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「天才アスリート 覚醒の瞬間」小林信也著 さくら舎 [スポーツなど]


天才アスリート 覚醒の瞬間

天才アスリート 覚醒の瞬間

  • 作者: 小林信也
  • 出版社/メーカー: さくら舎
  • 発売日: 2022/01/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



著者は「おわりに」次のように記している。【この本は、週刊新潮に連載している《アスリート伝説 覚醒の時》の原稿をまとめたものです。それぞれ1冊の本が書けるだろう貴重な素材を、原稿用紙約5枚に凝縮する試みは、僕にとっても「一瞬のひらめき」が求められます。有名なレジェンドたちの、これまで光の当たらなかった真実、伝説の裏側、天才たちの開花の瞬間に出会うことから物語が生まれます。// 才能が開花するって、いいなあ。そういう生き方をこれからもしていきたいな。そして、才能と向き合っている天才たちを応援しつづけたい。そんな思いで綴った文章です。// 読んでくださった一人ひとりの身体の内から、心地よいインスピレーションが湧き起こっていたらいいなあと願っています】。

見出しとして直接取り上げられているのは54名(最後に、その氏名のみ列挙する)。往年の名選手たち、その中には故人になっている方も少なくない。アラ還の評者にとっても初耳の人物は少なからずいて、現役のアスリートで取り上げられているのは大谷翔平選手のみ。それゆえ、若い方にとっては、本書ではじめてその名前を知る人物ばかりかもしれない。それでも、格別の前知識がなくても、楽しむことができるし、その物語からインスピレーションを受けることができるように思う。評者も、レジェンドたちの、活躍の様子を思いだして、血が騒いだ。老若を問わず、今のスポーツ界を築いた人物たちに思いを馳せることのできる著作である。惜しむらくは、製本がイマイチなのが残念。

沢村英治、吉岡隆徳、清水善造、エリック・リデル、バロン西、ボビー・ジョーンズ、村社講平、嶋清一、杉下茂、武智文雄、荻村伊智朗、アベベ・ビキラ、金田正一、アントン・ヘーシンク、長嶋茂雄、宮田征典、谷田絹子、伊藤史朗、円谷幸吉、板東英二、青木功、ベラ・チャフラフスカ、輪島功一、釜本邦茂、猫田勝敏、ガブリエラ・アンデルセン、塚原光男、星野一義、福本豊、ディック・フォスベリー、山田久志、山口高志、岡本綾子、宇津木妙子、ジョー・ロス、中野浩一、具志堅用高、瀬古利彦、赤井英和、浜田剛史、斎藤仁、中田久美、松岡修造、長崎宏子、伊良部秀輝、高橋尚子、貴乃花、岡野雅行、武井壮、朝青龍、荒川静香、北島康介、高橋礼華、大谷翔平


大谷翔平「二刀流」の軌跡—リトル・リーグ時代に才能を見出した指導者と野球愛風土

大谷翔平「二刀流」の軌跡—リトル・リーグ時代に才能を見出した指導者と野球愛風土

  • 作者: 小林 信也
  • 出版社/メーカー: マガジンランド
  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫) 塩野米松著 [スポーツなど]


初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)

初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)

  • 作者: 塩野米松
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫


登山に関心ある方はもちろん、そうでない方も

NHK文化講演会(ラジオ)で、14座完登直後の竹内洋岳氏の講演を聞いた。そこでは8000メートルという高度が人体及ぼす影響、「プロ登山家」と宣言した意図、G2での遭難の顛末、14座完登は自分ひとりだけで成し遂げたものではないこと、など話された。14座完登はラインホルト・メスナーが最初で、その後、日本人では山田昇、名塚秀二らが期待されていたものの、達成前に亡くなっていたことは知っていた。だから、とうとう達成されたのだという思いで聞いた。

本書では、竹内氏がどのように登山に興味をもつようになり、ついには8000m峰に挑むようになったのか、その生い立ちから詳しく語られていく。

竹内氏は高所登山の歴史の端境期を経験した。集団組織登山から個人での登山、極地法からアルパインスタイルなどの登山方法の変化、登山技術や登山道具における進化についても語られる。対照されて語られ、具体的であるので、そのチガイをよく知ることができた。それは、そのまま日本文化やその体質について触れるものでもあり、アチラの話もでるゆえに、一種の比較文化論と言えなくもない。

