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「ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦」縣 秀彦著 緑書房 [地学]


ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦

ビジュアル天文学史 : 古代から現代まで101の発明発見と挑戦

  • 出版社/メーカー: 緑書房
  • 発売日: 2023/04/18
  • メディア: 単行本



本書の成立については、著者(縣 秀彦氏)による感動的な序文に次のようにある。〈本書は国立天文台が編纂している『理科年表』(丸善出版)の天文部「天文学上のおもな発明発見と重要事項」を読んだ際に、その年表の各項目内容を天文学に興味を持った初心者の若者たちに伝えられたらという思いからはじまりました。本書で選び抜いた101の重要項目は時代順に並んでいますが、それぞれ独立しているので事典のように気になる項目を読んでいただいても良いですし、最初から通して読まれても読み物として楽しめることでしょう。そして、101の次に続く新たな項目を皆さん自身が参加して書き足していけたら、なんて素敵なことでしょう。天文学は「みんなの科学」“Astronomy for all” なのですから〉。

見開き2ページに1項目で時系列にそって取り扱われていく。内容は決してやさしくはない。「天文学に興味を持った初心者の若者たちに」ということだが、少なくとも評者(むかしの天文少年)にとっては難しい印象だ。1項目につき2倍くらい加筆してほしく思う。

ある程度天文学的知識のベースのある読者であれば通読が可能であろうが、そうでないと躓くことになるように思う。躓きを回避するために、読者各自は必要に応じ別な参考書が必要になるのではなかろうか。決して読者への配慮がなされていないわけではなく、「~とは~です」という理解を助ける表記はあるのだが、それで分かるかといえば必ずしも分かるものばかりではない。

天文学的語彙は、それを初めて見る読者にとってはひとつの発見であり、未知の用語自体が興味を呼び起こすものとなるにちがいないが、限られたページ数では消化不良を起こす。その分を、百科事典等にあたって読み進めることこそ、ある意味本当の勉強で、知識を身に着けるためのいい修行になるとは思うが、不親切といえば不親切である。

とはいえ、天文学への興味を呼び起こされる本であるのはまちがいないので、分からないものは分からないままに分かるようになるまで待つ楽しみのある本といえるようにも思う。

以下『日食のサロス周期(p16,17)』より引用。〈遅くともBC600年頃までにはバビロニアでは、ある日食が起こってからおよそ18年と11日後に別の場所で同じような条件の日食が起こることが知られていました。この周期をサロス周期と呼んでいます。サロス周期をもとに作られた古代バビロニアの粘土板が見つかっています。この粘土板には横に38の日付、縦に223朔望月離れた日付が並んでいます。このようにサロス周期は古代バビロニアのカルデア人によって知られていたので、カルデア周期と呼ばれることもあります「古代バビロニアとサロス」〉。このあと、「サロス周期が生じる理由」と題して、その日数の計算の仕方が図版とともに示されている。

理科年表 2023(机上版)

理科年表 2023(机上版)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2022/11/24
  • メディア: 単行本



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