アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ) 岸見 一郎著 [心理学]
アドラーの主要著書の解題でありダイジェスト
アドラーの主要著書の解題でありダイジェスト。読んだことの無い人には、良い読書案内であり、読んでいなくても「じっくり読」んだ気にさせてくれる本。これまで、読んだ気になっていた人は、解釈上の注意すべき点を喚起され、不確かな点を正されもする本。社会のなかで、おなじく欠点弱点のある他者とつながって、共に生きていこうという気にさせてくれる本。
ちなみに、評者はアドラーの著作を(その入門書もふくめ)読んだことが無い。これまでもっぱらユングに親しんできた。が、本書を読んで、アドラーの大きな影響力・可能性を感じている。社会生活を営むうえで読者自身と社会にあたえる有用性という点で、である。とりわけ、精神状態が安定していて、社会貢献の気持ちがあり、対人関係における自分の弱点を理解して、それを正そうとの意志と行動力をもつ人であれば、なおのこと有用であろうと思う。感覚としては人生をポジティブに生きるよう励ます社会学者加藤諦三の著作を読んでいる気分である。
本書中に紹介されているアドラーの主要著作を、本書を案内書として、読んでみるのはいい。(しかし、邦訳によるアドラー全集は出ていないもよう)。紹介されているアドラーの著作は、目次に従えば以下のようになる。(実際の目次では、著書名とコメントが逆になっている。また、序章と10、11章が伴う)。
1章 『個人心理学講義ーー生きることの科学」(アドラー心理学の独創性) 2章 『生きる意味を求めて』(大切なのは「これから」) 3章 『人生の意味の心理学』(遺伝や環境のせいにするな) 4章 『人間知の心理学』(汝自身を知れ) 5章 『性格の心理学』(タイプ分けにご用心) 6章 『人はなぜ神経症になるのか』(人生の課題から逃げる人たち) 7章 『教育困難な子どもたち』(子どものためにできること) 8章 『子どもの教育』『子どものライフスタイル』(罰でもなく、甘やかしでもなく) 9章 『個人心理学の技術 Ⅰ 伝記からライフスタイルを読み解く』『個人心理学の技術 Ⅱ 子どもたちの心理を読み解く』(自分自身を受け入れるには?)
2018年10月26日にレビュー