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「本をどう読むか: 幸せになる読書術」 岸見 一郎著 ポプラ社 [読書法・術]


(166)本をどう読むか: 幸せになる読書術 (ポプラ新書)

(166)本をどう読むか: 幸せになる読書術 (ポプラ新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: 新書


簡単そうで奥が深い、そんな印象だ

評しにくい本である。まとめにくい本と言ってもいい。よくある「読書術」「読書法」にある内容と大差ないことを言っているようでも、どこか自己撞着を起こしているような、読んでいて「それは矛盾しているのでは・・」と言いたくなるようなところがあって、一筋縄ではいかない感じなのだ。それは、評者がそう感じるにすぎないのかもしれないが、たぶん哲学者として「対話」を重んじ、また心理カウンセラーとしてクライアントと向き合うその姿勢が、記述のなかに出ているのかもしれない。大きな放物線を描いて球がこちらに飛んでくる感じなのだ。球速はさほどなくキャッチしやすい球が投じられてはいるのだが、それを目で追い、キャッチするまでに、球をキャッチするこちらの力量が試されているようでもある。単純な物言いでも、最終的にそれを選択したというだけで、相矛盾するような深い思慮の果てに語られることもある。その思慮の深さを感じさせるのかとも思う。では、その矛盾している点はどこかと尋ねられて、あらためて考えると矛盾と言うほどのものでもない。だから、矛盾というより、結論に至るまでの思慮が深く、その思慮の太さが、線というより綱のように縒り合わされているので、論議のブレのようなものとして感じられるのかもしれない。いずれにしろ、そのお蔭で著者とともに考えさせられるのが本書の良い点のように思える。著者は、「あまり、安直な答えを出すような人の本も避ける方がいいかもしれません。自分の生き方を吟味するためには、こんな人生を生きなさいと安直に教えてくれる本を読んではいけないのです(p44)」という。まさに本書は、そのようにいう方ならでは本といえるのかもしれない。

著者はまた、〈(人の生き方は)、「どんな」本を読んでいるかではなく「どのように」本を読んでいるかを見れば〉わかるという。なぜなら、本を読むのが好きな人は、どんな本でも読むし、乱読するからだという。「自分で選んで本を読む経験を重ね」「本を読んでいるうちに、どんな本が面白いとか、読むに値するとか、あるいは、反対につまらないとか、時間をかけて読むに値しないというようなことが少しずつわかってきます」。それゆえ、〈「どのように」本を読めばこのようなことがわかるようになったかという話を聞けば、その人がどんな生き方をしてきたかがわかります〉ともいう。

つまるところ、本書は、著者の生き方を示す本ということになるのだろう。「中学生だった私」が「夢中で何度も読」んだ加藤周一『読書術』、森有正『バビロンの流れのほとりにて』、中央公論社『世界の名著12聖書』、平凡社『哲学事典』、藤沢令夫『プラトンの哲学(岩波新書)』、多田正行『思考訓練の場としての英文解釈』などなどが著者の人生と絡めて紹介されていく。

簡単そうで奥が深い、そんな印象だ。すこし時間を置いて、再び読んでみたい。

2019年4月9日にレビュー

読書術 (岩波現代文庫)

読書術 (岩波現代文庫)

  • 作者: 加藤 周一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/11/16
  • メディア: 文庫



読書術―頭の回転をよくする (カッパ・ブックス)

読書術―頭の回転をよくする (カッパ・ブックス)

  • 作者: 加藤 周一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1962/10
  • メディア: 単行本



わが思索のあと (中公文庫プレミアム)

わが思索のあと (中公文庫プレミアム)

  • 作者: アラン
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/02/23
  • メディア: 文庫



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「人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)」 佐藤 優著 青春出版社 [読書法・術]


人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)

人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: 新書


佐藤氏をよく知ることのできる本であり、ひとつの良い読書ガイド

「読書術」をタイトルとしているが、具体的にその方法を示しているのはわずかだ。示されてはいるが佐藤氏の著作『読書の技法』から、その要点を取り上げている程度である。

本書のウリであり醍醐味は、もっぱら「人をつくる」の方にある。目次をみると「第1章 作家をつくる本の読み方 第2章 外交官をつくる本の読み方 第3章 人間をつくる本の読み方 第4章 教育者をつくる本の読み方 第5章 教養人をつくる本の読み方 第6章 キリスト教者をつくる本の読み方」となっている。

