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「世界で勝てない日本企業 壊れた同盟」カルロス・ゴーン著 幻冬舎 [外交・国際関係]


世界で勝てない日本企業 壊れた同盟

世界で勝てない日本企業 壊れた同盟

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/12/08
  • メディア: 単行本



カルロス・ゴーン逮捕劇。本書は、ゴーン・サイド・ストーリーである。日産、検察サイドにもストーリーがあって、どちらのストーリーに説得力があるかということが最終的には「正義」を裏付けるものとなるのだろうが、真実は今のところ「藪の中」である。とはいえ、自らの体験に根ざしたゴーン・サイド・ストーリーにはそれなりのチカラがある。日本の企業(体質)、日本の司法への告発本、比較文化論と考えることもできる。

Horie Takafumi spoke to Carlos Ghosn in Lebanon (2020/3/6)
https://www.youtube.com/watch?v=L8Y8FyJrgvI&t=1228s

【ひろゆき】日本政府が隠蔽している彼らが逮捕された本当の理由。ホリエモンとカルロス・ゴーンが潰された瞬間に日本衰退が確定しました
https://www.youtube.com/watch?v=j4I_BYh7JSw


なぜ、いま代用監獄か―えん罪から裁判員制度まで (岩波ブックレット)

なぜ、いま代用監獄か―えん罪から裁判員制度まで (岩波ブックレット)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/02/03
  • メディア: 単行本



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物流の世界史――グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?(ダイヤモンド社) [外交・国際関係]


物流の世界史――グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?

物流の世界史――グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2022/02/16
  • メディア: Kindle版



『物流の世界史』とあるので、紀元前からずっとモノの流れを追って、運送運輸業の事始めなど記されている本かと思ったが、どちらかというと副題の「グローバル化」の方に重点がある。

内容としては、貿易のこと、陸路より海路の方がコストがかからなかったこと、海運貿易を妨げる要素として積み荷の量の限界、輸送仲介業者、税金(関税)、天候等があったこと。そして、貿易の「グローバル化を可能にするには外洋汽船、電信ケーブル、そして国際貿易に関する発想の大転換という三つのイノベーションが必要だった(こと)、そのいずれもが、予想もしなかった資本主義の台頭によって実現した」こと。グローバル化への道を開いた思想家デヴィッド・リカードの「比較優位理論」のこと、などなど記されていく。

著者はグローバル化を「第一」「第二」「第三」と分けてそれぞれについて論じるが、『はじめに』、次のように記している。〈本書が扱うのは、1980年代後半から2010年代初頭にかけての四半世紀における「第三のグローバル化」である。さらに輸送・通信・情報技術が、長距離バリューチェーンに基づく企業活動にどんな役割を果たしたかにも注目したい。こうした国際経済の形はそれまで存在したいかなる経済の形とも根本的に異なっていた〉。

原題は“Outside The Box”で、“The Box「箱」”とはコンテナ船のこと。コンテナ船はグローバル化の象徴とされている。本書冒頭に取りあげられるのは全長397.71 mの巨大コンテナ船:エマ・マークス号の2006年の進水式の様子である。著者には前著『コンテナ物語ー世界を変えたのは「箱」の発明だった(日経BP)』があるので、本書はその続巻になるのだろう。本書全体を覆うのは、モノをより多く運ぶ目的で造られた巨大コンテナ船に対する目論見が外れたことである。

最終章、最終末段落は次のようなものだ。〈エマ・マークス号は未知の海に船出したわけではない。何十年もかけて構築されてきた貿易や対外投資に関するルール、金融規制といった国際的な枠組みに導かれての船出だった。だが、こうした枠組みがグローバル化の暴走をもたらしたことも間違いない。2010年代、各国の指導者たちは国内の政治的利害に動かされて、この枠組みを支える重要な柱をあっさり引き抜いてしまった。それを何で置き換えるのか、さしたる考えもないままに・・・。本書が示唆するように、より緩やかなグローバル化というものが存在するとしても、やはり枠組みは必要である。そうした新しい枠組みを構築することは、かこの枠組みを捨て去ることよりはるかに難しいだろう〉。

