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「上機嫌な会話が人生を豊かにする」// 齋藤 孝著『不機嫌は罪である』 から抜粋 [心理学]


不機嫌は罪である (角川新書)

不機嫌は罪である (角川新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: 新書



不機嫌の反対の「上機嫌」について、著者は次のようにいう。

私の考える「上機嫌」というのは、あくまで本人の心身の内側からどうしようもなく満ちあふれるものです。

そして、民俗学の「ハレとケ」の概念を持ち出しつつ、つぎのように記す。なにか、テレビ出演している時の、著者のすがたを思い出す。

私は講演会やテレビ出演などで、日々無数の人にお会いしています。その一人ひとりとの出会いに対して、いつも「この出会いを祝祭の場にしたい」と現在は自然に思えています。民俗学には「ハレとケ」という概念がありますが、儀礼的に定められている「祭り」だけでなく、日々の人と人との出会いも十分に「祝祭」です。(中略)今の私はそうした「祝祭」としての出会いの意識を非常に重視しているので、頼まれずとも自分から場を盛り上げてしまうし、絶えず笑顔になってしまうのです。(中略)この世の一人ひとりの人間は「場」や「他人」に対しても責任を持っています。上機嫌を目指し、維持したいのであれば、場や人とコミュニケーションをとってうまく力を借りながら、自分も相手に上機嫌を返して、お互いに高めあっていくのが何よりでしょう。

この後、〈上機嫌を助ける「会話力」を磨こう〉という見出しで、①雑談力、②要約力、③クリエイティブな会話力 を取り上げ、さらに次のように記す。

上機嫌な人がこれらの会話力を持ったならばもう無敵です。相手はあなたの上機嫌に巻き込まれ、まさに踊るようなトークが発生するでしょう。

「踊るような」という比喩が興味深い。そして、オマケのようにして、こう書く。

そのために欠かせないもう一つの要素が、「間合い」です。第3章で呼吸法をご紹介したときに少しだけお伝えいたしました。会話には「間」と呼ばれる要素があり、自分の呼吸だけでなく相手の呼吸もわかっている、「間合い」のとれる人が、会話上手になれるという話です。(中略)呼吸法を見につけ、上機嫌にふるまうなかで、「事態を客観的に把握し自己をコントロールできる」ようになると、この「間合い」の達人に近づけるようになります。

このオマケを読んで、亡くなった先代の柳家小さんの名人芸を思い出した。ぼそぼそぼそぼそ話しているのだが、オモシロイ。先代自身、「間」のとれない奴のことを「間抜け」というんだとかなんとか言っていたと思うが、剣道七段の腕前は、落語の間合いにも活かせていたのだと思う。

「芸は間。間は魔に通ず」
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2006-12-05


コミュニケーションというのは、祝祭であり、ダンスであり・・・。

齋藤 孝著『不機嫌は罪である』を、『クライシス・カウンセリング』と重ねて、興味深く読んだ。



クライシス・カウンセリング

クライシス・カウンセリング

  • 作者: メンタルレスキュー協会
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『クライシス・カウンセリング』 メンタルレスキュー協会 金剛出版 [心理学]


クライシス・カウンセリング

クライシス・カウンセリング

  • 作者: メンタルレスキュー協会
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


そのまま普段の対人関係にも

死ぬことを考えている個人やなんらかの惨事に巻き込まれた方、また、自殺者を出してしまった(あるいは、惨事に巻き込まれた)組織とその帰属する方々へのカウンセリングは、フツウのものとは異なる。一般に「傾聴」がカウンセリングで重視されるが、危機的重大局面においては、それだけでは間に合わない。

そうした現場で、実際に活動し、実績をあげてきた組織の、カウンセリング・スキルが示されている。そのスキルのベースとなる理論・解説も示されてあるが、「机上の空論」の印象がない。現場で実績をあげてきたその理論・スキルには、重みがあり、「ああ、これなら活かせる」、有効性は確かだろうと感じさせるものだ。