その実例として取り扱われる「人」とは、ほかでもない著者自身である。「キリスト教者」となり「外交官」となり「作家」となり「教育者」でもある著者が、どのように読書によってカタチづくられてきたかが、示される。

本書を評者なりにまとめるなら〈内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』佐藤版〉と言いたいところだ。また同時に、〈渡部昇一「青春の読書」佐藤版〉と評したい本でもある。著者の両親の経歴、その訓育の仕方、与えられた本のこと。高校受験時、競争相手のひとりである友人の自殺とそれにまつわる「罪」の自覚、それを乗り越えるうえで役立った聖書の教えと高校時代の恩師たちのこと。マルクス主義と無神論への関心と接近、それらを経て1979年に洗礼を受けるに到ったこと。そして、その後、チェコのフロマートカの神学を学ぶ留学の機会を得るために外交官となり、のちに不本意ながら某政治家に連座して収監されるに到ったこと、そうした経緯から現在作家を生業とするに到ったことが、影響を受けた書籍と共に示される。

佐藤氏の真面目な人柄が伝わってくる内容である。なによりも佐藤氏をよく知ることのできる本であると共に、ひとつの良い読書ガイドともなっている。

2019年4月6日にレビュー

余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)

余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)

  • 作者: 内村 鑑三
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1958/12/20
  • メディア: 文庫



渡部昇一 青春の読書

渡部昇一 青春の読書

  • 作者: 渡部昇一
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 単行本



佐藤優外伝 (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

佐藤優外伝 (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

  • 作者: 山本 信二
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2018/09/30
  • メディア: Kindle版


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「ネット断ち」 斎藤孝著 (青春新書インテリジェンス) [読書法・術]


ネット断ち (青春新書インテリジェンス)

ネット断ち (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 新書


「沈潜」すれば、顔に出る。

著者はネットすべてをワルモノにしてはいない。注意を喚起しているのはSNSに関してだ。「似たような趣味嗜好の人間たちが集まり、閉塞した空間で、お互い酸欠状態になってアップアップしている」「ストレスを感じながら、半ば義務のようにやり取りされる会話。みんなどこかおかしいと感じながらも、そこから抜け出すことができない」モノとSNSを見なしている。イメージされるのは、小魚を多数入れすぎた底の浅い水槽。そこで水面に浮き上がって酸素を慕い求める小魚たちの姿だ。

著者は、SNSでなされる低レベルのやり取り・関わり合いから解き放たれる方法を教えてくれる。小人の思惑に囚われて身動きできない状態から脱するためには、偉大な人格を知り、自分の中に住まわせることが必要だと説く。そのために、スマホ、ネットに用いる時間から少しを取り分けるよう勧める。ところが、偉大な人格、「魂を揺さぶるような深い人格、高い精神性をもつ人格というのは、いまに限らず、めったにお目にかかれるものではない」。では、どうするか? そこで著者は、「本を読み、深くその対象にのめり込む=沈潜することが肝要です」と説く。

本書のキーワードは「沈潜」。その(旧制高校の学生たちが使った)言葉の意味を示しつつ、著者自身の「沈潜体験」が綴られていく。取り上げられる対象は、ソクラテス、イエス・キリスト。ドストエフスキー、マキャベリ、孫氏、ニーチェ、西田幾多郎、漱石、ゲーテ、太宰らの文学・散文作品。さらに、詩歌、俳句、絵画。また、さらには、テニスプレイヤーの錦織圭、歌手のザ・ピーナッツにも及ぶ。

著者は、「身体を伴わない文化は脆弱」という認識を示す。「『沈潜する』というのは、たんに情報を収集することではありません。テキストに入り込み、その世界を実体験のように感じることです。登場人物、あるいは作者の思想や人格に触れ、それらと交わり、ときに格闘することです」と述べる。「古今東西のすべての古典のあらすじを頭に入れたとしても、深い教養や人格は身につきません」とも言う。「沈潜」はあくまでも「体験」すべきものとして提示される。

著者は自身の体験とともに、「沈潜する」具体的な方法も示している。それを当てはめるなら、書籍・帯にあるように「深い教養は顔に出る」ことになる・・・。

2019年3月4日にレビュー

身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス)

身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス)