では、副題にある〔グローバル化の主役は、どのように「モノ」から「情報」になったのか?〕の著者の回答はいかなるものか。「20章 次に来る波(サービス産業は世界競争へ)」には次のようにある。〈グローバル化は終わったのだろうか。決してそうではない。むしろ新しい段階に入ったのだ。工場生産や対外投資におけるグローバル化は後退しているが、サービスやアイデアの流通という点では急速に進化している。第三のグローバル化のビジョンとは、先進国の大企業で働くエンジニアやデザイナーが製品を考案し、低賃金の地域でこれを製造し、世界中で販売するというものだった。第四のグローバル化では、研究開発やエンジニアリング、デザインがグローバル化される。具体的に言えば、・・後略・・〉

戦後、グローバル化の波にあえぐ日本、韓国、中国のあり様も描かれている。それが物流の歴史のなかで、どのように位置づけられているか知ることのできる点でも興味深い本である。



コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2019/10/24
  • メディア: Kindle版



例外時代

例外時代

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本


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「世界から消えゆく場所」 日経ナショナルジオグラフィック社 [外交・国際関係]


世界から消えゆく場所 万里の長城からグレート・バリア・リーフまで

世界から消えゆく場所 万里の長城からグレート・バリア・リーフまで

  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2020/02/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


知らないうちに、消えていく

知らないうちに、いつの間にか、こんなにも増えていたのだと驚いたものに原子力発電所がある。本書に示されたのは、その逆である。知らないうちに、いつの間にか、消え去ろうとする場所、地域、自然・・・が、同じく住まいするこの地球上にアルという事実だ。

本書は、「古代の都市」「忘れ去られた土地」「縮みゆく場所」「消滅寸前の場所」という4つにカテゴリー分けされ、37の都市、土地、場所が示されている。記事の長さはまちまちで、単に知識情報の提供にとどまるようなものから、ストーリー性に富む比較的ながい記事もある。ナショナルジオグラフィックらしい写真・地図が多数掲載されてもいる。

いずれにしろ評者の知るのは、そのうちのほんのわずかで、モヘンジョ・ダロ、アレクサンドリア、ドナウ川、死海、ベネチア、グレート・バリア・リーフ、万里の長城、ツバルといったところだ。それ以外は、仮に消え去っても、もとより知識が無いので、まったく知らず終わったはずだ。表現を変えれば、消えても消えなくてもどうということなく過ごしていたことになる。しかし、それで本当にイイのだろうか?自分の居住する地球上で生じていることなのである。

日本に関しては「エサンベ鼻北小島」が立項されている。「2018年、あるライターが取材で訪れたところ、島は跡形もなく消え去っていた」とリード部に記され、比較的最近の情報がでている。ツバルに関しては、「2018年、オークランド大学の研究チーム」の論文にある「ツバルの環礁は縮小するどころか、全体的に陸地を獲得しつつあると発表」と記されてもいる。

個々の記事を読み、写真を見つつ、宇宙船地球号の将来を真剣に考えさせられた。

2020年3月25日にレビュー

古代史マップ 世界を変えた帝国と文明の興亡 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)

古代史マップ 世界を変えた帝国と文明の興亡 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)

  • 出版社/メーカー: 日経ナショナル ジオグラフィック社
  • 発売日: 2019/02/05
  • メディア: Kindle版



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米中激突 恐慌-板挟みで絞め殺される日本 副島隆彦著 祥伝社 [外交・国際関係]


米中激突 恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

米中激突 恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

  • 作者: 副島隆彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2019/11/01
  • メディア: 単行本


