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「日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業」大平悠麻著 総合科学出版 [地学]


日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

日本に住んでいるなら知らないとヤバい! 地学の授業

  • 作者: 大平悠麻
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2022/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ほんとうに「ヤバい!」ことが書いてある。実際のところは「授業」スタイルをとっているので、「書いて」ではなく、話される。対象は高校生で、どちらかといえば、出来のあまりよくない生徒を対象にしたかの内容である。ゆえに、たいへん分かりやすい。ふだんどれほど授業に注意をひき、眠らせないよう苦労しているか、著者の(教諭としての)奮闘ぶりが伝わってくる。

日本は災害大国である。地震、津波、火山、台風など日常茶飯の類である。震度3くらいで大騒ぎするナという感じである。とはいえ、「国ガチャ」で、そういう国に生まれ合わせて長年生きてきたオッさん(アラ還の評者)でも、「そいつは知らなんだ!」ということが話される。災害時には、そういう可能性も想定しておかなければならないと覚悟させられる。ホンマ命にかかわる内容だ。

それにしても「地学」はスケールがデカい。本書で取り扱われていないのは「天文」分野だが、それでも「気象」編でオーロラが登場する。マントルオーバーターンで地磁気(磁力)が生まれたところから話は始まり、1859年に起きた太陽フレアの大爆発の話がでる。

1859年の太陽嵐
https://ja.wikipedia.org/wiki/1859%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%B5%90

「特別補講」として扱われる「地球温暖化」のストーリーも凄まじい。補講にも著者は手を抜かない。メタンハイドレートのメタンが空中に出て温暖化が加速し・・、約2000年かけて世界中を循環している海の水の「海洋大循環」が、やがてストップして・・

著者は「当事者として」考えるよう読者に促している。と同時に考えうる実際的な解決策を示してもいる。読者としては、他人事としていられない。地球人としての責任を問われている。そういう意味も含めて「 ヤバい!」話が盛りだくさんである。

基本的なことから知識が積み上げられていくので、これまで地学の好きでなかった方も、好きになること必定であるように思う。

(「つづく」部分に「目次」を掲載)


