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『ペンの力』 浅田次郎×吉岡忍 対談 集英社新書 [マスメディア]


ペンの力 (集英社新書)

ペンの力 (集英社新書)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/01/17
  • メディア: 新書


「三島(由紀夫)の落とし子のような(p43)」会長・元会長による「言論・表現の自由」をめぐる対話

日本ペンクラブは、ロンドンに本部を置く国際ペン(International P・E・N)の日本センター、いわば支部。その現会長(吉岡忍)と前会長 (浅田次郎)の言論・表現の自由をめぐる対談本。

国際ペン(International P・E・N)は、第一次世界大戦後の1921(大正10)年〈敵味方で戦ったヨーロッパの小説家や詩人たちが一堂に会したとき、何だ、どっちの国、どっちの陣営でも、いざ戦争となったら自由にものが言えない、書けない状況だったのか、その結果が、この無残な荒廃か、と気がついたところから始まります。そして、「戦争のとき、まず犠牲になるのは真実だ。とにかく言論・表現の自由を守ろう」といって始まった。(p152、吉岡)〉

対談は、自衛隊市谷駐屯地で割腹自殺を遂げた三島由紀夫事件をもって始まる。ふたりは、それぞれ後に、自衛隊・入隊の経験がある。〈吉岡:三島由紀夫は1970年の事件のとき、クーデターを呼びかけて、その場の自衛隊員からさんざん野次を浴びせられたけど、いまはどうなんだろう。日報は隠される、文民統制は曖昧、大臣答弁はごまかし、という現在は、現場のフラストレーションも溜まっているんじゃないですか。それがクーデターの導火線にならないとも限らない、と僕は感じるんですけど。 浅田:いまは危ないよ。よっぽど、いまのほうが危ない。僕は、ずっと防衛大臣が、あの人(稲田朋美前防衛相)だったということが信じられなかった。指揮能力があるとは思えないから。 / で、僕らがそう感じ、一般国民の多くもやはりそう感じていたことについて、一番ストレスを抱えていたのは、たぶん、現職の自衛官でしょう。そして、・・・(p54)〉。また、〈浅田:・・・。安倍晋三首相が、この間の安保法制の論議で在留邦人の保護と言ったときに、どこかで聞いた言葉だなと思ったんだ。その昔は居留民保護と言った。 吉岡:そう、そう。 浅田:昔からね。上海事変の出兵だって、居留民保護って、最初に言った。あれは、理由として、言っちゃいけないと思う。もちろんわかるよ。でも、居留民保護というのは、きわめて容易に出兵の理由となる(p119)〉といった、昨今の政治状況を反映した対話がなされる。

小林秀雄が盧溝橋事件が起きたあとに書いた『戦争について』というエッセイ。そこに示された「日本に生まれた以上、この戦争は試練だ、運命として引き受けよう」という内容をめぐって、〈吉岡:うーん、これは厄介ですよ。暴支膺懲っていう大陸浪人風の言辞とは違って、もっと情緒的というか、日本の歴史をひっくるめて、心情的に包み込んでしまうようなところがあるでしょう。乱暴なところは全然なくて、何か花鳥風月を愛でるような運命論ですよ。啖呵を切るような歯切れのよさもあってね。この小林秀雄の論は、インテリには相当受けたと思う。・・・もう始まってしまった戦争なんだ、とやかく言ってもしようがない、「これは運命だ」と。「われわれは国民として、この運命を引き受けて生きよう」って。こういうニュアンスのものを読むと、いつも僕は違和感を感じるんですね。 / 僕は、国家と自分を一体化しない。政府と自分とは意見が違っていいし、権力や国家から自分をどう切り離すかということは、近代人としての最低限の倫理だと思うんだけれど、これを運命という一語でくっつけ、二つを一つにされてしますと、それは違うでしょう、と言いたくなる。 / あれだけのインテリの小林秀雄がいきなり論理をなくして、こういうことを言い始めているのをみると、ちょっと愕然としたな。(p125,6)〉というような、戦時下における言論の状況を回顧する対話もある。関連して、石川達三の『生きてゐ兵隊』の内容をめぐる自衛隊演習経験に基づく分析や従軍「ペン部隊」のカネの話も興味深い。

政治家の弁論についての文脈では〈浅田:言葉の力っていうのは、全体的に弱くなっているんじゃないかな。これも日本ペンクラブが指摘しなければいけないことかもしれないんだけれども、何かこう決められた言葉を、決められたようにしか言えなくなって、語彙が貧困になって、表現力が貧困になっている感じっていうのは、すごくあります。(p92)〉。また、権力についての論議では、〈吉岡:気をつけなくてはいけないのは、彼らはいつも現状打破、改革者の顔をして成り上がってくる、ということなんです。ヒトラーですら、第一次世界大戦で打ちのめされたドイツ人の前に、「貧困を救え」「若者よ、社会に参加しろ」「自然を守れ」と叫び、熱狂をあおってきたんですからね。 / それにあおられちゃいけない。熱狂に巻き込まれない。そういうことを考えなくちゃいけないんじゃないか、と僕は思っているんです(p221)〉。

