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「おにぼう」(PHPとっておきのどうわ) [児童文学]


おにぼう (PHPとっておきのどうわ)

おにぼう (PHPとっておきのどうわ)

  • 作者: くすのき しげのり
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/10/05
  • メディア: 単行本



キンドル版で読んだ。「泣いた赤鬼」と「三年寝太郎」を合わせたような話だなと思いつつ読んでいった。なかなかな感動的である。絵もいい。キンドル版では、(FireHD8では)絵本の両面を同時に見ることができない。それでも、感動的。


泣いた赤おに (日本の童話名作選)

泣いた赤おに (日本の童話名作選)

  • 作者: 浜田 広介
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1992/12/01
  • メディア: 大型本



三ねんねたろう (むかしむかし絵本 8)

三ねんねたろう (むかしむかし絵本 8)

  • 作者: 大川 悦生
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 1967/07
  • メディア: 単行本



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「モモ」 ミヒャエル・エンデ著 (岩波少年文庫) [児童文学]


モモ (岩波少年文庫)

モモ (岩波少年文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/06/16
  • メディア: Kindle版



スタイルこそ児童文学だが、はるかに大きな内容を盛っている。「時間」とは、つまり、命のことだろう。命の源と呼びうるような存在から、モモという名の少女が遣わされて人々を死から救い出す物語。そう要約できるように思う。

これまで、(もちろん翻訳においてだが)原作を読んでこなかった。原作を読まずに何を“読”んできたかというと、ひとつは先ごろ(2017年に)亡くなった子安美知子さんの〈「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として〉だ。そこでの論議は、単に『モモ』の解釈にとどまらず、人間の原初的な宗教性に及ぶもので、エンデの世界観・宗教観を開示してくれるものだった。

「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として (朝日文庫)

「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として (朝日文庫)

  • 作者: 子安 美知子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1991/01
  • メディア: 文庫



もう一つは、エンデ自身が“著者”の役を演じた映画『モモ』だ。エンデは、自著『はてしない物語』の映画化に関しては、その結末が著者の意にそわず、映画会社と訴訟騒ぎになったが、モモに関してはそうではなかった。十分納得し満足していたのだろう。しかし、今回、読んでみて、内容が映画と異なることに気づいた。たとえば、ジジの仕事のことだ。そうではあっても、内容のより深いところがどう表現されているかが、本当に問題とされているということなのだろう。

モモ [DVD]

モモ [DVD]

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2012/05/26
  • メディア: DVD


というわけで、エンデのバック・グラウンドと言える世界観とエンデ自身のお墨付きを得た映画を見て、分かったような気でいたのだが、それでもなお感動したことをお伝えしたい。児童文学の体裁を取り、わかりやすい言葉で物語っているが、内容は深い。時間とは命のことだろう。しかし、象徴的に表現されている命の問題が、象徴的に取り扱われているその取り扱いにおいて不明なところがある。つまり、「時間」認識において、エンデのそれを把握しきれていないということだ。しかしなお、把握できないでも、それが考慮に値するものであることは、つよく迫ってくる。さすが、名作である。

エンデと語る―作品・半生・世界観 (朝日選書)

エンデと語る―作品・半生・世界観 (朝日選書)

  • 作者: 子安 美知子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1986/06
  • メディア: 単行本



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死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術) 上野正彦著 河出書房新社 [児童文学]


死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

  • 作者: 上野正彦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 単行本


いまや貴重

死を通して生について考え続けてこられた先生が、将来のある若い人々に直接話しかけるように記した本。自身が医学を志し 法医学をおさめ、死と向きあってこられた様子が記される。戦争のころ多感な青春期を過ごし、価値観の大きな変化を経験してこられた そのお話はいまや貴重である。

以下、目次

第1章 私は監察医という仕事をしています
事件や事故で死ぬ人びとがほうむられるまで
監察医制度は全国制度ではない
死因をさぐることは死体と語ること
死者と会話した日
名誉はいらない
漫画のヒーローの鑑定

第2章 なぜ監察医になったのか
「赤ひげ」だった父
医は仁術なり
戦争の前後で見た景色
父からわたされた一冊の本
死から生を見つめたい

第3章 2万体の死体と語った
忘れられない事件
初めて見た刑事の涙
ひどい親でもかばおうとする子たち
昭和の時代の心中事件
被害者の家族が背負うもの
親の強い愛が解決させた