人生は旅に譬えられる。起伏のあることを考慮すれば登山のほうがよりふさわしいにちがいない。同じ目標を目指す友人、応援してくれる人々、たまたまその場にいたというだけの理由で助けとなってくれた人々についての語りも興味深い。自分の身体というコントロールできる(しやすく思われる)ものと、そうでない自然現象との付き合い方など、気温が低く、空気も希薄で、およそ生存に適しない究極の環境で活動する人だけが知る情報が語られていく。が、困難やケガは平地での生活でも起こりうる。天地の差があるが、平地に住む自分の人生についても考えさせられた。

読みどころ満載である。登山に関心ある方はもちろん、そうでない方も、得られるところ大であると思う。

2020年3月18日にレビュー

8000メートルの勇者たち―ヒマラヤニスト・山田昇とその仲間の足跡

8000メートルの勇者たち―ヒマラヤニスト・山田昇とその仲間の足跡

  • 作者: 八木原 圀明
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本



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『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』天野文雄編集 大阪大学出版会 [スポーツなど]


世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ (阪大リーブル057)

世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ (阪大リーブル057)

  • 作者: 大槻文藏
  • 出版社/メーカー: 大阪大学出版会
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


錚々たる面々、世阿弥を、語る

錚々たる方々が、世阿弥について、語っている。《世阿弥生誕650年を記念し、2年にわたって大槻能楽堂で行われた講演や対談から、世阿弥にかかわるものを採録。世阿弥とその作品について、専門家による最新の知見が盛り込まれた貴重な講演とトーク集。著名文化人の世阿弥観にもふれることのできる、上質の能の手引き書》。目次と錚々たる「専門家」「著名文化人」について以下に記す。

【目次】 刊行にあたって:大槻文蔵 // 「能」に期待する:鈴木忠志 // 世阿弥にどう向き合うか:鈴木忠志・観世銕之丞・天野文雄・大槻文蔵 // 第Ⅰ部 世阿弥の人と芸術 / 世阿弥、その生涯:宮本圭造 *『頼政』をめぐって:宮本圭造・田中貴子 / 世阿弥、その作品と芸風:松岡心平 *『恋重荷』をめぐって:松岡心平・田中貴子 / 世阿弥、その理論:渡邊守章*『班女』をめぐって:渡邊守章・田中貴子 / 世阿弥、その先達と後継者:大谷節子*『融』をめぐって:大谷節子・田中貴子 / 世阿弥、その環境:天野文雄*『井筒』をめぐって:天野文雄・田中貴子 // 第Ⅱ部 世阿弥の能、その魅力 / 世阿弥と私 :梅原猛 / 『実盛』―世阿弥が確立した「軍体」の能 :馬場あき子 / 『松風』―世阿弥が仕上げた「幽玄無上」の能:天野文雄 / 世阿弥の亡霊(シテ)演出法:山折哲雄 / 「記念能」を語る:大槻文蔵・天野文雄 // 能作史年表 / 本書のもとになった大槻能楽堂自主公演企画一覧 // 編集をおえて:天野文雄

評者は、演劇、身体論に興味をもってきたこともあり、演出家:鈴木忠志氏による「見える身体の中にある見えないもの」に言及する講演と鼎+1談、松岡心平氏による「能役者としての世阿弥」、それにフランス文学者の渡邊守章氏による「世阿弥の能作術」「問いの立て方」についての論議、「神道的身体観と仏教的身体観」についての山折哲雄氏の論議、それに世阿弥の実像に迫る宮本圭造氏による論議をたいへん興味深く読んだ。

2016年11月3日にレビュー

#以下の書籍『風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア) 』は、上記書籍中、渡邊守章氏が、「是非是非お読みください。千円もしない本ですから、コーヒー1杯ですみます」と勧める本。