理論面の解説も、クライシスを経験すると人間はどう反応するかが原始人の体験したであろう心理・身体面の変化から示される。そこから、死にたいと思うことはそういった傾向・特性を持つ特定の人だけでなく、だれもが持ちうることが示される。その根っこにあるのが「疲労」である。それがどういう風に蓄積されると、ウツに陥り、死ぬことを考えるようになるかも示される。そのような個人へのアプローチの実際、また自殺者の出た組織の経営者・管理職、同僚、遺族を助ける面での実例も、興味深い。

クライシス・カウンセリングの現場での、個人面談のスキルは、そのまま普段の対人関係にも活かすことができる。「メンタルレスキュー協会」の講義指導を受けた組織幹部やカウンセラーとして活動している方々の経験談が「コラム」として掲載されているが、人格面でおおきな成長を遂げているのが窺える。本書を手元に置いて、自分を高める上で役立てたいと思うほどであった。

2018年7月4日にレビュー

不機嫌は罪である (角川新書)

不機嫌は罪である (角川新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: 新書



アンガーマネジメント 11の方法―怒りを上手に解消しよう

アンガーマネジメント 11の方法―怒りを上手に解消しよう

  • 作者: ロナルド T. ポッターエフロン
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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*気づく」とはどういうことか〉 山鳥 重著 ちくま新書 [心理学]


「気づく」とはどういうことか (ちくま新書)

「気づく」とはどういうことか (ちくま新書)

  • 作者: 山鳥 重
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 新書


「気づく」という「こころ」のはたらきと神経組織(脳脊髄)との関係についての興味深い解説

人間として生まれ成長していくなかで生じる「こころ」の動き、それがどのようにその個人の知性・霊性といったものに発展・昇華していくかが、神経組織(脳脊髄など)の発達とその働きから論じられていく。評者の言葉でまとめれば、生まれて、自分をとりまくさまざまな事物・事象に出会った漠然とした印象(気づき)が、成長し経験を積み重ねるなかで、徐々に具体的なイメージとなり、言語化されて自分のうちに記憶として収納され、個(性)を形成し、社会生活を営むようになるか(また、現に営んでいるか)が、著者独自の言葉(表現)で論じられ説明されていく。

とは言っても、読んでの印象は難解ではない。独自の表現が必要なのは、そうでないと説明できない機微があるからであって、誤魔化すためではない。そして、その説明はたいへん興味深い。

また、その論議はたいへんスケールが大きい。「今・ここ」に生きる私という存在は、初めの「いのち」以来の時間の流れをすべて引き受けて存在しているというような話も出る。あくまでも印象に過ぎないが、「神経心理学者」として知識を披瀝するレベルを超えている。ご自身はそう気づいておられないかもしれないが、宗教的信念の表明、「悟り」を示すレベルになっているように感じられる。

最終章では、禅の鈴木大拙が取り上げられ、「霊性」について語られる。その関係でいくと、『十牛図』の最後に「入鄽垂手(ニッテンスイシュ)」という「悟り」の段階、レベルがある。『ウィキペディア』によると「悟りを開いたとしても、そこに止まっていては無益。再び世俗の世界に入り、人々に安らぎを与え、悟りへ導く必要がある」と説明されてあるが、本書は、科学的解説のもとに、神経やこころを付与してくださった高次の存在へ導くものと“結果として”なっている。

2018年6月15日にレビュー

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

  • 作者: 山鳥 重
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 新書



物質と記憶 ― 身体と精神の関係についての試論 (新訳ベルクソン全集(第2巻))

物質と記憶 ― 身体と精神の関係についての試論 (新訳ベルクソン全集(第2巻))

  • 作者: アンリ ベルクソン
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 単行本



観の目――ベルクソン『物質と記憶』をめぐるエッセイ

観の目――ベルクソン『物質と記憶』をめぐるエッセイ

  • 作者: 渡仲 幸利
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/12/14
  • メディア: 単行本


