孤独の達人 自己を深める心理学 (PHP新書) 諸富 祥彦著 [心理学]
自己をキチンともち、その上で、他者と深くつながっていくこともできるよう助けられる
他者(家族、友人、同僚、etc)からの同調圧力に屈して応じれば応じるほど、あるいは、みずから他者と繋がることを願って言動すればするほど、自分自身から切り離される。どうして自分自身を失ってまで、他者とつながろうとするのだろうか、してしまうのだろうか。そのことの虚しさに気づいて愕然とされている方ほど、本書から得られるものは大きいにちがいない。自分を取り戻し、「自己を深める」手立てを知ることができる。
前半は、今日の日本における「孤独」について考察される。統計などをとおし、孤独はヘンではなくフツウになっていること。これからは孤独を余儀なくされる時代が到来することが示される。そして、そのような中で、主体的に孤独を選択すること、孤独を楽しむことが勧められる。
後半になって(第4章「自分らしく生きることができない苦しみ」から)著者の本領が発揮される。冒頭から順次読んでいくと、いつになったら「自己を深める」具体的な方法について記されるのか、心配になるほどだったが、「人間性心理学」や「フォーカシング」の手法が分かりやすく説明されていく。前半部分のいわば前置きも、どれほど「自己」を失わせる病んだ社会に住んでいるかを、認識・自覚してもらうために必要なのかもしれない。それほどに「ともだち100人できるかな」病は個々の深いところまで入っているということなのだろう。
「和して同ぜず」「付和雷同」しない自己をキチンともち、その上で、他者と深くつながっていくこともできる人間(本書中で強調されている言葉でいうなら「単独者」)になれたなら素晴らしいが、そうなる上でたいへん有用な情報知識が提供されている。
2018年11月10日にレビュー