たいへんオモシロイ。著者にあやかりたい

ここまではっきりと未来を予測し断じることが(しかも、書籍という形で公表)できるというのはスゴイことだと思います。ハズレればなんやかんや言われるのは目に見えています。それにも関わらず断固と言明できるのは、それだけの根拠があるからであるにちがいありません。読んでみて、論理的破綻や我田引水的論議は感じられません。尊大さを感じる記述もありますが、それは自分を過小評価してきた多勢の前で、しっかり踏みとどまるための方策であり、そうせざるをえない事情があるのでしょう。一読者としては、著者の論議(とその自信)の根拠をさらに確認してみたい気持ちになるのみでした。国際関係のなかでの日本の立ち位置や歴史的なことなど、評者の知らないことも多く勉強になりました。たしか、著者は、ソ連崩壊を予言した故・小室直樹先生の弟子筋になるのではなかったでしょうか。UNを「国連」と訳すのはマチガイであると繰り返すところにソレを感じました。将来を完全に予言できるのは、聖書の神様のような超人間的存在のみでしょう。人間にできようはずがありません。それでも、世界を見渡し見通す目をもち、現在から将来を予測・推測・憶測することは可能です。読者は、そうした目をもつよう助けてくれます。それによって、来るべき将来を覚悟して迎える(迎え撃つ)こともできます。評者は、一個人として、著者にあやかりたく思いました。

2020年3月5日にレビュー

小室直樹の世界―社会科学の復興をめざして

小室直樹の世界―社会科学の復興をめざして

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 単行本



評伝 小室直樹(下):現実はやがて私に追いつくであろう

評伝 小室直樹(下):現実はやがて私に追いつくであろう

  • 作者: 村上篤直
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2018/09/18
  • メディア: 単行本



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自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)  石井 暁著 [外交・国際関係]


自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)

  • 作者: 石井 暁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/17
  • メディア: 新書


「闇組織」に消されないために出版・・

副題や帯にある文言から旧・帝国陸軍中野学校をイメージした。スパイ活動をしていた組織である。その「遺伝子」を「引き継」いだ「闇組織」が、自衛隊の中にあってもおかしくはなかろうと思いつつ、本書を手にした。

「別班」というのが、その「闇組織」の名前で、「自衛隊の組織図にも載っていない秘密情報部隊」であるという。著者は、文民統制との関係で、そのような「闇組織」の存在はオカシイと感じ、「闇組織」に関わる人々にアクセスし、事実上存在することを確かめ、そのことを共同通信社から新聞各社に配信する。それは、国会で論議されることにつながった。著者は、いわば、「闇」の組織を明るみに引き出したわけだ。

本書は、もっぱら、その取材過程の苦労話といっていい。虎の尾を踏むような取材がなされたことは分かる。興味深い内容であることも認める。しかし、不偏不党のジャーナリスティックな記述ではない。インタビューのウラを取れているのか、証言者自身が真実を話しているのかどうかの疑問も残る。(そもそも、特定の人物から「証言」を引き出すのが精一杯で、そのウラを取るのは難しかろうと思いもするが・・)。

どうも、本書出版の最大の目的は、著者が「闇」に消されないため、自己保身のため、であるらしい。『おわりに』に次のようにある。〈先日、元別班員の一人から、/「市ヶ谷の別班の本部には、あなたの顔写真と経歴が貼ってあり、『要注意』と書かれている」/と聞き、驚くと同時にあらためて権力監視への闘志をかき立てられたばかりだ。/一方、相手が国家権力それも武力組織だけに正直、恐怖を感じることも度々ある。ある時、キーパーソンに「本当に私にガードをつけてくれたのですか」と聞いてみたが、彼はニヤリと笑っただけだった。自分自身を守る手段は全て尽くしたい。本書を出版して頂きたいと考えたのも、その手段の一つだ。これまでの取材過程をできる範囲で明らかにすることで、恐ろしい実力組織である別班を少しでも牽制することができれば、と思っている。〉

2019年3月14日にレビュー

陸軍中野学校 [DVD]

陸軍中野学校 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/06/28
  • メディア: DVD


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「地図で見るフランスハンドブック 現代編」 ジャック・レヴィ編 原書房 [外交・国際関係]


