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「読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」勝間和代著 [読書法・術]


読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか(小学館101新書)

読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか(小学館101新書)

  • 作者: 勝間和代
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/01/21
  • メディア: Kindle版

勝間和代はいかにして読者から著者へと進化せしや

評者が、本書の内容に即してタイトルをつけるとしたら「勝間和代はいかにして読者から著者へと進化せしや」となる。(これでは、いまどき売れないだろうから、「カツマのメタモルフォーゼ 読者から著者への進化」に変更)

読書方法としては、王道として「本を読む本(講談社学術文庫)」が、さらには神田昌典氏が日本に紹介したフォトリーディングへの言及がなされている程度である。それゆえ、本書全体が、読書のための進化した技術・方法について記されていると期待すると落胆することになる。

しかし、おもしろい本である。読書をただの知識の習得のためだけでなく、生活全般に影響を及ぼしてナンボという見方がなされている。良い本との出会いは、生活全体のステージを上げ、より自由な境遇へと人を進化させるものとなる。著者は、まさにその実例であり、本書中に引用されるカツマーたちの経験談は、勝間本を読んで影響を受け、進化し、ステージを上げた人たちの実例である。

発行当時、まだ電子本は今日ほど普及していない。Amazonのkindleがアメリカで利用され始めた時期で、電子書籍は紙の本との関係でこれからどうなるのか、出版業界はどのように推移していくのか注目の時期であった。著者は、インターネットにはやくからかかわり、一読者からWebを利用してブロガーへ、ブロガーから著者へと進化していく。そのように進化できたのは、ほかでもない読書のおかげである。紙の本のおかげだ。

しかし、変化をとげつつある出版業界は、著者に目を留める。その助けを得て、一ブロガーというプライベートな人材から、パブリックな人材:著者へと、勝間氏はメタモルフォーゼを遂げる。人気ブロガーから、ビジネス書著者へ、そしてベストセラー著者へ。その変化を勝間氏は、ひとつの社会実験のように観察する。そして、出版を支えてくれた人々と共にマーケティングの実践を試みる。

子ども時代からの読書について記される。出版当時、行きつけの書店を訪問し、どのように本を選んでいくかの実践が示される。16冊を購入し、飲み代と比べたら安いものよと豪語する。そして、自著の印税のうち20%を寄付する取り決めをつくるのにリーダーシップを発揮する。

読書の対象物である本をつくる過程の見える本で、そうした過程が見えて読むのとそうでないのとでは、読書のあじわいも異なるにちがいない。そういう点でもお勧めである。

2020年3月13日にレビュー


ミルコの出版グルグル講義

ミルコの出版グルグル講義

  • 作者: 山口ミルコ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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