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『迷わず書ける記者式文章術』 松林 薫著 慶應義塾大学出版会 [日本語・国語学]


迷わず書ける記者式文章術:プロが実践する4つのパターン

迷わず書ける記者式文章術:プロが実践する4つのパターン

  • 作者: 松林 薫
  • 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 単行本


本書自体が「記者式文章術」の有用性を示すもの

新聞業界に入社した新人は、配属先での仕事の合い間に先輩からマン・ツー・マンの指導を受ける。そして、〈半年から1年ほどで「商品になる文章」を〉書けるようになる、という。本書は、これまで業界内に「囲いこまれて」きた書き方の技術・ノウハウを一般に公開したもの。

副題にある「4つのパターン」とは、新聞記事の構成に関して用いられる〈ニュースは「逆三角形」、論説は「三部構成」、コラムは「起承転結」、長めの企画記事は「起承展転結」〉という型のこと。それらは、いわば標準化された既成の部品で、それらの組み合わせで新聞記事全体はできている。〈記者は原稿を書く際に、作家のようにどんな表現をするかで悩む必要はありません。あらかじめ決まったラインナップの中から「選ぶ」だけなのです。(p22)〉その書き方のルールさえ知ることができれば、「誰でも簡単にマネができ」、〈レポートや報告書からエッセイまで幅広い文章〉に応用できる。

本書には、「4つのパターン」だけでなく、経験の裏打ちのある多くの情報がでている。本書自体が記者式文章術の有用性を示すものとなっている。たいへん読みやすく、実践的でもある。

2018年4月19日にレビュー

メディアを動かす広報術

メディアを動かす広報術

  • 作者: 松林薫
  • 出版社/メーカー: 宣伝会議
  • 発売日: 2021/07/06
  • メディア: 単行本


**********

(以下、『迷わず書ける記者式文章術』からの引用)

〈新聞記者にとって本当に大変で時間がかかるのは、「埋もれている情報を発掘して裏をとる」という技術の習得であって、「文章を書く」ことではないのです。(p5「まえがき」)

〈日常会話では、こうした「当たり前」のことはいちいち確認しません。問い返さず「察する」のが常識的な態度だからです。しかし、記者はここで察してはいけないのです。相手にバカだと思われても、こうした点を一つ一つ、潰していかなければなりません。それが「裏をとる」ということなのです。・・略・・そうした体験を通じて、「馬鹿になる」ことの大切さを知ります。 / 一般の人は自分が信じている情報を疑うことはほとんどありません。「そこは常識や想像力で捕らよ」という無言の圧力に負けて、あいまいな情報の確認を怠りがちです。しかし、あえて疑って調べてみると、自分が何も知らないことに気づくことはよくあるのです。この「無知の自覚」を持っているかどうかが、記者とアマチュアの最大の違い「無知の自覚」を持っているかどうかが、記者とアマチュアの最大の違いといっていいかもしれません。(p51「取材の方法」)〉

〈私が新聞記者になって最初に配属されたのは、ニュース部門ではなく、週刊誌のように1週間、1ヶ月単位で記事を書く解説部門でした。しかし指導にあたった先輩からは、原稿を書くときは、「この分量なら何分で書け」といった制限を設けられました。文章を書く技術を早く習得したければ、こうした(締め切りの)習慣を身につけたおいた方がいいでしょう。(p65「設計図を描く」)〉

〈私も記者時代、これから書く原稿についての説明が要領を得ないと、先輩やデスクに「要するに何が書きたいんだ。一言で言ってみろ!」と怒られたものです。このときの「一言で言った答え」が見出しになるわけです。 / もっとも、読者が紙面やネットで目にする見出しは、記者が執筆前に考えたものではありません。[原稿を書くための見出し]と、[読者に読ませる見出し]は違うのです。前者を「仮見出し」と呼び、完成版の記事につける見出しと区別します。この点については後述します 。(p70「設計図を描く」)〉

〈例えば、社会問題について論じ、政府の責任を指摘した後に、「とはいえ、国も問題に気づいていないわけではない」などと、政府が不十分ながらも対策に乗り出している事実を紹介する段落を入れたりします。一方的な主張にならないよう、全体のバランスを取るわけです。記者はこれを「抑え」と呼んでいます。中立性や公平性が求められる文章では、こうしたパートが重要になります。(p84「設計図を描く」)〉

〈実は、長い文章が書けない人は、この(5W1Hの)順位づけの作業をおろそかにしているケースが大半です。こうした価値判断は執筆作業に入る前に済ませておくべきであり、そうでなければ書き始めてから迷うことになります。設計の段階で、この作業を終えていることが前提になります。(p105「設計図を描く」)〉