全般に、言論・表現を担った文学そのものについてというより、それを統制し圧力をかけた権力や社会、そして民衆について語る内容である。日本ペンクラブの倶楽部時代からの歴史も示されている。

2018年4月17日にレビュー

河合・大江・谷川が「日本語」について語る
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2014-03-20

利いた風な口を利くのが嫌いで『本当にそう思うの?』と、常に『肉声』を求めていました」〉
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2012-09-02


コレクション戦争×文学 全20巻+別巻1 (11巻~20巻+別巻1セット)

コレクション戦争×文学 全20巻+別巻1 (11巻~20巻+別巻1セット)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/04
  • メディア: 単行本


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『ミルコの出版グルグル講義』 山口ミルコ著 河出書房新社 [マスメディア]


ミルコの出版グルグル講義

ミルコの出版グルグル講義

  • 作者: 山口ミルコ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本


本の誕生、そして死と再生について多くを知ることのできる本

おしゃれな本だ。表紙、見返し、栞紐、みなピンク基調である。中身は、出版・編集とは如何なるものかを示す本。「講義」とあるがエッセイとしてしつらえてある。著者は、藤原紀香と旅をしてその著作の手伝いもした売れっ子編集者。出版社を退社すると同時に乳癌になる。闘病、療養、その後大学講師の仕事が舞い込む。月収3万円の非常勤講師としてである。そのため、これまでもっぱら本の誕生に立ち会ってきた元編集者は、その死の現場に取材に赴く。書店から返品された大量の本は工場で断裁し薬液で溶かすのだ。そのように本は死んで、生まれ変わり、再生紙となって新たな本となる。本はそのようにしてグルグルを繰り返す。

著者は、大学での講義、学生とのつきあい、休暇を利用してロシアに出かけることなど身辺のことにふれながら、本書のできるまでを記す。そのようにして、出版の世界についてそれとなく「講義」していく。その中には「書店まわり」「直取引」「委託制度」「再販制度」などなどの話しも出る。また、増刷「10万部」や「著者」ではない著者のことなど裏話しも出る。

本の誕生、そして死と再生について多くを知ることのできる本だ。

2018年3月22日にレビュー

似合わない服

似合わない服

  • 作者: 山口ミルコ
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2017/08/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



重版未定

重版未定

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/11/26
  • メディア: コミック



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『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕: 花田 紀凱vs門田隆将 PHP新書 [マスメディア]


『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕 (PHP新書)

『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕 (PHP新書)

  • 作者: 花田 紀凱
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2017/12/17
  • メディア: 新書


両誌のビッグなOBによる対談

「週刊文春」を代表して花田紀凱、「週刊新潮」を代表して門田隆将。ふたりのビッグなOBによる対談本。互いへのふかいリスペクトが感じられ心地いい。内容を、評者なりに要約するなら、以下のようになる。

「文春砲」で名をはせる「週刊文春」。しかし、それは先に創刊された「週刊新潮」を模倣し作り上げてきたものだ。新聞社とは異なり取材経験の無いなか、記者クラブに入ることもなく、さまざまな権力の中に人脈を見出し築きながら、世界に類のない紙面をもつ「告発型ジャーナリズム」をつくってきた。その先鞭を取った「週刊新潮」には齋藤十一、「週刊文春」には池島信平がいて、彼らの個性が両誌を特徴づけてきた。これまでスクープし、多くの人にファクトを提供し、溜飲を下げさせるものとなってきた事例は多い。しかし、互いにライバルとして競ってきた両誌だが、インターネットで情報を入手できる今日、両誌共にカゲリが出ている。情報はタダという考えが広まり、売れ行きは落ち、売れ行きを上げるために発するスクープはテレビワイドショー的内容となり、また、新聞・テレビ=メディアと同じ渦の中でシリウマに乗るような記事を掲載する。渦の中を見下ろして、「チガウダロー」と声をあげるような高い「見識」を感じさせるものがなくなった。情報ビッグバンの時代、両誌とももはや存続できないかもしれない。しかし、週刊誌がなくなるなら、政府機関など権力の垂れ流す情報だけになってしまう。ほんとにそれでいいのだろうか。しかし、まだ「週刊文春」「週刊新潮」で鍛えられた人材・取材力をもつ記者たちはいる。ネット時代にどう対応できるか。この時代ならではの「告発型ジャーナリズム」をどのように立ち上げることができるか。引き受け受けつぐ志ある若者よ出て来い・・・。

