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「マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル」西田公昭著 ディスカヴァー・トゥエンティワン [心理学]


マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル

マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル

  • 作者: 西田公昭
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2016/12/15
  • メディア: Kindle版



以下、本当の話です。60歳定年をむかえ、中学1年の子どもと3人家族で、これから年金と退職金で暮らしていこうという知人です。彼は、「これからは他人にヘイコラ頭を下げる暮らしはごめんだ。億万長者になる」と言っていました。退職金は2000万円ほどあったのですが、受け取って2年ほどで無一文になりました。最初は、泉某氏の仮想通貨がらみの儲け話に引っかかりました。当方は、その話を聞いたときに、スグこれはダメだと思いましたが、知人は単なる儲け話に乗っかって100万以上失ったようです。知人は、他人のアタマを借りて、自分は何も労せず、資金だけ投じて億万長者になることを夢見ていましたが、当方は、それではダメだと言い、常に投資した資金がどのように運用されているか確認しつついかないといけないと警告しましたが、結局ダマサレました。最近、驚いたことに、今度はさらに巨額のカネをダマサレ、頼みの退職金がソコをつきました(いわゆる、詐欺師の「カモリスト」に入ってアプローチされたのかもしれません)。亡くなった父親がむかし購入していた北海道の原野が売れた(売れそう)と持ちかけられてダマサレタようです。ダマサレタ後になって、(ダマサレタと当方宅に)電話をしてきました。まったくのバカです。「原野商法」でグーグル検索するなら、選択肢として「原野商法 二次被害」という項目が自ずと出てきます。それほど、詐欺の手口として一般化しているものの一つであるにちがいありません。ネット上の情報を見れば、自分に持ちかけられた話が、まったくの詐欺であることに気付いたハズです。ところが、すぐに詐欺に気付かないばかりか、不動産屋と称する詐欺師が、数度にわたって訪問をくり返すたびに、数百万単位でカネを渡したということです。知人は、将棋はアマチュア6段だと言い、実際、職場の競技会では優勝をしてきた方です。ですから、アタマはバカではないハズですが、見事に詐欺に引っかかりました。詐欺師たちとの“交渉中に”相談すべきであった弁護士や警察に、今、被害金を取り戻すために走り回っています。不動産屋の住所も名前も皆ウソで固めているでしょうから、被害金回収はまず無理でしょう。いつもは、たいへん自慢の多い人なのですが、たいへん情けなく、恥ずかしく、親戚筋として感じています。

本書中に「詐欺は誰かに相談することで防げる」という項目があり、そこにはワンポイントアドバイスとして「警察や法律の専門家でなくても、そばにいて一緒に解決法を考えてくれる、心の支えになってくれる人がいるだけで、必ずあなたの役に立ってくれます」とありますが、そうしてもらえなかったことが残念でなりません。

前置きが長くなりましたが、以上本当の話で、知人も、当該書籍を読んでおけば対応は違っていただろう、退職金がソコをつくことはなかっただろうと思います。本書には、実際の被害の例がマンガで提供されたり、ダマサレやすいかどうかを自己吟味できるチャートもあります。「だまされやすい」タイプとしてAからFまでありますが、最も安全なタイプも「今は大丈夫」とあり、警戒を怠るべきでないことが示されています。文字も比較的大きく、行間も適当に空けられて「高齢者」にも読みやすいよう配慮がされています。

星ひとつ減らしたのは、表紙をはじめ装丁、造本が決して上等とはいえないからです。表紙もただの厚紙ですし、全体に紙質が上等ではありません。その割には、価額が高く感じます。そうではあっても、この本をざっと通読し、自分の弱点を知り、自分がダマサレやすい詐欺の手口を知って“事前に”備え、数百~千万の詐欺から守られると考えるならば、驚異的に安いともいえます。

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「感情は、すぐに脳をジャックする」佐渡島庸平/他著 学研プラス [心理学]


感情は、すぐに脳をジャックする

感情は、すぐに脳をジャックする

  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2021/12/14
  • メディア: Kindle版