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〈「気づく」とはどういうことか ──こころと神経の科学〉山鳥 重著 ちくま新書 [心理学]


「気づく」とはどういうことか ──こころと神経の科学 (ちくま新書)

「気づく」とはどういうことか ──こころと神経の科学 (ちくま新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: Kindle版



今までとは異なるアプローチで(と、書いたものの、評者にとって新奇というだけなのかもしれないが)、こころの問題に迫っている。神経(過程)とこころ(心理過程)とは如何なる関係にあるか。それが、因果関係ではなく、「創発」という言葉で括られる。「感情」や「知性」「意志」について語っていくが、このようなカタリをしている本は初めてだ。著者自身「与太話」などといって話を進めていくのだが、たいへん大きな可能性のある研究に出会った気分だ。

以下、目次

プロローグ

第1章 「こころ」という偶然なるもの
こころは脳の活動か? / 偶然によって「いのち」は生まれた / DNAは「いのち」とおなじなのか?/ 神経系が可能にしたもの / 「こころ」は因果性で説明しづらい / いのちの創発、こころの創発 / 物理化学法則にしばりをかける

第2章 感情と心象、そして意志
心理過程は本人しか分からない / 知性と感情と意志に分ける

1 感情
情動性の感情 / 感覚性の感情 / コア感情

2 心象
感覚性の心象 / 「かたち」が経験されると物理的なかたちにできる / 音をこころがかたちにする / 経験の性質により感情は変わる / 超感覚性の心象 / 語心象 / 音と経験をつなぐ

3 意志
運動には意識されない心理過程が共存している / 意志が「こころの力」を制御する

第3章 少しだけ神経系の話
すべてはニューロンのつながり / インパルスはどうやって受け渡されているのか / 神経系の原理的構造 / 潜在的行動を「見える化」する / 最外層系が行為を生み出す / ヒトに特徴的な連合野

第4章 記憶
いのちの「今」、こころの「今」 / 記憶の3つの側面

1 アクション(心理過程)の記憶

2 出来事の記憶
すべての経験は出来事として記憶される / 意識的に思い出す記憶は疑わしい

3 意味の記憶
意味が経験されるとき / 抽象的意味も感情とともに記憶される

第5章 こころ・意識・注意
経験の定義

1 こころ
「何か」と「何か」を関係づけようとする働き / 知らないことを想像する力 / コア感情は「わたし」そのもの

2 意識
意識できる量は限られている / 広がりと深さが理解のカギ

3 注意
夢の中でも自分のこころの出来事に気づいている / 注意することでこころのバランスを制御する

第6章 「わたし」にしか「わたし」に気づけない

1 こころの自己回帰性
人間も動物も「わたし」に気づく / 主体と対象の切るに切れない関係

2 こころの完結性
神経が壊れてもそれ相応のこころがすべて / 「気づく」も「気づかない」もない状態 / 分離脳ではこころも分離

第7章 こころは常に揺れている

過去もこころの「今・ここ」にある / こころの構造の復習 / すべては意識の準備状態にある / 1つ1つがその場で発生する / あちこちで立ち上がるから集中は難しい / いのちの歴史はつながっている / 個体発生の歴史は細胞に刻印されている / こころがこころの歴史をなぞる / いのちはリズムに乗っている

第8章 知性と霊性

1 知性
感覚性の心象も記号として働く / 「思う」「考える」という経験 / 言葉にならなくてもこころの創造力は発揮される / 「完全な忘我」と「明瞭な自意識」は表裏一体 / アクションが「こころ」を一杯に満たす

2 霊性
こころの芯はコア感情とアクション

エピローグ


「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

  • 作者: 山鳥 重
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: 新書



対談 心とことばの脳科学 (認知科学のフロンティア)

対談 心とことばの脳科学 (認知科学のフロンティア)