〈ただし、こうしたフレーズは、記者の間では「ナリチュウ(成り注)」と呼ばれ、避けるべき表現とされています。かつてどんな記事でも「成り行きが注目される」で締めていた時代があったことの名残です。この手の紋切り型表現を使うと、文章の雰囲気が凡庸になります。何も言っていないに等しいので、論点も拡散してしまいがちです(p115「文を書く」)〉。

〈(読み手に頭を使わせないとは) 急いで付け加えれば、これは「読者に深く考えさせない」という意味ではありません。その逆で、構文や筆者の意図を読み解くことに力を割かなくてよければ、テーマ自体について深く考えてもらうことができるのです。(p118「読みやすい文章とは」)〉

〈新米の新聞記者は、「さらに」「したがって」といった接続詞を使わずに文章を書くよう練習します。 / 単純に「文章を短くできる」というメリットもありますが、より重要な理由は接続詞を使わずに書くと、文章の流れを意識するようになるからです。接続詞なしでも違和感なく読める文章は、論理展開が自然で、読み手にとっても流れがスムーズに感じられるのです。 / 裏返せば、接続詞を削ると文の流れが不自然になる文章は、関連性の低い文や段落を無理やり結びつけている可能性があります。(p150「推敲する」)〉

「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方

「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方

  • 作者: 松林薫
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: 単行本



新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

  • 作者: 松林 薫
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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『日本の英語、英文学』 外山 滋比古著 研究社 [日本語・国語学]


日本の英語、英文学

日本の英語、英文学

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


著者は英語・英文学の危機に、人工知能の脅威に立ち向かう

「教養英語」より「実用英語」が重視され、大学から「英文科」が消えているという。ながらく英語教育に携わってきた著者は、英語・英文学の危機に立ち上がる。執筆の動機を次のように記す。「何としても、英語、英文学の伝統を消したくないが、できることは限られている。個人としてできることは、これまでの百年に、英語、英文学がなしとげたことをふり返ってみることであると考えるようになって、この本を書くことにした。(〈あとがきにかえて〉新生へ向けての回想)」

そして、さらに昨今「広く知的文化をおびやかすもの」となっている人工知能という強敵にも立ち向かう。「新しい英語、英文学は、案外、人工知能に対してつよいかもしれないということを証明すれば、語学は新しい時代の先頭に立つことができる」「新しい、おもしろい、創造的思考力を育むには、やはり、外国語の学習が、大きな力をもつのではないか。こういうことを本気で考えている。(〈あとがきにかえて〉新生へ向けての回想)」

当該書籍のなかで、著者は、外国語学習が「人工知能に対してつよい」ことを証明してみせた(と言っていいように思う)。また、英文科のないイギリスに渡って先進的な「文学論」を記した夏目漱石をはじめ、英語・英文学教育の歴史のなかで記憶に留めるべき名をおおく示している。南日恒太郎、小野圭次郎、山崎貞、I・A・リチャーズ、ウィリアム・エンプソン、福原麟太郎、山路太郎、岩崎宗治、ラフカディオ・ハーン、エドマンド・ブランデン、岡倉由三郎、岩崎民平、木原研三、石橋幸太郎、大塚高信、安井稔、荒木一雄、冨原芳明といった名である。さらに、その中には、「百年の歴史を誇り、日本でもっとも創刊の早かった雑誌の三つのうちの一つと言われた『英語青年』」の編集を担った著者の名:外山滋比古も含めることができるにちがいない。

2017年12月11日に日本でレビュー

「ε-δは苦にならなかった。トゥキュディデスの複文をほぐす作業に比べればおちゃのこさいさいだったのだ」
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30-1

*************

実用英語が教養英語を攻撃するとき、まず英文法が槍玉に上がったこともあって、日本の文法は力を失った。しかし、それとともに、英語好きも減ったことに気づく人はすくなかった。



実用英語によって、文法教育の影がうすくなるとともに、英語に対する知的興味も下がったことは重大である。学校文法は間接的ながら、日本人の思考力を支えるものであったからである。この文法のもつ思考への影響力については、ドイツ語のほうが英語を上回っていた。ドイツ語を専攻した人たちは、一生、その名残をとどめることが多かった。

いずれにしても、学校文法は、それが学んだ人間の思考力を色濃く染めるということを、外国語教育にかかわるものは考えなくてはならない。

イギリスから伝えられた英文法はたいへんよく出来ていた。イギリスが植民地をひらき、そこをみな英語圏にしてしまったのは目ざましいことであったが、原動力のひとつに“英文法”があったことを認める人はすくない。
p50.51「文法」