おもしろい石と人の物語

おもしろい石と人の物語

  • 作者: 大平悠麻
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

  • 作者: 進, 山賀
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 単行本


はじめに (ハワイと日本がくっつく だから「地学」が大事)
第1部【地震&津波】編
第1講 零戦の下敷きになった中学生
ー隠された大震災、そしてこれから予想される南海トラフ巨大地震ー
終戦前夜の大地震 / 1000人規模の犠牲者を出した五つの巨大地震 / 海溝型地震 / 相手に沈み込まれて耐えられなくなったとき起きる / 映画「風立ちぬ」 / 南海トラフ巨大地震
第2講 3万人以上が命を落とした熱風・竜巻
―地震の被害だけで終わらなかった関東大震災ー
犬公方とブルドッグ / 元禄文化は地震で終わった / ずっと巨大地震のモデルとされてきた関東大震災 /
悪条件が重なって起きた最恐“火災旋風” / 焼け跡から・・
第3講 京都祇園祭、三陸津波
ー「1000年に一度」が結びつける東日本大震災ー
新幹線の速度で迫るTSUNAMI / 迫りくる「分厚い水の壁」 / 東日本大震災を襲った津波 / 46年に一度 / 海洋プレートのほうが重い。だから下 / どうして「1000年に一度」? / 青木ヶ原樹海 / そして祇園へ
第2部 【火山】編
 第4講 火山列島日本
ー地球でもっとも活火山が密集している地域ー
プレートが動くことで・・ / マグマはどこでできるのか / 全世界の活火山の7%が集まる国 / 火山のランク付け / 関東ローム層と日本一のラッカセイ産地 / 三つの富士山 / 現代社会を壊滅させる火山灰
 第5講 美と癒しの火山大国日本
ー火山はリスクと共にたくさんの恵みを与えてくれているー
火山が生む女性の味方 / 地下の熱水の役割 / 温泉のない都道府県 / にごり湯の正体
 第6講 日本を2分する大いなる溝“フォッサマグナ”
ー東日本と西日本は別々のプレートの上にあるというヤバさ!ー
ナウマンゾウのナウマンさん / 二つの構造線 / フォッサマグナのできたワケ
 第7講 南九州の縄文文化を終わらせた巨大噴火
ー過去に巨大噴火が繰り返されている日本列島ー
縄文杉って、寿命が8000年? / それは数千年に一度 / 阿蘇山とカルデラ / 鬼界カルデラ / 屋久島の縄文杉
第3部【海洋】編
 第8講 命あふれる奇跡の海“相模湾”
ー超深海湾はヤバいプレートの境界が生み出したー
相模湾はどこにある? / 日本にある超深海湾 / 相模湾に生物が集まる理由
 第9講 黒潮はいつ生まれたのか
ー超大陸パンゲアが分裂してー
流されたイカダのゆくえ / 新生代に海に大事件が起きた / 南極還流 / 黒潮の誕生
 第10講 海水が淡水になったらどうなる?
ー濃度や温度の変化で海洋大循環まで変わるとー
海水ばかり飲んでいると死んでしまう? / 浸透圧って何? / 海の水が淡水になったとしたら・・/ 沸点上昇と凝固点降下 / そして気候が変わる
 第11講 温暖化がもたらす海洋生物の死
ー二酸化炭素の増大→海の酸性化→ヤバいー
グスコーブドリの伝記 / ジオエンジニアリング / 日本近海からサンゴがいなくなる / 炭酸飲料 / サンゴ礁のでき方
第4部【気象】編
 第12講 ヒートアイランド現象で水道水がなくなる?
ー一気に降った雨は留まることなく海に流れ込む、するとー
私たちは1日どれくらいの水を使っていますか? / ヒートアイランド現象 / 雨の種類 / ヒートアイランド現象と集中豪雨 / 「大気の状態が不安定」 / 集中豪雨 / 豪雨がもたらす水不足
 第13講 超寒~い、水がなくなり生物絶滅の危機
ー全地球凍結というヤバい状況も乗り越えてきたワケー
地球が凍りつく 4℃の水は一番重い / 物質が「熱くなる」とは / 氷は水よりスカスカ / 全球凍結で絶滅しなかったワケ
 第14講 日本海の漁師の恐怖「春一番」
ー日本の四季を織りなす四つの空気の塊がヤバい!ー
命を奪う南風 / 日本の四季を決める高気圧たち / 四つの高気圧 / 南東の風”春一番” / 高気圧は晴れて低気圧は雨が降るワケ
 第15講 「く」の字に曲がる台風
ー強い風ばかりか、高潮もヤバいー
台風の予報 / パワーの源 / ヘクトパスカル / 伊勢湾台風 / 日本に攻め込むのは夏 / 台風の進路を決める風と高気圧
 第16講 冬、雪をもたらす風
ーどうして冬に日本海側でヤバいほど雪が積もるの?ー
昼が一番短くて、夜が一番長い日 / 冬は北西から、夏は南東から / どうしてシベリアに高気圧が生まれるのか / シベリアの放射冷却 / 高気圧の出口は南東 / 山を越えるとき / フェーン現象
 第17講 沖縄の夜空をオーロラが覆うとき
ー強力な太陽風が磁気バリアと反応してオーロラが低緯度地方でも出現したらー
地球を守る磁力 / マントルオーバーターン / 南極で現れるオーロラ / 巨大すぎる太陽フレア / 現代世界の終わり
特別補講【地球温暖化】編
 補講1 マンモスの牙
ーシベリアの永久凍土が溶け、眠っていたはずのモノが復活する?ー
シベリアの永久凍土が溶け出して
 補講2 温室効果ガス
ー二酸化炭素だけじゃない、メタンもヤバい!ー
温室効果ガスって? / 悪循環の一つの始まり / 馬鹿にできないメタンガス
 補講3 大昔に起きた大量絶滅
ー同じようなヤバい状況が温暖化で進んでいるー
活発化した火山活動が酸欠を招く / 海の循環が止まる? / 海が酸欠になる! / 酸欠がヤバいのは海だけではない / まだまだ盛りだくさんな「地球の殺し技」
 補講4 まさか肥料まで
ー高い温室効果とオゾン層の破壊を伴う一酸化窒素ー
撒かれた肥料は1割程度しか吸収されない
 補講5 海と二酸化炭素
ー二酸化炭素を調整してくれる海の能力がパンクするとー
二酸化炭素濃度の変化 / もっともっと二酸化炭素量を変化させている海 / サンゴまで死滅してしまって・・
 補講6 これからどうなる?
ー「今後100年で気温は1.4~5.8℃上昇する」予測の意味することはー
たった数℃、温暖化したって・・・
 補講7 海面上昇だけならまだしも…
ー氷が溶けたり、海が膨張したり、挙句の果てに気候まで・・ー
海の水位が上昇する / 海の循環が乱れて、天気が激変する
 補講8 これが最悪の事態
ー本当に「地球が殺しに来る」のはこれからー
気候の暴走 / 暑くなり過ぎる場合 / 寒くなり過ぎる場合
 補講9 では、どうすれば温暖化を止めることができるの?
ー一人ひとりの努力で間に合うの?ー
誰が二酸化炭素を排出しているの?
 補講10 200年前の温室効果への警鐘、そしてSDGs
ー人間が引き続き人間らしく生き残るためにー
「持続的」という言葉 / 「地球が殺しに来る」かもしれないのに、人類同士が争うこの世界 / 原発と温暖化 / 再生可能エネルギー / とにかく着手する。まずは農業 / 一人ひとりにできること / 産業革命の発想
 補講11 私の一押し! ジオエンジニアリング構想    
ー森が腐葉土を育て、川を下って海藻を育て、二酸化炭素を吸収して温室効果を抑制するー
光合成が吸収する / 枯渇資源を救う / コンブをよく育てるには / 鉄イオンは何で供給する? / 間伐を行なえば・・ / 「里山」のイメージを具体的に進めれば、温暖化も食い止められる!
 おわりに                                                                   
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