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「数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで」瀬山 士郎著  [数学]


数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで (ブルーバックス)

数学にとって証明とはなにか ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで (ブルーバックス)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/22
  • メディア: 新書



上記書籍からすこし引用してみる。

「本書は、数学の証明とはなんなのか、またその技法にはどんなものがあるのか、などを、いくつかの典型的なそして美しい証明を鑑賞することで説明しようという試みです。

証明を鑑賞することは、美術や音楽を鑑賞するのに似ています。本物の証明に触れることが、証明とは何かを理解する手がかりにもなります。それは、たとえ自分では絵を描けなくても、名画を鑑賞することで、何が名画なのかを心の中に刻み込むことができる、作曲はできなくても、一流の音楽を鑑賞することで、音楽に対する感性が養われるのに似ています。(p5)」

それからブルバキ『数学原論 集合論』(前原昭二ほか訳、東京図書、第1巻序文)の引用がなされる。

「ギリシャ人以来、数学とはすなわち証明である:或る人々によれば、証明というものは、この言葉がギリシャ人から付与されたところの、そしてまたわれわれがここでそれに与えようとしている正確にしてかつ厳密なる意味においては、数学以外には見いだし得ないものなのではあるまいかとさえ考えられている。証明の意味は昔からけっして変わっていない、ユークリッドにとっての証明は依然としてわれわれの眼にも証明である」

ブルバキ数学原論 集合論1

ブルバキ数学原論 集合論1

  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 単行本


ついでながら、本書「おわりに」の終わりから(以下、引用)

この世界をよく知るために

数学という形式は、この世界を記述する言語の1つです。そして、数学が言うところの「この世界」とは、現実の宇宙を含むさらに広い人の想像力の世界です。数学は想像力の世界を数学記号という言語と論理を駆使して調べていく学問です。

ところで、言語には文法と意味があります。文法を知らないと、数学という言語を使ってこの世界を記述することができません。子どもたちが学ぶ数学はこの文法の最初の一歩です。数字という記号から始まって、記数法、たし算、かけ算の記号の使い方、文字の使用、・・・と数学の文法は広がっていきます。しかし、文法だけでは本を読むことができません。本を読むためには記号(単語)の意味を知り、単語同士のつながりである熟語の意味を知り、その単語や熟語がどのような文脈の中でどういう意味で使われているのかを知る必要があります。たし算とはなにかけ算とはなにか、から始まり、方程式、関数など、記号の意味は広がっていきます。

私たちは日頃使う言葉の意味を改めて考えることは少ない。それらは空気のように私たちを取り巻いていて、それと意識せずに言葉を使いこなしています。しかし、なにかの場合、その言葉の意味に立ち返る必要があることもあります。数学記号という言語も同じです。数学の場合、ごく普通の人は日常生活で数学用語を駆使することは少ないでしょう。ということは、不断に心がけないと、記号の意味を見失ってしまうのです」。

数学記号はこの世界をよく知るために人が考え出した言葉の1つです。これほどうまく作られた人工言語はない、と言ってもいいかもしれません。言葉には意味があります。その意味を追いかけることが証明の本質的な部分だと私は考えます。読者の皆さんが数学の証明を、あたかもSFかミステリを読むように楽しんでくださることを心から願っております。(p243-244)


なっとくする数学の証明 (なっとくシリーズ)

なっとくする数学の証明 (なっとくシリーズ)

  • 作者: 瀬山 士郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


はじめに

第1章 証明とはなんだろうか
1.1 証明はお好き?
1.2 証明ってなんだろう
1.3 公理とは
1.4 算数にも証明はあるのか
1.5 証明の2つの側面
1.6 もう少し数学教育の話――抽象と具体

第2章 証明のさまざまな技術
2.1 論理の3つの姿――演繹、帰納、仮説
2.2 演繹論理
2.3 帰納論理
2.4 数学的帰納法――帰納論理か演繹論理か
2.5 仮説論理
2.6 「ならば」という言葉
2.7 背理法

第3章 命題と論理記号
3.1 記号論理学からの注意
3.2 トートロジーという名の正しさ
3.3 演繹論理、帰納論理、仮説論理、背理法再説
3.4 鳩の巣論法

第4章 算数の中の証明をもう一度
4.1 計算も1つの証明
4.2 算数の中の証明

第5章 証明の花形――初等幾何学の証明
5.1 図形教育の難しさと幾何の証明の面白さ
5.2 仮説論理再説――初等幾何学の面白さとは
5.3 江戸川乱歩の幾何学問題
5.4 補助線を考える
5.5 当たり前であるということ
5.6 円周角不変の定理
5.7 ピタゴラスの定理
5.8 プトレマイオスの定理
5.9 2等辺三角形の底角定理
5.10 構成的証明と非構成的証明

第6章 無限に挑戦する――解析学の証明
6.1 無限という怪物
6.2 存在定理
6.3 中間値の定理
6.4 不動点定理とは

第7章 式は語る――代数学の証明
7.1 方程式の解の公式
7.2 方程式の解と区間縮小法

終わりに――数学にとって証明とはなにか

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