『重版未定』 川崎昌平著 河出書房新社 [マスメディア]
弱小零細出版社の「リアルすぎる」現実
マンガである。描いたのは誰かと思ったが、示されていない。著者として示されているのは川崎昌平ひとり。それゆえ、川崎氏が描いたと結論した。著者プロフィルをみると芸大を出ているというのでまちがいないであろう。
それでも、絵画に達者であれば、マンガも上手くいくかといえば、そういうものでもないように思う。著者は、「ネットカフェ難民」で流行語大賞を取っているという。要するに、多彩な能力の持ち主で著者はあるということなのだろう。
本書は、出版の世界、編集者の仕事がわかる本である。しかし、それは大手出版社ではなく、弱小零細出版社のソレである。出版の業界用語がフキダシに、たいへん小さな文字で示される。他業種(デザイナー等)と編集者とのやりとりなど、その工程も主人公の活躍をとおして知ることができる。編集者だけでなく、営業、編集長らの苦労もわかる。
そして、(これは人によるかもしれないが、少なくとも当方には)マンガとしてもオモシロイ。けっこう笑えた。
ソフトカバー製本だが、全体に良い質の紙が用いられている。これで1000円(税別)はいまどき安いと思う。
著者の他の本にも目を通してみたく思う。
2017年6月25日にレビュー