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『海の寄生・共生生物図鑑: 海を支える小さなモンスター』 星野 修 写真・著 築地書館 [生物学]


海の寄生・共生生物図鑑: 海を支える小さなモンスター

海の寄生・共生生物図鑑: 海を支える小さなモンスター

  • 作者: 星野 修
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: 単行本


身近な海で『寄り添って生活する生物たち』の写真集

「東京湾のすぐ先にある伊豆大島の身近な海にいる」生物たちの、寄生・共生関係をとらえた写真集。ハードカバーのしっかりした表紙。その間にちょっと薄手の50枚強の絵(写真)葉書が挿入されたかのような造本。1枚づつ外して切手を貼れば、ポストに投函できそうだ。

『特殊撮影! 甲虫の世界』(科学雑誌『ニュートン』別冊)の、「深度合成」技術による、被写体全面にピント・ドンピシャの写真を見たせいもあってか、本書掲載写真をパッと見・・、「ピントが甘いな」と感じた。しかし、それもそのはず。本書で紹介される生物たち(つまり被写体)の大きさはほとんどが10ミリ以下で、宿主4mm、寄生生物1.5mmの寄生関係を撮影する際、両者を写しこむのに可能な被写界深度(ピントが合う範囲・深さ)は0・2mm以下になるという。0.2mmの間に、両者の表情を捉えることが求められているということだ。撮影の苦労話も出ているが、事情がわかると、「よくぞ撮られました」と感心する。

たいへん生き生きとした写真で、撮影者(星野)の名前のついた『ホシノノカンザシ』に寄生されたハゼなど見ていると、カラダ中がむずむずしてくる。その点、「深度合成」写真の甲虫のグロテスクな姿を見ても、ドウってことなかったのは、ソレらが、文字どおりに「生きている」甲虫の写真ではないからであろう。

撮影者によると、寄生・共生の区別を厳密にするのは、実のところ「相当に厳しい」そうである。「そこで、最近は、生物がともに寄り添っている現象をまず『共生』と呼ぶことにし、『寄生』はそのなかの特殊な例と考えられるようになってきた」という。「しかし、フィールドにおいては・・・」と撮影者は自分の撮影スタンスを示す。「生物間の関係を寄生や共生といった先入観を持たずに観察することが大切である。目の前の小さな生物たちが多様な生活を送っていることを素直に観察することが重要で、このことが次の観察と理解に繋がる。私は、今後も伊豆大島で、『寄り添って生活する生物たち』をしっかり観察していきたいと思っている」とある。

共著者:斎藤暢宏氏、編著者:長澤和也氏の役割は、「星野さんが撮影時の状況について執筆し、これを著者らが繰り返して読んで検討し、海洋生物の分類や生態に関する記述を整えた。また、次項に示した海洋生物の専門家に、それぞれの分野に関する原稿を読んでいただいて・・・(その)コメントに基づいて、必要な修正を行った」とある。

そうして、ちいさいが立派な本ができあがった。

2016年9月6日にレビュー

特殊撮影! 甲虫の世界 (ニュートン別冊)

特殊撮影! 甲虫の世界 (ニュートン別冊)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: ムック



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