その理由について渡邊氏はいう。《この本は、まさに表学派の一種の成果を見るのにふさわしいということがあるのと、私がほめたのはそこだけではなくて、現代語訳がちゃんと読むに堪える。表先生という方は偉い人でしたけれども、世阿弥伝書の脚注のようにしてついている現代語訳がよくない。世阿弥の原文を読んでいるほうがよく分かってしまうのですから、困ります。さきほどの 「幽玄」とか 「儀理」の話にしても、「儀理」を「言葉のおもしろさ」などと現代語訳をされる。「言葉のおもしろさ」 だけで 「儀理」 が説明できるのでしたら、誰も困りません。あの碩学に伴う 「現代語訳」 がよくないんです。この話は、これ以上立ち入りたくはないのですが、一つだけ言っておきたいことは、入学試験の 「国語」 がよくないのですね。たとえば古文の問題で、「大意を書け」 というのと、「現代語に訳しなさい」 というのでは、まったく違う。「き」 と 「けり」 とは、訳しわけられないといけない。およそ、そんな現代語は、誰も使わないにしてもです。表先生は、あまり入試にはかかわっておられなかったと思いますが、それでも、表先生の日本語訳は同じ類のものです。幸い、竹本(幹夫)君ーーこの方は、表さんのもっとも優秀な弟子ですーーの現代語訳は、初めて『リーダブルな現代語訳」になっている。そういう意味でも、ぜひこの本をお勧めいたしますp136》。


風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア)

  • 作者: 世阿弥
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2009/09/25
  • メディア: 文庫



渡邊守章評論集 越境する伝統

渡邊守章評論集 越境する伝統

  • 作者: 渡邊 守章
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/12/04
  • メディア: 単行本



現代における伝統演劇 (放送大学教材)

現代における伝統演劇 (放送大学教材)

  • 作者: 渡邊 守章
  • 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: 単行本



演劇とは何か (岩波新書)

演劇とは何か (岩波新書)

  • 作者: 鈴木 忠志
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/07/20
  • メディア: 新書



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アレクサンダーと私―「アレクサンダー・テクニーク」への道(からだの冒険こころの冒険)壮神社 [スポーツなど]




「アレクサンダー・テクニーク」とは、どんなものかを知るのにたいへん良い入門書です

F・M・アレクサンダー(1869~1955)は「人間のからだの基本的なはたらき方を発見し、それを最高に実現できるようなテクニークを開発した」。彼のテクニークは「からだの『へたな使い方』を、うまい使い方に変えていくもので、それによって、からだやこころの問題がいろいろと解決されていく。
からだの下手な使い方はたいてい習慣化しているので、このワークでは、その習慣的なパターンを取りのぞき、より自然なパターンにもどしていく。・・(そうすることにより、人は)心身の不必要な緊張をとき、力をぬいて、もっとらくに生きられるようになる」。

以上「訳者のことば」の抜粋ですが、この本は、そのテクニークをアレクサンダーから直接学んだ女性(著者)が、そのテクニークを身につけ、他の人に教える者となる経緯を記したものです。

技術を身につけるのは何事でもそれなりの苦闘がいるものです。アレクサンダーは自分の開発したテクニークに関しては天才肌の人でしたが、他の人に自分の教えを巧みに伝授できる表現力に富んだ有能な教師ではありませんでした。(しかし、とは言うものの、そんな彼からレッスンを受けた人物にはオルダス・ハクスリー、バーナードショー、ジョン・デューイ、また、動物行動学で有名なノーベル賞受賞者のティンバーゲンなどもいるそうです)また、著者も、小児麻痺の後遺症によって、人一倍、からだの『へたな使い方』が身についていた女性でした。ですから、著者が、テクニークを学び取り『うまいからだの使い方』と自信を取り戻すのは並大抵ではありませんでした。

アレクサンダー・テクニークのみならず、こうしたボディーワークを本だけで学び取るというのはまず不可能といっても良いですが、彼女の苦闘の跡を辿ることにより、このテクニークのおおまかなところを掴むことができます。

訳者の親切な「あとがき」等の助けもあって、この本はアレクサンダー・テクニークを知るためのたいへん良い入門書となっています。

2004年9月29日にレビュー

意識のかたち

意識のかたち

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/09/19
  • メディア: 単行本



究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫



センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2023/06/02
  • メディア: 単行本



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「すごい自然体に読むだけでなれる4コママンガ」大橋しん著・マンガ:赤松かおり [スポーツなど]


すごい自然体に読むだけでなれる4コママンガ

すごい自然体に読むだけでなれる4コママンガ

  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2022/11/16
  • メディア: Kindle版


アレクサンダー・テクニークを紹介する本です。評者がアレクサンダー・テクニークについて初めて聞いたのは20年ほど前になります。アレクサンダー氏に弟子入りした女性(ルーリー ウェストフェルト)の自伝的な本を通してそのテクニークについて知りました。それがマンガで紹介されるようになるとは、だいぶ一般的になったものだと思います。