勝手に要約したが、要約をはるかに上回る滋味ある内容が盛り込まれている。権力からのニュースを垂れ流すのみのメディア、「知る権利」を標榜しながら「主義主張のためにファクトを歪め」、「報道しない自由」を行使するメディア、「ウラ」を取ることなくコピー&ぺーストで拡散するネット社会、そうした中で、各自あらゆる情報源からファクトを摑み出す能力を持たねばならないなどなど、いろいろ考えさせられる。

2018年2月19日にレビュー

「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術

  • 作者: 新谷 学
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

  • 作者: 西村幸祐
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2017/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



鬼才 伝説の編集人 齋藤十一

鬼才 伝説の編集人 齋藤十一

  • 作者: 森 功
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/01/14
  • メディア: 単行本



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*報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか』 西村幸祐著 イースト・プレス [マスメディア]


報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

  • 作者: 西村幸祐
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2017/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


報道されていないことに敏感でありたい

既存メディア批判の書籍。著者は、既存メディア(新聞・テレビ)の多くは、事実を“正しく伝え”国民の「知る権利」に応えていないという。“正しく伝え”るとは「5W1H」(誰が、何時、どこで、何を、どのように)を「正直に」、事実のままに伝えることであるが、実際には、自分たちの「イデオロギーの目的に沿って5W1Hを操る」「洗脳装置」となり、事実を「報道しない」場合もある、という。とりわけ、「朝日」「毎日」といった「左派系メディア」が、そうである、という。

著者の北東アジア認識は興味深い。韓国・北朝鮮の北緯38度線は国境ではなく「休戦ライン」であり、台湾・日本、中国がそれぞれの側にあって、世界で唯一「冷戦」が残存している地域であるという。そして、東京は、旧・東西ドイツにおけるベルリン同様、文字通りの壁は無いものの、東・東京と西・東京に分かれていて、東・東京を構成し、そのイデオロギーを煽っているのが、「左派系メディア」であるという。

当該書籍をとおして著者の政治的立場もおのずと見えてくる。森友・加計疑惑や安倍首相に近い人物によるレイプ報道(「詩織さん事件」)は、左派系メディアによる操作であるかの論調である。《終章 あらゆるメディアは「プロパガンダ装置」である》最後の見出しは〈安倍晋三が「標的」となった本当の理由〉であり、その末尾の文章は、「なぜなら、旧体制と『東京の壁』をどうしても維持しようと努める敗戦利得者や、それにつながる『21世紀コミンテルン』は、日本を永久に続く冷戦構造の淵に沈めておきたいからである」と閉じられている。

著者は、自らが特定のイデオロギーにもとづいて論じているとは思っていないはずだ。事実・ファクトに基づく論議と思っているはずである。が、それでも、本書を読みながら芥川龍之介の『藪の中』を想起した。そこでは、事実とされるものが、ニュースソースごとにあり、聞くものたちは情報に振り回されることになる。本書から学べる点のひとつはそのことであるように思う。報道を見聞きする者は、そのニュースソースがなんであれ、錯綜する「事実」とされるものの中から動かない確かな事実・ファクトをつかみ出し、操られ洗脳されないよう警戒すべきことだ。そして、報道されていないことに敏感であることだ。著者の論議を、検証すべきものと見なすことを著者は退けることはないだろう。かえって、自著からそれを学んだのであれば、喜ばしく思ってくれるにちがいない。

著者は、江藤淳(故人)の著作『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』に言及し、それが「いまなお生きている」としている。メディアに関心のある方、日本の既存メディアの戦後の歴史に関心のある方、種々の権威とされるものによる情報操作に踊らされることを望まない方は、ぜひ一読をお勧めしたい。

2018年1月27日にレビュー


閉された言語空間―占領軍の検閲と戦後日本 (文春文庫)

閉された言語空間―占領軍の検閲と戦後日本 (文春文庫)

  • 作者: 江藤 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01/10
  • メディア: 文庫



GHQの日本洗脳 70年続いた「支配システム」の呪縛から日本を解放せよ!

GHQの日本洗脳 70年続いた「支配システム」の呪縛から日本を解放せよ!

  • 作者: 山村 明義
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/07/18
  • メディア: 単行本



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『宮武外骨: 頓智と反骨のジャーナリスト (別冊太陽 日本のこころ 250)』 [マスメディア]


宮武外骨: 頓智と反骨のジャーナリスト (別冊太陽 日本のこころ 250)

宮武外骨: 頓智と反骨のジャーナリスト (別冊太陽 日本のこころ 250)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2017/04/26
  • メディア: ムック



外骨の甥にあたる吉野孝雄氏が『古今無類の雑誌表現者~新雑誌発行は“性癖”』と題して巻頭の解説を書いている。

《宮武外骨が生涯に創刊した雑誌は実に44タイトルにのぼる。そのうち「創刊即廃刊」したものが17タイトルもあるから、複数号続刊した雑誌は全部で27タイトルということになる。》と書き起こす。