第4章 人が死ぬということ
いじめによる自殺
死にたいは、生きたいということ
せまい井戸から出られるときがくる
自殺は他殺である
いつか親も亡くなっていく
なぜ学校に通うのか

第5章 未来を生きる君たちへ
死とは生きるということ
自分とは何なのか
監察医がいらない世の中になればいい
あふれるほどの夢をもとう

おわりに
2018年12月11日にレビュー

死体鑑定医の告白

死体鑑定医の告白

  • 作者: 上野 正彦
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2017/07/10
  • メディア: 単行本


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「アリになった数学者」 森田 真生・文 / 脇阪克二・絵 [児童文学]


アリになった数学者 (たくさんのふしぎ傑作集)

アリになった数学者 (たくさんのふしぎ傑作集)

  • 作者: 森田 真生
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2018/10/03
  • メディア: 単行本


算数と数学を身近なものに

きれいな絵本だ。いろいろな(まさに「色々な」)表現方法を尽くして、脇阪さんは、文章とのコラボレートを試みる。限界に挑む。文章は、在野数学者でおとなの本も書いている森田 真生さんだ。絵本の限られたページのなかに、最大限の中身を、最小の言葉で記そうとすると、おのずと言葉は、詩として展開するらしい。もともと森田さんが詩人のたましいを持っているということもあるのだろうが、文章は詩の体をなしているように思う。

以下に、すこし抜粋してみる。

人間の数学は、あくまで人間のからだに根ざしてつくられているのだ。
人間とはちがうからだをもつアリなら、どんな数学をつくるだろう。
ぼくは、アリたちと語りあってみたいと思った。

2018年11月30日にレビュー

数学する身体 (新潮文庫)

数学する身体 (新潮文庫)

  • 作者: 森田 真生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: 文庫



数学する人生

数学する人生

  • 作者: 岡 潔
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/02/18
  • メディア: 単行本



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『あいまいさを引きうけて(日常を散策する 3)』 清水眞砂子著 かもがわ出版 [児童文学]


あいまいさを引きうけて (日常を散策する 3)

あいまいさを引きうけて (日常を散策する 3)

  • 作者: 清水 眞砂子
  • 出版社/メーカー: かもがわ出版
  • 発売日: 2018/05/27
  • メディア: 単行本


「壊される」経験をお勧めしたい

ル=グウィン著『ゲド戦記』の翻訳者:清水眞砂子によるエッセイ集。対談も収録されている。読後、沈思黙考である。清水さんの言葉を借りるなら、往復ビンタを食った感じである。

著者は、日常のなかで思考する。思考し続ける。何十年も、簡単安直に答えをださない。それでいいのだという。すぐの答えを求められ、すぐに回答(らしきもの)が手に入るインターネット時代にあって、清水さんのスタンスはそれである。日常の生活を潜ったたしかな言葉・思想を手にしようと奮闘してこられた様子が伝わってくる。「あいまいさを引きうけて」その中で転がり回ってこられたということで、それはあるにちがいない。

自身そうであるから、そういう歩みをしてきた作家に清水さんはシンパシーを感じる。そして、大切にしてきた。『ゲド戦記』翻訳も依頼がまずあって仕事として引き受けたというより、自分の切実なうちなる欲求から、他の仕事をなげうって取り掛かったものだという。ほかに、そうした作品を物した作家としてフィリッパ・ピアスや吉野せい、乙骨淑子について語られる。

清水さんは、「心ゆたかな」読書とは、壊されることだという。読書体験とは破壊されることである。たぶん評者も清水さん同様、「壊される」ことが好きなのにちがいない。鶴見俊輔さんとの対談もあり、そこで鶴見さんは、ル=グウィンと乙骨淑子理解の背景的知識を示す。とりわけ乙骨を個人的に知り、その父を知る鶴見さんの言葉に、清水さんは「壊される」。そして、清水さんは感動をもって応じる。要するに「豊かに」されたのだ。それを読む評者も「壊された」。しかし、「壊される」経験は、もっと深いところでの破壊を言うのであろう。単に知識が増えるなど、「壊される」うちに入らない。ユング心理学でいう〈自分の「影」〉と対峙するような怖さが関係してくるにちがいない。

