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気象と気候とらえ方 きまぐれな大気の物理を読み解く マーク・デニー著 保坂直紀訳 丸善出版 [地学]


気象と気候のとらえ方 きまぐれな大気の物理を読み解く

気象と気候のとらえ方 きまぐれな大気の物理を読み解く

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


優秀なサイエンスライターが勧める優秀なサイエンスライターの本

優秀なサイエンスライターであり、本書の翻訳者でもある保坂直紀氏が〈「いま読みたかったのは、こういう気象学の本なのだ」。そうつぶやいてひざを打つ人も、おそらくたくさんいるはずだ。この本は、まさにそういう本だ〉と(『訳者まえがき』に)書いている。実際のところ、まさにそういう本だ。

保坂氏は、別なところで〈厳密さとわかりやすさは、ふつう、なかなか両立しない。そのどちらを優先するか。このとき、ためらわずに「わかりやすさ」を優先するのが、サイエンスライターなのだと思う〉と書いてもいるが、本書の著者(マーク・デニー)は、そうとう「厳密」な深いところまで突っ込んだ物理の話を数式を用いずに、しかも、くどくなることなく解説していく。そして、分かりやすい。優秀なサイエンスライターが勧める優秀なサイエンスライターの本だけのことはある。

「サイエンスライター」とはどんな仕事? その存在意義を書きます
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/44328?page=3

豆知識的に広く浅く外観する気象学関連本に飽き足らなく思ってきた方にとっては、まさに打ってつけの本に思う。ざっと通読(できたということ自体が本書の分かりやすさを示す凄いことだと思うが)しての感想は、「ああ、地球は太陽の熱で生かされているのだな・・」という感動だ。

講談社ブルーバックスなら4、5冊分くらいの(というのは、勘・カンで記しただけだが)内容が、1冊にまとめられている。気象と気候に関するニュースなど見聞きしたときに、索引をもちいつつ紐解きたい本でもある。

2018年10月20日にレビュー

謎解き・津波と波浪の物理 波長と水深のふしぎな関係 (ブルーバックス)

謎解き・津波と波浪の物理 波長と水深のふしぎな関係 (ブルーバックス)

  • 作者: 保坂 直紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: 新書



謎解き・海洋と大気の物理―地球規模でおきる「流れ」のしくみ (ブルーバックス)

謎解き・海洋と大気の物理―地球規模でおきる「流れ」のしくみ (ブルーバックス)

  • 作者: 保坂 直紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/07/19
  • メディア: 新書



Making Sense of Weather and Climate: The Science Behind the Forecasts (English Edition)

Making Sense of Weather and Climate: The Science Behind the Forecasts (English Edition)

  • 出版社/メーカー: Columbia University Press
  • 発売日: 2017/01/17
  • メディア: Kindle版



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『地層のきほん』 目代 邦康・笹岡美穂著 誠文堂新光社 [地学]




たいへん理解しやすく、見ていてたのしい

たいへん理解しやすい。見開き2ページで各単元が構成され、1ページは、パステルカラーのイラスト。見ていて楽しくなる。専門用語も出てくるが、かみ砕いた説明で負担に感じない。

ちなみに、『08 地球の中身』の説明は以下のようなもの。「地層は、地球上の表面にあります。地球の半径は約6、300km以上もあるため、表面といっても、相当の厚さを持ちます。地球の内部を化学的な性質で区分すると、一番外側の部分は地殻とよばれます。海洋では5km程度の厚さで、陸地では30km程度です。/ 地殻の厚い陸地でも、半径のたった200分の1の厚さしかありません。ちなみに、ニワトリの卵の半径は2~3cmで、その殻の厚さは約0.4mmです。地球がもしニワトリの卵程度の大きさだったら、地殻は卵の殻よりも薄いことになります。地層はこの地殻にあるのです。」

目次、章立ては以下のようになっている。

Chapter1:地層の見方・考え方/Chapter2:地球のしくみ/Chapter3:岩石の種類と地層の構造/Chapter4:化石と地質の時代/Chapter5:いろいろな地層/Chapter6:地層の利用/Chapter7:地層の調べ方

2018年6月20日にレビュー

関東のジオパーク(シリーズ 大地の公園) (シリーズ大地の公園)

関東のジオパーク(シリーズ 大地の公園) (シリーズ大地の公園)