怒りのマネジメントの本は多い。本書は、アンガー・マネジメントだけでなく、嫉妬や悲しみなど、怒り以外のネガティブ感情に支配され振り回されることのないようマネジメントするのに役立つ。ネガティブなものとは思えない喜びの感情でさえ、場合よっては持て余したりするものだが、適正に取り扱えるようになるにちがいない。そのためには、まず自分の感情をしかるべく認知し、それを受容することが必要だ。そして、適正に変容させること。それができれば最高だ。本書には、その術(アウトプットの質を高めることも含め)が示唆されている。

感情を認知するうえで、著者が「活用しているのが、米国の心理学者、ロバート・プルチック博士が提唱した『感情の輪』」。それは、8つの基本感情:喜び / 信頼 / 恐れ / 驚き / 悲しみ / 嫌悪 / 怒り / 期待 とその混合感情で構成され、感情というあいまいな概念を、視覚的かつ体系化した状態で捉えることができる。基本感情は、以下の組で、その相関性(振幅)を考慮できる。喜び⇔悲しみ、信頼 ⇔ 嫌悪、恐れ ⇔ 怒り、驚き ⇔ 期待。そして、隣接する感情から生まれる混合感情として次の8種が示される。喜び+信頼 ≒ 愛、信頼+恐れ ≒ 服従、恐れ+驚き ≒ 畏怖、驚き+悲しみ ≒ 拒絶(失望)、悲しみ+嫌悪 ≒ 後悔(自責)、嫌悪+怒り ≒ 軽蔑、怒り+期待 ≒ 攻撃、期待+喜び ≒ 楽観、以上の関係が図示され興味深い。

4章、5章は、著者たち(佐渡島庸平氏、石井善樹氏、芳賀翔一氏)による鼎談。トピックは「恥」「罪」「悲しみ」「絶望・希望」「怒り・イライラ」「誇り」「驚き」「安心」「感謝」のそれぞれ。あんまりおもしろくないと感じられるのは、三者で楽しんでいるのが妬ましいからか? その感情を吟味せねばならない・・


感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害

感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害

  • 作者: 乾 敏郎
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 単行本


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『幸せの追求』フレデリック・ルノワール著 田島葉子訳 [心理学]


幸せの追求-よく生きることを先延ばしにしない (単行本)

幸せの追求-よく生きることを先延ばしにしない (単行本)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/02/21
  • メディア: 単行本



コロナ禍のど真ん中でフランス人によって書かれた本。原題は『予測のつかない世界で生きる』。

巻頭エピグラフにC・G・ユングが引用される。「突然やってくる危機や激変や病気は、単なる偶然の産物ではない。それらは軌道を修正し、新たな進路を見つけ、別の生き方を模索するための道標として、わたしたちに大いに役立っている」。『目次』は以下のとおり。

目次
第1章 何よりもまず安心感を
第2章 逆境から立ち直る力
第3章 しなやかに適応する力
第4章 ポジティブな感情を大切に育てる
第5章 今という瞬間を味わって生きる
第6章 他者との絆を結び直す
第7章 自分の人生に意味を持たせる
第8章 自分を縛るものから自由になる
第9章 死を賢く手なずける
第10章 働きかけることと受け入れること

巻頭エピグラフと目次を見れば、分かる人にはおおよその内容は見通せると思う。第7章で「人生の意味」とあれば、たぶん『夜と霧』の著者:ヴィクトール・フランクルへの言及がなされるのでは・・と予測できる方は読む必要がないかもしれない。ちゃんと出てくる。

本書のキーワードは「レジリエンス」。意味は「苦難や逆境の中でもしなやかに生き延び、回復・成長していく力」と注が付されている。要するに「疾風勁草」である。『はじめに』で著者は次のように記す。〈この本は言ってみれば、サバイバルと人間的成長のためのマニュアル、いわゆる「レジリエンス」の手引き書である。先の見えない不安な日々の中でも、前向きに幸せに生きることはできる。その力、つまりレジリエンスを身につけるためのヒントを示すことが、この本を書いた目的である〉。

読みながら正岡子規の言葉を想起した。結核病みとなって体が思うようでなくなった子規はいう。「余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違いで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。」(『病床六尺』)

著者はモンテーニュとスピノザなどを引用しながら、コロナ禍のいつ明けるともしらない夜のなかで、自論を展開する。仏語原書の裏表紙には有名な一節「生きるとは、嵐が単に過ぎるのを待つことではなく、降りしきる雨の中でもダンスを踊れるようになることである」が示されている。ますます『予測のつかない世界』において、「平気で生きて居る」だけでなく、「ダンスを踊れるよう」助けられる。


