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感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害 乾 敏郎著 ミネルヴァ書房 [心理学]


感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害

感情とはそもそも何なのか:現代科学で読み解く感情のしくみと障害

  • 作者: 乾 敏郎
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 単行本


たいへん中身のツマッタ大物だ

感情を「現代科学で読み解く」というので、実験をとおして喜怒哀楽とはどのようなものか説明する基礎心理学の内容かと思いつつ(たぶんツマラナイであろうけれど新刊であるので覗いて見ようといった程度の興味で)手にした。ところが実際は、たいへん中身の詰まった(ツマッタ)本であることに驚いている。

感情とちかい言葉に情動があるが、本書では「情動は生理的反応、感情はそれに伴う主観的意識体験」と説明される。そして、「感情=情動+原因の推論」という式が出ていて、それは次のように言い換えられている。「感情は内臓の状態とその状態変化が生じた原因の推定の2つの要素によって決まる。・・」。

「推論」、「推定」とあるが、次のような説明もある。「自己の内臓状態を理解することによって感情が作り出される。脳は遠く離れた内蔵状態を正しく理解する必要がある」。その際に、脳は、自律神経を通じて送られてくる信号から内臓状態を、さらには、内臓状態を変化させた原因を、「推論」する必要がある。それら「推論」「推定」はヘルムホルツの無意識的推論とよばれる機能だ。

感情と内臓、そして脳がふかく関与することは第1章で、「身体の状態を一定に保つしくみである」ホメオスタシスと「環境変化に対応する」アロスタシスから論じられる。環境からの刺激に感覚・運動・自律神経等を介して身体内部(内臓)と脳との間でやりとりが行われる中で感情が発生していく様相が示される。そして、その際に、「予測」という考えが導入される。それは、「環境変化が起こりそうだと予測された場合には、将来に起こり得るホメオスタシスの混乱を回避するために、ホメオスタシスの設定値の変更を先に行う。環境の変化に対応できるように、身体の状態を準備する」アロスタシスとの関係でである。

抜粋しつつだいぶ荒っぽくひどいマトメを記したが、脳科学、認知科学、身体論など興味をもって読んでこられた方にとっては、垂涎の本であることは間違いない。最近はやりのマインドフルネスの理解にも役立つし、うつ病や統合失調症などの精神疾患の理解にも役立つ内容だ。

生半可な理解しかないにもかかわらずレビューを記したのは、ぜひ手にとって読んでみて欲しいからである。ハンドブックといった体裁の書籍ではあるが、たいへんなオオモノだと直観する。

2018年11月27日にレビュー

イメージ脳 (岩波科学ライブラリー)

イメージ脳 (岩波科学ライブラリー)

  • 作者: 乾 敏郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/03/06
  • メディア: 単行本



脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか (岩波科学ライブラリー)

脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか (岩波科学ライブラリー)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/05/27
  • メディア: Kindle版



能動的推論:心、脳、行動の自由エネルギー原理

能動的推論:心、脳、行動の自由エネルギー原理

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2022/07/19
  • メディア: 単行本



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あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法 ダイヤモンド社 [心理学]


あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法

あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法

  • 作者: ジャドソン・ブルワー
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ある意味において「冗長」、ある意味において「難解(面倒)」

マインドフルネスの本。〈脳科学分野の豊富なデータを基に、心理学、行動科学、さらには仏教などの視点を組み合わせて、「依存」のメカニズムを明らかにし、「やめられない!」のループから脱するための“具体的方法”を提示した一冊〉。

著者のジャドソン・ブルワー博士は、米国マサチューセッツ大学医学部の准教授であり、同大Center for Mindfullnessの研究責任者。同大は〈上座部仏教などに起源を持つ瞑想を独自に体系化したジョン・カバットジン(マインドフルネスの父)がいた“総本山”とも言うべき場所〉で、本書巻末にはカバットジン自身が〈熱烈な文章を寄せている〉。著者は〈いまや「マインドフルネスの脳科学」の世界的トップランナーであり、本書はその成果を一般向けに解説した処女作〉。

以上は、監修者による「解説」からの抜粋引用。全体の“印象としては”マインドフルネスとは何かをある程度知った者からみると詳しすぎ(ある意味冗長で)、はじめての方には難しく面倒に感じられるのではないかと“思う”。現在、マインドフルネスがいかなるものか、どのように実践してその益に預かれるか示す本はいくらでもある。各論として、喫煙、SNS中毒など個別の「依存」にどのように取り組むことができるか知るうえにおいて本書はいいようにも思うが、いかがなものだろうか・・・。評者は、そのように解し、部分的に読んで読了とした。