地図で見るフランスハンドブック 現代編

地図で見るフランスハンドブック 現代編

  • 作者: ジャック・レヴィ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2019/01/28
  • メディア: 単行本


見る人が見れば、本書はたいへんオモシロイ本なのではないかと

原書房の「地図で見る・・」シリーズで、これまでアラブ世界に関するもの、東南アジアに関するものを読んだが、本書に関してはもてあましている。先に読んだ2冊は、取り扱い地域がひろく、マクロ的俯瞰的観点からのものであったが、本書はフランス一国である。しかも、著者がフランス人であることからか、微に入り細に入りという感じなのだ。評者は、フランスのごく一般的な知識も現代史も知らない。昨今のことについても無知である。そこにきて、突如、情報の洪水が押し寄せたという印象なのである。

だが、しかし、逆をいえば、ある程度の知識をもつ方が、フランス国内の種々の問題を知るうえではたいへん役立つのではないかと思う。よく分からないながらも、ひとつだけ評者が言えることは、日本と同じく、国全体が「一枚岩」であるなどということはないということだ。本書では、その政治的文化的に一枚岩でないところ、言わば地質の分布、ちらばりを、特殊な地図:統計地図(カルトグラム)で示して興味深い。EUの主要メンバー国であるフランスの現況を知ることは、フランス一国のみならず、EUの将来も展望できることになる。そういう点で、見る人が見れば、本書はたいへんオモシロイ本なのではないかと思う。

本書「はじめに」から、本書の特徴について述べたところを抜粋すると、以下のとおりである。

「本書は、まず、今日のフランス政治空間を、その20年の歴史とともに視野に入れている。それから選挙の得票分布図をほかの国と比較できるようにしたが、互いの類似は驚くほどで、熟慮をうながすものである。 なかんずく、本書では、別個に研究されることが多く、めったに総合されることのない政治的、社会学的、経済的、文化的なさまざまな実態のあいだの密接なつながりを考慮した。このアプローチが立脚しているのは、投票のさい市民によってなされた選択の、地域による差異を理解するためには、どこで生産されたものがどこで消費されているか、どこで提供されたものがどこで受領されるか、どこで新しい習慣が作り出されどこで伝統が維持されているかを知ることもむだではないという仮説である。政治は大小の行為者たちの決断によってなされるが、その決断の前後には、つねに社会的問題があるからだ。/ この政治シーンと社会との対話が読みとれるようにしようと、本書では新しい地図作製術を採用した。従来の地図にくわえて、それとは異なる特徴をもつ統計地図(カルトグラム)のおかげで、地図上に人の住まない、あるいはほとんど住まない視覚上の制約をのがれ、住民とその居場所を回復させることが可能となった。・・中略・・ ここで読者に提示されるのは、ステレオタイプと違う、近年に起こっていまだ進行中の、変異の深い刻印を受けた、もうひとつのフランスの肖像である。」

2019年2月24日にレビュー

地図で見るアラブ世界ハンドブック

地図で見るアラブ世界ハンドブック

  • 作者: マテュー ギデール
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2016/11/28
  • メディア: 単行本



地図で見る東南アジアハンドブック

地図で見る東南アジアハンドブック

  • 作者: ユーグ・テルトレ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/11/27
  • メディア: 単行本



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THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語 ナディア・ムラド著 東洋館出版社 [外交・国際関係]


THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

  • 作者: ナディア・ムラド
  • 出版社/メーカー: 東洋館出版社
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: 単行本


超1級のノンフィクション

マイノリティー・弱者に対する不当な扱い、差別、権威の乱用は、古来ある。著者は、その直接体験者である。しかも、その不当さは甚だしい。自分と異なる宗教であるというだけで、モノとして扱われ、売買され、所有物として監禁され、また他に譲り渡された。「性奴隷」としてである。

