『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕: 花田 紀凱vs門田隆将 PHP新書 [マスメディア]
『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕 (PHP新書)
- 作者: 花田 紀凱
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2017/12/17
- メディア: 新書
両誌のビッグなOBによる対談
「週刊文春」を代表して花田紀凱、「週刊新潮」を代表して門田隆将。ふたりのビッグなOBによる対談本。互いへのふかいリスペクトが感じられ心地いい。内容を、評者なりに要約するなら、以下のようになる。
「文春砲」で名をはせる「週刊文春」。しかし、それは先に創刊された「週刊新潮」を模倣し作り上げてきたものだ。新聞社とは異なり取材経験の無いなか、記者クラブに入ることもなく、さまざまな権力の中に人脈を見出し築きながら、世界に類のない紙面をもつ「告発型ジャーナリズム」をつくってきた。その先鞭を取った「週刊新潮」には齋藤十一、「週刊文春」には池島信平がいて、彼らの個性が両誌を特徴づけてきた。これまでスクープし、多くの人にファクトを提供し、溜飲を下げさせるものとなってきた事例は多い。しかし、互いにライバルとして競ってきた両誌だが、インターネットで情報を入手できる今日、両誌共にカゲリが出ている。情報はタダという考えが広まり、売れ行きは落ち、売れ行きを上げるために発するスクープはテレビワイドショー的内容となり、また、新聞・テレビ=メディアと同じ渦の中でシリウマに乗るような記事を掲載する。渦の中を見下ろして、「チガウダロー」と声をあげるような高い「見識」を感じさせるものがなくなった。情報ビッグバンの時代、両誌とももはや存続できないかもしれない。しかし、週刊誌がなくなるなら、政府機関など権力の垂れ流す情報だけになってしまう。ほんとにそれでいいのだろうか。しかし、まだ「週刊文春」「週刊新潮」で鍛えられた人材・取材力をもつ記者たちはいる。ネット時代にどう対応できるか。この時代ならではの「告発型ジャーナリズム」をどのように立ち上げることができるか。引き受け受けつぐ志ある若者よ出て来い・・・。
勝手に要約したが、要約をはるかに上回る滋味ある内容が盛り込まれている。権力からのニュースを垂れ流すのみのメディア、「知る権利」を標榜しながら「主義主張のためにファクトを歪め」、「報道しない自由」を行使するメディア、「ウラ」を取ることなくコピー&ぺーストで拡散するネット社会、そうした中で、各自あらゆる情報源からファクトを摑み出す能力を持たねばならないなどなど、いろいろ考えさせられる。
2018年2月19日にレビュー