  • 作者: 斎藤 孝
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2000/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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「ペーパーレス時代の紙の価値を知る ~読み書きメディアの認知科学」 柴田博仁・大村賢悟著 産業能率大学出版部 [読書法・術]


ペーパーレス時代の紙の価値を知る ~読み書きメディアの認知科学

ペーパーレス時代の紙の価値を知る ~読み書きメディアの認知科学

  • 作者: 柴田博仁
  • 出版社/メーカー: 産業能率大学出版部
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: 単行本


「敵」を知るために絶好の本

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ということで、本書を手にした。「敵」とは(穏やかならない言葉だが)、読書の対象となる本(また電子メディア)であり、その素材である紙:ペーパー(と液晶やら有機ELとやら)である。

これまで、よりよく「読み・書き」するうえで役立つ情報を入手することに努めてきた。その点で、認知心理学はたいへん参考になってきた。本書でも取り上げられている秋田喜代美著『読む心・書く心:文章の心理学入門(心理学ジュニアライブラリー)』などに啓発された。

それらは、もっぱら「読み・書き」する主体である人間の側の認知機能について教示してくれるものだが、本書は、読み・書く(書きこむ)対象となるモノの方に焦点を合わせている。読むにあたって、書くにあたって紙と電子媒体とでは、どのような違いがあるか、それに向かって作業するときにどれほどの効率があがるかが実験で示されていく。また、多くの人が、主観的にそう思い込んできたであろうことが、実験でくつがえされる例も示されている。

「本書の狙いは『紙での読み書きのすばらしさ』を解明することに尽きる」と(「まえがき」に)ある。現時点では、総合して紙の方に軍配があがるのだが、比較対照される電子メディアの利用価値も示されている。要は、それぞれの特性を知って、それに応じた使い方をせよということである。「敵」に応じて対応せよということである。「馬鹿とはさみは使いよう」というやつである。

その肝心な、どのように使えば、それぞれの特性を充分に活かせるかが本書に示されていく。「文書は目で読むだけでなく、『手で読む』とも言えるのである。」という記述など、たいへん(少なくとも評者には)新鮮な知見も示されている。

「本書は、特に、次のような人にぜひ読んでいただきたい。第1に、紙での読み書きのすばらしさを科学的に理解したいと思っている人。第2に、紙とデジタルの読み書きをうまく使い分けたいと思っている人。第3に、新しい読み書きのメディアの開発に従事している人や関心がある人。本書が、こうした方のなんらかのヒントを提供することができれば、幸いである。」とある。クリーム色の紙で、適度に行間が空けられ、著者たちの経験談など例えをまじえての、明快で読みやすい本だ。

2019年2月27日にレビュー

読む心・書く心: 文章の心理学入門 (心理学ジュニアライブラリ02)

読む心・書く心: 文章の心理学入門 (心理学ジュニアライブラリ02)

  • 作者: 秋田 喜代美
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2002/10/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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「大人の読解力」 ビジネスフレームワーク研究所編 青春出版社 [読書法・術]


大人の読解力

大人の読解力 "読み解くこと"は最強の武器である

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2018/10/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


既刊本からエッセンスを抜き出しマトメたような・・・

既刊本からエッセンスを抜き出しマトメた(ように思える)本。しかし、だからと言って、軽んじることはできない。かえって、常々思い返して、読書の指針とするには、便利といえる。6章からなり(Step1:身になる読み方、ムダになる読み方 Step2:“ひとつ上の自分”を育てる読み方 Step3:ビジネスパーソンが、最短で成果を出す読み方 Step4:インプットだけでは終わらせないプロの読み方 Step5:思考力と発想力をモノにする読み方 Step6:行間から専門書まで・・意外と知らないモノの読み方)、81の項目を各項目ごとに見開き2ページにまとめている。イラスト・挿絵なし、黒文字一色、強調部分のみ太字を使用している。

