『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』天野文雄編集 大阪大学出版会 [スポーツなど]
錚々たる面々、世阿弥を、語る
錚々たる方々が、世阿弥について、語っている。《世阿弥生誕650年を記念し、2年にわたって大槻能楽堂で行われた講演や対談から、世阿弥にかかわるものを採録。世阿弥とその作品について、専門家による最新の知見が盛り込まれた貴重な講演とトーク集。著名文化人の世阿弥観にもふれることのできる、上質の能の手引き書》。目次と錚々たる「専門家」「著名文化人」について以下に記す。
【目次】 刊行にあたって:大槻文蔵 // 「能」に期待する:鈴木忠志 // 世阿弥にどう向き合うか:鈴木忠志・観世銕之丞・天野文雄・大槻文蔵 // 第Ⅰ部 世阿弥の人と芸術 / 世阿弥、その生涯:宮本圭造 *『頼政』をめぐって:宮本圭造・田中貴子 / 世阿弥、その作品と芸風:松岡心平 *『恋重荷』をめぐって:松岡心平・田中貴子 / 世阿弥、その理論:渡邊守章*『班女』をめぐって:渡邊守章・田中貴子 / 世阿弥、その先達と後継者:大谷節子*『融』をめぐって:大谷節子・田中貴子 / 世阿弥、その環境:天野文雄*『井筒』をめぐって:天野文雄・田中貴子 // 第Ⅱ部 世阿弥の能、その魅力 / 世阿弥と私 :梅原猛 / 『実盛』―世阿弥が確立した「軍体」の能 :馬場あき子 / 『松風』―世阿弥が仕上げた「幽玄無上」の能:天野文雄 / 世阿弥の亡霊(シテ)演出法:山折哲雄 / 「記念能」を語る:大槻文蔵・天野文雄 // 能作史年表 / 本書のもとになった大槻能楽堂自主公演企画一覧 // 編集をおえて:天野文雄
評者は、演劇、身体論に興味をもってきたこともあり、演出家:鈴木忠志氏による「見える身体の中にある見えないもの」に言及する講演と鼎+1談、松岡心平氏による「能役者としての世阿弥」、それにフランス文学者の渡邊守章氏による「世阿弥の能作術」「問いの立て方」についての論議、「神道的身体観と仏教的身体観」についての山折哲雄氏の論議、それに世阿弥の実像に迫る宮本圭造氏による論議をたいへん興味深く読んだ。
2016年11月3日にレビュー
#以下の書籍『風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア) 』は、上記書籍中、渡邊守章氏が、「是非是非お読みください。千円もしない本ですから、コーヒー1杯ですみます」と勧める本。
その理由について渡邊氏はいう。《この本は、まさに表学派の一種の成果を見るのにふさわしいということがあるのと、私がほめたのはそこだけではなくて、現代語訳がちゃんと読むに堪える。表先生という方は偉い人でしたけれども、世阿弥伝書の脚注のようにしてついている現代語訳がよくない。世阿弥の原文を読んでいるほうがよく分かってしまうのですから、困ります。さきほどの 「幽玄」とか 「儀理」の話にしても、「儀理」を「言葉のおもしろさ」などと現代語訳をされる。「言葉のおもしろさ」 だけで 「儀理」 が説明できるのでしたら、誰も困りません。あの碩学に伴う 「現代語訳」 がよくないんです。この話は、これ以上立ち入りたくはないのですが、一つだけ言っておきたいことは、入学試験の 「国語」 がよくないのですね。たとえば古文の問題で、「大意を書け」 というのと、「現代語に訳しなさい」 というのでは、まったく違う。「き」 と 「けり」 とは、訳しわけられないといけない。およそ、そんな現代語は、誰も使わないにしてもです。表先生は、あまり入試にはかかわっておられなかったと思いますが、それでも、表先生の日本語訳は同じ類のものです。幸い、竹本(幹夫)君ーーこの方は、表さんのもっとも優秀な弟子ですーーの現代語訳は、初めて『リーダブルな現代語訳」になっている。そういう意味でも、ぜひこの本をお勧めいたしますp136》。