多くの著名人がアレクサンダー氏の助けで、体の不自然な使い方から解放されて自由(本書のタイトルからいくなら「自然体」)を得たものの、アレクサンダー氏本人の教えはたいへん分かりにくいもので、身に着けかつ教えて指導する側に立つにはたいへん苦労が要ったようです。カラダをどう動かし運用すべきかを言葉で伝達することの難しさがあったわけです。そのテクニークのエッセンスが、今日マンガで読めるというのは嬉しいことです。

巻末に著者の別の本が紹介されています。『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』です。評者はそちらは未読なのですが、「魔法のフレーズ」とは「アタマは前へ上に、背中は広く長く」という言葉であると思います。フレーズだけ聞くなら「なんのこっちゃ⁈」ということになろうかと思いますが、本書ではそれが簡明に説明されています。まずはマンガを見ながら試してみるとその効用が実感できると思います。ちなみに、そちらの本は、斎藤孝、内田樹、コシノヒロコ、市橋研一、各氏の推薦の言葉が紹介されています。斎藤氏は教育者であると同時に身体論の研究者でもあります。『自然体のつくり方』という本も書いています。

魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本

魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本

  • 作者: 大橋しん
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2021/06/04
  • メディア: Kindle版



自然体のつくり方 レスポンスする身体へ

自然体のつくり方 レスポンスする身体へ

  • 作者: 斎藤孝
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Kindle版






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『外道クライマー』宮城 公博著 集英社インターナショナル [スポーツなど]


外道クライマー

外道クライマー

  • 作者: 宮城 公博
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 単行本


現代におけるパイオニアワーク、冒険、探検の意味について考えさせられる

登山に関心があり手にする。「外道」という表題にも惹かれた。本道・正道からハズレタ、異端的なという意味であろうが、どんなクライミングをするのであろうか・・・。まずは、「読み飛ばしていい」とある巻頭の『用語辞典』を読む。けっこうオフザケ調である。それから、巻末の角幡唯介氏の『解説』を読む。角幡氏は、はじめて著者からメールを受けた時、「触らぬバカに祟りなしだな・・」と思ったという。その後、著者の「クライマーとしての実力と冒険家としての強靭な精神力を窺い知」って、「こいつはただのバカではなく、本物のバカかもしれない・・・」と思ったともある。そして、著者の「登山家としての特殊」性を「内側からあふれ出てくる強い自己表現欲求」と「反骨精神」にあると記し、さらに、著者の登り方については「従来の固定化されたカテゴリーで呼び表せるものではなく、スーパーアルパインクライミングだろうか・・・」と角幡氏は『解説』を結ぶ。いつのまにか「バカ」論議は消えてしまったが、「スーパー」の次に「バカ」が隠されてあるのだろう。もちろん、当初いだいたのとは異なる、リスペクトを含んだ意味においてだ。「スーパー」+「バカ」=「外道」かもナと読んで思う。

1章では、那智の滝を登って逮捕され定職を失ったことが、その後のなりゆきで出かけたタイ(当初ミャンマーを計画)のジャングルでの46日間沢登りの話が2章につづく。それは軽妙な旅行記ともいえる。古くは『東海道膝栗毛』の弥次郎兵衛と喜多八の道中記を想起させるものだ。だが、笑いの影には、低体温、溺死、滑落、餓死の危険が背中合わせに貼り付いている。そこから、現代における「冒険」の難しさについて考えさせられもする。なにしろ、著者は《 山で自分がいる場所が分からなくなると、少なからず恐怖を感じる。自分が進むべき明確な道が失われることで、旅として認識していたものが突如として不確定な冒険的行為へと変わるからだ 》などと記しながらも、死をヒリヒリ感じるような冒険を喜びとし、かつ同時に、(図らずしも)その手元にはGPS機能のついたスマホがあったりするからだ。現代の法制度や文明の利器は「冒険」を一瞬にして「犯罪」やただの「旅」に変質変容させてしまう。3章『日本最後の地理的空白部と現代の冒険』では、著者の冒険観が、経験とともに記される。総じて言うなら、本書は、現代における冒険・探検・パイオニアワークの意味について考えさせられる本である。そして、なによりも、宮崎公博の「外道クライマー」旗揚げ宣言でもあるのだろう。