本書で、ISISのイスラム教がニセモノであることが明らかにされる。イスラムの教義と称しながら、自分の都合のいい解釈のもと、犯罪を実行して止まない。それには大量殺人も含まれる。著者は、それを告発し糾弾する。そして、その矛先は、それを見聞きしながら平然とふつうに暮らす者たちにも向けられる。その中には、イラクから遠くにあるものの、ニュースを見聞きした日本人読者の多くも入るにちがいない。評者も例外ではない。

本書・副題に「私を最後にするために」とあるが、今でも、その不当さの大小にかかわらず、マイノリティー・弱者に対する不当な扱いは続いている。その小さなもの微小なものも含めるなら、「私」も現に差別され不当な扱いを受けているにちがいない。人間のかざす権威とは、ただそこにあるだけで、時に暴力的で不当なものになるものである。著者と異なるのは、「私」は声をあげていない、「私」は告発し糾弾していないというそのことだけかもしれない。

本書をとおし、若い女性の立場から見たイラク戦争後のイラク内部の情勢、そこでの出来事、ISISの犯罪を知ることができる。そして、それだけでなく、家族への愛情と豊かな感性をもった著者の語りは、昭和のむかしの大家族の姿や地域社会を髣髴とさせる。それを知る方なら、外国のことでありながら懐かしい思いをされるにちがいない。その思いが強ければ強いほど、心動かされるにちがいない。翻訳も読みやすい。

2019年1月24日にレビュー

説教したがる男たち

説教したがる男たち

  • 作者: レベッカ ソルニット
  • 出版社/メーカー: 左右社
  • 発売日: 2018/09/07
  • メディア: 単行本


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地図で見る東南アジアハンドブック ユーグ・テルトレ著 原書房 [外交・国際関係]


地図で見る東南アジアハンドブック

地図で見る東南アジアハンドブック

  • 作者: ユーグ・テルトレ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/11/27
  • メディア: 単行本


何も知らないことを自覚させられた

フランス人著者による原書房の「地図で見る・・ハンドブック」シリーズの一冊。多色刷りイラストを多用し、読むことと併せて視覚的に分かるよう配慮がなされている。

日本と同じくアジアの一角を占める「東南アジア」、(あくまでも評者を基準にしての話だが)、本書をとおし多くの啓発を得た。「東南アジア」について何も知らないことを自覚させられた。

記されている内容は、いわゆる地政学的内容と言っていいのだろう。旅行・観光ガイドのような本ではない。タイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオスといった大陸にある国々とインドネシア、マレーシア、フィリピン、ブルネイといった島嶼の国々が扱われる。そして、それら個々の国々を紹介詳述するというよりも、「東南アジア」域内におけるそれらの関係や外部世界との関係が示される。地理的、歴史的、言語的、民族的、宗教的、経済的、政治的な観点から、それら個々の国と国、そして隣接する中国、インドとの関係が記される。

いくらか引用してみる。最初の章『1つの地域の出現』の「表面上一体感のない地域」の末尾段落で、(陸地面積がヨーロッパに匹敵し、むしろ少し広いほどである「東南アジア」について)、以下のように記される。「こうしてみると、地域は1つの大陸のようでもある。ヨーロッパに比べると山塊としての特徴はなく、逆に多様な海に囲まれているのだが、しかし仮に、面積に海域もくわえていいとなればーー領海、接続水域、排他的経済水域もふくめてーー、東南アジアの重みはさらに増すだろう。ただし、これについてはあとで述べることにしよう。海域での主権問題はいまもなお根強く残っているからである。」

2019年1月14日にレビュー

地図で見るアラブ世界ハンドブック

地図で見るアラブ世界ハンドブック

  • 作者: マテュー ギデール
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2016/11/28
  • メディア: 単行本



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アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか イワン・クラステフ著 岩波書店 [外交・国際関係]


アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか

アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか

  • 作者: イワン・クラステフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/08/04
  • メディア: 単行本


