う。それで、肝心なのは、編者が述べるように「読者は、試行錯誤する岡“とともに”考えることを要求される」ことを良しとできるかどうか、そして、そこに「岡のテキストの醍醐味がある」ことを味わうだけの辛抱強さがあるかどうかだ。

小林秀雄は、岡との対談で、あなたの「お考えは、理論とは言えない、一つのヴィジョンですね」としみじみ語ったそうである。そのヴィジョンに編者は「人生が変わるほどの衝撃を受け」、「実際、岡のエッセイに出会ったことをきっかけとして、文系から数学の道へ転向し」たという。

要するに、岡の提唱するヴィジョン「新しい宇宙像と人間像」に編著者はアテラレタということなのだろう。そして、彼は記す。「私と同じように、心の窓をパッと開かれるような喜びを一人でも多くの人に味わってほしいという思いで、私はこの選集の編纂作業に取り組んだ。これから現れる新たな読者は、きっといままでになかった新しい洞察を岡の言葉から汲み出していってくれるに違いない」。

難解に感じられるにしても、閉塞感に満ちた今の時代こそ、読むに値する本であるように思う。

2016年5月19日レビュー


岡潔 数学を志す人に (STANDARD BOOKS)

岡潔 数学を志す人に (STANDARD BOOKS)

  • 作者: 岡 潔
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2015/12/14
  • メディア: 単行本



数学する身体

数学する身体

  • 作者: 森田 真生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/10/19
  • メディア: 単行本



現代の肖像 森田真生 eAERA

現代の肖像 森田真生 eAERA

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/05/21
  • メディア: Kindle版



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『数学まなびはじめ 第3集』日本評論社刊 [数学]


数学まなびはじめ 第3集

数学まなびはじめ 第3集

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 単行本



苦労談から得られるもの無限大

たいへん気にいりました。むかしから、数学史上の偉人たち(アーベルだのガロアだの)の伝記を読むのが好きなのですが、現役の先生方がみずから語る苦労談も、たいへん楽しい。寝しなの睡眠薬代わりにと読み始めたものの、悦に入るは笑うはで眠れなくなり、ついに寝しなに読むのはやめにしました。既に1、2集が刊行されているということですが、この第3集をみると、諸先生方の回顧談は小学校・幼稚園時代にまでもさかのぼります。計算問題はクラスびりだが、文章題になるとクラストップに躍り出て、本人も先生も周囲も驚くだの、物理にあこがれていたが、行けるところが数学科しかなかっただの、数学的発見を留学先で話したら、みんな知っていて大ショックだっただの、人それぞれ紆余曲折はあるものの、それでも数学の道をひたすら歩んで、結果業績をあげてきたご様子を知ることができました。その歩み続ける背後には、ご本人の努力もさることながら諸先輩・恩師の指導援助があって、そのようにして日本の数学界が高みを維持してきたのだなと感じさせられもしました。たいへん小さな手のひらに収まってしまいそうな本ですが、濃密な時間を過ごすことができました。苦労談をとおして、数学的な考え方とは、数学的な考えを教えるとはいかなることか考えさせられもしました。数式もでてきますし、未知の用語もでてはきますが、読み物として楽しむことができます。

2015年10月28日レビュー

目次

多くの人に支えられて 石井志保子(東大大学院数理科学研究科)

「生き物の数学」をめざして 三村昌泰(明治大学研究・知財戦略機構)

無限遠点は遠い 加藤和也(シカゴ大学)

「夢のヒヨコ」を歌いながら 新井紀子(国立情報学研究所)

数学史への道 小川束(四日市大学)

数学を学ぶ 難波誠(大阪大学名誉教授)

数学と私 野崎昭弘(大妻女子大学名誉教授)

幾何学まなび始め 加藤十吉(九州大学名誉教授)

修行時代の想い出 小田忠雄(東北大学名誉教授)

夢中で数学を考えているうちに 塩濱勝博(九州大学名誉教授 佐賀大学名誉教授)

数学を教えてくれない先生たち 三松佳彦(中央大学理工学部)

私の数学まなびはじめ 浦川肇(東北大学国際教育院)