2018年11月23日にレビュー

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスストレス低減法

  • 作者: ジョン・カバットジン
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

  • 作者: スーザン・カイザー グリーンランド
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 単行本



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「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方 川野 泰周著 ディスカヴァー・トゥエンティワン [心理学]


「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方

「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方

  • 作者: 川野 泰周
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2018/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


現代人必読と言っていいかも

禅僧の肩書きももつ慶大医学部卒のお医者さんの本。スマートな印象の分かりやすい本。実質的には、マインドフルネスの本。疲れの種類を見分け、それに応じた「正しい休め方」が勧められる。身体の問題・症状と思われるものも心の問題から出ている場合も多く、その多くは脳の使いすぎによることが示される。その有効な対策としてのマインドフルネスについて説明する『理論編』とその『実践編』とから本書は成る。

実践方法は、41種類。「身体の一部に意識を向ける」「食事でマインドフルネスを実践する」「最高の睡眠を手に入れる」「自然の営みをていねいに受け取る」「自分を慈しむ」「身体を動かす」「コミュニケーションを無毒化する」〈「小さな変化」を取り入れる〉の7つのパートに分かれて、41種の解説と「具体的なやり方」が示される。

医学情報も交えての解説は啓発的。脳の疲労によって「失感情症(アレキシサイミア)」、「無快楽症(アンヘドニア)」傾向にある方(電子機器にコントロールされ、強いられるかの暮らしを余儀なくされる今日の大多数が該当するように思うが・・)には、たいへん有用。

2018年11月23日にレビュー

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

  • 作者: スーザン・カイザー グリーンランド
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 単行本


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孤独の達人 自己を深める心理学 (PHP新書) 諸富 祥彦著 [心理学]


孤独の達人 自己を深める心理学 (PHP新書)

孤独の達人 自己を深める心理学 (PHP新書)

  • 作者: 諸富 祥彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/08/18
  • メディア: 新書


自己をキチンともち、その上で、他者と深くつながっていくこともできるよう助けられる

他者(家族、友人、同僚、etc)からの同調圧力に屈して応じれば応じるほど、あるいは、みずから他者と繋がることを願って言動すればするほど、自分自身から切り離される。どうして自分自身を失ってまで、他者とつながろうとするのだろうか、してしまうのだろうか。そのことの虚しさに気づいて愕然とされている方ほど、本書から得られるものは大きいにちがいない。自分を取り戻し、「自己を深める」手立てを知ることができる。

前半は、今日の日本における「孤独」について考察される。統計などをとおし、孤独はヘンではなくフツウになっていること。これからは孤独を余儀なくされる時代が到来することが示される。そして、そのような中で、主体的に孤独を選択すること、孤独を楽しむことが勧められる。

後半になって(第4章「自分らしく生きることができない苦しみ」から)著者の本領が発揮される。冒頭から順次読んでいくと、いつになったら「自己を深める」具体的な方法について記されるのか、心配になるほどだったが、「人間性心理学」や「フォーカシング」の手法が分かりやすく説明されていく。前半部分のいわば前置きも、どれほど「自己」を失わせる病んだ社会に住んでいるかを、認識・自覚してもらうために必要なのかもしれない。それほどに「ともだち100人できるかな」病は個々の深いところまで入っているということなのだろう。

「和して同ぜず」「付和雷同」しない自己をキチンともち、その上で、他者と深くつながっていくこともできる人間(本書中で強調されている言葉でいうなら「単独者」)になれたなら素晴らしいが、そうなる上でたいへん有用な情報知識が提供されている。

2018年11月10日にレビュー

人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ

人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ

  • 作者: A.H. マズロー
  • 出版社/メーカー: 産能大出版部
  • 発売日: 1987/03/10
  • メディア: 単行本



フォーカシング

フォーカシング

  • 作者: ユージン T.ジェンドリン
  • 出版社/メーカー: 福村出版
  • 発売日: 1982/08/01
  • メディア: 単行本



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アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ) 岸見 一郎著 [心理学]


アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ)

アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/07/06
  • メディア: 新書


アドラーの主要著書の解題でありダイジェスト

アドラーの主要著書の解題でありダイジェスト。読んだことの無い人には、良い読書案内であり、読んでいなくても「じっくり読」んだ気にさせてくれる本。これまで、読んだ気になっていた人は、解釈上の注意すべき点を喚起され、不確かな点を正されもする本。社会のなかで、おなじく欠点弱点のある他者とつながって、共に生きていこうという気にさせてくれる本。

ちなみに、評者はアドラーの著作を(その入門書もふくめ)読んだことが無い。これまでもっぱらユングに親しんできた。が、本書を読んで、アドラーの大きな影響力・可能性を感じている。社会生活を営むうえで読者自身と社会にあたえる有用性という点で、である。とりわけ、精神状態が安定していて、社会貢献の気持ちがあり、対人関係における自分の弱点を理解して、それを正そうとの意志と行動力をもつ人であれば、なおのこと有用であろうと思う。感覚としては人生をポジティブに生きるよう励ます社会学者加藤諦三の著作を読んでいる気分である。

本書中に紹介されているアドラーの主要著作を、本書を案内書として、読んでみるのはいい。(しかし、邦訳によるアドラー全集は出ていないもよう)。紹介されているアドラーの著作は、目次に従えば以下のようになる。(実際の目次では、著書名とコメントが逆になっている。また、序章と10、11章が伴う)。

1章 『個人心理学講義ーー生きることの科学」(アドラー心理学の独創性) 2章 『生きる意味を求めて』(大切なのは「これから」) 3章 『人生の意味の心理学』(遺伝や環境のせいにするな) 4章 『人間知の心理学』(汝自身を知れ) 5章 『性格の心理学』(タイプ分けにご用心) 6章 『人はなぜ神経症になるのか』(人生の課題から逃げる人たち) 7章 『教育困難な子どもたち』(子どものためにできること) 8章 『子どもの教育』『子どものライフスタイル』(罰でもなく、甘やかしでもなく) 9章 『個人心理学の技術 Ⅰ 伝記からライフスタイルを読み解く』『個人心理学の技術 Ⅱ 子どもたちの心理を読み解く』(自分自身を受け入れるには?)

2018年10月26日にレビュー

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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視覚心理学が明かす 名画の秘密 三浦 佳世著 岩波書店 [心理学]


視覚心理学が明かす 名画の秘密

視覚心理学が明かす 名画の秘密

  • 作者: 三浦 佳世
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/07/14
  • メディア: 単行本


絵画(だけでなく、人間の諸事象)の見方・観察力が、洗練されるように思う

アートの本というより心理学の本といっていいだろう。こんにち視覚心理学、認知心理学が明らかにし、明らかにしつつある現象やら法則やらを、とっくの昔から絵描きたちは自分の作品に応用してきたことが明らかにされる。作家たち自身、明瞭に理解し言語化できなかったであろうゆえに「秘密」であったことが明瞭にされていく。これを読んで絵画(だけでなく、人間の諸事象)の見方・観察力が、だいぶ洗練されるように思う。分厚い本ではないが、お腹いっぱいになった気分だ。

岩波の『図書』に連載されたものだという。エッセイとしても秀逸だ。専門的知識がおおく披瀝されていくが、学者臭くない。未解決の問題は未解決として、読者に投げ出してもいる。無責任というのでなく、それが将来明らかにされるであろうことへの期待を呼び起こす。研究者としてだけでなくエッセイストとしてこれから活躍されるだろうし、活躍してほしい。そう思わせる著作だ。

2018年10月10日にレビュー

以下は、『目次』(カッコで括った中の言葉は、その項目で紹介された心理学用語など)

Ⅰ右か左か、それが問題だ
1 フェルメールの日常・レンブラントの非日常(「上方光源」の仮説)
2 キリコの「どこか変」なわけ(線遠近法)
コラム1 西洋の左・東洋の右
3 グレコとクリヴェッリの聖と俗(ダニエル・カササントの研究:「利き手側を肯定的に評価する」)
4 マルティーニのグイドリッチョと時間の矢(西洋では「一般に時間は左から右に流れる」)
コラム2 右向きの顔、左向きの顔