検閲制度のある時代である。「頓智協会雑誌」第28号に明治憲法発布時のパロディとして「頓智研法発布式」を示す。そこにはガイコツが「研法」を下賜する図像。そのために、「玉座の上に骸骨を図したる等は天皇に対し不敬の所為なり」として「不敬罪」で告発され、外骨は3年8カ月の獄中生活を送ることになる。(本文p100、101)

そうした数々のタイトルの中で、比較的長続きした雑誌『滑稽新聞』について吉野氏は以下のように記して、記事を閉じる。

《現代では常識になっている雑誌制作の手法のすべてのルーツがこの『滑稽新聞』にあるといっても過言ではない。むしろ現代を超えているというべきか。印刷技術のすべてを駆使して表現されたユニークな紙面。広告欄や誌面の欄外、時には附録までもが表現の素材となった。美人の写真や浮世絵師による華麗な表紙絵に彩られ、「過激にして愛嬌あり」のキャッチコピーのもと、警察署長の収賄容疑、詐欺まがいの売薬、警察の不正、僧侶の堕落、ずさんな検察や裁判官の告発など、近代化の途上にある当時の大阪の地方権力に巣食うさまざまな不正を告発し続けたのだ。

その告発から裁判での検察官や判事とのやりとり、処罰されても動じるどころか喜んで入獄していく様子など、その滑稽な経過の一部始終を逐一誌面に連載した。顧問弁護士をはじめスタッフもすべて同志的に集まった面々ばかりだ。創刊即廃刊の雑誌と同様、いつでも廃刊する覚悟はできていた。八年間も続き成功したのは単なる結果にすぎなかった。

若き日に『頓智協会雑誌』の不敬罪で石川島監獄に入獄していた時、石川島「獄中倶楽部」をでっち上げ、『鉄窓詞林』という詩集の獄中出版を企て、「広告」を印刷配布したところで発覚、けっきょく詩集は幻に終わってしまったことがあった。あらゆる場面で、あらゆる機会に、あらゆる困難に遭遇しても冊子を制作し発行し続ける。外骨にとって雑誌を編集し発行することがすなわち生きることだったのである。》

本書『宮武外骨: 頓智と反骨のジャーナリスト (別冊太陽 日本のこころ 250)』には、そのような《印刷技術のすべてを駆使して表現されたユニークな紙面。広告欄や誌面の欄外、時には附録までもが表現の素材となった。美人の写真や浮世絵師による華麗な表紙絵に彩られ・・》た雑誌のジツブツ、外骨の生原稿の画像等が示されている。

また、外骨の生き様、生涯について知ることもできる。


ジャーナリストが反骨なのはアタリマエ:宮武外骨
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-07-29

『大逆事件』と知識人たちと外骨
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-07-30


外骨戦中日記

外骨戦中日記

  • 作者: 吉野 孝雄
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/05/16
  • メディア: 単行本



宮武外骨伝 (河出文庫)

宮武外骨伝 (河出文庫)

  • 作者: 吉野 孝雄
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/03/03
  • メディア: 文庫



外骨みたいに生きてみたい―反骨にして楽天なり

外骨みたいに生きてみたい―反骨にして楽天なり

  • 作者: 砂古口 早苗
  • 出版社/メーカー: 現代書館
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本



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『重版未定』 川崎昌平著 河出書房新社 [マスメディア]


重版未定

重版未定

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/11/26
  • メディア: コミック


弱小零細出版社の「リアルすぎる」現実

マンガである。描いたのは誰かと思ったが、示されていない。著者として示されているのは川崎昌平ひとり。それゆえ、川崎氏が描いたと結論した。著者プロフィルをみると芸大を出ているというのでまちがいないであろう。

それでも、絵画に達者であれば、マンガも上手くいくかといえば、そういうものでもないように思う。著者は、「ネットカフェ難民」で流行語大賞を取っているという。要するに、多彩な能力の持ち主で著者はあるということなのだろう。

本書は、出版の世界、編集者の仕事がわかる本である。しかし、それは大手出版社ではなく、弱小零細出版社のソレである。出版の業界用語がフキダシに、たいへん小さな文字で示される。他業種(デザイナー等)と編集者とのやりとりなど、その工程も主人公の活躍をとおして知ることができる。編集者だけでなく、営業、編集長らの苦労もわかる。

そして、(これは人によるかもしれないが、少なくとも当方には)マンガとしてもオモシロイ。けっこう笑えた。

ソフトカバー製本だが、全体に良い質の紙が用いられている。これで1000円(税別)はいまどき安いと思う。

著者の他の本にも目を通してみたく思う。

2017年6月25日にレビュー

重版未定 2

重版未定 2

  • 作者: 川崎 昌平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: 単行本



流されるな、流れろ!  ありのまま生きるための「荘子」の言葉

流されるな、流れろ! ありのまま生きるための「荘子」の言葉

  • 作者: 川崎 昌平
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2017/04/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



