『ミルコの出版グルグル講義』 山口ミルコ著 河出書房新社 [マスメディア]
本の誕生、そして死と再生について多くを知ることのできる本
おしゃれな本だ。表紙、見返し、栞紐、みなピンク基調である。中身は、出版・編集とは如何なるものかを示す本。「講義」とあるがエッセイとしてしつらえてある。著者は、藤原紀香と旅をしてその著作の手伝いもした売れっ子編集者。出版社を退社すると同時に乳癌になる。闘病、療養、その後大学講師の仕事が舞い込む。月収3万円の非常勤講師としてである。そのため、これまでもっぱら本の誕生に立ち会ってきた元編集者は、その死の現場に取材に赴く。書店から返品された大量の本は工場で断裁し薬液で溶かすのだ。そのように本は死んで、生まれ変わり、再生紙となって新たな本となる。本はそのようにしてグルグルを繰り返す。
著者は、大学での講義、学生とのつきあい、休暇を利用してロシアに出かけることなど身辺のことにふれながら、本書のできるまでを記す。そのようにして、出版の世界についてそれとなく「講義」していく。その中には「書店まわり」「直取引」「委託制度」「再販制度」などなどの話しも出る。また、増刷「10万部」や「著者」ではない著者のことなど裏話しも出る。
本の誕生、そして死と再生について多くを知ることのできる本だ。
2018年3月22日にレビュー