参考文献として挙げられているのは 『理論的に読む技術 文章の中身を理解する“読解力”強化の必須スキル!』(福澤一吉・ソフトバンククリエイティブ)、「脳を創る読書 なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか』(酒井邦嘉・実業之日本社)、 『読書の技法』(佐藤優・東洋経済新報社)、『考える力をのばす! 読解力アップゲーム①説明文編』(桂聖監修・学習研究社)、『読解力を劇的に伸ばす大人の「思考ノート」のつくり方』(深谷圭助・宝島社)、『社会人のための読解力トレーニング 正しく読めれば楽しく読める・理解できる』(後藤武士・こう書房)、『仕事に役立つ「読解力」より速く、より的確に文章を読み解く技術』(高橋昭男・PHP研究所)、『行間力 ー 本当の国語力をつける法』(宮川俊彦・育鵬社)、『日本語の技法 読む・書く・話す・聞くー4つの力』(斎藤孝・東洋経済新報社)、『アクティブ・リッスン!「聞く力」を武器にする』(澤村直樹・すばる社)、『一瞬で人生が変わる!アウトプット速読法』(小田全宏・ソフトバンククリエイティブ)、『増補版 「読む力」はこうしてつける』(吉田新一郎・新評論)、『「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける』(石黒圭・光文社)、『「サブカル」×「国語」で読解力を育む』(町田守弘・岩波書店)、『勉強したくなった人のための大人の「独学」法』(和田秀樹・大和書房)、『国語の本質がわかる授業〈6〉説明文の読み方』(柴田義松監修・小林義明・高橋喜代治編・日本標準)、『理科系の作文技術』(木下是雄・中央公論社)、『文章予測読解力の鍛え方』(石黒圭・KADOKAWA)、『子どもの学力は「読解力」で決まる!小学生のうちに親がゼッタイしておきたいこと』(斎藤孝・朝日新聞出版)、『知的社会人1年目の本の読み方』(山口謡司・フォレスト出版)、『お母さんだからできる!男の子の国語力の伸ばし方』(高橋正伸・東洋経済新報社)、『「新版」子どもが必ず本好きになる16の方法・実践アニマシオン』(有元秀文・合同出版)、ほか

2019年2月2日にレビュー

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/03/18
  • メディア: 新書



文章予測 読解力の鍛え方 (角川ソフィア文庫)

文章予測 読解力の鍛え方 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 石黒圭
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/09/23
  • メディア: 文庫



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東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方 西岡 壱誠著 日本能率協会マネジメントセンター [読書法・術]


東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方

東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方

  • 作者: 西岡 壱誠
  • 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
  • 発売日: 2018/10/31
  • メディア: 単行本


若々しさに打たれた

著者は現役東大生。「東大で40年以上の歴史を持つ書評誌『ひろば』の編集長」とプロフィールにある。本書は、いわゆる読書術・読書法を示すと共に、ブックガイドの役も兼ねている。執筆にあたっては東大生100人へアンケートを実施し、20人へインタビューを行ったという。前半で、東大生の多くが採用している読書法が説かれ、後半で東大生の愛読書・重んじている書籍が取り上げられる。そこで個別の内容とともに、前半で示された方法が展開されもする。

〈東大生が本を読むときに一番大切にしていることは、「楽しむこと」〉。〈「楽しむ」というのは、「本に深く入り込むこと」と同じ意味〉。〈この本の読み方をひとつでも実践して、より楽しい読書をしてみましょう〉と『おわりに』示されている。本と出会い、心を動かされ、没入する。本の世界に入り込み、そこから出て来る。そこで経験したことと現実世界とのつながりを見いだす。既読の本とのつながりを見いだす。〈情報と情報、知識と知識を結びつける力〉、それが教養であり、教養を高める・・・と著者はいう。

本書で紹介されている個々の方法は、既にどこかで読んだ感がある。しかし、その語り口は清新である。読後、その若々しさに打たれて酔ったような心地でいる。本書で紹介された中には、マンガもライトノベルもある。たいへん魅力的に語られている。これまで、ほとんど縁の無かったロートル(当方のこと)だが、挑戦してみようと思う。

2018年12月31日にレビュー

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書

  • 作者: 西岡 壱誠
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2018/06/01
  • メディア: 単行本



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文章読解に関する石黒圭の「予測」に関する本 2種 [読書法・術]


文章予測 読解力の鍛え方 (角川ソフィア文庫)

文章予測 読解力の鍛え方 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 石黒圭
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/09/23
  • メディア: 文庫



「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書)

「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/07/07
  • メディア: 新書




2つの書籍イメージを上下に並べたが、上のイメージ書籍は、下のイメージ書籍を復刊したもののようである。下の本は、中古しか出回っておらず、いわゆる絶版状態だ。出版から7年も経っているので、新たな出版社から新装販売したのだろう。中身の方は見ていないのでわからないが、「予測」をテーマにしていることは同じである。