はるいちばん 時枝正(ケンブリッジ大学 Trinity Hall 数学主任)


数学まなびはじめ〈第1集〉

数学まなびはじめ〈第1集〉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本



数学まなびはじめ〈第2集〉

数学まなびはじめ〈第2集〉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本



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Newton大図鑑シリーズ 数学大図鑑 プレミアム [数学]


Newton大図鑑シリーズ 数学大図鑑 プレミアム

Newton大図鑑シリーズ 数学大図鑑 プレミアム

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2022/04/06
  • メディア: 単行本



見て、読んで、楽しめる本です。「数学嫌い」も好きになると思います。見出しごとの説明文は以下のようになっています。

古代文明で用いられたさまざまな「数字」/ 「量」を数であらわすことを可能にした有理数 / 無理数を受け入れ、「普通の数」が完成した / 少数の表記法が生まれたのは16世紀 / 多くの数学者を悩ませつづけたゼロ / 人類は、負の数をなかなかイメージできなかった / 素数の規則性はみつかっていない / 素数には多くの未解決問題が残っている / 素数以外の自然数は、すべて「合成数」だ / 「おおよその数」ですばやく計算してみよう / 乱数は、ランダム(でたらめ)に数字が並んだもの / あなたも気づかずに大きな数を使っている // 全宇宙にある素粒子の数さえ、無限にはほど遠い / 同じ無限でも‟濃度”のちがいがある / より真実に近づくための手法「極限」/ 2乗してマイナスになる数、それが「虚数」/ 実数と虚数が組み合わさった数 / 大きな数を扱いやすくする技。それが「指数」 / くりかえしの数が増えると、結果が急激に大きくなる / 「対数」とはかけ算をくりかえす回数のこと / 対数表を見れば、対数の値がわかる / 推論でおおよその答えを見積もる「フェルミ推定」 / 無限に連なる驚異の分数 / 自然界の量は、さまざまな単位で“記述”される / ゲームやアニメが楽しめるのは「行列」のおかげ // 値が決まっている定数「a」、変化する変数「x」/ さまざまな自然現象は、「数式」を使ってあらわすことができる / ある数を決めると、もう一つの数も決まるのが「関数」/ 急激に大きく(小さく)なる指数関数 / 方程式は、数学のなぞなぞのようなもの / 「座標」が図形と数式をむすびつけた / 「かぎりなくゼロに近づける」という数学 / 超越的無理数「e」は、利子の計算から生まれた / 直角三角形の角度と辺の長さの関係をあらわす関数 / 三角関数は「波」の分析に必須 / 音声認識を支えるフーリエ解析 / 世界一美しいオイラーの等式 // 点と線と角の関係をみていこう / 三角形こそ、あらゆる図形の基本 / 直角三角形に関する重要な定理 / ピタゴラスの定理を満たす自然数の組は、無限にある / 四つの直線に囲まれた図形 / 三角形が‟同じもの”といえる条件とは?/ 三角形と四角形の面積 / 多角形と多面体にひそむ法則とは? / 円と球は‟完全な対称性”をもつ、最も美しい図形 / 円周率πは、無限につづく循環しない少数 / 円を無限個に切り分けて、面積を求める / 円柱を使って、球の体積の公式を探ってみよう / 球の表面積と円柱の側面積の関係 // 円、楕円、放物線、双曲線はみんな仲間 / 古代から最も美しいとされる比率 / 自然界にあらわれるフィボナッチ数列 / 「黄金数Φ」は、フィボナッチ数列と表裏一体 / 曲面上の幾何学、非ユークリッド幾何学 / 伸ばして縮めて形を調べる、やわらかい幾何学 / トポロジークイズ 問題 / トポロジークイズ 解答 / 複雑な現象を解き明かす理論 / 大きさと向きをもつ量、ベクトル / 4次元空間は、無数の3次元空間が重なりあってできる / 4次元空間に浮かぶ不思議な図形「4次元立方体」 / 正多面体の4次元バージョン「正多胞体」// 偶然についての数学、確率とは何か?/ 回数が増えるほど、本来の確率に近づいていく / 「順列」と「組み合わせ」を使い分けよう! / 乗法定理と加法定理で正しい確率を求めよう / ある出来事に対して、それが発生しないこと / 予測不可能なできごとでも、損得を計算できる / 情報が追加されることで、確率が変化することがある / 条件つき確率の問題「モンティ・ホール問題」 / 不規則で予測不能な動き、ランダム・ウォーク // 統計なしには世の中は理解できない / 「平均値のトリック」に、気をつけよう / 「ばらつき」を調べれば、データの特徴がつかめる / 偏差値は、こうして計算する / 統計で最も重要で、最も‟ありふれた”「正規分布」とは?/ 不合格品の割合を調べたい、サンプルは何個必要? / 調査結果の真偽を、統計的に判断する方法 / 相関の「落とし穴」に注意しよう!/ 複数のデータの間にどのような関係があるかを導き出す / 条件つき確率を求めるための統計学 / ベイズ統計が人工知能を大きく発展させた // どんな地図も四色で塗り分け可能か? / 360年間、数学者を悩ませた世紀の難問 / 360年の時を経て、最終定理はついに証明された / 100年越しに解決されたポアンカレ予想 / 4以上の偶数は、すべて二つの素数の足し算であらわせるか?/ 解決すれば100万ドル! リーマン予想 / 日本人数学者がついに解決か? ABC予想 / 計算時間が宇宙の年齢をこえる厄介な難題たち // 資料編 数学者名鑑(日本人では以下の8名、関 孝和、岡 潔、伊藤 清、小平 邦彦、谷山 豊、志村 五郎、広中 平祐、森 重文 イラスト・写真付きで6名出ています)