などと、コムズカシイことを記したが、ただ単に、読み物として読んでもたいへん面白い。日本の「日常」では決して経験できないものをシェアしてもらえる。胴回りが「細身の女性のウエストぐらいの太さの」「少なくとも5メートル以上はある」にしきへびとホモサピエンスの二つの空腹な個体との遭遇については、《 高柳は血走った目で、「弱肉強食です。生きるか死ぬかなんです。分かっていないのは宮城さんのほうだ・・・。こいつを食って僕は生きのびたいんです。// 「分かった・・・。そこまで言うなら、殺ろうぜ」》と記される。

これなぞ、ほんの一例。

2016年8月14日に日本でレビュー
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以下、著者オススメの本


日本人の冒険と「創造的な登山」 本多勝一ベストセレクション (ヤマケイ文庫)

日本人の冒険と「創造的な登山」 本多勝一ベストセレクション (ヤマケイ文庫)

  • 作者: 本多勝一
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2012/05/25
  • メディア: 文庫



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『 完全版 呼吸法 』雨宮隆太・他著 ベースボール・マガジン社 [スポーツなど]


完全版 呼吸法

完全版 呼吸法

  • 作者: 雨宮隆太
  • 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


死ぬまでずっと、我々のカラダのなかで働き続ける横隔膜を実感的に理解できる

「理論編」と「実技編」からなる呼吸法についてのたいへんオモシロイ本。

この本をとおしてはじめて「横隔膜」のイメージがつかめた感がある。《 焼肉屋のメニューでいえば、「サガリ」と「ハラミ」が横隔膜」。「サガリ」は牛の横隔膜の背側に近いところで、背骨にくっついている横隔膜でいちばん分厚い部分。「ハラミ」は当然お腹側の部分だ。・・現物をご覧いただければ、薄い膜でないことがおわかりいただけると思う》とやさしく説明されている。膜の付着部についての解説とともに図示されてもいて、「ナルホド」と自分のカラダのなかでのソノ在り方を実感できる。

著者は、本書で運動と横隔膜・呼吸との関係についても説いていく。ペンフィールドの脳地図から、《 指一本と肩・躯幹・臀部までの体幹に分布する神経の面積が同等》であることを示し、その意識しにくい体幹を意識的に使うことによって運動パフォーマンスを上げることが可能であることを説く。そこで示されている内容は、横隔膜と腹筋の拮抗関係から始まり、《これまで述べてきたように、上下肢の動作はすべて体幹の中心部、横隔膜の周辺に収束する。ということは、どんな動作であっても必ず呼吸が関係するわけだ。それが大きく力強い動きでも、小さく柔らかい動きであっても、呼吸とうまく連携しなければ効率は悪くなるし、逆に呼吸がうまく関わることで、その動きの効率は良くなることだろう。横隔膜が身体動作の中心にあり、全身を通る動作の筋道の交点にあることを考えれば、呼吸が動作の巧みさに関係しているのは自明の理といえるだろう。巧みな動きを身につけたいと思ったら、・・後略・・》とある。

本書「理論編」を読みつつ、運動科学総合研究所を主宰する高岡英夫氏のディレクト・システム理論(「センター」「甲腕一致」など)を傍証するものとして読むことができた。さらに評者初見の「筋活動の平行線ルートと交差線ルート」「横隔膜基部の背中側にある力の交差点」も知りえた。

いずれにしろ、「理論編」は、健康面における呼吸法のみならず、全身を機能的に運用させる呼吸法に関心のある方にとって一読の価値があるように思う。なによりも、死ぬまでずっと、我々のカラダのなかで働き続ける横隔膜を実感的に理解する上で貴重な本に思う。

2016年8月9日にレビュー

究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫



究極の身体(からだ)

究極の身体(からだ)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ディレクト・システム社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: -



コペルニクスな呼吸生理―かわる!わかる!おもしろい!

コペルニクスな呼吸生理―かわる!わかる!おもしろい!

  • 作者: 北岡 裕子
  • 出版社/メーカー: 克誠堂出版
  • 発売日: 2015/04
  • メディア: 単行本



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『 走り方で脳が変わる! 』 茂木 健一郎著 講談社 [スポーツなど]


走り方で脳が変わる!

走り方で脳が変わる!