ユング心理学入門

ユング心理学入門

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 培風館
  • 発売日: 2022/04/27
  • メディア: 単行本



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『モチベーションの心理学―「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛 雅治著 [心理学]


モチべーションの心理学-「やる気」と「意欲」のメカニズム (中公新書 2680)

モチべーションの心理学-「やる気」と「意欲」のメカニズム (中公新書 2680)

  • 作者: 鹿毛 雅治
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/01/19
  • メディア: 新書


即効性はありません

「やる気」と「意欲」のメカニズムを知ることのできる本である。では、「やる気」を高め、意欲を奮い起こすのに役立つかというと、役立つには役立つが迂遠である。即効性はない。そもそもノウハウを示すビジネス書ではない。

メカニズムを知ることができるが、そのメカニズムが一筋縄ではない。複雑である。それゆえに、だれにでも即効で使えるノウハウなどないことを知ることができる。その代わりに、ひとりひとり個別に慎重に対応すべきことを学べる。安易な解決策などないことを知ることができるのが、本書の一番の効能に思う。

出版社情報には次のようにある。〈「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」。人間の場合はなおさらでやる気がない人にいくら無理強いしても無駄である。そもそも、やる気はどう生まれるのか。報酬を与えるのか、口で褒めるのか、それとも罰をちらつかせるのか。自分の経験と素朴な理論で対処しても、うまくいくとは限らない。本書は、目標説、自信説、成長説、環境説など、心理学の知見からモチベーションの理論を総ざらいする。〉

「モチベーション理論の総ざらい」とある。それぞれの「説」を考慮するにあたっては、腰を据えて取り組む必要がある。とはいえ、論議は難解ではない。身近なたとえや事例、著名な本が引き合いに出される。著者の人柄が想起される。

〈本書はモチベーション研究の入門書である。その目的は、モチベーションに関する代表的な心理学理論を整理して紹介することを通じて、やる気や意欲という身近な心理現象に関する理解を深めてもらうことにある〉と序文「はじめに」記されている。その執筆目的は十分に果たされているように思う。

目次
はじめに やる気と意欲を問う
第1章 モチベーションとは何か
第2章 モチベーション理論の展開
第3章 達成と価値―目標説
第4章 成功と自尊心―自信説
第5章 学びと発達―成長説
第6章 習慣と態度―非意識説
第7章 場とシステム―環境説
終章 「モチベーションの心理学」に学ぶ

2022年3月1日にレビュー

【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology)

【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology)

  • 作者: DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: 単行本


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脳が変わる考え方―もっと自由に生きる54のヒント 茂木 健一郎 [心理学]


脳が変わる考え方―もっと自由に生きる54のヒント

脳が変わる考え方―もっと自由に生きる54のヒント

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: PHPエディターズグループ
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本


勇気をもって「自由」への一歩を踏み出すよう助けられる

先の見えない混迷する不確かな時代に、勇気をもって一歩踏み出すよう背中を押してくれる本です。発行されて10年経過しますが、現在いよいよ価値のある本に思います。そのような本が絶版状態にあるというのは残念なことです。(もしかすると、タイトルを変えて文庫版になっていたいりするかもしれませんが・・)

書籍タイトルと内容が若干異なる感があります。ある個人の能力開発、パフォーマンスアップのために考え方の変化を求める内容かと思いましたが、そうしたチマチマしたものではありません。日本文化論であり、閉塞した日本社会の中から、真のグローバル化を図るための意識改革について語られます。個人として各自「独立自尊」を遂げるよう勧められます。

坂本龍馬の「脱藩」について語られ、日本の開国について語られます。日本の危機的状況は幕末に匹敵すると著者は認識しています。閉塞した日本を「脱藩」するよう促されます。スティーブ・ジョブズ、ビルゲイツらの、いわば規格外人生が語られます。アインシュタイン、ヴィトゲンシュタインの落ちこぼれぶりが語られます。ポアンカレ予想を証明したペレルマン、福沢諭吉の話もでます。そうした人びとの創造性、個性的な歩みが世界に大きな変化と富をもたらしたというわけです。ある意味、本書は「変人のススメ」でもあります。