Newton大図鑑シリーズ 数学大図鑑 プレミアム
https://www.newtonpress.co.jp/book/Premium/2204_math_premium.html


Newton大図鑑シリーズ 古代遺跡大図鑑

Newton大図鑑シリーズ 古代遺跡大図鑑

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2022/03/24
  • メディア: 単行本


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「数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで」瀬山 士郎著  [数学]


数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで (ブルーバックス)

数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで (ブルーバックス)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/22
  • メディア: 新書



上記書籍からすこし引用してみる。

「本書は、数学の証明とはなんなのか、またその技法にはどんなものがあるのか、などを、いくつかの典型的なそして美しい証明を鑑賞することで説明しようという試みです。

証明を鑑賞することは、美術や音楽を鑑賞するのに似ています。本物の証明に触れることが、証明とは何かを理解する手がかりにもなります。それは、たとえ自分では絵を描けなくても、名画を鑑賞することで、何が名画なのかを心の中に刻み込むことができる、作曲はできなくても、一流の音楽を鑑賞することで、音楽に対する感性が養われるのに似ています。(p5)」

それからブルバキ『数学原論 集合論』(前原昭二ほか訳、東京図書、第1巻序文)の引用がなされる。

「ギリシャ人以来、数学とはすなわち証明である:或る人々によれば、証明というものは、この言葉がギリシャ人から付与されたところの、そしてまたわれわれがここでそれに与えようとしている正確にしてかつ厳密なる意味においては、数学以外には見いだし得ないものなのではあるまいかとさえ考えられている。証明の意味は昔からけっして変わっていない、ユークリッドにとっての証明は依然としてわれわれの眼にも証明である」

ブルバキ数学原論 集合論1

ブルバキ数学原論 集合論1

  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 単行本


ついでながら、本書「おわりに」の終わりから(以下、引用)

この世界をよく知るために

数学という形式は、この世界を記述する言語の1つです。そして、数学が言うところの「この世界」とは、現実の宇宙を含むさらに広い人の想像力の世界です。数学は想像力の世界を数学記号という言語と論理を駆使して調べていく学問です。

ところで、言語には文法と意味があります。文法を知らないと、数学という言語を使ってこの世界を記述することができません。子どもたちが学ぶ数学はこの文法の最初の一歩です。数字という記号から始まって、記数法、たし算、かけ算の記号の使い方、文字の使用、・・・と数学の文法は広がっていきます。しかし、文法だけでは本を読むことができません。本を読むためには記号(単語)の意味を知り、単語同士のつながりである熟語の意味を知り、その単語や熟語がどのような文脈の中でどういう意味で使われているのかを知る必要があります。たし算とはなにかけ算とはなにか、から始まり、方程式、関数など、記号の意味は広がっていきます。