*******

英文解釈法は、ただ、英語の参考書であっただけでなく、日本人の思考形成に深い影響を及ぼしている。そのことを知らない人がすくなくない。

「・・のみならず、・・もまた」「あまりにも・・で、・・ない」「・・にはあまりにも・・である」などという日常の言い回しは、英文解釈が教えたものである。その影響は思いのほか大きい。

p60「英文解釈」

*********

NI(Natural Intelligence「自然知能」の略、AI Artificial Intelligence「人工知能」に対する語)、自然知能を考えれば、外国語学習はまったく新しい可能性をおびることができるようになる。NIの不備を補完することである。頭のはたらきをよくする、ことばの学習である。

外国語によるNIの強化、伸長ということを中心に考えれば、会話ができる、手紙が書ける外国語力など問題にならない。母国語だけでは伸ばすことのできない能力を掘りおこし、知能を新しく伸ばす語学は、人間を変えることができる。

まず“解釈力”である。外国語を学ぶことで、解釈力が養われる。母国語では、わからないことがすくない。疑問をいだくことがすくない。解釈を必要とすることも、外国語に比べてはるかにすくない。

外国語を学ぶことで、解釈力は大きく伸びる。

解釈は複数の意味をもっていることに基づいている。意味はひとつ、という考えの母国語では深い思考活動が困難であるのは、すでに明らかになりつつある。

外国語教育における第一の問題は、この解釈力である。これをNIのなかへ入れている人と、そうでない人との頭のはたらきがまるで違うようである。

解釈力についで、外国語の習得によって得られるのが、“思考力”である。母国語は記憶力中心であるのに対して、解釈を要する外国語は思考によるところが多く、思考力を高める。

まったく外国語を知らない人は、思考に弱いことが多い。即物的思考はともかく、想像的思考は外国語によって強化されることが多い、と想像される。

思考力は数学などによって養われるというのは誤解である。案外、外国語能力によってすばらしい思考力がつく。

(2段落・省略)

そう言えば、寺田寅彦は生涯、つぎつぎいろいろな外国語を勉強していたことが知られている。もちろん実用が目的ではない。外国語の文法を学ぶことで思考力を磨いていたらしい。

つまり、外国語学習は母国語だけのNIの欠点を補うことができる、ということであり、知的活動の原動力になることができる。役に立たないどころか、たいへん有用であることがわかる。

外国語を学べば、もって生まれた(natural)言語能力を高めるだけではない。生まれつきの知能を伸ばすことができる。それとともに思考力全体が高められ、頭がよくなるのである。語学は“役に立つ”のである。

以上p141-144「知識・思考・創造」から抜粋

自分の頭で考える (中公文庫)

自分の頭で考える (中公文庫)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/02/23
  • メディア: 文庫



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『三省堂国語辞典のひみつ: 辞書を編む現場から 』 飯間 浩明著 新潮文庫 [日本語・国語学]


三省堂国語辞典のひみつ: 辞書を編む現場から (新潮文庫)

三省堂国語辞典のひみつ: 辞書を編む現場から (新潮文庫)

  • 作者: 飯間 浩明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/01/28
  • メディア: 文庫


「三国一」の国語辞典を紹介する本

『三省堂国語辞典(略して「三国」)』の編集の現場にいる飯間 浩明氏が、『三国』の編集方針や使い方について教示する本。国語辞典は、自社・他社ともに多く発行されているが、そのチガイを示す本。そして、『三国』を(できれば第一に)利用するよう勧める本。

『三国』の編集方針「基本姿勢は、あくまでも、現代語(の全体)を鏡のように映し出す辞書を作ること(p39、97)」。「およそ現代語なら、どんな材料でも等しく採集対象(p40)」とし、その「材料」には、「落語や時代劇のことば」、「新聞の短歌・俳句欄の古風なことば」、「インターネット掲示板やツイッターで交わされる俗語、珍語、よく分からないことば」など現に流通している言葉、そして「これから現代日本語として定着するかもしれないことば」が入るという。そのような方針で採集された中には、大型辞典にも掲載のない場合もあり、《新聞・出版界など辞書をよく利用する人たちの間には、「『広辞苑』にない言葉は『三国』を引けばある」という話が冗談まじりに交わされている(「『広辞苑』は信頼できるか」講談社 p203)》そうである。