下・イメージ書籍を読むと、おおくの引用がなされているが、それがけっこう古い作品・作家によるものだ。相馬御風(早稲田大学「都の西北」作詞者)、山本有三(「路傍の石」作者)、夏目漱石、小林多喜二、太宰治、三島由紀夫。新しいところでも、村上春樹、宮崎駿、土屋賢二、向井万起男(向井千秋さんの夫)といったところだ。引用は古くても、それはそれで、著者の主張をしっかり支えているのでなんら問題はなく、今だにたいへん有用な本であることはまちがいないのだが、今どきの若い人には難しく感じられるかもしれない。また、政治性が若干におうこともあって、出版社を変えて新装増訂出版したのだろうと、勝手に思っている。

読書するにあたり、読書する自分の方法に意識的であるかないかで、得られるものが違ってくる。多くのものを得るうえで、石黒圭の本はたいへん有用であることを、遅れ馳せながら旧版?を読んであらためて知ったしだい。

以下、旧版のほうから、いくらか引用してみる。

あとに続く展開の幅を限定するのが予測 予測があることで、後続文脈の候補が絞られ、無駄な処理をしなくて済むようになり、文書理解の経済効率が上がります。 つぎはこんな展開になるのではないかという想定に基づき、つぎの文に入ることで、流れに乗って読めるようになる 言語は1本の線であり、頭から順に読むようにできている 頭から順に読む過程で徐々に意味が見えてくるという性質が言語にはあり、その線的な性質が予測を生む 平均すると、読み手は文章全体の半分弱の文でしか予測をおこなっていない 予測が起きるのは、おもに文脈の展開が変わる節目 読み手にかかわらず、共通した予測が想定できるところには、だいたい予測を誘発する表現が隠れています 文章理解は文章を媒介にした読み手と書き手の擬似対話 「問いの予測」「答えの予測」「深める予測」「進める予測」 「当たる予測」「外れる予測」 逆説というのは、順接を前提に、それを外すことで成り立つ表現 実現しなかった予測は、行間の存在を示唆し、読みを深め、余韻を感じとるきっかけを与えてくれる  本書で考える予測とは、「今読んでいる文をとおして感じられる理解のモヤモヤを、そのあとに続く文脈で解消しようと期待する読み手の意識」のこと つぎにくる内容を一つに限定するのではなく、ある程度限定するのが予測の基本的な働き 予測というのは、推論の一種です 予測もまた、言葉の足りない部分を論理的に導きだし、読むというコミュニケーションを円滑にする推論の一種ですので、文法論ではなく語用論で扱うべき問題 「進める予測」は、読み手が物語の場面に没頭し、登場人物に感情移入しているときによく起こります 予測に強くなることは、筆者の立場を正しく見抜くことにもなる 予測によって意味の箱(フォルダ)のようなものを頭のなかに作り、その箱が埋まったら片づけ、また別の意味の箱を作るという作業を繰り返して文章を理解している 大切なことは予測をとおして行間の存在に気づくこと 文章理解とは問題解決過程、すなわち「謎」を解く過程 優れた文章は、重層性のある問いが有機的に関連してできています。そして、その問いを解き明かそうと予測を重ねるうちに、その文章世界に引きこまれ、読みが広がっていくのです 多様な予測が可能な文章は、精読に値する深みを備えています。このような深みのある文章に出会ったとき、予測を活かして文章に主体的に問いかけ、その答えを主体的に見いだす力が身につけば、読解力は確実に向上します。本書で紹介した予測という考えを、みなさん自身の今後の読書に活かしてくださることを期待しています。

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける(石黒圭著)
https://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2013-02-28


「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

  • 作者: 石黒 圭
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/03/18
  • メディア: 新書



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『愛読の方法 (ちくま新書)』 前田 英樹著 筑摩書房 [読書法・術]


愛読の方法 (ちくま新書)

愛読の方法 (ちくま新書)

  • 作者: 前田 英樹
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 新書


うつくしい音楽を聴くような

林望先生の本に、『役に立たない読書(インターナショナル新書・集英社)』がある。そこでは、単に読書量を誇ることなどないよう戒められ、自分の興味にしたがって愛読書を見出し、よく考えて、心の栄養とするように、「ペダントリーではなくインテリジェンスへの道を行くよう」勧められている。