私たちは日頃使う言葉の意味を改めて考えることは少ない。それらは空気のように私たちを取り巻いていて、それと意識せずに言葉を使いこなしています。しかし、なにかの場合、その言葉の意味に立ち返る必要があることもあります。数学記号という言語も同じです。数学の場合、ごく普通の人は日常生活で数学用語を駆使することは少ないでしょう。ということは、不断に心がけないと、記号の意味を見失ってしまうのです」。

数学記号はこの世界をよく知るために人が考え出した言葉の1つです。これほどうまく作られた人工言語はない、と言ってもいいかもしれません。言葉には意味があります。その意味を追いかけることが証明の本質的な部分だと私は考えます。読者の皆さんが数学の証明を、あたかもSFかミステリを読むように楽しんでくださることを心から願っております。(p243-244)


なっとくする数学の証明 (なっとくシリーズ)

なっとくする数学の証明 (なっとくシリーズ)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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ゼロからわかる統計と確率 (ニュートンムック) [数学]


別冊 ゼロからわかる統計と確率 改訂第2版 (ニュートン別冊)

別冊 ゼロからわかる統計と確率 改訂第2版 (ニュートン別冊)

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2022/06/15
  • メディア: ムック



学校の授業で確率・統計を学んだ時、ただひたすら問題を解き、板書していく先生の後ろ姿を思い起こします。本書のような解説と共に問題を解くことがなされたなら、どれほど学びが楽しくなったことかと思います。授業を進めることが至上命令のようでした。当時、本書のような副読本があったなら、と思います。今日の授業はどうなのでしょう。分かりませんが、「ニュートンプレス」から数学関連書籍が多数出ています。ほんとうにイイ時代になったと思います。



別冊 微分と積分 改訂第3版 (ニュートン別冊)

別冊 微分と積分 改訂第3版 (ニュートン別冊)

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2022/03/16
  • メディア: ムック


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「超ディープな数学の教科書 」難波博之著 SBクリエイティブ [数学]


超ディープな数学の教科書 学校では教えてくれない

超ディープな数学の教科書 学校では教えてくれない

  • 作者: 難波博之
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2022/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



「マイナスxマイナス」がプラスになるなど、中学数学で習って身についてはいるものの、そうなる理由を説明しなさいと言われたなら「暗記事項」として覚えていただけなので、困ってしまうようなことがらの解説・証明がなされていきます。対話形式で話が進められます。その話を追っていくと「超ディープな」内容が理解できます。本書は、通読するだけで分かるスグレモノです。

『はじめに』から少し引用します。本書で著者が身につけて欲しい読者に願う「視点」が示されています。

〔どうすれば「なぜ、そうなるのか?」という問いに自信を持って答えられるようになるのか?/ それは、「ルール」と「事実」という視点を身につけることです。/ 学生時代、数学の公式を意味がよくわからないまま丸暗記していた人は、「ルール」と「事実」という視点を身につけると、数学の捉え方が180度変わって、驚くほど理解が深まります〕。

〔さらに、より数学を楽しんでいただくために、「一般化・特殊ケース」という視点が新たに登場します。「一般化」を意識できれば、関連するより広い対象を一気に理解できたり、中学数学と高校数学の関係がわかったりして楽しいです。その楽しさを多くの人に味わってほしいと考え、「一般化」の例をたくさん散りばめました〕。

〔一般化とは、複数の対象に対して共通する法則・性質を取り出すことです。抽象化ともいいます〕。「一般化・特殊ケース」の1例をあげるなら、(高校で習う)余弦定理は(中学で習う)三平方の定理の一般化 / 三平方の定理は余弦定理の特殊ケース(∠C=90°の場合)があります。

高校数学の美しい物語
https://manabitimes.jp/math


高校数学の美しい物語

高校数学の美しい物語

  • 作者: マスオ
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2016/01/14
  • メディア: 単行本