茂木さんの講演を編集者がまとめたものに、加筆修正したものであるということです。読んでいて、同じ脳科学者の苫米地英人氏の著作を想起しました。日本人が洗脳されていることを指摘し、その奴隷状態からの解放を企てる著作を苫米地氏は多数ものしていますが、海外留学生活経験があり、母国日本と留学国(イギリス、アメリカ)とのチガイを否応なく経験した方は、同じように日本を見ざるをえないのであろうと感じました。

多くの逸話が興味深く語られ、心を動かされます。勇気をもって「自由」への一歩を踏み出すよう助けられます。

2020年3月11日にレビュー
(以下、当方未読)

脳科学は人格を変えられるか? (文春文庫)

脳科学は人格を変えられるか? (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/08/04
  • メディア: 文庫



あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫



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「もしも一年後、この世にいないとしたら」 清水研著 文響社 [心理学]


もしも一年後、この世にいないとしたら。

もしも一年後、この世にいないとしたら。

  • 作者: 清水研
  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2019/10/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ツクリ話ではない真実からくる力がある

「1年後」どころか明日のイノチだって分からないというのが現実だ。ところが、それが分からないで(あるいは「分からないフリ」をして)生きているというのが多くの人の実状だ。著者は、精神科医として、もっぱら(薬剤を用いてではなく)カウンセリングをとおして他者と関わっている。その人々は、心理的に助けを必要とするだけでなく、余命宣告を受けて残りのイノチを過ごすガン患者だ。彼らは、「分からないフリ」がもはや通用しないイノチを生きている。それゆえ、著者はフツウの心理療法家よりタイヘンな立場に身を置いていることになる。そこから見える風景がフツウではないことは予想できる。その見えた風景を本書は教えてくれる。ガンになったために(ある意味において「その御蔭で」と言ってもいいと思うが)、イノチの意味を苦しみと悲しみのなかで見い出した人々の経験が語られる。著者自身も、彼らとの付き合いのなかで、“自分の”イノチについて考えることを迫られる。その変化した思いについても記される。文学的に感動を呼び起こそうという意図など著者にはないにちがいない。それでも、ガン患者の経験・語りの記述には感情、たましいを震わせるモノがある。ツクリ話ではない真実からくる力だ。読者はだれもが自分のイノチと生き様について考えさせられるにちがいない。

2019年11月5日にレビュー

がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A

がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A

  • 作者: 清水 研
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2020/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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「意識的な行動の無意識的な理由: 心理学ビジュアル百科 認知心理学編」 創元社 [心理学]


意識的な行動の無意識的な理由: 心理学ビジュアル百科 認知心理学編

意識的な行動の無意識的な理由: 心理学ビジュアル百科 認知心理学編

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2018/10/04
  • メディア: 単行本


最新の学問的成果に接することができて仕合せ

本書は、2016年に刊行された『心理学ビジュアル百科』から「認知心理学編」を独立させたものらしい。パステルカラーに色分けされた装丁・製本で、図版・写真が多用されている。各項目は執筆者の経験から説き起こされ、一見一読カンタンな印象がある。しかし、各項・見開き4ページで構成されていて、相当に詰め込んだ内容となっている。詰め込むために専門性が高くなる。専門用語が多用される。

「高校生から楽しめる」とあり、読者対象は高校生以上のようである。確かに高校生でも、使用される専門用語に関しては、本文中で「~とは・・・」と説明されていくので、ついていけないことはないだろうが、各事項を全体的おおまかに把握するに留まり、さらに補足的な説明を受けないと消化不良に終わる可能性が高いように思う。

もっとも、本書自体、認知心理学の全容を大まかに示すのが主眼であって、微に入り細に入るための本ではないと割り切っているのだろう。つまり、さらに興味のある点があれば、どうぞ別な本で調査研究してくださいということらしい。巻末に用意されている「最新の学術論文を多数収めた充実の参考文献リスト」はそのための配慮らしい。

評者は、はじめて本書で「符号化・貯蔵・検索」という用語を知った。『記憶』に関して用いられる用語である。以前であれば「記銘・保持・想起」として知られたものである。すなわち、最新の学問的成果が収められているということなのであろう。そういう情報に接する機会をもてたことは仕合せである。