  • 作者: 山鳥 重
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2006/04/01
  • メディア: 単行本



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『声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』 山﨑 広子著 NHK出版新書 [心理学]


声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (NHK出版新書 548)

声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (NHK出版新書 548)

  • 作者: 山﨑 広子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 新書


声そのものに注意を向けた、根源的な内容

魅力的な声(歌声)を得るためのヴォイストレーニングの本は多く出版されている。そして、それに励む方は少なくないが、本書はもっと根源的な内容だ。ふだん発話する声そのものに注意が向けられる。そして、声そのものを魅力あるものとするための方法が示されていく。自分の声に自覚的であることによって、自分本来の声をもつことの大切さが示され、また、発話者のまるごとの人生をあらわす声の(自・他への)影響力のほどが示される。そうしたことどもが、脳科学などとの関係から、論じられる。

「適応障害」など軽度の精神疾患に悩まされている方にとっては、癒しのヒントを得るものとなるように思う。また、そうでないにしても、自分自身であり、自分の人生を生きることは、誰にとっても重要だが、そうするうえでの大きな助けとなるように思う。

少し引用してみる。《作り声や周囲に迎合する声は、頑張れば頑張るほど真実性から離れていきます。いくらかわいらしい声を出していても、あるいは誠実さをアピールしても、できる人ふうの声を出してみても、そこには必ず「真実性とかけはなれたもの」が透けて聞こえてしまいます。 / 言葉ではなく、容姿でもなく、声の真実性が判断を左右し、心を動かすのは、聴覚が受け取った「本物の声(オーセンティック・ヴォイス)」が、脳内で本能を司る旧皮質へと届くからです。それが聞き手の感情を揺り動かし「有無を言わせぬ影響」を与えるのです。 / 人の心に届かない声とは、大脳辺縁系(旧皮質)が無視、あるいは拒否してしまう声です。恒常性に適った真実性のある声は心を動かし、作り声や自分を生きていない声は、心に届かない。・・後略・・p175.176》

(以下、「目次」・章立て)

第1部 声はあなたのすべてを晒す
第1章 聴覚、脳の驚くべき仕組み
第2章 病気になるとどうして声が変わるのか
第3章 あなたの声は社会によって作られている

第2部 人を「動かす」声の力
第4章 教会の天井はなぜ高いのか
第5章 政治家の声はどこまで戦略的?
第6章 ブルーハーツの歌はなぜ若者の心をつかんだのか

第3部 自分を「変える」声の力
第7章 どうして人は自分の声が嫌いなのか
第8章 私たちの「本物の声」とは
第9章 自分の声を定着させるには
第10章 声はあなたの人生の味方

2018年6月8日にレビュー

「からだ」と「ことば」のレッスン (講談社現代新書)

「からだ」と「ことば」のレッスン (講談社現代新書)

  • 作者: 竹内 敏晴
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1990/11/16
  • メディア: 新書



ことばが劈(ひら)かれるとき (ちくま文庫)

ことばが劈(ひら)かれるとき (ちくま文庫)

  • 作者: 竹内 敏晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1988/01/01
  • メディア: 文庫



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『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』 山崎広子著 NHK出版新書 [心理学]


声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (NHK出版新書 548)

声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (NHK出版新書 548)

  • 作者: 山﨑 広子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 新書



「声」という言葉から連想するのは・・・

『銀河鉄道の夜』にでてくる「セロのような声」。

たぶん、賢治の念頭には、神の存在があったろう。


新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

  • 作者: 宮沢 賢治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/06/19
  • メディア: 文庫