課された暗誦教育『数学まなびはじめ 第3集』から加藤十吉(ミツヨシ)九大名誉教授の回顧
https://kankyodou.blog.ss-blog.jp/2015-10-30


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「プロの数学者」になるには・・(時枝正ケンブリッジ大Trinity Hall 数学主任) [数学]


数学まなびはじめ 第3集

数学まなびはじめ 第3集

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 単行本



上記イメージ書籍の13人中、特異中特異な経歴の持ち主は、時枝正先生かもしれない。「プロの数学者」を志した経緯がそもそもフツウでない。「ひょんな」キッカケで数学の道を歩みだすのだが、フツウそんなことで、「プロの数学者」になぞなれるものではない。しかし、「プロの数学者」になってしまった。だから、時枝先生は、フツウでない。フツウでないから、フツウの人間には、フツウでない先生の経験は参考にならないかもしれない。それでも、参考になりそうなところを以下に抜き書きしてみる。「プロの数学者」の説く、プロになる秘訣?をまとめておく。

(以下、上記書籍『数学まなびはじめ 第3集』から引用)

******

遠山啓の算数教材をやらされるのがいやで、おそれおおくも「とおやまのばか」と表紙に落書きし、「遠山先生はばかじゃない」と叱られた。・・・
p190

**********

(小学校)高学年、ひどい先生にあたった。幾週間も授業放棄し、その間あらぬことか、授業を生徒の私にやらせる。極めつきは同級生の宿題、試験の採点まで私に下請けに出した。あわれ、子供は異常環境にも順応してしまう。学級の誰も親に異常を訴えず、したがって親の誰も教育委員会にねじこまなかった。p191

******

15歳早々フランスへ単身渡り、ボルドーのリセGrand Lebrunに就学した。よくまあ親が手放した、と感心する。画家の卵は渡仏し修行するのが紋切だが、私のばあいあべこべに、渡仏がきりで絵はお休みになった。言語という新世界に開眼したからである。憑かれたかの如く様々な言語を身につけてゆくのを目の当たりにしたリセの先生が「この子の頭の構造はどうなっているのだろう」と訝ったそうな。若くしてボルドーで暮らしたおかげで、フランス語は訛なし、母国語同格になった。私にとってボルドーは第2のふるさとである。//帰朝後、上智大学でギリシャ人J.Roussosに師事、古典語(ギリシャ、ラテン、ヘブライ)を専攻した。当時日本には18歳未満大学に入れるべからず、というきまりがあり、目をつぶってくれたのは上智だけだったのである。p192

******

卒論のめどがついた時分、ひょんなめぐりあわせからランダウ Л. Д. Ланда́у の伝記を繙いた。ランダウは53歳のとき自動車事故に遭い、ふた月も死境をさまよったが、やっと意識を回復した朝、息子がたまたまアカデミー病院に見舞いに来ていた。月並な偉人伝ならお涙頂戴場面。しかしこの伝記によればなんと、目覚めたランダウ先生、息子を相手に早速 「dx/sinxの積分はどうやって求める?」と口頭試問を始めた。そしてつまった息子に対し「どうしたんだ。こんなのがむずかしいのか」と笑ったという。(マイヤ・ベサラブ『ランダウの生涯』東京書籍をあらためたら、記憶と原文と微妙にくいちがっている。ここでは記憶のままにしておく。)

この一笑が私にはこたえた。文系では優等生で通してきたのに、「dx/sinxの積分」の題意からしてちんぷんかんぷんではないか。憤慨した私は、そこで、積分とやらの水準まで数学を独習しよう、と決心した。独習するにはどうしたらよいか?同伝記中、物理を志した若者にランダウが「数学を身につけるには、教科書ではなく、問題集ーどんなものでもよいが、ただし問題がたくさんのっているものーが主要な役割を演じます」と諭すくだりがあった。相談のつてとて他になし、ランダウの諭告を真に受け、なるべく大きな問題集を探して掘り出したのが・・・(ここに、ロシア語の著者名、問題集の表題が示されてあるのだが、引用不可。総問3084あるという。関心ある方は、本文にあたり確認されたし)。言語が商売のてまえ、ロシア語だっておどろかない。一冬投資、ロシア語を学びながら дпк に取り組んだ。毎日7、8時間がんばった。なぜあんなに熱中しえたか不思議である。約1/3進んだ一節で  ∫ dx/sinx=1ntg x/2 が求まるようになったが、勢いにのって進み(ロシア語と数学同時に進歩するので2乗に加速する)、余寒すぎにはいつしか問題数十を余すのみとなり、ロシア語もすらすら読めるようになっていた。