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/06/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


中年、脳科学者にしてフルマラソン完走者によるランニングのすすめ+ランニング継続のすすめ

裏表紙に茂木先生のランニング姿、カバー袖(見返し)には上半身の写真。モシャモシャ白髪頭で、背もすこし丸みを帯びて、先生お年を召されたなの印象をもった。評者自身を棚に上げて言うなら、ジイサンになったなあ・・である。

全体を読んで、タイトルをつけてみろと言われたなら「中年、脳科学者にしてフルマラソン完走者によるランニングのすすめ+ランニング継続のすすめ」としたいところ。

ランニングを勧めるにあたって、著者は、たいへん正直に自分のことを書いている。小学生の頃、走るのは速くなかったが、持久走では学年3位以内であったというカッコイイ話だけでなく、48歳になって健康を危惧する経験をしたこと、それ以来、歩くこと走ることに意を用いるようになったこと。テレビ番組にゲスト出演し、意に反してタタカレタ経験、少なからずストレスを感じたこと、それでも3時間かけて家に歩き着く頃には心はすっきり晴れていたこと。朝、走るにあたっては、コースには用便(大便)できる場所を含めていること・・など、言わばカッコわるいことも記している。

脳科学者ならではの脳に関する知見も随時多々しめされる。特に「デフォルト・モード・ネットワーク」は本書中、特に大きな位置を占めている。第1章『わかってきた!ランニングの脳への効用』で取り上げられ、第5章『ランニングでマインドフルネスを体験しよう』でも扱われる。マインドフルネスの効用にはアイデア発想がひらめきやすくなることがあるそうだが、それと「デフォルト・モード・ネットワーク」は関係しているという。《いまアメリカの(グーグルをはじめ)有名企業の多くがマインドフルネスのプログラムを取り入れている》という。ランニングの魅力を著者は次のように記す。《一方ランニングでは、そうした訓練を受けなくても、デフォルト・モード・ネットワークを活動させやすい。「走る」以外のことを考えにくいからだ。走るという負荷が頭を空にしてくれる。あくまでも走ることに集中しているけれど、それ以外の部分で拡散的思考がやりやすくなる。というわけで、僕はランニング禅を推奨しているのだ。このランニングの状態は、マインドフルネス瞑想で目指す状態でもある》。

そうした脳科学の知見に裏付けられた論議をフンフン首肯しながら読んでいくと、最終章は人生論になる。走ることの苦楽は(他の誰でもなく)自分が担うしかない。マラソンをとおして、当事者として人生を主体的に生きる姿勢を学びうること、主体的に生きることが勧められる。そうした論議は、何かと鼻につくものだが、フルマラソンをぼろぼろになりながらも走り切る経験をした著者ならではの、説得力がある。読了後、博識の脳科学者としてよりも、人生をマラソンと捉えて主体的に生き切ろう生き抜こうとする著者の姿に共感と敬意をおぼえ、あらためて裏表紙のジイサンを見ると、かっこいい中年の星に見えた。

2016年7月31日にレビュー

最強英語脳を作る (ベスト新書)

最強英語脳を作る (ベスト新書)

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2016/07/09
  • メディア: 新書



科学と宗教の未来

科学と宗教の未来

  • 出版社/メーカー: 第三文明社
  • 発売日: 2023/01/20
  • メディア: Kindle版



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『 すごい! ナンバ歩き 』矢野龍彦著 河出書房新社 [スポーツなど]


すごい! ナンバ歩き

すごい! ナンバ歩き

  • 作者: 矢野龍彦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


わかりやすい「ナンバ」歩きの本。主婦や年配の方もすぐに生活に導入して益を得られるように思う。

わかりやすい「ナンバ」歩きの本。主婦や年配の方もすぐに生活に導入して益を得られるように思う。

著者は大学教授。「桐朋学園と中央大学で、ナンバ歩きという講座を担当している」。略歴をみると、「桐朋中学・高校バスケットボール部のコーチ」とある。以前、甲野善紀さんが古武術の指導をして成績を伸ばしたチームは「桐朋」ではなかったかと調べると、桐朋であった。その様子は、テレビ番組(NHK)にもなっていた。部長が、甲野さんを招聘し、指導を仰いだいきさつや、その取り組みについては《「ナンバ歩き」で驚異のカラダ革命 (RIPPU BEST MOOK)》にも出ていた。部長は金田伸夫という。それで、「桐朋高校 金田信夫 矢野龍彦(本書の著者の名)」でネット検索したら、本書の著者は光文社新書から以前に出版された《ナンバ走り》において金田部長と共著者になっている。《「ナンバ歩き」で驚異のカラダ革命》が2004年出版、《ナンバ走り》は2003年出版になっている。すでに、話題になって10数年が経過している。