当初、『三国のひみつ』を読んでいて、つらく感じた。その説明が自分の感覚と合わないのである。「現代語の(全体)を映し出す」鏡の前に立って、自分の古さを痛感させられたようだ。たとえば、「号泣」の説明を読んで、それはないだろうと思った。そこには、「号泣」②の例文として「静かに号泣する」が挙げられていた(p70)。「号泣」は、本来、声をあげて泣くもののはずである。しかし、その語釈の表記に〔俗〕とあるのをよく理解していなかったことが「それはないだろう」の理由であることが後に分かった。『俗語と話しことばのチガイ(p264~)』のところで、〔俗〕の意味が、「公式の場では使いにくく、テレビのニュースではなおさら使いにくいことば」「また、まともな生活を送っている人はふつう口にしない、卑語や隠語の類いも〔俗〕に入ります」と記されてあった。そして、再び先の説明に戻って(「号泣」②を〔俗語〕として取り上げた理由)、「誤用と言うにはあまりにも広まった用法であり、非公式の場でならば、ごくふつうに使われることばだと考えるに至ったからです。/ 第6版の時点から第7版の時点のわずか数年で、『号泣』の②の勢力はそれほどにも強くなっていたのです」を読んで納得した。要するに「号泣」②の用法は、社会的に是とされているわけでも、編集サイドで容認しているのでもなく、あくまでも、「現代」における一勢力として広まっていることを示したに過ぎないということが分かったのである。「号泣」②は、そのような中のほんの一例にすぎないのであろう。『三国』を見ると、そのような事例を多く見出すことができるのだろう。それは、いわば現代語の勢力地図を示すものであり、把握するものともなるのだろう。古い人間にとっては、「現代」における新たな勢力に遭遇する、覚悟を決めるうえでの助けとなるにちがいない。

三省堂の国語辞書というと、『大辞林』『新明解』を思い浮かべ、書店で『三国』を見ると、その存在意義を疑問に思ったりもしたものだが、本書を読んで、了解した。見直したと言っていい。その語釈の説明に《「にやり」の新明解、「すとん」の三国》とあるが、たいへんコンパクトな辞書に、「現代」が「すとん」と詰め込まれているのが『三国』であることも分かった。本書を読んで、『三国』は三省堂のナンバー1の国語辞書、三国一の国語辞典と言っていいかも・・・と、いま思っている。

2017年3月15日にレビュー

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2013/12/11
  • メディア: 単行本



新明解国語辞典 第七版

新明解国語辞典 第七版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2011/12/01
  • メディア: 単行本



大辞林 第三版

大辞林 第三版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2006/10/27
  • メディア: 大型本


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『日本語で一番大事なもの』 大野 晋・丸屋才一 中公文庫 [日本語・国語学]


日本語で一番大事なもの (中公文庫)

日本語で一番大事なもの (中公文庫)

  • 作者: 大野 晋
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/12/21
  • メディア: 文庫


本書には、辞典や文法書には収めきれない内容が盛られている

古語辞典編纂者で日本語の権威 大野 晋と J・ジョイス研究家であり作家・翻訳家でもある丸谷 才一による"異色対談"程度に思って手にしたのだが、その中身は「日本語で一番大事なもの」をめぐるこく深いものであった。

「日本語で一番大事なもの」とは助詞・助動詞をさす。つまり「てにをは」のことである。それが日本語の特徴であることは以前から聞いてきた。それで、古書店から『古典語現代語 助詞助動詞詳説 松村明編(學燈社)』など購入したが、まったくの積読状態であった。

本書の「解説1990」で大岡信はいう。《「てにをは」が日本詩歌の鍵をにぎっている・・/ 日本語が微妙な揺れ、陰影に富んだ表現を得意とするのも、「てにをは」の精妙な働きのためである》。本書は《「てにをは」の重要性と面白さを徹底追及した本で、かつてこのような機智と説得力に富んだ文法の書が書かれたことは一度もなかったと言っていい》。

本書には、辞典や文法書には収めきれない内容が盛られている。逆をいえば、これだけの濃くふかい内容をカットしたうえで辞典やテキストは成立しているということだ。特に、「日本語で一番大事なもの」が歴史上どのように変遷してきたか、文法事項としてある区分・用語に括られまとめられてはいるものの例外もあって説明のむずかしいものなどの話が、よい対話者である丸谷によって引き出されていく。日本語から見える日本人の思考様式もあぶりだされる。

大岡は最後にいう。《この本を読んで文法好きになる青年たちがたくさん出たら大したことだと思うが、私はまた、学校で文法にはつくづく参らされた思い出をもつ実にたくさんの元生徒、元学生たちが、この本を読んで得るであろうものの大きさにも、愉快な気持ちで思いを馳せずにはいられない》。

2017年3月6日にレビュー

古典基礎語辞典

古典基礎語辞典

  • 作者: 大野 晋
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2011/10/20
  • メディア: 単行本



岩波 古語辞典 補訂版

岩波 古語辞典 補訂版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1990/02/08
  • メディア: 単行本


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『文章が変わる接続語の使い方』 沖森 卓也著 ベレ出版 [日本語・国語学]


文章が変わる接続語の使い方

文章が変わる接続語の使い方

  • 作者: 沖森 卓也
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2016/12/13
  • メディア: 単行本