鶴見さんとの対談について回想するにあたり、清水さんは「乙骨淑子と共に日本の子どもの本の作家では、私が最も信頼していた上野瞭が亡くなり、そのお通夜の会場の片隅に、鶴見さんがぽつねんとたたずんでおられるのを遠くから目にしたが、余りのお疲れのご様子に、お声掛けするのもためらわれて、私はひとり夜遅い京都駅に向かった」と記す。

上野瞭も凄い作家である。誰もが安住する家の土台をひっくり返すような作品を書いた。上野瞭を「最も信頼していた」清水さんは、やはり凄い人なのにちがいない。本書を読んで、「壊される」経験をお勧めしたい。むずかしい言葉は用いられていない。

2018年9月30日にレビュー

本の虫ではないのだけれど―日常を散策する〈1〉 (日常を散策する 1)

本の虫ではないのだけれど―日常を散策する〈1〉 (日常を散策する 1)

  • 作者: 清水 眞砂子
  • 出版社/メーカー: かもがわ出版
  • 発売日: 2010/05/01
  • メディア: 単行本



不器用な日々―日常を散策する〈2〉 (日常を散策する 2)

不器用な日々―日常を散策する〈2〉 (日常を散策する 2)

  • 作者: 清水 眞砂子
  • 出版社/メーカー: かもがわ出版
  • 発売日: 2010/10/01
  • メディア: 単行本



児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から

児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から

  • 作者: 村瀬 学
  • 出版社/メーカー: JICC出版局
  • 発売日: 1992/02
  • メディア: ハードカバー


名古屋大・女子による殺人事件(エロトフォノフィリアによるものか・・)https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30
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『ノンフィクション児童文学の力』 国松 俊英著 文溪堂 [児童文学]


ノンフィクション児童文学の力

ノンフィクション児童文学の力

  • 作者: 国松 俊英
  • 出版社/メーカー: 文溪堂
  • 発売日: 2018/01/17
  • メディア: 単行本


実作者からの貴重なプレゼント

「ノンフィクション児童文学には、激動の時代をしっかりとらえる力がある。たくましく生きる人間の姿を生き生きと描き出す力がある。ノンフィクション児童文学は、ほんとうのことを知りたいと思い、多くの知識を求めようとする子どもたちに、社会や人間の本質を伝える力を持つ文学である。児童文学に関心を持つたくさんの人たちにそのことを知ってほしいと思って、この本を書いた。」と序文は始まる。そして、(1980年代後半から)〈三十年、ノンフィクションとともにやってきた。その中でとても残念に思っているのは、「ノンフィクションはおもしろい」、「ノンフィクションが大好き」という人が、なかなか増えないことである。絵本やファンタジーを深く愛する人に比べ、残念ながらノンフィクションが大好きな人はまだまだ少ないのだ。 / そんな状況を変えたい。ノンフィクション児童文学はおもしろいと思う人が増えてほしいと思って、この本を書くことにした。〉〈一人でも多くの人ノンフィクション児童文学に関心を持つてもらい、その力を知ってほしいと願っている。〉と序文は結ばれる。

1(章)では、「ノンフィクション児童文学とはどんな文学か」が示され、児童文学のなかでのその位置づけとそのそのジャンルにはどのようなものがあるかが示され、また、どのように「児童文学の世界で、市民権を得るようになった」か、その経緯が簡潔に示される。

2(章)は「ノンフィクション児童文学のあゆみーーノンフィクションの世界を切り開いた人たち」と題され、たかしよいち、石川光男、神戸淳吉、木暮正夫ら4人のパイオニアについて詳述される。

3(章)は、「読んでおきたいノンフィクション児童文学ーー1970年から1990年代までの作品」として、33作品の要約と抜粋が示される。(巻末付録「この本で紹介したブックリスト」には、100冊ほど紹介されている。この部分同様「読書案内」として役立つ)。

4(章)は「私のノンフィクションノート」と題され、題材の見つけ方、取材の仕方、ノンフィクション児童文学の可能性について記されていく。

と、まとめていくと、味も素っ気もない「論文」であるかのように誤解されそうだが、読み物としてたいへん面白い。著者の「熱」が伝わってくる。執筆のなかでの苦労やよろこびも実感できる。思わず引き込まれて、ふと我にもどり、「ああ、自分はいま子どもに戻っていた・・」とたびたび感じながら読んだ。ノンフィクション児童文学の「力」について知りたいと願う方、また、その執筆にあずかろうという方にとっては特に、実作者からの貴重なプレゼントといえる。


