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『マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス』 金剛出版 [心理学]


マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

マインドフル・ゲーム―60のゲームで 子どもと学ぶ マインドフルネス

  • 作者: スーザン・カイザー グリーンランド
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 単行本


たのしく遊びながらマインドフルネス(な思考)を身につけるよう親子ともども助けられる

表紙の楽しげな文字や「ゲーム」という言葉から、60種のお遊びゲームを紹介する本にも思えますが、実際のところは、大人“も” 実践しながら学べるマインドフルネスの本です。直接の対象は、子どもたち(ティーンエージャーも含む)ですが、教える親も一緒に学べるスタイルになっています。

マインドフルネスに関しては、グーグル社の社員研修に用いられていることで有名になりましたが、もともとは宗教的実践のなかから生まれたものです。インドのヨーガが宗教性を取り除かれてストレッチ体操として普及したように、宗教性を除いた瞑想(黙想)や意識の用い方がマインドフルネスとして知られるようになってきました。

と、言っても、まだまだ、何ソレ?という感じの方もいることでしょう。評者自身そうでした。本書を通して学ぶことができました。評者の言葉で言うなら「今、ここに、生きる方法」「心身を疲弊させる感情や思いに囚われないようにする手立て」、その結果として「他者や世界に思いやりを示す余裕を得る方法」と、言うことができるように思います。他者や環境に影響を受け、支配されがちな方であれば、自分の「人生を取り戻す方法」ということもできようかと思います。(ちなみに、本書中には「マインドフルネスの要点」として「現時点に焦点を定め、価値判断を下さず、意図的に注意を払うこと」(p217)と簡潔に示されています)。

『おわりに』で著者自身「本書には情報が盛り込まれすぎていると感じられる向きもあるかもしれません」と述べていますが、事実、そういう本です。「ゲーム」(というより、ワーク、エクササイズと言った方がいいように思いますが)を紹介するに際しては、その背景的な知識や理論・解説が盛りだくさんに示されます。しかし、難解ではありません。日本語に翻訳されている絵本などが話題として取り上げられていきます。著者はその点、「子どもたちや家族にマインドフルネスと瞑想を教える際、とりわけ言葉にしづらい考えを教える際に、(絵本にあるような)ストーリーには力があることをよくよく心していただきたい(p215)」と述べているほどです。

少し本文から引用してみます。『ピンクの泡』ゲーム(自分を悩ます失望や他の感情がピンクの泡にすっぽり包まれているところを想像します。その泡が流れていくとき、バイバイと手を振って、その幸運を祈ります)の方法を示した後の記述です。「子どもは腹を立てて動揺すると、自分の関心事で頭がいっぱいになりがちです。そうすると、ものの見方が狭まり、今起きていることを他者の観点から見るのが難しくなります。でも、そこで一歩下がり、本書で取り扱ってきたテーマからなる、もっと広い文脈のなかで状況を眺めることができれば、狭まった考え方を立て直すことができます。頭のなかの余白が増えると、今起きていることを偏見のない心(オープンマインド)でじっくり考え、自分の気持ちを傷つけた相手もまた、惨めな気持ちになっているのだろうかと思えるようになります。結局、相手も自分とまったく同じように、幸せで安全で安心していたいと思っているのです。このように考えることで、子どもたちは他者に対する共感と思いやりをもちやすくなり、自分に対する思いやりももちやすくなります。見晴らしの利くところに立つことで、それまでよりはっきりと見えるようになり、今起きていることがなんであれ、そのは常に変化し、互いに依存し合っていること、無数の原因と条件(原因と結果)があって生じたものであることがわかるようになります。より良いバランスのこの視点をもつことで、悪い目は誰にも出ることを受け入れ、良い目も出ることを感謝できるようになります。感謝のフィードバック・ループが生まれるのはことあとです。感謝の気持ちを感じるようになればなるほど、子どもたちは幸せになり、幸せになればなるほど、感謝の気持ちは大きくなります。 // 子どもたちは次のゲーム(『それでもわたしはラッキー』)で、一歩下がり、それによって広がったものの見方で自分の課題を眺めるよう励まされます。ここでは、自分を悩ませる事柄と自分を幸せなな気持ちにする事柄を挙げながら、小さなボールを相手に転がします。2人でペアになってやることもできますし、多人数で丸く座ってやることもできます。(p212,212)」

長々申し訳ありません。結論は、たのしく遊びながらマインドフルネス(な思考)を身につけるよう親子ともども助けられるたいへん良い本だと思います。

2018年9月18日にレビュー

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスストレス低減法

  • 作者: ジョン・カバットジン
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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