とにかく例文の豊富なことに驚く

本書は、《品詞分類にこだわらずに、事柄をつなぐ働きをする言い方を一括して『接続語』と呼ぶことに》する立場から記されている。それで、指示代名詞の「これ」「それ」「あれ」「どれ」、副詞の「むしろ」、さらに索引をみると《「では」から転じた『じゃ』『じゃあ』》《指示語「それ」を付した『それでは』》など会話語や文語表現など派生した言い回しも取り上げられている。

とにかく例文の豊富なことに驚く。(ちなみに、本書中で「とにかく」は、《「ともかく」に比べて、途中の議論や証明は省くといった、結論を急いで強引に物事を進めようとする主観性の暗示があります》と解説されている。強引でスイマセン・・)。

「ああ、こういう言い回し、使い方もあった」と思い出す意味でも、一度通読しておくのはいいことに思う。そして、文章作成やプレゼンテーションの準備に際して、辞書として引くにもたいへん有用に思う。

著者は、接続語を4つの型、全体で18に分類する。

1 展開型(後文に続ける)

*前後で矛盾しない内容を述べる
条件を仮に設定して述べる(仮定)「そうすれば」「そうすると」
順当な帰結を述べる(帰結)「すると」「それであれば」
原因を示して結果を述べる(因果)「だから」「「それで」

*前後で矛盾する内容を述べる(逆接)「けれども」「ところが」

*物事の進行するようすを述べる
別の事柄を重ね加えて述べる(累加)「それから」「それに」
物事が続いて起こるようすを述べる(継起)「そこで」「それで」

*前文をまとめる
出来事を総括して後に続ける(経緯)「こうして」「それでは」
すでに決まっている結論を述べる(規定)「いずれにせよ」

2 列挙型(前文と同等の内容を続ける)

*同種の事柄を並べる
対等の関係で並べて述べる(並立)「および」「ならびに」
どれかが該当するように述べる(選択)「または」「もしくは」
同じ内容を別の言い方で言い換える(換言)「すなわち」「要するに」
実例やたとえを用いる(例示)「たとえば」「言うならば」

*対比・比較して述べる(比較)「一方」「これに対して」
*順序立てて並べる(順序)「第一に」「まず」

3 補足型(前文に対して従たる内容を付け加える)

*条件や例外を述べる(制限)「ただし」「なお」
*関連する事柄を付け加える(補足)「もちろん」「ついでながら」
*根拠を後で述べる(根拠)「なぜなら」「それというのも」

4 転換型(前文とは別の話題を述べる)

*別の話題に移る(転換)「ところで」「さて」

2017年2月17日にレビュー

「接続詞」の技術

「接続詞」の技術

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2016/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



日本語全史 (ちくま新書)

日本語全史 (ちくま新書)

  • 作者: 沖森卓也
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/04/28
  • メディア: Kindle版



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『日本語とジャーナリズム (犀の教室)』 武田 徹著 晶文社 [日本語・国語学]


日本語とジャーナリズム (犀の教室)

日本語とジャーナリズム (犀の教室)

  • 作者: 武田 徹
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2016/11/25
  • メディア: 単行本


日本語の特性、それによって形づくられるジャーナリズムとは・・

日本語の特性を明らかにする興味深い論考。本書で指摘されている点を意識するなら、新聞・雑誌という(メディア・媒体)器がどれほどのものか了解したうえで、見、聞きできる。底がどの程度のものか分かる。ジャーナリスト(志望者)でないにしても、(生きていくなかでは、誰もが他者に向って自己を明らかにしていく必要があるわけだが、日本語を用いる)一個の発信者として、自己を確立していく上で(困難な道のりではあるが)助けとなるにちがいない。

著者は学生時代の思い出から論議をはじめる。(以下に示す目次を見れば誰であるかわかるが)これまで日本語、ジャーナリズムについて考え発信してきた人々の論考を、著者は自分の経験にそって解き明かしていく。それは、スリリングな内容だ。そう感じるのは、いくばくなりとも、著者が問題意識を抱いた筆者たちの論考を(評者も)見聞きする機会があったものの、明瞭に把握せぬままきたことが関係している。いわば、謎であったことが、解き明かされたのである。評者にとって本書は感謝にたえない内容といえる。

著者自身にとっても、たいへんコアな内容といっていいだろう。これまでもジャーナリストとして生活されてきた中で、つねづね考えてきたことであるにちがいない。日本語の「外へ」出るために、ジャーナリズムの「中で」四六時中苦闘してこられたにちがいない。そして著者は、「外へ」出るための指針も示してくれている。本書中取り上げられている論考自体たいへん興味深いものなので、目次中にあげられている人々を知らない方であればなおさら読んでみることをお勧めしたい。(以下、目次)