さいはての荒野へ―北海道開拓にかけた依田勉三と晩成社の人たち (PHPこころのノンフィクション 2)

さいはての荒野へ―北海道開拓にかけた依田勉三と晩成社の人たち (PHPこころのノンフィクション 2)

  • 作者: 木暮 正夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1981/06
  • メディア: 単行本



北の大地に生きる―北海道開拓にかけた依田勉三と晩成社の人たち (PHPこころのノンフィクション 17)

北の大地に生きる―北海道開拓にかけた依田勉三と晩成社の人たち (PHPこころのノンフィクション 17)

  • 作者: 木暮 正夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1982/12
  • メディア: 新書


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児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から [児童文学]


児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から

児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から

  • 作者: 村瀬 学
  • 出版社/メーカー: JICC出版局
  • 発売日: 2023/06/28
  • メディア: ハードカバー


「闇」の放つ光の魅力
2004年10月10日にレビュー

上質の文学作品ほど得体の知れない魅力に満ちているように思います。得体の知れないその魅力のゆえにまた、世代を越えて読み継がれてもいくように思います。

この著作で、取り上げられているペロー童話の「赤ずきん」などもそうした魅力、妖しい光を放つ物語と言えるでしょう。著者はそれを「闇」と表しています。

著者は「赤ずきん」「青ひげ」などを並べて論述し、それらの「闇」の持つ妖しい光をプリズムで分光し、解析して、見せます。

その解説が正解であるかどうか私は知りませんが、この解説もまた得体の知れない妖しい光を放つもので、そのことゆえにも私はこの著作を上質の文学作品(批評)であると思っています。

副題は『上野瞭の場所から』となっています。上野瞭は「ちょんまげ手まり歌」等で妖しい光を放った「児童」文学者です。

鶴見俊輔 (言視舎 評伝選)

鶴見俊輔 (言視舎 評伝選)

  • 作者: 村瀬 学
  • 出版社/メーカー: 言視舎
  • 発売日: 2016/05/18
  • メディア: 単行本



吉本隆明 忘れられた「詩的大陸」へ: 『日時計篇』の解読

吉本隆明 忘れられた「詩的大陸」へ: 『日時計篇』の解読

  • 作者: 村瀬 学
  • 出版社/メーカー: 言視舎
  • 発売日: 2023/02/01
  • メディア: 単行本



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『絵本を深く読む』 灰島 かり著 玉川大学出版部 [児童文学]


絵本を深く読む

絵本を深く読む

  • 作者: 灰島 かり
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 2017/11/14
  • メディア: 単行本


絵本と響きあう「身体」を備えた著者による「絵本をどう読むか」についての評論集

著者は2016年に亡くなった。本書はその遺著である。硬質の文章で絵本について解説がなされてゆく。その物語の構造を解き明かし、同様の物語のバリエーション、発展形を示していくのを面白く思った。その射程には『赤ずきん』のような古いものから、ずっと新しい最近のものまでが入る。

「はじめに」末尾で著者はいう。「・・・ストーリー運びを追うだけでは味わいつくせない細部の描写にこめたメッセージや遊びを豊かに受けとめるために、研究者もそれに響きあえる『身体』を備える必要がある。 / わたしは、現実世界に向きあうための『身体』には、たいした自信がないけれど、たっぷりどっぷり作品に浸る『読みの身体』には、いささか自信がある。 / さあ、ごいっしょに、身体ごと絵本の世界を楽しみながら、新しい絵本論のわき出る泉をさがしに出かけよう。」

絵本の読解には、ふつう以上の「身体」が必要とされる。大人の本とは異なり、絵本は「絵」と「文字」で構成され、そして、語り聞かせる際には「声」が関係し、また、語り聞かせる「場」所も関係してくるからだ。そうした、「絵本独自のありよう」をさぐるのが「この本の目的」と著者自身記しているが、まさに、そのような「身体」を鍛錬して身につけた方ならではの著作であるように思う。

「あとがき」で、鈴木晶氏が書いている。〈「絵本をどう読むか」についてまとまった評論を集めたのが本書である。・・略・・第1章から4章までいわゆる論文調で書かれているが、妻がもっとも得意としたのは第5章みたいな、読者に語りかける文体である。本書に収録されていない短い評論は、ほとんどそうした「おしゃべり文体」で書かれていて、妻の人柄が偲ばれるので、いずれ出版したいと願っている」。大いに期待したい。

