「15歳の寺子屋 15歳の日本語上達法」金田一秀穂著 [日本語・国語学]
です・ます調の話し言葉で、言葉のはたらきを知り、言葉を大切にすべきことが若い読者にもよく分かるように記されている。その中身そのものも面白いのだが、評者はそちらよりも金田一家の家系や血といったものを感じる機会となって面白かった。学校嫌いで高校の成績はドンケツ、何をしたらいいか分からず悩んで、大学を卒業してから3年ニートをしていたという秀穂氏。父親としては、ふつうならじれったい思いをするところだろうが、それをあたたかくじっと見守る父親の春彦氏の顔が思い浮かんだ。また、石川啄木に多大のカネを貸した祖父:京助氏のことも想起された。『別冊 太陽(近代文学百人)』で見た記憶があるのだが、そこに啄木自身が借金を記録した手帳の写真が掲載されていた。多くの人からの借金が一桁二桁だった中で、「金田一京助君 百円」とあった(ように思う)。そういう懐の深い人たちの中で育った人ならではの人柄が秀穂氏からも感じられる。いわば、癒し系である。進学、進路に悩む人は読むといい。ゆっくりじっくり大人になればいいんだと安心できる。その癒し効果は半端でないように思う。