『 完全版 呼吸法 』雨宮隆太・他著 ベースボール・マガジン社 [スポーツなど]
死ぬまでずっと、我々のカラダのなかで働き続ける横隔膜を実感的に理解できる
「理論編」と「実技編」からなる呼吸法についてのたいへんオモシロイ本。
この本をとおしてはじめて「横隔膜」のイメージがつかめた感がある。《 焼肉屋のメニューでいえば、「サガリ」と「ハラミ」が横隔膜」。「サガリ」は牛の横隔膜の背側に近いところで、背骨にくっついている横隔膜でいちばん分厚い部分。「ハラミ」は当然お腹側の部分だ。・・現物をご覧いただければ、薄い膜でないことがおわかりいただけると思う》とやさしく説明されている。膜の付着部についての解説とともに図示されてもいて、「ナルホド」と自分のカラダのなかでのソノ在り方を実感できる。
著者は、本書で運動と横隔膜・呼吸との関係についても説いていく。ペンフィールドの脳地図から、《 指一本と肩・躯幹・臀部までの体幹に分布する神経の面積が同等》であることを示し、その意識しにくい体幹を意識的に使うことによって運動パフォーマンスを上げることが可能であることを説く。そこで示されている内容は、横隔膜と腹筋の拮抗関係から始まり、《これまで述べてきたように、上下肢の動作はすべて体幹の中心部、横隔膜の周辺に収束する。ということは、どんな動作であっても必ず呼吸が関係するわけだ。それが大きく力強い動きでも、小さく柔らかい動きであっても、呼吸とうまく連携しなければ効率は悪くなるし、逆に呼吸がうまく関わることで、その動きの効率は良くなることだろう。横隔膜が身体動作の中心にあり、全身を通る動作の筋道の交点にあることを考えれば、呼吸が動作の巧みさに関係しているのは自明の理といえるだろう。巧みな動きを身につけたいと思ったら、・・後略・・》とある。
本書「理論編」を読みつつ、運動科学総合研究所を主宰する高岡英夫氏のディレクト・システム理論(「センター」「甲腕一致」など)を傍証するものとして読むことができた。さらに評者初見の「筋活動の平行線ルートと交差線ルート」「横隔膜基部の背中側にある力の交差点」も知りえた。
いずれにしろ、「理論編」は、健康面における呼吸法のみならず、全身を機能的に運用させる呼吸法に関心のある方にとって一読の価値があるように思う。なによりも、死ぬまでずっと、我々のカラダのなかで働き続ける横隔膜を実感的に理解する上で貴重な本に思う。
2016年8月9日にレビュー
2023-05-22 05:26
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