Ⅱ 平面に奥行きとリアリティを感じる
5 ピエロ・デッラ・フランチェスカの不思議な時空間(ピエロは数学者でもあり、彼の『遠近法論』はダ・ビンチらに理論的基礎を与えたとされる)
コラム3 ゴッホの歪んだ部屋(英眼科医の考案した「エイムズの部屋」)
6 エッシャーの循環する階段(錯視図形「シュレーダーの階段」「ペンローズの三角形」)
7 フェルメールのちょっとピンぼけ(「カメラ・オブスキュラ」、遠近法からの逸脱、複数の消失点)
8 本城直季のヴァーチャル都市(写真の「ぼけの勾配」
コラム4 トロンプ・ルイユの勝敗

Ⅲ ないはずの輪郭とかたちを見る
9 仙厓の心の観月会(「指月布袋画賛」、「主観的輪郭」「錯視的輪郭」、「指さし」理解人間だけ)
10 抱一の明るい満月(「クレイク・オブライエン現象」「コーンスウィート錯視」)
コラム5 シニャックのマッハ・バンド(エルンスト・マッハが発見した帯が名前の由来)
11 ダリ・クローズ・若冲のダブルイメージ(D・ネイボンの研究、「寄せ絵」
コラム6 ルドンの幻想とパレイドリア(「レビー小体型認知症」)
12 安田謙のスクラッチ(「元型」、「図地反転」、デビッド・マーの視覚の「計算理論」)

Ⅳ 色と質感の不思議に迫る
14 モネの大聖堂とザ・ドレス(「色の恒常性」「エーデルソン錯視」、セシリア・ブリースデイル『ザ・ドレス』、「インテルミラノ錯視」)
コラム7 デュフィのはみ出す色(「残像」「視覚的持続」)
14 眩しさを描くラ・トゥール(「視覚脳」、「グレア効果」)
15 ライン川上流地方の画家とクレーの透明(『天国の庭』、「逆遠近法」「透明図法」「形の恒常性」、「透明視に関する本吉勇の研究」)
コラム8 マチスの赤い部屋(視細胞の反応)

Ⅴ 静止画に動きと時間を感じる
16 ショーヴェ洞窟の重ね描きからリヒターの横ブレまで(「表象的慣性」、「動き筋(モーション・ストリークス)」
コラム9 キース・ヘリングのモーション・ライン
17 ホックニーのフォト・コラージュ(「表現の技法」でなく「視覚の技法」、「プレディクション」、時間研究者エルンスト・ベッペル)
18 ヴァザルリの明滅・ライリーのゆらぎ(「オプ・アート」「オプティカル・イリュージョン」「ハーマン・グリッド」
コラム10 絵画の中の過去・現在・未来

Ⅵ よさと魅力のわけをさぐる
19 ポロックの「でたらめ」(「フラクタル次元1.3~1.5、ユング「創造における思考停止」)
20 モランディの「よい眺め」(ポール・ライトとカロライン・ニックス「よい眺め(good view)」「スリークウォーター効果」)
コラム11 光琳のリズム(能の「序破急」)
21 伊藤若冲と草間彌生への背反感情(「評価性」「ヘドニックトーン」「ポジティブ感情」「陰性残像」「トライポフォビア」)
22 カルパッチョと春信の共視(「視線方向と絵の印象」、小津映画の共視の構図(視対象のない横並びの構図、エリザベス・マインズ)
コラム12 マネの視線と鏡の空間(「フォリー・ベルジュールのバー」、自己認識)


観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

  • 作者: エイミー・E・ハーマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス』 金剛出版 [心理学]


マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

  • 作者: スーザン・カイザー グリーンランド
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 単行本


たのしく遊びながらマインドフルネス(な思考)を身につけるよう親子ともども助けられる

表紙の楽しげな文字や「ゲーム」という言葉から、60種のお遊びゲームを紹介する本にも思えますが、実際のところは、大人“も” 実践しながら学べるマインドフルネスの本です。直接の対象は、子どもたち(ティーンエージャーも含む)ですが、教える親も一緒に学べるスタイルになっています。

マインドフルネスに関しては、グーグル社の社員研修に用いられていることで有名になりましたが、もともとは宗教的実践のなかから生まれたものです。インドのヨーガが宗教性を取り除かれてストレッチ体操として普及したように、宗教性を除いた瞑想(黙想)や意識の用い方がマインドフルネスとして知られるようになってきました。