小幸福論

小幸福論

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2016/06/16
  • メディア: 単行本



はじめての批評  ──勇気を出して主張するための文章術

はじめての批評 ──勇気を出して主張するための文章術

  • 作者: 川崎昌平
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2016/06/25
  • メディア: 単行本



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*記者と権力』 滝鼻 卓雄著  早川書房 [マスメディア]


記者と権力

記者と権力

  • 作者: 滝鼻 卓雄
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本


経験からでた考察や人物評が興味深く魅力的

カバー袖には「いまジャーナリストに求められる覚悟とは! 読売新聞東京本社社長、巨人軍オーナーを歴任した著者が、「権力者への取材」「記者クラブ」「匿名報道の是非」「朝日新聞と読売新聞の違い」など、現代ジャーナリズムの最重要テーマに切り込む!」とある。

執筆動機については、「プロの役割を果たせるジャーナリストを目指す若い人たち、将来ジャーナリストを一生の仕事にしたいとこころざしを抱いているもっと若い人たちに向かって、少しでも役に立てばと思い立って、この本を書いた。混迷に陥ってしまった今日のメディアの状況が改善されればという願いもあった。(『あとがき』)」と、ある。

著者自身の「駆け出し」時代、社会部記者、司法担当記者としての経験からでた考察は興味深い。ニュースソースの探し方、つき合い方、関わり方、守り方など、具体的事例が示される。民意を知る上で「個別訪問面接聴取法」の有効性や「記者クラブ」の6つの罪についての記述もある。

登場する人物たちも魅力的だ。弁護士喜多村洋一、「朝日新聞記者の中にあって、私が尊敬する人物」疋田桂一郎・深代淳郎、読売新聞の渡邊恒雄記者、「ミスター特捜」と呼ばれた吉永祐介、「ミスター検察」と言われた伊藤栄樹、「司法界の内外から“ミスター司法行政”と皮肉を込めて呼ばれ」著者が告別式で弔辞をよんだ最高裁長官:矢口洪一など。

2017年6月19日にレビュー

目次

プロローグ

覚書1 塀の上を歩け
覚書2 ディープ・スロート
覚書3 権力者たち
覚書4 駆け出し記者
覚書5 書くことと書かないこと
覚書6 西山事件
覚書7 裏世界の紳士たち
覚書8 なぜ匿名報道なのか
覚書9 朝日と読売
覚書10 記者クラブの功罪
覚書11 民意を知る方法はあるのか(トランプ時代の世論)
覚書12 特捜部、出入り禁止
覚書13 裁判をしない裁判官
あとがき


新聞記者 疋田桂一郎とその仕事 (朝日選書 833)

新聞記者 疋田桂一郎とその仕事 (朝日選書 833)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2007/11/09
  • メディア: 単行本



深代惇郎の天声人語 (朝日文庫)

深代惇郎の天声人語 (朝日文庫)

  • 作者: 深代惇郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/09/07
  • メディア: 文庫



渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)

渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)

  • 作者: 渡邉 恒雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: 文庫



検事総長の回想 (朝日文庫)

検事総長の回想 (朝日文庫)

  • 作者: 伊藤 栄樹
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞
  • 発売日: 1992/01
  • メディア: 文庫



後藤田正晴と矢口洪一: 戦後を作った警察・司法官僚 (ちくま文庫)

後藤田正晴と矢口洪一: 戦後を作った警察・司法官僚 (ちくま文庫)

  • 作者: 御厨 貴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: 文庫



田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側

田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側

  • 作者: 村山治
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: 単行本



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週刊文春が目指すもの(「週刊文春」編集長の仕事術 から) [マスメディア]


「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術

  • 作者: 新谷 学
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



上記書籍で、心に残った部分を引用してみる。

**************

政治とは人間がやるものだ。よって、政治を書くということは人間を書くことだ。その政治家を一人の人間として知り尽くしていなければ、本当の政治は書けない。(略)

よく、総理と会食する記者を「御用記者だ」と批判する人間がいるが、私からすると全くナンセンスである。一国の総理大臣は最強のニュースソースであり、あらゆる機密を知る立場にある。機会をつかまえて、その権力者に食い込む努力をするのは当然だ。会食はその絶好のチャンスだろう。

批判されるべきは、深く食い込んだことによって、権力者にとって都合が悪い事実を書けなくなってしまうことだ。もちろん、相手との信頼関係を維持するために書き方や書く時期について柔軟に臨むことはあるだろう。だが、「こんなことを書いたら切られるんじゃないか」「嫌われたら困る」といって顔色を窺うようになったら、ジャーナリストとは言えない。(略)