「EU諸国と同じくリベラル・デモクラシー体制をもつ日本にとっても、警告と啓蒙の書(監訳者あとがき)」

監訳者(庄司克宏氏)の「あとがき」によると、本書の原書に出会ったのは、「ポピュリズムを素材としてリベラルEUのゆくえについて執筆するため、あれこれ考えていたとき」とある。その「あれこれ」は『欧州ポピュリズム EU分断は避けられるか(ちくま新書)』として結実した。

続けて監訳者は『アフターヨーロッパ』の内容を、次のようにまとめている。〈そこでは、2015年欧州難民危機が「移民革命」と位置づけられ、EU各国内の多数派は、外国人たち(移民・難民)が自分たちの国を奪っており、自分たちの生活様式を脅かしているのではないかと恐怖を覚えた。そのような中、EU各国の極右ポピュリスト政党は、「反革命」を行おうとしているのだと説明されている。また、欧州における民主主義が長らく「包容」の手段であったにもかかわらず、ポピュリズムの勢力伸長が示すように、いまや徐々に「排除」の道具になってしまっていると指摘されている。〉

執筆の目的等について著者はつぎのように述べる。〈本書は、これから起こりそうなことについてただ思いめぐらすこと、また、われわれが個人的に経験した歴史の急激な変化が、いかにわれわれの現在の行動に影響を与えるかを分析することが目的である。私の心をとらえるのは、私が「既視感的思考様式」とみなすものが政治にもたらす力である。この思考様式とは、われわれが今日経験していることはかつての歴史上の瞬間あるいは逸話の繰り返しである、という確信がつきまとっている心理状態を意味する。 / こうした意味で、欧州は、左派と右派、北と南、大国と小国、欧州の関与の増大を望む者とその縮小またはその消滅を望む者との間のみならず、分裂を直接に経験した者と教科書から学んだだけの者との間でも引き裂かれている。これは共産主義の崩壊とかつての強大な共産圏の分裂を直接に耐え忍んだ人々と、そのようなトラウマを残す出来事に傷つくことなく生まれ育った西欧人とを分かつ裂け目である。(『はじめに 既視感としてのハプスブルク帝国』)」

その点で著者は「共産主義体制化のブルガリアで暮らして、・・・、永遠と思いこんでいたもの(つまり「ソ連」)が突然、暴力によらずに終わるということを味わったことが、私の世代の人生における決定的な経験なのである。われわれは、突然開かれた機会と、新たに見出された個人の自由の感覚に圧倒された。しかし同時に、あらゆる政治的なものははかないという感覚を新たに経験もし、衝撃を受け」てもきた。つまり本書は、そのような経験をした(トラウマのある)人物によるヨーロッパの今と「これから」を思い巡らす書籍である。

印象に残った点としては、フランシス・フクヤマとケネス・ジョウィット(Kenneth Jowitt)の論議が対照的に扱われ〈冷戦の終わりは勝利の時ではなく、むしろ危機とトラウマが始まる前兆であり、彼(ジョウィット)が「新しい世界の無秩序」と呼ぶものの発端であった。」とあること。また、1951年の「難民条約」にからんだ論議で〈欧州における現在の移民(難民)危機と、難民条約ではその危機に実効的に対処できないことは、現在の世界を再構成する際にターニング・ポイントの役目を果たす。昨日まで冷戦後の世界として概念化されていたものは、今日では、非植民地化の再来のようにますます見える。・・略・・ / 政治的文脈に大きな違いがあるにもかかわらず、現在は、1960年代の大衆の感情に似ている。不安に駆られた多数派は、外国人が自分の国を乗っ取り、自分たちの生活様式を脅かしていることを恐れ、また、現在の危機が、世界主義的(コスモポリタン)な志向のエリートと部族的(トライバル)な志向の移民の共謀のようなものによって引き起こされたと確信している。このような危機にさらされた多数派は、抑圧された人々の願望ではなく、社会的強者のフラストレーションを反映する。それは、1世紀以上前のように民族主義者のロマン主義的な想像に囚われた「人民」によるポピュリズムではなく、世界における欧州の役割が縮小することを示す人口動態上の見通しと、欧州に大量の人々が押し寄せてくるのではないかと予想されることによって煽られたポピュリズムである。それは歴史と先例があまりわれわれの役に立たない類のポピュリズムである。p30〉など。

