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『迷わず書ける記者式文章術』 松林 薫著 慶應義塾大学出版会 [日本語・国語学]


迷わず書ける記者式文章術:プロが実践する4つのパターン

迷わず書ける記者式文章術:プロが実践する4つのパターン

  • 作者: 松林 薫
  • 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 単行本


本書自体が「記者式文章術」の有用性を示すもの

新聞業界に入社した新人は、配属先での仕事の合い間に先輩からマン・ツー・マンの指導を受ける。そして、〈半年から1年ほどで「商品になる文章」を〉書けるようになる、という。本書は、これまで業界内に「囲いこまれて」きた書き方の技術・ノウハウを一般に公開したもの。

副題にある「4つのパターン」とは、新聞記事の構成に関して用いられる〈ニュースは「逆三角形」、論説は「三部構成」、コラムは「起承転結」、長めの企画記事は「起承展転結」〉という型のこと。それらは、いわば標準化された既成の部品で、それらの組み合わせで新聞記事全体はできている。〈記者は原稿を書く際に、作家のようにどんな表現をするかで悩む必要はありません。あらかじめ決まったラインナップの中から「選ぶ」だけなのです。(p22)〉その書き方のルールさえ知ることができれば、「誰でも簡単にマネができ」、〈レポートや報告書からエッセイまで幅広い文章〉に応用できる。

本書には、「4つのパターン」だけでなく、経験の裏打ちのある多くの情報がでている。本書自体が記者式文章術の有用性を示すものとなっている。たいへん読みやすく、実践的でもある。

2018年4月19日にレビュー

メディアを動かす広報術

メディアを動かす広報術

  • 作者: 松林薫
  • 出版社/メーカー: 宣伝会議
  • 発売日: 2021/07/06
  • メディア: 単行本


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(以下、『迷わず書ける記者式文章術』からの引用)

〈新聞記者にとって本当に大変で時間がかかるのは、「埋もれている情報を発掘して裏をとる」という技術の習得であって、「文章を書く」ことではないのです。(p5「まえがき」)

〈日常会話では、こうした「当たり前」のことはいちいち確認しません。問い返さず「察する」のが常識的な態度だからです。しかし、記者はここで察してはいけないのです。相手にバカだと思われても、こうした点を一つ一つ、潰していかなければなりません。それが「裏をとる」ということなのです。・・略・・そうした体験を通じて、「馬鹿になる」ことの大切さを知ります。 / 一般の人は自分が信じている情報を疑うことはほとんどありません。「そこは常識や想像力で捕らよ」という無言の圧力に負けて、あいまいな情報の確認を怠りがちです。しかし、あえて疑って調べてみると、自分が何も知らないことに気づくことはよくあるのです。この「無知の自覚」を持っているかどうかが、記者とアマチュアの最大の違い「無知の自覚」を持っているかどうかが、記者とアマチュアの最大の違いといっていいかもしれません。(p51「取材の方法」)〉

〈私が新聞記者になって最初に配属されたのは、ニュース部門ではなく、週刊誌のように1週間、1ヶ月単位で記事を書く解説部門でした。しかし指導にあたった先輩からは、原稿を書くときは、「この分量なら何分で書け」といった制限を設けられました。文章を書く技術を早く習得したければ、こうした(締め切りの)習慣を身につけたおいた方がいいでしょう。(p65「設計図を描く」)〉

〈私も記者時代、これから書く原稿についての説明が要領を得ないと、先輩やデスクに「要するに何が書きたいんだ。一言で言ってみろ!」と怒られたものです。このときの「一言で言った答え」が見出しになるわけです。 / もっとも、読者が紙面やネットで目にする見出しは、記者が執筆前に考えたものではありません。[原稿を書くための見出し]と、[読者に読ませる見出し]は違うのです。前者を「仮見出し」と呼び、完成版の記事につける見出しと区別します。この点については後述します 。(p70「設計図を描く」)〉

〈例えば、社会問題について論じ、政府の責任を指摘した後に、「とはいえ、国も問題に気づいていないわけではない」などと、政府が不十分ながらも対策に乗り出している事実を紹介する段落を入れたりします。一方的な主張にならないよう、全体のバランスを取るわけです。記者はこれを「抑え」と呼んでいます。中立性や公平性が求められる文章では、こうしたパートが重要になります。(p84「設計図を描く」)〉

〈実は、長い文章が書けない人は、この(5W1Hの)順位づけの作業をおろそかにしているケースが大半です。こうした価値判断は執筆作業に入る前に済ませておくべきであり、そうでなければ書き始めてから迷うことになります。設計の段階で、この作業を終えていることが前提になります。(p105「設計図を描く」)〉

〈ただし、こうしたフレーズは、記者の間では「ナリチュウ(成り注)」と呼ばれ、避けるべき表現とされています。かつてどんな記事でも「成り行きが注目される」で締めていた時代があったことの名残です。この手の紋切り型表現を使うと、文章の雰囲気が凡庸になります。何も言っていないに等しいので、論点も拡散してしまいがちです(p115「文を書く」)〉。

〈(読み手に頭を使わせないとは) 急いで付け加えれば、これは「読者に深く考えさせない」という意味ではありません。その逆で、構文や筆者の意図を読み解くことに力を割かなくてよければ、テーマ自体について深く考えてもらうことができるのです。(p118「読みやすい文章とは」)〉

〈新米の新聞記者は、「さらに」「したがって」といった接続詞を使わずに文章を書くよう練習します。 / 単純に「文章を短くできる」というメリットもありますが、より重要な理由は接続詞を使わずに書くと、文章の流れを意識するようになるからです。接続詞なしでも違和感なく読める文章は、論理展開が自然で、読み手にとっても流れがスムーズに感じられるのです。 / 裏返せば、接続詞を削ると文の流れが不自然になる文章は、関連性の低い文や段落を無理やり結びつけている可能性があります。(p150「推敲する」)〉

「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方

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  • 作者: 松林薫
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: 単行本



新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる!

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  • 作者: 松林 薫
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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