『戦後政治家論』(文春学藝ライブラリー)という本がある。著者は阿部眞之助という東京日々新聞、今の毎日新聞の編集局長。彼が昭和27~28年に月刊『文藝春秋』に連載し、文藝春秋読者賞を獲ったものをまとめた本だ。ちなみに阿部さんはのちにNHKの会長になった。本書はとても優れた政治家の人物評伝だ。この中に三木武吉のことを書いた章がある。三木氏の女性関係についての記述が延々と続く。三木武吉という人はお妾さんが次々にできて、しかも別れた後も面倒を見続けたという。引っ越すたびに、お妾さんがぞろぞろと大勢一緒についていく。貯金のようにお妾さんが増えていった、などと書いてある。

なぜこんなことまで書くのか。阿部氏の説明はこうだ。「これは、私がスキャンダルを好んでバクロする悪趣味によるものではない。彼から女話を取り去るなら、三木という人間の半分しか語らないことになるからだ。女に対する態度が、すなわち彼の政治に対する態度でもあるからだ」。女性たちに対して、どういう接し方をしたのかということの中にこそ、彼の人間性、政治家としての本質がにじみ出ている、というのだ。読みながら思わず膝を打った。

(だいぶ長々引用している。新井氏は、無断で「週刊文春」の引用などしているネットサイトを見出すと、電話等で文句を言うこともあるらしい。怖ろしいので、つづく部分は強調表示として、「宣伝」をしておく。もっとも、上の部分の後に記されているのを引用するだけだが・・・)

それこそが週刊文春が目指すものだ。なぜ、その人間を書くのか。人間への興味というのは、まさにそこである。政治家だろうが、芸能人だろうが「憎たらしい」「けしからん」「やっつけろ」「やめさせろ」ではなく、やはり「人間っておもしろいよな」と思うこと。この「人間のおもしろさ」をとことん突き詰めて、「いったいどんな人なんだろう」とアプローチしていくのが、文藝春秋という会社の原点でもあるのだ。

***以上第3章 『懐に飛び込み、書くべきことを書ききる』p124-6から***

以上を読んで、文藝春秋創業者:菊池寛の小説の特徴を「ヒューマンインタレスト」と菊池本人の言葉を引用しつつ(だったと思うが)、大江健三郎が書いていたのを思い出した。つまりは、やはり、文藝春秋は、今日も創業者の遺志を継いでいるということなのだろう。

ジャーナリストが反骨なのはアタリマエ:宮武外骨
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-07-29

佐高信さんの言辞に「筆禍かる」と岩見隆夫さん
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-04-01-1

マス・メディアが〈大事件になる前に調査報道をしない〉理由
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2012-04-18

菊池寛と人間的興味(ヒューマン・インタレスト)の小説
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I3466489-00?locale=en

2017-05-30

戦後政治家論 吉田・石橋から岸・池田まで (文春学藝ライブラリー)

戦後政治家論 吉田・石橋から岸・池田まで (文春学藝ライブラリー)

  • 作者: 阿部 眞之助
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/04/20
  • メディア: 文庫



我、拗ね者として生涯を閉ず

我、拗ね者として生涯を閉ず

  • 作者: 本田 靖春
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/02/22
  • メディア: 単行本



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*「週刊文春」編集長の仕事術 新谷 学著 ダイヤモンド社 [マスメディア]


「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術

  • 作者: 新谷 学
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



たいへん『熱』を感じさせられる本だ。現役バリバリ編集長の仕事に向かう姿勢と方法が示される。

読後(中)感をいうなら、さながら、ホームランバッターのフルスイングを見せられているよう。空振りしても、それはそれで見ごたえがある。空振りも絵になる。当たれば、それが「文春砲」ということか。

ホームランバッターも、ひとりでは野球ができない。「カキ(原稿を書く役目)」として、「アシ(記事のデータを集めてくる役目)」として、「デスク」として著者はよくやってきた。それらの経験を経て、現在「編集長」の立場にある。それゆえ、チームを活かす方法も心得ている。

そもそも、本書を刊行し、ふつう「顔」を出さない編集長が人前に「顔」を出したのは、あらゆる情報が玉石混交となってネット上に飛び交う時代、「取材のプロセスも含めて『見える化』していかないと、記事そのものをなかなか信用してもらえない」ので・・・と(『おわりに』に)記されている。要するに、『週刊文春』の発する情報に説得力をもたせるため、といえる。

本書を通して、「週刊誌」発行の熱い現場を知ることができた。ほかの仕事にも参考となるにちがいない。

以下、目次〈(・・・)は、環虚洞による蛇足的補足〉

【1章「情報/人脈」】(全てのビジネスは「人」から始まる)
「人間対人間」でとことん付き合う / 本当の信頼は「直接会う」ことでしか生まれない / インテリジェンスな密会は早朝のホテルで / ゼロの状態からどうコネクションを作るか / 袖振り合うも全部ネタ元 / その世界のキーマンにたどりつく方法 / VIPが本当に信頼している人を見極める / 事前の準備とその場の肌感覚 / 敬意は表わしても迎合するな / 政治家との関係が深まった月刊『文藝春秋』 / 長期的な信頼関係をどう築くか / すごい人ほど社交辞令で終わらせない / 黒幕・石原俊介氏との「4人会」