2018年1月18日にレビュー

以下目次

はじめに 絵本論をさがして

第1章 成長を占う旅 少年の場合(1森へいく少年、その基本 / 2森へいく少年、その完成形 / 3森のさらにその先へいく少年 / 4心の奥の森へいく少年)

第2章 成長を占う旅 女の子の場合(1女の子はおつかいにいく / 2小さい母になる女の子たち)

第3章 ポストモダン絵本に登場する見えない友だち(1見えない友だち ジョン・バーニンガムの場合 / 2見えない友だち アンソニー・ブラウンの場合)

第4章 小さい友だち ビアトリクス・ポター論 (1ビアトリクス・ポター その「観察眼」と「頭痛」 / 2『ピーターラビット』の得意な魅力 / 3絵本作家から農場主へ)

第5章 絵本サロン 絵本サロンを開きます / サロン1日め シャーリー・ヒューズ / サロン2日め マリー・ホール・エッツの描いた、男の子の冒険と女の子の冒険 / サロン3日め 「育てる者」と「育てられる者」の葛藤 『まどのそとのそのまたむこう』に描かれた命の神秘 / サロン4日め 進化する赤ずきんたち 

ポストモダン絵本はどう受け継がれているか

付録 灰島かり 論文リスト 灰島かり 著作リスト

あとがき 鈴木晶


絵本翻訳教室へようこそ

絵本翻訳教室へようこそ

  • 作者: 灰島 かり
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2005/05/01
  • メディア: 単行本



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『ペーパーボーイ 』(STAMP BOOKS) ヴィンス・ヴォーター著 岩波書店 [児童文学]


ペーパーボーイ (STAMP BOOKS)

ペーパーボーイ (STAMP BOOKS)

  • 作者: ヴィンス・ヴォーター
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/07/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


読者は、「深い穴」に葬られたハズの物語を読むことができる

夏のあいだ友人に代わって新聞配達をした吃音・発話障害をもつ白人少年のお話し。その間に起きた出来事、人との出会いを少年はタイプして残す。その残された記録が本書という設定になっている。

描かれるのは、1960年ころのアメリカ南部の生活。人種差別が現在よりはるかに色濃い時代で、「黒人は自分たちの問題は自分たちだけで片づけるし白人や白人の警察には頼らないんだ」という意識をもっている。

その言葉を口にしたのは、少年の家で共に暮らしているメイドのミス・ネリーだ。少年は「マーム(英語本文ではMam)」と彼女を呼ぶ。マームは、少年にとって「世界で一番の友だちだ」。

少年とマームの関わったふたりの間の秘密となった事件が、徐々に明らかにされていく。そして、最後はこう綴じられる。「そろそろタイプもおしまいにしようと思う。/ タイプした紙の束は新聞用の紐でしばって裏庭のテラスへもっていき『やばいソファ』の下のゆるんだレンガの下に埋めてしまおう。/地獄の番犬たちにかぎつけられないよう深い穴を掘らなきゃならない。口から出た言葉は言ったとたんに風に吹かれてどこかへ行ってしまうけれど紙の上の言葉はいつまでも残るのだから」。

読者は、「深い穴」に葬られたハズの物語を読むことができる。

2016年12月23日にレビュー

著者のホームページ
http://www.vincevawter.com/


Paperboy

Paperboy

  • 作者: Vince Vawter
  • 出版社/メーカー: Yearling
  • 発売日: 2014/12/23
  • メディア: ペーパーバック



ドライビング Miss デイジー [DVD]

ドライビング Miss デイジー [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: DVD


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『児童文学論 』 リリアン・H.スミス著 岩波現代文庫 [児童文学]


児童文学論 (岩波現代文庫)

児童文学論 (岩波現代文庫)

  • 作者: リリアン・H.スミス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 文庫



上記書籍を読み始めた。新刊として出たものだが、初版は1964年らしい。息の長い本である。息の長いということは「生命力」があるといってもいいだろう。すこし表現に古めかしさを感じもするが、読み続けられるだけの充実した内容を感じる。


児童文学論

児童文学論

  • 作者: リリアン H.スミス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1964/04/20
  • メディア: 単行本



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