  • 出版社/メーカー: 古今書院
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 単行本



地形探検図鑑: 大地のようすを調べよう (子供の科学★サイエンスブックス)

地形探検図鑑: 大地のようすを調べよう (子供の科学★サイエンスブックス)

  • 作者: 目代 邦康
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2011/09/20
  • メディア: 大型本



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『トコトンやさしい地質の本 (今日からモノ知りシリーズ)』日刊工業新聞社 [地学]


トコトンやさしい地質の本 (今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしい地質の本 (今日からモノ知りシリーズ)

  • 作者: 藤原 治
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2018/02/17
  • メディア: 単行本


「地“質”図」というものがあることを知った

自分の足元に広がる世界に興味がある。それで、手にした。

第1章の①は「地質ってなんだろう」。副題は「人類社会と密接にかかわるもの」。本文は〈私たちの足元にある大地は、様々な地層や岩石でできています。これらの性質・種類・状態のことを「地質」と呼びます。つまり、地質とは大地の性質という意味です〉と始まる。

8章65項目から成り、各項目は右ページに解説、左ページにイラストとなっている。章の構成は、「第1章 “地質”っていったいどんなもの?」、「 第2章 『見つかる化石』が地質を語る」、「第3章 地質がわかる地質図の秘密」、「第4章 地質を見れば自然災害がわかる」、「第5章 地質の中にはいろいろな資源が眠る」、「第6章 地質は社会の基盤となる重要なもの」、「 第7章 地質がつくる摩訶不思議な絶景」、「第8章 海洋にも地質図がある」となっていて、話題は広範である。よく160ページほどの中にこれだけ収めたものだと思う。

専門用語について、「~は・・・という意味です」「~は・・・と言います」など記しながら解説が進められる。ただ、漢字を見れば理解可能と思ってのことか「地向斜」など説明が加えられない場合がある。大型国語辞典に掲載はあるが、小型国語辞典には掲載のない言葉である。「地質」を定義づけるほどの『トコトンやさしい・・』本であれば、本文あるいは脚注などで説明を付して欲しいところ。

それでも、「地“形”図」ではなく、「地“質”図」というものがあることを知り、その利用をとおして化石発掘や安全な住居の選定に役立つ知識を得るなどできることを知った。また、気の遠くなるほどの時間感覚をもって、自他を見つめることもできるようにも思う。なにしろ相手は、地球である。

2018年5月8日にレビュー

NHKスペシャル 列島誕生 ジオ・ジャパン 激動の日本列島 誕生の物語

NHKスペシャル 列島誕生 ジオ・ジャパン 激動の日本列島 誕生の物語

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/08/12
  • メディア: 単行本


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『絵でわかる日本列島の地震・噴火・異常気象 (KS絵でわかるシリーズ)』 [地学]


絵でわかる日本列島の地震・噴火・異常気象 (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかる日本列島の地震・噴火・異常気象 (KS絵でわかるシリーズ)

  • 作者: 藤岡 達也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


読者に親切な本

本書の特徴は「絵」。多くの図版が用いられている。表紙に描かれている絵は本文中にも出ていて、それらには、パステルカラーの配色がなされ、生理的なインパクトさえおぼえる。紙面はクリーム色、太字見出しはグリーン、印字はブラック。たいへんおしゃれでもある。「絵でわかる」よう助けられもするが、説明自体たいへん理解しやすい。読者に親切なつくりの本である。

〈本書では、日本列島で発生する種々の自然現象について、「絵でわかる」シリーズの趣旨にのっとって、そのもとになる自然現象の特色や発生のメカニズムをわかりやすく紹介します。さらに、これまで人間は自然に対してどのような働きかけや取り組みを重ね、その結果、どのように返ってきたり、次の時代に引き継がれたかなども紹介します。 / 本書によって、読者の皆様が、自分たちの住む日本列島に興味が高まり、身近な地域で発生する自然災害についての理解が深まることの一助になることを期待しています。また、防災・減災への備えを一層意識することができましたら、著者にとって、これ以上の願いはありません。さらに、国際的に、持続可能な発展が求められる今日、自然と人間との関わり、人間と人間(社会)とのつながりを考えるきっかけになってもらえれば幸いです。(「はじめに」から)〉

第1章 自然災害とは何か
1-1 自然現象と自然災害 1-2 自然災害の種類 1-3 自然と人間との関わり

第2章 日本列島の地下に潜む巨大なエネルギー
2-1 地震大国日本 2-2 動き続ける日本列島 2-3 日本海側に生じた地震・津波 2-4 太平洋側を周期的に襲う大津波 2-5 火山噴火が作った列島の歴史 

