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初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫) 塩野米松著 [スポーツなど]


初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)

初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)

  • 作者: 塩野米松
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫


登山に関心ある方はもちろん、そうでない方も

NHK文化講演会(ラジオ)で、14座完登直後の竹内洋岳氏の講演を聞いた。そこでは8000メートルという高度が人体及ぼす影響、「プロ登山家」と宣言した意図、G2での遭難の顛末、14座完登は自分ひとりだけで成し遂げたものではないこと、など話された。14座完登はラインホルト・メスナーが最初で、その後、日本人では山田昇、名塚秀二らが期待されていたものの、達成前に亡くなっていたことは知っていた。だから、とうとう達成されたのだという思いで聞いた。

本書では、竹内氏がどのように登山に興味をもつようになり、ついには8000m峰に挑むようになったのか、その生い立ちから詳しく語られていく。

竹内氏は高所登山の歴史の端境期を経験した。集団組織登山から個人での登山、極地法からアルパインスタイルなどの登山方法の変化、登山技術や登山道具における進化についても語られる。対照されて語られ、具体的であるので、そのチガイをよく知ることができた。それは、そのまま日本文化やその体質について触れるものでもあり、アチラの話もでるゆえに、一種の比較文化論と言えなくもない。

人生は旅に譬えられる。起伏のあることを考慮すれば登山のほうがよりふさわしいにちがいない。同じ目標を目指す友人、応援してくれる人々、たまたまその場にいたというだけの理由で助けとなってくれた人々についての語りも興味深い。自分の身体というコントロールできる(しやすく思われる)ものと、そうでない自然現象との付き合い方など、気温が低く、空気も希薄で、およそ生存に適しない究極の環境で活動する人だけが知る情報が語られていく。が、困難やケガは平地での生活でも起こりうる。天地の差があるが、平地に住む自分の人生についても考えさせられた。

読みどころ満載である。登山に関心ある方はもちろん、そうでない方も、得られるところ大であると思う。

2020年3月18日にレビュー

8000メートルの勇者たち―ヒマラヤニスト・山田昇とその仲間の足跡

8000メートルの勇者たち―ヒマラヤニスト・山田昇とその仲間の足跡

  • 作者: 八木原 圀明
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本



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