はじめに 1:日本語は批評やジャーナリズムの道具となりえるか(詩人とジャーナリスト、言葉が喚起するもの、荒木(享)先生のこと、文章を書く仕事、「彼」ではなく「氏」)

2:命題がたてられないーー森有正の日本語論(荒木先生と森有正、経験と体験、生成文法意味論では語れない、二人の「間」にある言語、鈴木孝夫の自称語と対称語、命題がたてられない、時枝誠記の日本語論、森有正の肉声、日本語なりの論理性)

3:論理的なのか、非文法的なのかーー本多勝一の日本語論(『日本語の作文技術』は教科書、本多とラガナの森有正批判、森の「現実嵌入」論、ずれていく論点、日本語がもつ法則、「わたしはさかなだ」を説明する、解けない疑問,二項対立、神の視点、事実をよりよく伝える、客観報道と主観報道、事実,真実,本質)

4:「である」ことと「する」ことーー佐野眞一、丸山真男、荻生徂徠(「する」型社会となっているか、早すぎた近代人,荻生徂徠、荻生徂徠の言語観、行為動詞があてはまらない、行為的な言語活動として)

5:国語とジャーナリズム(方言では通じない、漢語と口語体の新聞文体、小説における言文一致体、国家と国語と、言葉づかいが階層をあらわす、民主化の時代のジャーナリズム)

6:無署名性言語システムの呪縛ーー玉木明のジャーナリズム言語論(ジャーナリズムと言語システム、言葉はモノの名前か?、現代言語学が届かない、「無署名性言語」の発明、「思われる」と「みられる」、誰もがそう思うはず、イエスの方舟事件、「正しさ」の罠、ニュー・ジャーナリズムの可能性、武器としての三人称)

7:中立公正の理念とジャーナリズムの産業化ーー大宅壮一と清水幾太郎(大宅壮一のジャーナリズム気質、中立公正の理念と産業化、清水幾太郎とジャーナリズム、粕谷一希が語る大宅と清水、綜合雑誌の役割、直接行動への強い希求、大宅と清水の日本語観、「が」がもつ曖昧さ、関係依存型の新聞言語)

8:「うち」の外へ、日本語の外へーー外岡義男の日本語論(『日本語の外へ』の冒頭、湾岸戦争、すべて I から始まる、父の英語、一人称をもたない日本語、言語の自然な本性、I ではなく,「うち」、消えない光、核の傘の下で、時制をもつ言語と,もたない言語)/ おわりに

2017年1月18日にレビュー

日本語の外へ (角川文庫)

日本語の外へ (角川文庫)

  • 作者: 片岡 義男
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫



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"「大人ことば」で穏やかに話す" 山崎 朋子著 日本法令 [日本語・国語学]


「大人ことば」で穏やかに話す

「大人ことば」で穏やかに話す

  • 作者: 山崎 朋子
  • 出版社/メーカー: 日本法令
  • 発売日: 2016/09/20
  • メディア: 単行本


ビジネス、プライベートで、「大人ことば」は有効

人間関係に潤いをもたらす会話の方式=「大人の言葉づかい」。それを踏まえた言い回し=「大人ことば」と著者はいう。

ビジネスや日常の場面でのいかにもありそうな例がとりあげられる。会話やメールのやりとりの中での言葉・言い回しの誤用が指摘、正され、解説が加えられていく。なかには、たいへん切実で誰もが知りたいのではないかと思われる例もある。『上階の騒音への抗議』からは、挨拶する程度の知り合いで、のちのちの生活にもからんできそうな人との扱いにくい問題を、良好な関係を維持しつつ解決していく上で、「大人ことば」が有効であることが示される。他には、『年下リーダーへの依頼』、『重要顧客の接待』、『目上の方のご自宅を訪問』、『被災地の仕事関係者との交信』、『初めてのお茶会に招かれて』という場面が取り上げられる。自分は、すでに社会人として十分「大人」であると思う方にとっても、新たな気付きがあることと思う。

著者は歌舞伎に造詣が深く、歌舞伎演目を取り上げつつ「察すること」「分をわきまえること」について記す。たいへんな愛好家であることが伝わってくる文章で、読み物としてもたのしい。

2016年11月22日にレビュー

目次

序 大人の言葉づかいが必要とされる時代
「大人の関係」を築くための「大人の言葉づかい」
大人に求められる語彙力
乱暴表現では会話は成り立たない
コミュニケーションには最低限の礼儀が必要
ようこそ、「大人ことば」の世界へ

破 「大人ことば」への転換法
初級編 中級編 上級編
(上記、事例が、ビジネスシーン、プライベートシーン 全6例)