本書は、より深いところを行っている。多読によって知識をひけらかす浅はかな道を行くことのないように勧める点では、同じだが、本書はもっと哲学的である。文字という人間の発明した道具の功罪についての論議を、著者は自身の教師生活から語りはじめる。そして、もっぱらの内容は、著者自身の愛読書についてである。それはプラトンの『パイドロス』であり、中島敦『文字禍』であり、ショーペンハウエル『読書について』であり、デカルト、アラン、吉川幸次郎の著作であり、伊藤仁斎、荻生徂徠、本居宣長の著作である。それら自分の愛読する本について語るなかで、「愛読の方法」を示していく。

ビジネス書によくあるように、箇条書きで方法①・・、②・・という具合にはなっていない。本書全体が、「愛読の方法」について謳(うた)っている。愛読とは、魂の共振と言っていいのだろう。それは、文字を介して、作者の魂とよぶべきモノに触れて、こちらも共振することだ。それはアタマの問題というより、生き方の問題となってくる。そのことを著者はくりかえしくりかえし語っていく。

では、本書は「老いの繰り言」のようにツマラナイものか。そうではなく、うつくしい音楽を聴いているようである。どうぞ聴いてみてほしい。愛するものについて語るのを聴くというのは、なんと魅力的なことだろう。そう思われるにちがいない。もっとも、そう感じるのは、著者の魂に共鳴できる人だけか。そうではないように思う。哲学的ではあるが平易に記されている。誰もがきっと、自分の読書生活を吟味するよい機会ともなるし、愛読書をもつことを願うようになるにちがいない。

2018年11月21日にレビュー

役に立たない読書 (インターナショナル新書)

役に立たない読書 (インターナショナル新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2017/04/07
  • メディア: 新書



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目次『愛読の方法 (ちくま新書)』 前田 英樹著 筑摩書房 [読書法・術]


愛読の方法 (ちくま新書)

愛読の方法 (ちくま新書)

  • 作者: 前田 英樹
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 新書



第1章 本とは何であったか
本などなくてもいい / 「人文系」 は無用か? / 本ばかり読んでかえって馬鹿になる人間 / 文字に対するソクラテスの疑い--タムゥスの逸話 / 「書かれた言葉」 の災厄 / 「問答法」 の理想 / 話し言葉と書き言葉 / 巨大な錯覚 / ソシュールの闘い / 中島敦 「文字禍」 / 文字を覚えてから・・・ / 「文字の霊」 に呪われた者 / 言葉への軽信 / 文字は、人のなかの何を損なうのか / 物の 「影」 しか見えない / 文字から拡がる病 / 文字禍から救われる 〈文字の道〉 が昔からあった / 作家の技 / 読む時間 / 優れた本と詰まらぬ本

第2章 文字という〈道具〉を考える
〈道具〉 が出現したこと / 生存競争に勝つための道具と自然の働きのなかに入り込むための道具 / 近代の機械産業 / 道具のもたらす矛盾 / 社会がロボット化する / 道具が含むふたつの方向は、なぜ分岐し続けたか / 「道理」 を知れ / 文字という道具、その二方向 / 暮らしに有用な言葉、魂に植え付けられて育つ言葉 / 日々の愛読の効用 / なぜ、文字というやっかい極まる道具が生まれたか / 人間の内に在る言語 / 話される言葉から文字への移行 / 精神の道具 / ショーペンハウエル 『読書について』 / 馬鹿につける薬はない? / ショーペンハウエルの極論の真意 / 「解説書」 は読むべからず / 書籍哲学者 / 「悪書」 を読まずに済ます技術 / それでも 「古典」 は生き続ける

第3章 生きる方法としての読書
デカルト『方法序説』 / デカルトの愛読者アラン / 「デカルト讃」 / 独創的な肖像画 / 本による教育 / 「死者への礼拝」 / 愛読が死者への礼拝となること / 自分のためだけにする読書 / 吉川幸次郎『読書の学』 / 「批判」と「注釈」 / 書は言を尽くさず、言は意を尽くさず / 「最上至極宇宙第一」の本を読む / 伊藤仁斎『童子問』 / 「古義学」という新しい生き方 / 学ぶのは、この〈私〉である / 性道教 / 人に学問はいらないのか? / 仁斎の「愛」 / 残忍刻薄の心 / 愛のない学問は、人心を損なう