聖書によると、

燃える柴のなかから語りかける「声」もあった。それは、モーセが経験したことだ。

預言者エリヤは、イゼベルから逃れて、たどり着いたホレブの洞窟で、「穏やか​な​低い​声」を聴く。

列王第1 19:9には次のようにある。

そこで​彼​は​ついに​ある​洞くつに​入っ​て,そこで​その​夜​を​過ごそ​う​と​し​た。すると,見よ,彼​の​ため​に​エホバ​の​言葉​が​あっ​て,こう​言っ​た。「エリヤ​よ,何​の​用​で​ここ​へ​来​た​の​か」。

https://wol.jw.org/ja/wol/b/r7/lp-j/Rbi8/J/1985/11/19#study=discover


『声のサイエンス』には、聖書やコーランなどの「声」をめぐる宗教的論議もでていて、面白い。

それでも、この本から得られる一番の収穫物は、自分の声を取り戻す方法についての記述だろう。

自分が自分でないとき、自分の声も自分のでなくなっている。そのことに、気づき、調整する方法が示されている。

どんなときでも、自分自身であることができるというのは、貴重な財産である。C・G・ユングも、愛する妻の死に際して、「自分自身であらねばならない」と言ったと聞く。

どんな場合でも、自分自身でありつづけるバロメータとして「声」を用いる方策が示されている。


舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本


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「はじまりが見える世界の神話」植 朗子編著 創元社 [心理学]


はじまりが見える世界の神話

はじまりが見える世界の神話

  • 作者: 植 朗子
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2018/04/20
  • メディア: 単行本


世界の神話を網羅的に知ることができる

世界や人類の「はじまり」の物語を網羅的に知ることのできる本。世界20地域の神話を、各地域を専門とする先生方が執筆している。

これまで、ギリシャ、ローマ、日本、北欧の神話しか知らない評者にとっては新鮮であった。北欧神話にしても、その「解説」には、〈「北欧神話は、英語では“Norse mythology”という、“Norse”は 「ノルド語の」、あるいはそのノルド語を話していた「ノース人の」を意味する。「ノルド語」の別名は「北ゲルマン語」。・・略・・簡単に言えば、「北欧神話」とは「北ゲルマン神話」ということになる。〉〈注意すべきは、日本でいう「北欧」は、右に記した「北ゲルマン」の範囲を超えているということだろう。・・〉とあって、啓発される。

実際のところ、各地域の神話といっても、文献や語り部によって異動があるだろうし一筋縄では括れないように思うが、よく簡略にまとめたと思う。各解説者も、そのあたりの事情を踏まえたうえで、解説してくれているので、大筋でそういうお話が通用しているのだなと理解することができる。

各神話は、6ページで構成されている。最初の見開き2ページは、阿部海太さんの挿画。これはじっくり見ているとその神話世界に招かれる感がある。それから、3ページが神話の中身、お話。そして、最後の1ページは解説となっている。全体に文字が小さめで見ずらいが、小型の絵本のような版形ではしようがないなと思う。逆に、よくこのカタチのなかに、これだけの中身を収めたものだと思う。

人間は、やはり自分や世界の「はじまり」を知りたがる動物なのだと思う。その好奇心でうずまく心を静めるために世界中の人間がいろいろな神話をつくりだしてきた。そのいろいろを絵本のようにして手軽に知ることのできる本書は得難いものに思う。

2018年5月22日にレビュー

世界神話事典 創世神話と英雄伝説 (角川ソフィア文庫)

世界神話事典 創世神話と英雄伝説 (角川ソフィア文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2012/03/24
  • メディア: 文庫



ラルース ギリシア・ローマ神話大事典

ラルース ギリシア・ローマ神話大事典

  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: 単行本



北欧・ゲルマン神話シンボル事典

北欧・ゲルマン神話シンボル事典

  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2021/08/20
  • メディア: 単行本



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『 深く考える力 (PHP新書)』 田坂 広志著  [心理学]


深く考える力 (PHP新書)

深く考える力 (PHP新書)

  • 作者: 田坂 広志
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/02/17
  • メディア: 新書