急 スマートに話す技術
「察する」ことが大人の作法
「分をわきまえる」と美しい
説得力は正確な言葉に宿る
言葉づかいは「心づかい」

付録 私的解釈「大人ことば」用例集



「ことば」は「こころ」―もっと「日本語」が上手になりたい人へ (講談社ニューハードカバー)

「ことば」は「こころ」―もっと「日本語」が上手になりたい人へ (講談社ニューハードカバー)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 単行本



日本語の教室 (岩波新書)

日本語の教室 (岩波新書)

  • 作者: 大野 晋
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/09/20
  • メディア: 新書



日本語の磨きかた (PHP新書)

日本語の磨きかた (PHP新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/11/04
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



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『語彙力こそが教養である 』齋藤 孝著 角川新書 [日本語・国語学]


語彙力こそが教養である (角川新書)

語彙力こそが教養である (角川新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 新書


石黒圭氏の『語彙力を鍛える』と併せて、語彙力増強に努めたい

著者自身の語彙取得の経験、さらには、大学での授業における出来事、テレビ出演や対談等で得た知識をもとに、あらたな言葉を学び、自分のものとすることの大切さ、増し加えていく方法が示される。それは単に、試験でいい点を取ろうとか、カッコよく見せようなどという目先のことだけでなく、日本の教養レベル全体の底上げを意図してさえいる。そのことは、巻末で、「モテ」の基準を刷新し、イケメンではなく真に教養のある(語彙の連鎖が環を為し、知識の連合によって自分の世界・歴史「観」を語りうるような)男性を愛するよう、女性や周囲の者に勧めていることからもわかる。

共感をもつことのできる、わかりやすい論議がなされていくが、斎藤先生の著書をずっと読んできた者にとっては、冗長の感がないでもない。語彙を増やす方法自体は、目次を見ればおおよそ見当がつく。本書を一読して、「語彙力」増強の必要性を肝に銘じ、新たな語彙習得の動機付けを得たなら、石黒圭氏の『語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング』を手元に置いて、(もちろん、金銭に余裕のある方は、両書を入手して)語彙の量・質の習得、増強に努めることをオススメしたい。

2016年11月14日にレビュー

以下、引用

そしてもうひとつ、言文一致を促進させた要因があります。それは、「速記」の技術が高まったことでした。

速記自体は古代ギリシャで始まったと言われていますが、日本に輸入され、実際に使われ始めたのが明治に入ってから。その影響で、伝説的とも言える噺家、三遊亭圓朝が自らの落語を口演筆記させて『怪談牡丹燈籠』を速記本として売り出しました。圓朝は古典落語をまとめただけでなく、新作落語にも精力的に挑戦していた、超人気の落語家です。この速記本は非常によく売れ、大衆に親しまれ、言文一致運動の後押しになったのです。口演筆記は、まさに言文一致の極みですからね。漱石はおそらくこの速記本の存在に影響され、あのような言文一致にいたったのではないか、と私は思うのです。

ペンネームの由来が「くたばってしまえ」でおなじみの二葉亭四迷も圓朝の速記本に影響を受け『浮雲』を書いた。幸田露伴は「明治文学にに最も功労がある人物」として圓朝を挙げている。三遊亭圓朝は、陰ながら、「現代日本語の祖」かもしれません。

圓朝の速記本は今も、『圓朝全集』として読むことができます。明治時代の「喋りの語彙」を味わっていただくには、うってつけの材料です。

以上、p169-170  (「圓朝と漱石とゲーテ」 第4部 8つの訓練で「使える語彙」にする)

*************


語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/05/19
  • メディア: 新書



三遊亭圓朝の明治 (朝日文庫)

三遊亭圓朝の明治 (朝日文庫)

  • 作者: 矢野 誠一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/08/07
  • メディア: 文庫



おれの師匠―山岡鐵舟先生正伝

おれの師匠―山岡鐵舟先生正伝

  • 作者: 小倉鐵樹
  • 出版社/メーカー: 島津書房
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



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《 「接続詞」の技術 》 石黒 圭著 実務教育出版 [日本語・国語学]


「接続詞」の技術

「接続詞」の技術

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2016/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


本書はさながら接続詞の「博物館」。接続詞「習熟」の助けとしたい

ぱっと見て、哲学者:野矢茂樹東大教授の著書『論理トレーニング101題』を思い出した。その第1章には、「言葉と言葉の関係において、論理は姿を現わす。文と文の関係、パラグラフとパラグラフの関係、そこに論理展開が現われ、整合性が問われもする。そして言葉と言葉のつながりを明示する言葉が、接続表現である。// それゆえ論理は接続表現に示される」とある。そして、「接続表現を明示する」言葉、接続詞に注意深くあるよう促され、練習問題を解き、トレーニングを積むなかで、論理の力を強化するよう仕向けられる。たいへん人気のある本で、発行後15年経つ今日('16/10/18)でもアマゾンのカテゴリ論理学・現象学のベストセラー 1位は『論理トレーニング101題』である。論理の力が社会的に要求され、論理的でありたいと願う方がたくさんいることの証しだろう。