と、言っても、まだまだ、何ソレ?という感じの方もいることでしょう。評者自身そうでした。本書を通して学ぶことができました。評者の言葉で言うなら「今、ここに、生きる方法」「心身を疲弊させる感情や思いに囚われないようにする手立て」、その結果として「他者や世界に思いやりを示す余裕を得る方法」と、言うことができるように思います。他者や環境に影響を受け、支配されがちな方であれば、自分の「人生を取り戻す方法」ということもできようかと思います。(ちなみに、本書中には「マインドフルネスの要点」として「現時点に焦点を定め、価値判断を下さず、意図的に注意を払うこと」(p217)と簡潔に示されています)。

『おわりに』で著者自身「本書には情報が盛り込まれすぎていると感じられる向きもあるかもしれません」と述べていますが、事実、そういう本です。「ゲーム」(というより、ワーク、エクササイズと言った方がいいように思いますが)を紹介するに際しては、その背景的な知識や理論・解説が盛りだくさんに示されます。しかし、難解ではありません。日本語に翻訳されている絵本などが話題として取り上げられていきます。著者はその点、「子どもたちや家族にマインドフルネスと瞑想を教える際、とりわけ言葉にしづらい考えを教える際に、(絵本にあるような)ストーリーには力があることをよくよく心していただきたい(p215)」と述べているほどです。

少し本文から引用してみます。『ピンクの泡』ゲーム(自分を悩ます失望や他の感情がピンクの泡にすっぽり包まれているところを想像します。その泡が流れていくとき、バイバイと手を振って、その幸運を祈ります)の方法を示した後の記述です。「子どもは腹を立てて動揺すると、自分の関心事で頭がいっぱいになりがちです。そうすると、ものの見方が狭まり、今起きていることを他者の観点から見るのが難しくなります。でも、そこで一歩下がり、本書で取り扱ってきたテーマからなる、もっと広い文脈のなかで状況を眺めることができれば、狭まった考え方を立て直すことができます。頭のなかの余白が増えると、今起きていることを偏見のない心(オープンマインド)でじっくり考え、自分の気持ちを傷つけた相手もまた、惨めな気持ちになっているのだろうかと思えるようになります。結局、相手も自分とまったく同じように、幸せで安全で安心していたいと思っているのです。このように考えることで、子どもたちは他者に対する共感と思いやりをもちやすくなり、自分に対する思いやりももちやすくなります。見晴らしの利くところに立つことで、それまでよりはっきりと見えるようになり、今起きていることがなんであれ、そのは常に変化し、互いに依存し合っていること、無数の原因と条件(原因と結果)があって生じたものであることがわかるようになります。より良いバランスのこの視点をもつことで、悪い目は誰にも出ることを受け入れ、良い目も出ることを感謝できるようになります。感謝のフィードバック・ループが生まれるのはことあとです。感謝の気持ちを感じるようになればなるほど、子どもたちは幸せになり、幸せになればなるほど、感謝の気持ちは大きくなります。 // 子どもたちは次のゲーム(『それでもわたしはラッキー』)で、一歩下がり、それによって広がったものの見方で自分の課題を眺めるよう励まされます。ここでは、自分を悩ませる事柄と自分を幸せなな気持ちにする事柄を挙げながら、小さなボールを相手に転がします。2人でペアになってやることもできますし、多人数で丸く座ってやることもできます。(p212,212)」

長々申し訳ありません。結論は、たのしく遊びながらマインドフルネス(な思考)を身につけるよう親子ともども助けられるたいへん良い本だと思います。

2018年9月18日にレビュー

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスストレス低減法

  • 作者: ジョン・カバットジン
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『はじめに』抜粋(『マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス』 金剛出版) [心理学]


マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

  • 作者: スーザン・カイザー グリーンランド
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 単行本



(冒頭段落・省略)

マインドフルネスと瞑想が育むライフ・スキルが身につくと、親も子もより深い思いやりと叡智をもって、自分の内面や周囲で起きていることとつながることができるようになります。黙想生活を送る人々は何世紀も前からこのことを知っていましたが、今、これを支持する科学的研究が増えつづけています。本書では、このライフ・スキルを6つ、お教えします。集中する、鎮める、見る、リフレーミングする、ケアする、つながるの6つです。

これらは、集中するを中心にして、残り5つを周囲に置く形で表すことができます(引用者注:イラストが出ています)。柔軟で安定した注意の集中が残りの5つを支えるからです。これらがどう連携しているかを見てみましょう。