できれば、専門用語の初出する部分(「~とは・・・」と定義する部分)においては、大きな印字を用いる、斜体にするなどして際立たせて欲しく思った。巻末の索引とあわせて検索・再読する便を図ってもらえたらと願う。

2019年7月1日にレビュー

心理学ビジュアル百科:基本から研究の最前線まで

心理学ビジュアル百科:基本から研究の最前線まで

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2016/09/12
  • メディア: 単行本



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「頭のゴミ」を捨てれば、脳は一瞬で目覚める! 苫米地英人著 [心理学]


「頭のゴミ」を捨てれば、脳は一瞬で目覚める!

「頭のゴミ」を捨てれば、脳は一瞬で目覚める!

  • 出版社/メーカー: コグニティブリサーチラボ株式会社
  • 発売日: 2014/04/14
  • メディア: Kindle版


『奇跡の人』になろうではありませんか

本書を、評者なりにまとめるなら・・・、自分の能力を最大限に開花させ、人生を生き切るうえでゴールの設定は大切である。そうすれば、会社等で不本意な仕事をいやいや行って、人生を振り返ったときに悔いることはない。そのために、人生のゴールをどのように設定するかは重要だ。そして、その点でできることは、「頭のゴミ」に相当するものを、捨てることだ。・・・

評者は、認知科学者である著者の本をはじめて読んだ。以前、マーフィー理論に基づく『口ぐせの法則』なる本を読んだが、本書をとおして、ポジティブな独り言(自己対話)が当人に及ぼす好影響について不分明な点の啓発を得た。また、他の書籍で「人間の脳は現実とイメージの区別がつかない」ことについて読んでいたが、「臨場感」のあるリアルなイメージの重要性とその運用法について知ることができた。

さらに啓発を得たのは、「全体と部分との双方向の関係」を示すゲシュタルトに関する論議。「ゲシュタルトによって事象を認識する(ゲシュタルト)能力」を高める点で、次のような記述がある。「抽象度を上げて知識を増やすことが重要と言いましたが、しかし知識は増やそうとおもって増やせるものではありません。『知識を増やす』という目的で知識を詰め込んでも、それはゲシュタルトの一部にならないのです。知識がゲシュタルトの一部となるのは、その知識を興味を持って取り込んだときだけです。心から興味を持って知識を得ないと、ゲシュタルトを大きくすることにはならないのです。(・・略・・)では、興味を持って知識を取り込めるのはどういう場合かというと、それは単純に趣味の好きなことに没頭しているときか、『心から望むゴールのために知識を取り込んでいるとき』です」。そして、「バラバラだった情報がつながり、ゲシュタルトができるという体験」をした「奇跡の人」ヘレン・ケラーとサリバン女史の感動的な記述がある。

著者は本書を次のように結ぶ。「読者の皆さんがそれぞれのゴールに向かって、皆さん自身の『奇跡の人』になられることを願ってやみません」。


奇跡の人 [DVD]

奇跡の人 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD



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大人になってからの人間関係 信頼を深めるための3ステップ キーラ・アサトリアン著  文響社 [心理学]


大人になってからの人間関係 信頼を深めるための3ステップ

大人になってからの人間関係 信頼を深めるための3ステップ

  • 作者: キーラ・アサトリアン
  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


人間関係に関する著作をいろいろみてきた中で、本書は最良

孤独の問題、対人関係の問題に立ちむかうための好著。電子機器によって人と人とが直接触れ合うことの難しくなった時代ならではの問題を、解決・改善するための具体的方策が示されている。

キーワードは「親密さ」である。他者との間で(お互いのアイデンティティーを守り、適正な距離を保ちつつ、なおかつ幸せを共有できるような)親密な関係を築くために何ができるか考えるよう促され、具体的方法が示されていく。著者プロフィルを見ると、心理学の専門家というわけではないにも関わらず、これだけ豊かな内容を記すことができたというのは、自分も含めてよく人間を観察し、ふかく考えてきたからなのだろう。

聖書の「黄金律」は、人間関係における史上最良のアドバイスと信じるが、そこにある「自分にして欲しいと思うことはみな,同じように人にもしなければなりません」を実践するにあたっては、まず自分自身とその必要について知っている必要がある。本書の最終章では、まさに自分自身との「親密」な関係を得るための方法も記されている。