しかし、そのトレーニング問題(101題)をすべて満了した方はどれほどいるだろうかと思う。当方は、中途挫折したままである。本書は、野矢さんの本に比べれば格段にやさしい。中学生でも、全問挑戦し(25問ほど)、満了できるのではないだろうか。

本書には、接続詞が単なる論理関係を明示するだけのものではなく、発想や表現の幅を広げる役割をもつなどの知見も示されている。それは、前著『文章は接続詞で決まる』(光文社新書)に既述のことかもしれない。それでも、『あとがき』を見ると「(著者自身の)接続詞の研究が進み、前著を書いたころには気づいていなかった接続詞のさまざまな現象を掘り起こすことができ、その成果を本書に反映させることができた」とあるので、前著既読の方も、得られるものは多いように思う。

実際読んでそう思うが、著者の述べるとおり「本書はさながら接続詞の博物館で」ある。「本書をつうじて、ぜひ多様な接続詞の用法に習熟し、これまでとひと味違う、読み手に優しい文章を自在に生みだせる書き手を目指してください」と(『はじめに』に)勧められている。たしかに、接続表現、接続詞に意識的であることによって得られるものは大きい。本書を、座右に置いて「習熟」の助けとしたい。

2016年10月18日にレビュー

論理トレーニング101題

論理トレーニング101題

  • 作者: 野矢 茂樹
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 2001/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

  • 作者: 野矢 茂樹
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本



文章は接続詞で決まる (光文社新書)

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

  • 作者: 石黒圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/09/17
  • メディア: 新書


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『語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング』石黒 圭著 光文社新書 [日本語・国語学]


語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/05/19
  • メディア: 新書


語彙(の量・質)を増強することに、意識的であることの大切さ

中学・高校生向けの英語辞書(英和辞典)をみると、語彙を増やせるようにとの親切な配慮がなされている。一つの単語を調べると、類義語や反意語も示されている。しかも、ソレが一語ではなく、特別枠がもうけられて、意味の微妙な相違を示しつつ、複数取り上げられていたりする。ソレらに思いを向けるならば、“自然に”語彙を増やせるようになっている。『豆単』(『赤尾の豆単』旺文社)で、英語を学びはじめた者としては、イイ時代になったものだなと思う。

“自然に”と記したが、そう思うのは、年の功であろう。しかるべき年を閲したゆえに、ソレが親切な配慮だとわかるのだ。学習当時は、ただただ、ソコに書いてあるので、「そうかコレが同意語(反意語)か」と思ってきただけである。それでも、やはり、そうこうしているうちに、同意語、類義語、反意語に“意識的”であることによって、語彙を増やすことができることに気づくようになる。意識的であることの大切さが分かる。

前置きが長くなったが、いい本だ。もちろん、本書のことだ。多年を経ても、意識することができないできた、語彙(の量・質)を増強するための視点・方法を本書は提供している。「語彙とは何か」の説明から始まり、量を増やす方法、質を強化する方法が示されていく。量については 2章で、質については 3章で扱われる。

説明には、著者の実生活のなかでの知見も示される。子どもたちとの会話のなかで得たものもいくつか示されて、ほほ笑ましい。流石に、こうした本を書く人だけに、言葉について意識的であることよとつくづく思う。身の回りのささやかなところからも言葉を掬い取る、こうした、意識があるからこそ、多くの方法を提供することができるのだろう。

2016年8月22日にレビュー

◎目次

はじめに 言葉が思考を規定する

第一章 語彙についての基礎知識

(一)語彙について考える
(二)理解語彙と使用語彙

第二章 語彙の「量」を増やす

(一)類義語を考える
(二)対義語を考える
(三)上位語と下位語を考える
(四)語種を考える
(五)文字種を考える
(六)書き言葉を考える
(七)専門語を考える
(八)方言を考える
(九)新語と古語を考える
(十)実物を考える
(十一)語構成を考える

第三章 語彙の「質」を高める

(一)誤用を回避する
(二)重複と不足を解消する
(三)連語の相性に注意する
(四)語感のズレを調整する
(五)語を適切に置き換える
(六)語の社会性を考慮する
(七)多義語のあいまいさを管理する
(八)異なる立場を想定する
(九)語の感性を研ぎ澄ませる
(十)相手の気持ちに配慮する
(十一)心に届く言葉を選択する

あとがき/参考文献/索引


「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/03/18
  • メディア: 新書



文章は接続詞で決まる (光文社新書)

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

  • 作者: 石黒圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/09/17
  • メディア: 新書



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