第4章 愛読に生きよ
字義を忘れる道 / 仁斎から徂徠へ / 影響を受けるということ / 古文辞学 / 文字だけに見入る / 意味を離れてみよ / 事物当行之理 / 「道」は言葉に在る / なぜ翻訳するのか / 「口語のリズム」で読む道 / 訓読 / 「訳文」とは何か / 「訳学」と「古文辞の学」 / 文字というものの「さかしら」 / 本居宣長の国学 / 「言霊」の働き / 「学びやうの法」などはない / 道の学問 / 身ひとつの愛読

終わりの言葉


役に立たない読書 (インターナショナル新書)

役に立たない読書 (インターナショナル新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2017/04/07
  • メディア: 新書



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『読みトレ 大人に必要な「読解力」がきちんと身につく 』 吉田 裕子 大和書房 [読書法・術]


大人に必要な「読解力」がきちんと身につく 読みトレ

大人に必要な「読解力」がきちんと身につく 読みトレ

  • 作者: 吉田 裕子
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


大人に必要な『読解力』をきちんと身につけるために

社会人のための読解力増進のための本。ある程度のレベルにすでに達している読者を、さらに先へ押し出すというよりは、どちらかと言えば自分の読解力に不安を感じている方のための本。実際のところ、かなり多くの方が、読解力不足のために社会に出てから苦しんでいるのであろうと読んでいて感じた。

そのような読解力のための本が、読者に読解力を求め強いる内容であれば、それは負担であるにちがいない。著者は相当レベルを下げて書いている。下げているというのは見下してのことではなく、親切であり配慮である。分かりやすいということである。手取り足取りということである。そのようにして、「大人に必要な『読解力』をきちんと身につ」け、社会人として赤っ恥をかくことのないよう助けてくれる。

『はじめに』を見ると、「一生モノの読解力」として著者が習得するよう願っていることが3点あげられている。①文章を誤解や曲解なくそのまま読みとれる ②書かれている要素の重要度を判別できる ③内容を自分でまとめられる である。そのための簡単な課題をこなしながら、本文を読み進めることができる。

書籍レイアウトも適度に行間が空けられ見やすい。少しばかり誇張するなら「スカスカ」と言ってもいい。しかし、中身はしっかりしている。活字で埋めつくされたページに恐怖を感じるといった方にはたいへんいいように思う。水色と黒の二色刷り。

2018年11月2日にレビュー

(以下『目次』)

●はじめに 文章を読めない人が増えている?
●第1章 読む力を鍛えるはじめの一歩 要点をいかにしてつかみとるか
・文章から要点を見つけ出す
・要点発見トレーニング
・大切なことは繰り返し出てくる
・複雑な分をシンプルにとらえる

●第2章 読解の三大ポイント 1接続語 2助詞 3指示語をマスターする
・文の流れをつかむトレーニング
・「たしかに」という言葉から筆者の意見を見極める
・接続語から後ろの内容を予測する
・指示語をきちんと把握する
・助詞のにおわせるメッセージを読みとる

●第3章 文章を図解できれば一人前 様々な図解法を覚えてアウトプットにつなげよう
・因果関係や対比を図解しよう
・箇条書きで要素をリスト化
・主張・根拠・例を構造化する
・二項対立を表にまとめる
・時系列に並び替える
・ツリー図を書けるようになる
・5W1Hで整理する

●第4章 これからの時代に欠かせないリテラシー 的外れな意見を言わないために
・あおり部分を排除して、冷静に読む
・事実と意見を区別する
・事実として書かれていること自体も疑ってみる
・つかえたところと格闘する
・論理の飛躍を見逃さない
・逆は必ずしも真ならず

●第5章 読解力を長期的に伸ばす 普段の「読み方」にちょっとした変化を
・要約にチャレンジする
・読解力を鍛える新聞の読み方
・語彙力の伸ばし方
・あらためて、読書のすすめ
・自分でも書いてみる

●最終問題
●おわりに 読解力不足が原因で損をしないために
●おまけ おすすめ書籍の紹介


現代文の勉強法をはじめからていねいに (東進ブックス TOSHIN COMICS)

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  • 作者: 出口汪
  • 出版社/メーカー: ナガセ
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



現代文キーワード読解[改訂版]

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  • 作者: Z会出版編集部
  • 出版社/メーカー: Z会
  • 発売日: 2015/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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