「深く考える力」の主体は、自我(エゴ)ではない

本書で取り扱われる「深く考える力」の主体は、自我(エゴ)ではない。語られているのは、潜在意識についてである。当該書籍中、分析心理学の創始者C・G・ユング、日本におけるユング心理学の紹介者であり権威である河合隼雄が話題に取り上げられる。また、「変成意識」や「トランスパーソナル心理学」についてもふれられる。著者のいう〈誰の中にもいる「賢明なもう独りの自分」〉は、ユングのいう「老賢者(wise old man)」に相当するかもしれない。

その「賢明なもう一人の自分」は、「我々の想像を超えた素晴らしい能力を持」ち、その能力は①論理思考を超えた「鋭い直観力」であり、②データーベースを超えた「膨大な記憶力」である、と著者はいう。

本書のなかで、その実在性が、遠藤周作の小説などで示される。遠藤は、小説中、殺す予定の人物を、「賢明なもう独りの自分」の声にしたがって、殺すのをやめた、という。

これは本書中に取り上げられていないが、しばらく前にNHK総合テレビの番組で、作家の石田衣良が短時日での童話創作を依頼され、「賢明なもう独りの自分」の助けを得て、難なく創作を果たしたようすが示されていた。石田自身、自分の潜在意識中のナニカとの交流のなかで創作活動していることを認めていた。

しかし、そういう存在をおおやけに認めるのは危険である。オカシナ人間あつかいされかねない。嘲笑の的にもなる。今回、本書で、東京大学工学部原子力工学科卒業者でひろく、その知性の高さを知られている著者によって、その存在が明らかにされたことは、その能力を広く知らしめるうえで大いに評価されるべきことのように思う。いわば、庶出の子、私生児を堂々と認知したようなものである。(以下、目次から)

第1部 賢明なもう一人の自分(深く考える力とは、心の奥深くの自分と対話する力)
誰の中にもいる「賢明なもう一人の自分」 / 文章に表すと、「賢明なもう一人の自分」が囁き出す / 「賢明なもう一人の自分」の持つ不思議な能力 / 我々の能力の発揮を妨げる「無意識の自己限定」 / 考えを文章に表すことは、「もう一人の自分」への呼びかけ / 考えるだけで、「もう一人の自分」が現れてくるようになる / 「もう一人の自分」は、異質や正反対のアイデアに刺激を受ける / 「もう一人の自分」は、自問自答に、そっと耳を傾けている / 「もう一人の自分」は、「問い」を忘れたとき、考え始める / 「もう一人の自分」は、追い詰められたとき、動き出す / ・・以下省略・・

2018年4月28日にレビュー

ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)

ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/05/15
  • メディア: 文庫



無意識と出会う ユング派のイメージ療法—アクティヴ・イマジネーションの理論と実践1

無意識と出会う ユング派のイメージ療法—アクティヴ・イマジネーションの理論と実践1

  • 作者: 老松 克博
  • 出版社/メーカー: トランスビュー
  • 発売日: 2004/05/05
  • メディア: 単行本



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『謎解き錯視 傑作135選』 ジャンニ・A・サルコーネ作 創元社 [心理学]


謎解き錯視 傑作135選

謎解き錯視 傑作135選

  • 作者: ジャンニ・A・サルコーネ
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2015/05/21
  • メディア: 単行本


隠されたモノを探すことを楽しむ本

「イントロダクション」の冒頭、「見つけるとは、そこにすでにあるものを取り出す過程にすぎない」というフロイトの言葉が示されている。そして、「この本で我々は、隠されたりカムフラージュされたりしている画像とかくれんぼをして遊ぶことになる」と書籍発行の意図が示される。「遊ぶことになる」課題は全部で135用意されている。