第3章 気象に関する自然災害ーー豪雨・豪雪・台風etc
3-1 水害の原因となる日本列島の降水量 3-2 台風の発生と地球温暖化の影響 3-3 豪雪地帯が広がる日本列島 3-4 河川の氾濫と溢水 3-5 気象に関する様々な自然災害 3-6 地球温暖化と気象災害の影響 3-7 土砂災害

第4章 自然災害の発生と人間社会への影響
4-1 福島第一原子力発電所 4-2 地震の後に発生する大火災 4-3 歴史を変えた自然災害

第5章 自然災害の歴史性、国際性
5-1 日本における自然災害の歴史 5-2 国連防災世界会議と日本の役割

おわりに 索引

2018年4月26日にレビュー  

絵でわかるプレートテクトニクス 地球進化の謎に挑む (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかるプレートテクトニクス 地球進化の謎に挑む (KS絵でわかるシリーズ)

  • 作者: 是永 淳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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『関東のジオパーク』(シリーズ 大地の公園) 古今書院 [地学]


関東のジオパーク(シリーズ 大地の公園) (シリーズ大地の公園)

関東のジオパーク(シリーズ 大地の公園) (シリーズ大地の公園)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 古今書院
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 単行本


名所風景だけでなく地面も地面の下も含めた観光ガイドブック

ウェブサイト『日本ジオパークネットワーク』の説明には次のように記されている。ジオパークとは《 「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」とを組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味し、地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所をいいます。/ 大地(ジオ)の上に広がる、動植物や生態系(エコ)の中で、私たち人(ヒト)は生活し、文化や産業などを築き、歴史を育んでいます。ジオパークでは、これらの「ジオ」「エコ」「ヒト」の3つの要素のつながりを楽しく知ることができます。/ 例えば、山や川をよく見て、その成り立ちと仕組みに気づくと、今まで何とも思わなかった景色が変わって見えてきます。またその景色が、何千万年、何億年という途方もない年月をかけてつくられてきたことを知れば、私たち人の暮らしは地球活動なしには存在しえないことも分かります》。

「ジオパーク」には、Geo的要素だけでなく、観光の対象となりうる種々の要素が含まれる。それゆえ、本書も『関東(中部)地方の概説』として「地形」「地質」だけでなく、「気候」「植生」「歴史・文化」に分けて解説がなされている。取り扱われるのは関東地方の『伊豆大島ジオパーク』『茨城県北ジオパーク』『下仁田ジオパーク』『ジオパーク秩父』『銚子ジオパーク』『箱根ジオパーク』、中部地方の『伊豆半島ジオパーク』『苗場ジオパーク』である。写真・挿絵が豊富で見ていてたのしい。本書は名所風景だけでなく、地面も地面の下も含めた観光ガイドブックである。

《各章は、月刊「地理」(古今書院)に連載された「ジオパークを歩く」の記事に加筆されたものと、新たに書き下ろしたもの》であるという。そのせいか、地理・地質学的用語が多数でてくるが、その解説がほとんどない。ある程度「素養」のある人を読者対象としているということなのだろう。

たとえば、秩父の長瀞に関する解説は以下のようなものである。《長瀞の岩畳は、結晶片岩からできている。この岩石は、秩父帯や四万十帯の岩石などが白亜紀末に地下深部へもぐり込み、高圧下で変成したものである。この結晶片岩が、その後隆起して地表へ顔を出し、現在の岩畳となっている。長瀞で観察される岩石は、こうした地下の様子をうかがい知ることができるものである。地球内部を覗けることに例えて、長瀞を“地球の窓”と呼ぶ人もいる》。

実際のところ、地学的解説を加えていったなら、とても本書のサイズにはおさめることはできず、ガイドブックとして持参するなどまったく不可となるにちがいない。そして、仮に「素養」がないとしても、それなりに見て読んでたのしむことのできる書籍である。

2016年11月30日にレビュー

http://www.kokon.co.jp/monthly/


地理増刊 地理×女子=新しいまちあるき 2016年 03月号

地理増刊 地理×女子=新しいまちあるき 2016年 03月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 古今書院
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 雑誌



北海道・東北のジオパーク (シリーズ大地の公園)