子どもやティーンエイジャーが今この瞬間の体験(呼吸の感覚や部屋の物音など)に集中すると心は鎮まりやすくなり、頭のなかにある余地が生まれ、今起きていることをよりはっきり見ることができるようになります。そして、自分の心身で起きていることに気づいてくると、合図として感覚印象(たとえば「なんだか落ち着かない」「胸騒ぎがする」など)を使うようになり、話したり行動したりする前に立ち止まって考えるようになります。この過程で、反応性は低下する一方、自分の内面や周囲で起きていることに対する意識が高まります。結果に集中するのではなく、叡智と思いやりをもって状況に応答することに集中するのです。ケアするつながるという資質は、複雑に絡み合って各瞬間を紡ぎ出していく人間関係や原因、条件をよく見ていくなかで、ごく自然に生まれます。子どもたちはやがて、状況の見方をリフレーミングする機会を得て、これらの資質に沿った形で話し方や行動の仕方を選択できるようになります。これら6つのライフ・スキルが足場となって、注意の仕方が変わると (鎮める、集中する)、感じ方が変わり (見る、リフレーミングする)、感じ方が変わると話し方や行動や人間関係のありようが変わります (ケアする、つながる)。これが伝統的な瞑想訓練によって生まれる展開です。

黙想生活を送る人々は何千年という時間をかけて、わたしたちの内的世界や外的世界の地図となる膨大なカタログを編集してきました。わたしたちはそれらを2つのリストに絞り、ゲームやお話、誘導イメージ、実演を通して、子どもやその親に向けて紹介していきます。そのリストのひとつは、上記の6つのライフ・スキルからなる輪です。もうひとつのリストは、叡智と思いやりに満ちた世界観を特徴づける普遍的なテーマからなっています。以下がそのテーマです。

受容 識別力 偏見のない心(オープンマインド) 共感 感謝 万物は変化する 注意(スポットライト、フラッドライト) 相互依存 喜び 心の波長合わせ 親切心 行動の自制 動機 因果 忍耐 明晰さ 今この瞬間 思いやり 自分への思いやり 黙想的自制 叡智から生まれる自信

(1段落・省略)

古い格言に、「叡智と思いやりは鳥の双翼のようなもので、空を飛ぶにはいずれもが必要だ」というのがあります。マインドフルネスと瞑想を通じて学ぶ概念的テーマと実際的なライフ・スキルは、叡智と思いやりを育みます。2つは共に働くことで、ある程度の心理的な自由を提供してくれます。理想を言えば、まさに鳥が飛び立ち空高く舞い上がるように、子どもたちやその家族は心理的な自由に助けられ、人生の困難のなかを羽ばたいていくことでしょう。

(最終段落・省略)


ユング心理学入門

ユング心理学入門

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 培風館
  • 発売日: 1967/10/01
  • メディア: 単行本



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『ダルク 回復する依存者たち――その実践と多様な回復支援』 明石書店 [心理学]


ダルク 回復する依存者たち――その実践と多様な回復支援

ダルク 回復する依存者たち――その実践と多様な回復支援

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2018/06/07
  • メディア: 単行本


ダルクについて多くを知ることができると同時に「成熟した社会」とは何か考えさせられる、

薬物中毒・依存症の背景には、対人関係障害があるという。人につまづいて薬物に走り、なまなましい問題を多々かかえる。薬物から離れようともがくが離れられない。そうこうするうち警察の厄介になる。そうなると、家族もふくめ多くの人は離れていく。見離される。しかし、そうした人々に「仲間」として「居場所」を提供してきたグループがある。つまり、それがダルクである。

「現在、わが国の薬物依存症の専門医療期間は10施設程度しかなく、全く要求を満たしていない。薬物依存症に関しては、まさに『無医村』的状態が続いている。 ・・略・・ 一方で薬物依存症の回復支援施設であるダルクが、80施設までに増加した。このことは、薬物依存症からの回復支援の需要と必要性を示していると同時に、一民間団体であるダルクが、その役割を一手に担わざるを得ないわが国の貧困な薬物行政を象徴している。」と、埼玉県立精神医療センター 副院長 成瀬 暢也氏はいう。

同じく、成瀬氏はいう。「成熟した社会とは、問題のない社会ではなく、人が生きていくうえでさまざまな問題があってもそれを支援し解決していく社会である。これまでのダルクの活動が私たちに大切なことを教えてくれている。ダルクが孤軍奮闘してきた価値がここにある。」 / 「ダルクは回復の希望である。治療者・支援者は回復を身近に感じ信じ続けることが必要である。ダルクに行けば回復がある。人がつながることの大切さ、人を信じられることの幸せがある」。