2018年11月7日にレビュー

欧州ポピュリズム (ちくま新書)

欧州ポピュリズム (ちくま新書)

  • 作者: 庄司 克宏
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/05/09
  • メディア: 新書



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『海を渡った日本書籍 ヨーロッパへ、そして幕末・明治のロンドンで』 ピーター・コーニツキー著 平凡社 [外交・国際関係]


海を渡った日本書籍: ヨーロッパへ、そして幕末・明治のロンドンで (ブックレット“書物をひらく”)

海を渡った日本書籍: ヨーロッパへ、そして幕末・明治のロンドンで (ブックレット“書物をひらく”)

  • 作者: ピーター コーニツキー
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: 単行本


日本書籍、海を渡る、どのように?

平凡社のブックレット「書物をひらく」シリーズの一冊。日本書籍の海外流出について記されている。内容は、書籍・扉に示されているとおり「イギリスやアイルランドに、江戸時代の始まり、17世紀初頭に到来した日本の書籍が残っている。それらは、いつ、誰によって、どんなルートで、そして、なぜ、持っていかれたのか。 幕末・明治に多く集められた海外の和書の集積のうちに、日本に対するどんな興味が、どんな本の選択を、どんな学知の蓄積を、もたらしたか、具体的な由緒を尋ねることを通して探る」といったものだ。

アーネスト・サトウ、バジル・ホール・チェンバレンら著名な人物たちの蒐集した蔵書や幕末イギリスに渡った留学生が「金欠病」で売り払った書籍などが、今日残って・・・という話など興味深い。以下、すこし引用してみる。

「幕末のロンドンには、驚くことに日本人の留学生がすでに数十人ほど生活していた。幕府の奨学金受容のものもいれば、江戸幕府に反対していた倒幕派のものもいた。すでに文久3年(1863)には、明治18年(1885)に日本の初代総理大臣となった伊藤博文や同年に初代外務大臣となった井上馨が、3人の同僚とともに、外国船に乗り込み、日本からイギリスへ密航した。いわゆる長州五傑の話だが、長州だけではなかった。慶応元年(1865)には、薩摩から15人もの学生がロンドン大学のユニヴァーシティ・カレッジへ派遣された。薩摩の英国留学生には、初代文部大臣を務め一橋大学を創設した森有礼、初代在英日本公使となった寺島宗則、2回ほど在仏公使を務めた鮫島尚信などがおり、のちに立身出世するものが多かった。その他、土佐、肥前など、諸藩から若い武士がイギリスへ派遣され留学生活を送っていた。幕府留学生のほうは慶応2年(1866)に14人もイギリスへ派遣された。日本の留学生はイギリスだけに派遣されたわけではないが、幕末期は、イギリスは特に多かったのである。 / 明治維新前夜の時期になると、インフレのため、幕府も諸藩も財政困難に陥っていたので、日本の留学生たちが経済的不安を抱いていたことは容易に想像できる。『餓死凍死』の可能性もあると訴えた幕府留学生もいた。その原因は、ほかならぬ『金欠病』・・・」とある。そして、彼等(特に佐幕派)の蔵書を買い取ったのが古書籍商バーナード・クォーリッチ。ついで、その本を買い取った蒐集家としてクロフォード伯爵第25代のリンゼー卿。そのリンゼー卿の古書購入を助けた人物として後に開成学校の教壇に立った箕作奎吾、帝国大学総長となった外山正一の名が挙げられている。

章立て目次は以下のようになる。1:日本書籍の海外流通史(元禄年間まで) 2:日本書籍の海外流通史(ペリー来航前夜まで) 3:日本書籍の海外流通史(明治初期まで) 4:ロンドンの日本書籍売買


2018年10月12日にレビュー
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