この期に及び私はふたつの事実に勘づいた。

ⅰ)自分はこの手の問題がけっこうできる。
ⅱ)しかしどうも数学にはこの手の問題があるらしい・・・

次の秋、私は数学の学部課程を正規に修むべく、British Councilの奨学金を懐に、オックスフォードに学士入学した。
p194
*******

(「読んだ本のうち、ためになった数冊」を紹介する部分で、時枝先生は4冊を紹介しているが、特に『曲線と曲面の微分幾何』小林昭七著・裳書房1977について「こんなに楽しい数学があるのか、と計算や証明を絵に直しながら読んだ。渡仏以来お休みになっていた絵が、数学を通して私の生活に戻ってきたのである」と記している。そして、さらに・・・)

ε-δは苦にならなかった。厳密な言語訓練を積んできた賜物、量子化の順を替えると意味が変わる、云々(例えばトゥキュディデスの複文をほぐす作業に比べれば)おちゃのこさいさいだったのだ。数学教育の難しさのかなりの部分は、学習者の言語的未熟が元凶ではなかろうか。もっとも教科書にも悪文が多い。苦になったのはむしろ組合せ論的技巧。10代の訓練が不十分だったせいであろう。
p196

******

往時のオックスフォードは (「個人指導を軸とした教育法」)turorial主義で、講義らしい講義とてなかった。前の上智では散発的聴講がせいぜい、後のプリンストンでも大学院の講義は皆無であった。いったい数学の講義はされる側よりする側が勉強になるもので、講義にかよって単位を取る、という体験がぬけたまま自分が講義する側になりおおせた私は、得をした、ともいえる。小学校の代理教員以来、される側に随分迷惑をかけたろう。今でもあちこちでさせてもらうたびに勉強になる。
p198

******

ここ数年、ケープタウン郊外の貧困地区で、HIV陽性の赤ちゃんの保育園運営に関わっている。(昨年日本の外務省すじより数百万円の寄付にあずかり、すっかり助かった。ちなみに戦闘機は平均単価百億円。)今年の正月、園児のお姉さんの算数の宿題をみてあげた。近所の浜辺の砂をビンに入れたり出したり、パズルを解きながら進む。(中略)

ふと気付いたら、自分の教え方はなんと、水が砂に代わっただけで、30年昔「とおやまのばか」に習った水道方式そのものではないか。幸いこの子には性があったらしく、あどけなく面白がり、宿題もひととおりでき、ごほうびのマンゴジュースを啜って満足の態であった。「おおきくなったらね。おいしゃさんになる」のだそうだ。南半球の真夏の太陽がぎらぎら照っていた。

こんな「数学まなびはじめ」もある。
p203

『日本評論社』の著者紹介ページ
http://www.nippyo.co.jp/writer/3393.html

Tadashi Tokiedaホームページ
https://www.dpmms.cam.ac.uk/~tokieda/

図書館をぶらぶら ・・どこにも天才はいる・・
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2017-03-31

おもちゃの科学セレクション[第一巻]

おもちゃの科学セレクション[第一巻]

  • 作者: 戸田 盛和
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2011/11/15
  • メディア: 単行本



数学の学び方・教え方 (岩波新書 青版 822)

数学の学び方・教え方 (岩波新書 青版 822)

  • 作者: 遠山 啓
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1972/05/31
  • メディア: 新書



ランダウの生涯―ノーベル賞科学者の知と愛

ランダウの生涯―ノーベル賞科学者の知と愛

  • 作者: マイヤ・ベサラプ
  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 1985/05
  • メディア: 単行本



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