本書からダルクについて多くを知ることができる。と同時に、「成熟した社会」とは何か、どうすればそうなるか考えさせられる。

2018年8月13日にレビュー

薬物依存症の回復支援ハンドブック―援助者,家族,当事者への手引き

薬物依存症の回復支援ハンドブック―援助者,家族,当事者への手引き

  • 作者: 成瀬 暢也
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』 おのころ心平著 同文舘 [心理学]


人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方 (DOBOOKS)

人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方 (DOBOOKS)

  • 作者: おのころ 心平
  • 出版社/メーカー: 同文舘出版
  • 発売日: 2018/04/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


心身の調子を崩ざないためにも・・・

「バウンダリーとは心理学用語で、自分と他人の間にある境界線のこと。目に見えない人間関係の中で、『ここからここまでは自分の領域、そこから先はあなたの領域』ときちんと線引きしていく方法です」と著者は定義する。

閉ざされた逃げ場のないように思われる人間関係(家族・親族、会社、地域共同体・・・)の中でほど、自分の領域を守り、他者の領域を守る姿勢態度は必要となってくる。ところが、こちらが相手の領域を守る気持ちでいても、相手方は越境・侵入してくることがある。それが、善意に基づくものであったり、権威関係に基づくものであったりすると、線引きするのに(線を明確なものとするのに)困難を覚える場合がある。

我慢して越境・侵入を許しておくと、心身の調子を崩す要因ともなる。どうしたら、カドを立てずに、線引きをすることができるか、(実例を示しなどしつつ)その知恵が示されていく。他者に越境・侵犯されて他者の人生を生きているように感じられる方は、自分の人生を取り戻す助けを得られる。

2018年7月9日にレビュー

(以下、『目次』細目省略)

1章 自分を大切にするバウンダリーという方法
バウンダリーとは何か?
バウンダリーを越えてしまう人々
自分の領域を守るということ
今なぜ、バウンダリーが必要なのか

2章 凛とした人になるバウンダリーの7つの習慣
1初対面の第一印象を重視する
2謎めいた雰囲気を醸す
3専門的に多弁
4ちょっとした不安を相手に与える
5「強烈な第二印象」をつくる
6決定習慣をもつ
7会話をまとめる癖をつける

3章 さりげなく境界線を引くサブリミナル・トークとしぐさ
バウンダリー・トークの基本
存在感が伝わる3つのサブリミナル会話テクニック
長話をイライラせずに聞くコツ
5つのメッセージ・ゾーン
表情を使ったサブリミナル・バウンダリー
しぐさを使ったサブリミナル・バウンダリー
肩を使ったサブリミナル・サイン
第三者の声を使って伝える

4章 ケースで見る人間関係のバウンダリー・オーバー
こんなタイプにどう対応すればいい?
押しつけがましい人
愚痴ばかりの人
嫌味な人
上から目線で話す人
はり合ってくる人
悲観的で心配ばかりしている人
イライラを伝染させる人

ケース・スタディ①上司の頻繁なアドバイスで時間を取られる②一方的に長話をする友人との関係性を変えたい③ママ友から詮索されるのが苦痛④父親との価値観の相違⑤本心と言動に食い違いのある姑

5章 ほどよい距離を判断できる人間関係のマイ・ルールをつくる
マイ バウンダリー・ルールをつくろう
あなたにとっての時間の優先順位は?
交際費からあなたの人間関係を見直す
最小限の人間関係を考えてみる
手放しの人間関係
人間関係の濃淡はライフステージによって変わるもの
マイ バウンダリー・ルール7ヶ条

6章 縛られない・とらわれ過ぎないワンランク上の人間関係へ
日々のバウンダリー意識は、あなたの自尊感情をはぐくむ
自己肯定感のリニューアルチャンスは9年周期でやってくる
バウンダリーの重要性を痛感した20代の出来事
全方向に一律のバウンダリーは不可能
バウンダリーはあなたの感受性を磨き、あなたの才能を開花させる

おわりに


フランス人ママン 「強く生きる子」を育てる75の言葉

フランス人ママン 「強く生きる子」を育てる75の言葉

  • 作者: 荒井好子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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