北海道・東北のジオパーク (シリーズ大地の公園)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 古今書院
  • 発売日: 2015/11/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史』山賀 進著 ベレ出版 [地学]


科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

  • 作者: 山賀 進
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 単行本


世界にもまれな日本の立地を知るうえで、また、日本で発生する地震・災害の「癖」を知るうえで、たいへん有用

著者は麻布中学・高等学校で、40年以上「理科・地学」を教えてきた。「物理や化学みたいな分析的・個別還元主義的な自然の見方以外に、まず総合的・全体的に対象を捉える方法もあるということを伝えるのを目標に」してきたという。本書中、プレートテクトニクスなど「科学」的で難しそうな内容も含まれているが、全体にわかりやすいのは、多分に著者の経歴が関係しているのだろう。

本書について「年表形式で歴史の流れがつかみやすい」とあるのを見て、事実だけを記述した無味乾燥な印象を当初もったが、そうではない。個々の事例を取り上げつつ、興味深い話題が取り上げられる。それゆえに、読み物として楽しむことができる。たとえば、『864年~66年 富士山噴火(貞観の噴火) 富士山最大の噴火記録』では、富士山の北側にあった「せの海」が溶岩流でふさがれて、「かろうじて残ったのが西湖と精進湖」であること。『1586年 畿内・東海・東山・北陸諸道で地震 (天正地震)』に関しては《この地震は謎の多い地震で、また「帰雲城」(かえりくもじょう、きうんじょう)伝説を生んだ地震」と紹介され、「埋蔵金」の話と発見した場合の権利関係について触れられている。また、日米戦争開戦前日に起きた『1944年 南海トラフ東部で巨大地震(東南海地震)M7.9』では、《・・政府・軍が厳しく報道を規制したために、正確な情報は報道されませんでした。しかし、これだけの大地震なので、世界中の地震計で記録され、ただちに日本の中央部で大地震が起きたということは知られてしまっていたのです。また、すでに制空権を握っていたアメリカ軍の偵察で、被害の状況もほぼ正確に把握されていました。つまり、知らないのは日本の一般市民のみということになっていたのです》という記述もある。そのような例を取り上げていくとキリがない。

『第0章 地震と火山が多い日本の基礎知識』(1.プレートテクトニクスと日本/ 2.日本の地震の特徴/ 3.海溝で発生する津波/ 4.日本の火山の特徴/ 5.破局噴火 超巨大噴火/ 6.地震と火山は恩恵ももたらしている)と『参考』(1 断層の種類と断層をつくる力/ 2.火成岩の分類とマグマの分化)では、地震・津波・火山の科学的解説がなされ、第1~第5章ではそれぞれの時代区分のなかで発生した個々の地震・災害について示される。すでに、記したように、その解説に際して、興味深い話題が取り上げられるのはもちろんのこと、第0章、『参考』で取り上げられた地震のメカニズムについて繰りかえし説かれるので理解が増す。その際、仮説は仮説として示されていく。

日本の地震・災害が多い理由として、《日本は4つのプレートがひしめき合っているところに位置していて、3つのプレートが一点で接している場所(三重点、トリプルジャンクション)が、2ヵ所もあるという大変な場所なのです》とある。ジャンクションと聞くと、道路事情を思い浮かべるが、「ダブル・トリプル・ジャンクション」(という言葉は本書中に示されていないが)では、いかにも交通事故が起きそうである。世界にもまれな日本の立地を知るうえで、また、日本で発生する地震・災害の「癖」を知るうえで、本書はたいへん有用に思う。

2016年9月23日にレビュー

日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

  • 作者: 大平悠麻
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2022/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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「ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦」縣 秀彦著 緑書房 [地学]


ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦

ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦

  • 出版社/メーカー: 緑書房
  • 発売日: 2023/04/18
  • メディア: 単行本



本書の成立については、著者(縣 秀彦氏)による感動的な序文に次のようにある。〈本書は国立天文台が編纂している『理科年表』(丸善出版)の天文部「天文学上のおもな発明発見と重要事項」を読んだ際に、その年表の各項目内容を天文学に興味を持った初心者の若者たちに伝えられたらという思いからはじまりました。本書で選び抜いた101の重要項目は時代順に並んでいますが、それぞれ独立しているので事典のように気になる項目を読んでいただいても良いですし、最初から通して読まれても読み物として楽しめることでしょう。そして、101の次に続く新たな項目を皆さん自身が参加して書き足していけたら、なんて素敵なことでしょう。天文学は「みんなの科学」“Astronomy for all” なのですから〉。

