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*報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか』 西村幸祐著 イースト・プレス [マスメディア]


報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

  • 作者: 西村幸祐
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2017/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


報道されていないことに敏感でありたい

既存メディア批判の書籍。著者は、既存メディア(新聞・テレビ)の多くは、事実を“正しく伝え”国民の「知る権利」に応えていないという。“正しく伝え”るとは「5W1H」(誰が、何時、どこで、何を、どのように)を「正直に」、事実のままに伝えることであるが、実際には、自分たちの「イデオロギーの目的に沿って5W1Hを操る」「洗脳装置」となり、事実を「報道しない」場合もある、という。とりわけ、「朝日」「毎日」といった「左派系メディア」が、そうである、という。

著者の北東アジア認識は興味深い。韓国・北朝鮮の北緯38度線は国境ではなく「休戦ライン」であり、台湾・日本、中国がそれぞれの側にあって、世界で唯一「冷戦」が残存している地域であるという。そして、東京は、旧・東西ドイツにおけるベルリン同様、文字通りの壁は無いものの、東・東京と西・東京に分かれていて、東・東京を構成し、そのイデオロギーを煽っているのが、「左派系メディア」であるという。

当該書籍をとおして著者の政治的立場もおのずと見えてくる。森友・加計疑惑や安倍首相に近い人物によるレイプ報道(「詩織さん事件」)は、左派系メディアによる操作であるかの論調である。《終章 あらゆるメディアは「プロパガンダ装置」である》最後の見出しは〈安倍晋三が「標的」となった本当の理由〉であり、その末尾の文章は、「なぜなら、旧体制と『東京の壁』をどうしても維持しようと努める敗戦利得者や、それにつながる『21世紀コミンテルン』は、日本を永久に続く冷戦構造の淵に沈めておきたいからである」と閉じられている。

著者は、自らが特定のイデオロギーにもとづいて論じているとは思っていないはずだ。事実・ファクトに基づく論議と思っているはずである。が、それでも、本書を読みながら芥川龍之介の『藪の中』を想起した。そこでは、事実とされるものが、ニュースソースごとにあり、聞くものたちは情報に振り回されることになる。本書から学べる点のひとつはそのことであるように思う。報道を見聞きする者は、そのニュースソースがなんであれ、錯綜する「事実」とされるものの中から動かない確かな事実・ファクトをつかみ出し、操られ洗脳されないよう警戒すべきことだ。そして、報道されていないことに敏感であることだ。著者の論議を、検証すべきものと見なすことを著者は退けることはないだろう。かえって、自著からそれを学んだのであれば、喜ばしく思ってくれるにちがいない。

著者は、江藤淳(故人)の著作『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』に言及し、それが「いまなお生きている」としている。メディアに関心のある方、日本の既存メディアの戦後の歴史に関心のある方、種々の権威とされるものによる情報操作に踊らされることを望まない方は、ぜひ一読をお勧めしたい。

2018年1月27日にレビュー


閉された言語空間―占領軍の検閲と戦後日本 (文春文庫)

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  • 作者: 江藤 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01/10
  • メディア: 文庫



GHQの日本洗脳 70年続いた「支配システム」の呪縛から日本を解放せよ!

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  • 作者: 山村 明義
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/07/18
  • メディア: 単行本



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