「イントロダクション」で、芸術作品にみられる「隠し絵」の歴史とその手法が示される。ダ・ヴィンチも作品として残しているらしい。また、その手法と関連して「図地現象」「ステガノグラフィー」「セマグラム」「閉合の法則」「プレグナンツの法則」「埋没図形検査」「ムーニー・フェイス・テスト」「ゴットシャルトの隠し絵テスト」「視野失認」「パレイドリア」といった用語が登場する。(ほかに、「不可能図形」「図地反転錯視」「双安定性錯視」「曖昧図形」「自発的逆転」「だまし絵」「アナモルフィック図形」などが本文中に出てくる)。しかし、その説明は非常に簡単である。それゆえ、「錯視」に関する理屈を詳しく知りたい方は別の書籍をさがしたほうがいい。

本書はあくまでも実際に課題を解き、隠されたモノを探すことを楽しむ本である。課題の中には、探し出すのに15分かかった人もいるとの報告のある課題もある。難易度は実にいろいろで、時間制限がかけられて解く課題もある。ゲームとして課題を解いていく楽しみがあるわけだが、では家族で(子どもと共に)楽しめるかというと、少々エロティックな画像もあるので、その点注意が必要だ。

2018年3月27日にレビュー

錯視完全図解―脳はなぜだまされるのか? (Newton別冊)

錯視完全図解―脳はなぜだまされるのか? (Newton別冊)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2007/09/27
  • メディア: 大型本



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「すごい行動力」加藤俊徳著 朝日新聞出版 [心理学]


1万人を診た脳内科医がすすめる すごい行動力

1万人を診た脳内科医がすすめる すごい行動力

  • 作者: 加藤 俊徳
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2023/01/20
  • メディア: Kindle版


脳を8つの機能部位に分ける「脳番地」という考えを提唱する著者による「行動力」を身に着けるためのトレーニング本。

「行動力がない(と自覚する)人」は、要するに脳が(ある行動において)「フリーズ」しているのだという。パソコンがフリーズしたという時のそれである。そうならないためには、自分の脳番地の得意・不得意を自覚し、各番地を無理なく鍛え、連携を強化するのがいいという。

その点で、腕立て伏せを初めて行うときのたとえが興味深い。どんなに運動能力・筋力のある人でも生まれて初めて腕立伏せを行おうとする時にはとまどう(すなわちフリーズする)。なぜなら初めてだからである。それをデキルようになるためには、動作を分解し、動きを体に覚えこませ、そして練習する必要がある。そのようにして「自分がデキルことに気づ」くことによって難なく動くことができるようになるという。この事例は、「型」を身に着ける必要のある運動競技に携わる人であればすぐ理解できる話である。ただ著者は、それは「カラダが動きを覚えた」のではなく「脳が動きを覚えた(脳の回路ができた)」からだという。型の習得に全身の協力が必要なように脳の協力も必要であるということになろう。

以上の点は、興味深く読んだが、当該書籍の多くの部分は(たぶん著者の本をこれまで読んでこられた方ほど)既視感のつよい内容なのではなかろうか。要するに、各脳番地を強化トレーニングすることに主眼が置かれている。それでも、なるほど、そのようにすれば、もっと行動力のある人間になれるのだろうという期待を持つことはできるように思う。

評者は、脳の出力入力双方にかかわる脳番地として「視覚系」「感情系」がかかわっていること、これはとりもなおさず脳全体の協力連携においてとりわけ重要であることを意味するであろうことを知ることができたのは収穫である。ちなみに各脳番地は以下のようになっている。著者は上5つをアウトプット系、下5つをインプット系としている。

運動系脳番地:カラダを動かす時に働く
思考系脳番地:何かを考えたり、判断したりする時に働く
伝達系脳番地:コミュニケーションを通じて意思疎通を行う時に働く
視覚系脳番地:目で見たことを脳に集める時に働く
感情系脳番地:喜怒哀楽などの感情を受け取ったり、自分の気持ちを表現したりする時に働く
理解系脳番地:物事や言葉など、与えられた情報を組み合わせて理解し、応用する時に働く
聴覚系脳番地:耳で聞いたことを脳に集める時に働く
記憶系脳番地:情報を脳に蓄積させ、使いこなすために働く

習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか

習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2023/02/14
  • メディア: 単行本



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