RIPPU BEST MOOKの方は、当方所持しており、ナンバの動きを図・写真で見てはいたが、しっかり理解するまでに至らず、雰囲気だけマネしていたのだが、本書ではっきりつかめた。要するに、胸郭と骨盤の連動なのだと気づいた。本書に指導されているのと同様の動きがRIPPU BEST MOOKに金田伸夫部長によって(写真で)示されているのだが、ぼんやり見た程度であった。つまり、自分のものとはなっていなかった。

「気づいた」などと書いたが、そう書いてあるのだから気づくもなにもナイ。本書4章『ナンバ歩きをマスターしよう』には「コツさえつかめれば誰でも簡単に!」とオマケの言葉がついている。ナンバ式骨体操と合わせて7段階でマスターできるように指導されている。図示されているので、主婦、年配の方でも、容易に習得できるように思う。10年の歳月は、教える面においても洗練を招いたのだと自分のボーンヘッドの言い訳としたい。

人間のする運動で、もっとも基本的なもので、かつ、身近なものといえば「歩行」であろう。歩きが、無理無駄のないものとなるよう努めていくなら、より複雑な運動についても、そうなるように工夫を重ねていくことになるだろう。本書の考えの底流には、「快感原則」というべきものが流れている。それは、無理はしないように、カラダの声を聞いてください・・というものだ。歩行に快感を覚え、楽であるなら、継続が可能となるであろうし、自分のカラダにやさしい人は、他の人にもやさしくできるだろう。ナンバ歩きをとおして、自分の心身の健康だけでなく、身近な人たちにも幸せが及んでいきそうな気がする。そんな本だ。

2016年7月16日にレビュー





ナンバ走り (光文社新書)

ナンバ走り (光文社新書)

  • 作者: 矢野 龍彦
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/11/14
  • メディア: 新書



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「究極の身体」高岡 英夫著(講談社+α文庫) [スポーツなど]


究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫


高岡英夫身体論の究極のカタチ
(2006年3月7日 Amazonレビュー投稿)

高岡英夫は、わたしにとって「一つの事件」でした。

書店でたまたま手にした『意識のかたち』は、自分のカラダに対する見方、運動に対する見方を根本的に変えるものとなりました。

出版社に問い合わせ、別の著作をさらに五冊ほど電話注文いたしました。そんなことは生まれてはじめての経験です。

高岡英夫氏の著作を通し、斉藤孝、甲野善紀、野口三千三諸氏の著作も読むようになりました。

当該書籍は、ディレクト・システム社から出ていたものの復刊です。だいぶ入手しやすくなりました。

内容は、基本的に『意識のかたち』と同じく氏のディレクトシステムを解説しているものですが、多くのページを割いている分さらに理解しやすくなっております。

氏の身体論は、現在、さらに発展しているものと思われます。が、現在入手できる中では当該書籍がもっともまとまった究極のカタチではないかと思われます。

運動の専門種目に携わる方のみならず、広く多くの方に発見と驚愕を味わっていただきたいものだと思います。

追記(’13/11/22):「自分の中の天才を呼びさます」と銘打った「高岡英夫シリーズ3部作」(『センター・体軸・正中線』『丹田・肚・スタマック』『上丹田・中丹田・下丹田』)が現在刊行されています。カラダ君との対談形式で著述がなされ、たいへん分かりやすいモノとなっています。重複も多いですが、ソレは重要度が高いゆえ・・と考えることが出来ようかと思います。さらに、写真付きでトレーニング方法も記されていますので、「身体意識」の世界を理解するだけでなく、身に付けるうえで、たいへん有用なものとなっています。お勧めいたします。


センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2023/05/14
  • メディア: 単行本



丹田・肚・スタマック―自分の中の天才を呼びさます

丹田・肚・スタマック―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2023/05/14
  • メディア: 単行本



上丹田・中丹田・下丹田―自分の中の天才を呼びさます

上丹田・中丹田・下丹田―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2023/05/14
  • メディア: 単行本



『究極の身体』を読む 身体の中心はどこにあるのか

『究極の身体』を読む 身体の中心はどこにあるのか

  • 出版社/メーカー: 運動科学総合研究所
  • 発売日: 2023/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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