【2章「企画/発想」】(予定調和はおもしろさの敵である)
みんなが右と言っているときに左を向けるか / 糸口を見つけたら、すぐに一歩を踏み出す / 仕事のおもしろさを教えてくれた「冒険家」編集長(設楽敦生) / 「おもしろがる気持ち」にブレーキをかけるな / 「ありそうなもの」を避け「見たことのないもの」を作れ / 「ベストな選択肢」から逃げるな / 私の雑誌作りにマーケティングの文字はない / どうなるかわからない」からおもしろい / 辛い時期こそフルスイングせよ / 基準は「自分がおもしろいかどうか」 / 何もない「更地」に「新たなリング」を立てる / 売れる企画の条件は「サプライズ」と「クエスチョン」 / 「文春砲のターゲット」はどう選ぶ? / 見出しがすぐに浮かぶ企画がいい企画 / 大切なのは「どうなる」ではなく「どうする」

【3章「依頼/交渉」】(難攻不落の相手から「YES」を引き出す
悩む暇があるなら、やれることは全部やれ / まず頼んでみる、断られてからが仕事(対、飯島勲) / 真摯な説得と地道な裏づけ取材(対、橋本徹) / しゃべる気のない人をその気にさせる方法 / 一筋縄ではいかない人物の交渉(対、一色武) / 「何のために働いているのか」を常に考える / 全ての出会いは一期一会。聞くべきことはその場で聞け(対、ショーン・K) / ネガティブなことほど、早く、率直に伝えよ / 親しき仲にもスキャンダル(対、山崎拓) / 懐に飛び込み、書くべきことを書ききる(対、山口敬之) / 直木賞作家(海老沢泰久)に学んだ取材のイロハ(「沈黙は大切だ」) / スピードが熱を生む。走りながら考えよ(地下鉄サリン事件) / オーソドックスな調査報道が実を結んだ枡添問題

4章「組織/統率」】(ヒットを生み出し続けるチームはこう作る)
まずは一対一の信頼関係を結べ / 一緒に働きたい人間に目配りをしておく / 嘘をつかない。弱い者いじめをしない。仕事から逃げない (新谷班3原則)/ 「命の危険を感じた」。体を張った記者に敬服(対、清原和博) / ブレーキをかけるのもリーダーの仕事(「転戦」「撤収」の判断) / すぐに「攻められる」チームを作っておく(「投入」の判断は直感) / モチベーションを高める「仕組み」を作れ(ネタを出した記者が必ず「カキ」を担当) / スクープで完売すると特別ボーナス / 厳格な指揮命令系統と柔軟なチーム編成 / 「健全な競争」と「共同作業」のバランス / とにかく明るい編集長(花田紀凱) / 編集長は「いること」に意味がある(花田紀凱) / 異論・反論がリーダーを鍛える(織田信長「もっと囀れ、もっと囀れ」) / ネガティブなことほど早く報告させよ / 「フェア」こそがヒットを出し続ける秘訣 / リーダーシップの根源は「信頼」である(中村竜太郎記者) / 迷っている部下とは生き方についてじっくり語れ / リーダーの首は差し出すためにある / 「出る杭」のような人材を伸ばせ(朝日新聞の「吉田調書問題」などはつくづく残念)

【5章「決断/覚悟」】(リスクを恐れず壁を突破する)
「とにかくスクープ」の姿勢を崩さない / 「論」より「ファクト」で勝負する(イデオロギーよりもリアリズムで戦う) / 過激にして愛嬌あり(宮武外骨の言葉) / 文春には「右」も「左」もない / 報じられた側の気持ちを忘れない (「週刊誌はクラスで人気のあるいじめっ子でなければダメだ」)/ 作られた「虚像」よりも「人間」が見たい(前田敦子「深夜のお姫様抱っこ」写真) / ベッキーさんのLINE画面流出はやりすぎか(ケースバイケース) / 「剛腕・小沢一郎」にひれ伏したメディア(妻からの「離縁状」/タブーを打つ。それこそが週刊文春が読者の信頼を得る方法) / 「白くする取材」を怠ってはいけない(冤罪の多い理由「白くする捜査をしてないから」警察庁長官) / 「トランプ的なもの」といかに戦うか(ただただ愚直に正真正銘の「事実」を権力者に突きつける) / 編集長が判断を下すときの3要件(正当性、合理性、リアリズム) / 「やる意義のある売れないスクープ」を掲載するか / いくら殴られようが倒れるつもりはない(対、巨人軍 /訴訟対策には万全を期して) / 限りなく「タブー」をゼロにする(対、元少年A / 現行少年法に問題提起) / 「ことなかれ」ではなく「ことあれかし」(週刊誌とは生体解剖だ)