最近のビジネス書に見られるような、多色刷りで行間を大きく開け、大き目の活字をもちいた本に慣れ親しんでいる方が見ると、一見して「負担」に感じるかもしれない。本書は文字がいっぱいだ。しかも、黒一色で300ページほどある。それでも、たいへん読みやすく感じるのは、著者の身近な経験・話題から理路整然と話しが進められていくからだろう。翻訳の良さも関係するように思う。

人間関係に関する著作をいろいろみてきた中で、本書は最良だと思う。多くの人に囲まれながら孤独を感じ(て)たり、対人関係を築く点で不安をかかえ(てい)たり、うまくいかないので自分の殻に閉じこもりがちになってしまう方はもちろん、うまくこなしている方も参考になる点は多いにちがいない。ぜひ一読をお勧めしたい本である。

2019年2月2日にレビュー

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本


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「いい人」をやめる脳の習慣 茂木 健一郎著 学研プラス [心理学]


「いい人」をやめる脳の習慣

「いい人」をやめる脳の習慣

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2018/11/27
  • メディア: 単行本


「いい人」を卒業するまで導いてもらえる

〈常に“他人の目”を窺い、無意識のうちに相手が望む「いい人」の役割を演じて〉しまう「いい人」たちに、「いい人」を卒業するよう勧めている。嫌われ者となり、孤立を愛せというのでは、もちろんナイ。個を確立し、社会的信頼と尊敬を勝ち得る方法・事例が示される。著者自身の経験も率直に記され、たいへん、読みやすく、理解しやすい。

“他人の目”を怖れて行動しふるまう時、人は、周囲にコントロールされてしまう。「いい人」、利用しやすい人、重宝な人になってしまう。「いい人」は、要らぬモノを背負いこみ、ヘトヘトに疲弊する。身体をこわすかもしれない。しかし、同じ行動を取るにしても、怖れからではなく、進んでそうすることも、人はできる。「自発的ポジティブ」を著者は勧める。主体的であり、意思を明確にし、個性を明らかにすることは、周囲に波風を起こす。「いい人」は、そのことを過度に怖れるものだが、怖れに負けることなく一歩踏み出す勇気をもらえる。さらには、「八方美人」の「全方位外交」をとるよう励まされる。もちろん、疲弊することなく、そうできるよう助けてくれる。「いい人」を卒業するまで導いてくれる。「生存戦略」としての「毛づくろいのポートフォリオ」の話など興味深い。

(以下「目次」) はじめに:人生を変えたければいますぐ「いい人」を卒業しよう! 1章:脳はなぜ、「いい人」を演じてしまうのか?(①どんな頼まれごとでも、笑顔で引き受けていませんか?②成功する人の脳と成功しない人の脳の大きな違い③どんどん自分を出せなくなっていく「固定観念」という脳のワナ 2章:もう、他人のためにがんばらなくていい!④個性を発揮していないから、結局、「いい人」になってしまう⑤期待に応えようとするから辛くなる、期待はフワ~ッと超えてしまえばいい⑥自分の価値観を大切にすると、「いい人」の殻を破ることができる⑦「いい人」をやめることは、自分らしく生きるということ⑧無理して笑顔をつくる前に「いい人」に気づいてほしいこと⑨自己本位とわがままの違いについて「いい人」のカン違い 3章:脳に「いい人」をやめさせる習慣とは?⑩「いい人」をやめられないのは、いつも相手の指示を待っているから⑪自分だけ損してしまう「いい人」の自己防衛のためのコツ⑫「いい人」をやめた後、どうやって自分の価値をアピールするか⑬「いい人」にならなくても、空気を壊さない方法がある 4章:「いい人」をやめて、もっと楽に自由に生きる!⑭「いい人」のプレッシャーから解放される、マインドチェンジのコツ⑮「いい人」をやめて人生をもっと充実させる方法とは⑯こだわりを持って生きると、「いい人」でいる空しさから卒業できる おわりに:あなたの人生のCEOであれ!

2019年1月28日にレビュー

人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方 (DOBOOKS)

人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方 (DOBOOKS)

  • 作者: おのころ 心平
  • 出版社/メーカー: 同文舘出版
  • 発売日: 2018/04/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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