見開き2ページに1項目で時系列にそって取り扱われていく。内容は決してやさしくはない。「天文学に興味を持った初心者の若者たちに」ということだが、少なくとも評者(むかしの天文少年)にとっては難しい印象だ。1項目につき2倍くらい加筆してほしく思う。

ある程度天文学的知識のベースのある読者であれば通読が可能であろうが、そうでないと躓くことになるように思う。躓きを回避するために、読者各自は必要に応じ別な参考書が必要になるのではなかろうか。決して読者への配慮がなされていないわけではなく、「~とは~です」という理解を助ける表記はあるのだが、それで分かるかといえば必ずしも分かるものばかりではない。

天文学的語彙は、それを初めて見る読者にとってはひとつの発見であり、未知の用語自体が興味を呼び起こすものとなるにちがいないが、限られたページ数では消化不良を起こす。その分を、百科事典等にあたって読み進めることこそ、ある意味本当の勉強で、知識を身に着けるためのいい修行になるとは思うが、不親切といえば不親切である。

とはいえ、天文学への興味を呼び起こされる本であるのはまちがいないので、分からないものは分からないままに分かるようになるまで待つ楽しみのある本といえるようにも思う。

以下『日食のサロス周期(p16,17)』より引用。〈遅くともBC600年頃までにはバビロニアでは、ある日食が起こってからおよそ18年と11日後に別の場所で同じような条件の日食が起こることが知られていました。この周期をサロス周期と呼んでいます。サロス周期をもとに作られた古代バビロニアの粘土板が見つかっています。この粘土板には横に38の日付、縦に223朔望月離れた日付が並んでいます。このようにサロス周期は古代バビロニアのカルデア人によって知られていたので、カルデア周期と呼ばれることもあります「古代バビロニアとサロス」〉。このあと、「サロス周期が生じる理由」と題して、その日数の計算の仕方が図版とともに示されている。

理科年表 2023(机上版)

理科年表 2023(机上版)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2022/11/24
  • メディア: 単行本



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「日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業」大平悠麻著 総合科学出版 [地学]


日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

  • 作者: 大平悠麻
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2022/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ほんとうに「ヤバい!」ことが書いてある。実際のところは「授業」スタイルをとっているので、「書いて」ではなく、話される。対象は高校生で、どちらかといえば、出来のあまりよくない生徒を対象にしたかの内容である。ゆえに、たいへん分かりやすい。ふだんどれほど授業に注意をひき、眠らせないよう苦労しているか、著者の(教諭としての)奮闘ぶりが伝わってくる。

日本は災害大国である。地震、津波、火山、台風など日常茶飯の類である。震度3くらいで大騒ぎするナという感じである。とはいえ、「国ガチャ」で、そういう国に生まれ合わせて長年生きてきたオッさん(アラ還の評者)でも、「そいつは知らなんだ!」ということが話される。災害時には、そういう可能性も想定しておかなければならないと覚悟させられる。ホンマ命にかかわる内容だ。

それにしても「地学」はスケールがデカい。本書で取り扱われていないのは「天文」分野だが、それでも「気象」編でオーロラが登場する。マントルオーバーターンで地磁気(磁力)が生まれたところから話は始まり、1859年に起きた太陽フレアの大爆発の話がでる。

1859年の太陽嵐
https://ja.wikipedia.org/wiki/1859%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%B5%90

「特別補講」として扱われる「地球温暖化」のストーリーも凄まじい。補講にも著者は手を抜かない。メタンハイドレートのメタンが空中に出て温暖化が加速し・・、約2000年かけて世界中を循環している海の水の「海洋大循環」が、やがてストップして・・

著者は「当事者として」考えるよう読者に促している。と同時に考えうる実際的な解決策を示してもいる。読者としては、他人事としていられない。地球人としての責任を問われている。そういう意味も含めて「 ヤバい!」話が盛りだくさんである。

基本的なことから知識が積み上げられていくので、これまで地学の好きでなかった方も、好きになること必定であるように思う。

(「つづく」部分に「目次」を掲載)


おもしろい石と人の物語

おもしろい石と人の物語

  • 作者: 大平悠麻
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

  • 作者: 進, 山賀
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 単行本


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