【6章「戦略/本質」】(「売れない」時代のマーケティング)
メディアの「外見」の議論が多すぎる(いちばん大切なのは、そのコンテンツが「本当におもしろいかどうか」だ) / 強いコンテンツがあれば主導権を握ることができる / 敬意を払ってもらえる「ブランド」になる(対価を払うことへの抵抗感を払拭したい) / ビジネスは対極と組んだほうがおもしろい(「ドワンゴ」) / 今起きているのは「コンテンツ革命」ではなく「流通革命」 / 読者とダイレクトにつながる仕組み(週刊文春デジタル) / スクープも知られなければ意味がない(「スクープ速報」/ 話題にならないものはスルーされてしまう) / 課金へのチャレンジと脱・PV至上主義(「ネット民主主義」には、悪貨が良貨を駆逐するリスクが常にともなう) / いちばん大切なのは「読者の信頼」(DeNA事件 / 情報「玉石混交」の時代。派手さはなくても、地道にコツコツと正確で信用される記事を) / 「幹を太くする」投資をせよ(利益を生み出す「幹」を見定め、信じて踏ん張り「唯一無二」の存在に)

おわりに フルスイング主義で行こう(本書を刊行し、編集長が「顔」を出した理由。あらゆる情報が玉石混交となってネット上に飛び交う時代。『週刊文春』の発する情報に説得力をもたせるため。「取材のプロセスも含めて『見える化』していかないと、記事そのものをなかなか信用してもらえない」ので。)


戦後政治家論 吉田・石橋から岸・池田まで (文春学藝ライブラリー)

戦後政治家論 吉田・石橋から岸・池田まで (文春学藝ライブラリー)

  • 作者: 阿部 眞之助
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/04/20
  • メディア: 文庫



週刊誌風雲録 (ちくま文庫)

週刊誌風雲録 (ちくま文庫)

  • 作者: 高橋 呉郎
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/05/10
  • メディア: 文庫



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〈権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか〉高田昌幸+大西祐資+松島佳子編著 旬報社 [マスメディア]


権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか

権力に迫る「調査報道」 原発事故、パナマ文書、日米安保をどう報じたか

  • 作者: 高田昌幸
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「調査報道」のノウハウを、成果をあげた8人に聞く

権力は腐敗・堕落し、また隠蔽する。それゆえ、ジャーナリズムによって監視され暴かれる必要がある。そして、国民は事実を知る必要がある。その点、新聞等のメディアは、政府等の広報機関になり果ててはいけない。ストレートニュースのみ報じていてはいけない。

では、どうするか? 調査報道をすることである。その点で成果をあげてきた8人のジャーナリストのノウハウが本書中、インタビューによって明らかにされる。現・過去政権下でカタラレタ(それは、国民を不安に陥れ混乱を生じしめてはいけないなどの良い動機からでていることもありうるが、実質的には)ウソも明らかにされている。たとえば、政府見解によると安全なハズのイラクの「非戦闘地域」で自衛隊機はミサイル、迫撃砲の飛来する中を離着陸していた。「人道支援」で運んだのは米兵1万人・・・などである。それゆえ、調査報道のノウハウに興味のない方も、暴かれたウソと個々のジャーナリストが、ウソに感づき、それを端緒として事実を追い、ウラを取り、メディアに公表する旨を高官らに通告し、公表されたニュースが世間を騒がすに至るドラマを単純に面白がることもできる。

編著者のひとりは2013年の[調査報道セミナー]の講師として語ったことをふり返りつつ次のように記す。《「誰もが情報発信できる時代、情報があふれる時代にあって、単純に情報を伝達するだけの新聞では、読まれない。私には『新聞が消えてなくなる』という危機感がある」。/ そして、その上で、「調査報道がやりにくい新聞社の環境」と「高まる調査報道の役割」という矛盾する問題をどう克服するのかについては、「志のある記者を増やすしかない」と訴えた。/ あれから、3年半余り。記者に志があっても調査報道をする環境はさらに厳しくなっている。/ それでも、と思う。/ 記者やデスク、編集幹部である「あなた」や「私」の志がなければ、調査報道のスタートラインにすら立てず、何も始まらない》。

本書には、志ある方たちが、志を遂げるノウハウが示されている。また、これからのメディアの方向性、ジャーナリストのあり方も示されている。

2017年2月8日にレビュー

ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)
https://www.icij.org/

プロパブリカ
https://www.propublica.org/

アジアプレス
http://asiapress.org/

アイ・アジア 調査報道NPO
https://ja-jp.facebook.com/NPOiAsia/



権力 VS 調査報道

権力 VS 調査報道

  • 作者: 高田 昌幸
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2011/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



スポットライト 世紀のスクープ[DVD]

スポットライト 世紀のスクープ[DVD]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • メディア: DVD



ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く (単行本)

ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く (単行本)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2022/03/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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