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「人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)」 佐藤 優著 青春出版社 [読書法・術]


人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)

人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: 新書


佐藤氏をよく知ることのできる本であり、ひとつの良い読書ガイド

「読書術」をタイトルとしているが、具体的にその方法を示しているのはわずかだ。示されてはいるが佐藤氏の著作『読書の技法』から、その要点を取り上げている程度である。

本書のウリであり醍醐味は、もっぱら「人をつくる」の方にある。目次をみると「第1章 作家をつくる本の読み方 第2章 外交官をつくる本の読み方 第3章 人間をつくる本の読み方 第4章 教育者をつくる本の読み方 第5章 教養人をつくる本の読み方 第6章 キリスト教者をつくる本の読み方」となっている。

その実例として取り扱われる「人」とは、ほかでもない著者自身である。「キリスト教者」となり「外交官」となり「作家」となり「教育者」でもある著者が、どのように読書によってカタチづくられてきたかが、示される。

本書を評者なりにまとめるなら〈内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』佐藤版〉と言いたいところだ。また同時に、〈渡部昇一「青春の読書」佐藤版〉と評したい本でもある。著者の両親の経歴、その訓育の仕方、与えられた本のこと。高校受験時、競争相手のひとりである友人の自殺とそれにまつわる「罪」の自覚、それを乗り越えるうえで役立った聖書の教えと高校時代の恩師たちのこと。マルクス主義と無神論への関心と接近、それらを経て1979年に洗礼を受けるに到ったこと。そして、その後、チェコのフロマートカの神学を学ぶ留学の機会を得るために外交官となり、のちに不本意ながら某政治家に連座して収監されるに到ったこと、そうした経緯から現在作家を生業とするに到ったことが、影響を受けた書籍と共に示される。

佐藤氏の真面目な人柄が伝わってくる内容である。なによりも佐藤氏をよく知ることのできる本であると共に、ひとつの良い読書ガイドともなっている。

2019年4月6日にレビュー

余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)

余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)

  • 作者: 内村 鑑三
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1958/12/20
  • メディア: 文庫



渡部昇一 青春の読書

渡部昇一 青春の読書

  • 作者: 渡部昇一
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 単行本



佐藤優外伝 (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

佐藤優外伝 (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

  • 作者: 山本 信二
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2018/09/30
  • メディア: Kindle版


第1章 作家をつくる本の読み方
作家になったのは裁判費用を稼ぐためだった 著作で周囲への説明責任を果たす 外交官は大使のゴーストライター わかりやすく、正確に書くことが一番難しい 公文書を読んでもらうには“見出し”が重要 文体を真似ることで自分の文体ができる 表現力を鍛えるには「とにかく」書く 表現すべきことを見つける方法 読書量が多い人ほど言葉を上手に操れる 限られた時間のなかで読むべき本とは “3つの読み方”を使い分ける 速読は絶対に読み返さない覚悟で 超速読は読むべき本の仕分けに使う アウトプットしたければ良質なインプット 

第2章 外交官をつくる本の読み方
エリート官僚こそ小説を読む必要がある 教養のない官僚は必ずどこかで行き詰まる “外国人が好きな日本文学”を読んでおく ロシアへの興味を引き出してくれた一冊の本 古典にはその国の「内在的論理」が詰まっている 神話にはその国民の「潜在意識」が反映されている 教科書は基礎教養をつけるのに最適 目的によって情報の取得方法は異なる 大型書店の書店員は本の“コンシェルジュ” 基本書は奇数冊購入して多数決をとる スパイ小説で人を見抜く力が磨かれる 『カラマーゾフの兄弟』で重層的なものの見方を学ぶ 外交官は神学を学ぶための“寄り道” 外交官としての覚悟につながった「召命」の考え方 深い教養がなければ海外の要人とは渡り合えない 

第3章 人間をつくる本の読み方
本の面白さを教えてくれた一編の小説 身をもって感じた自然主義文学の本質 中学時代の濫読が人格のコアをつくった 思想・哲学を入り口にマルクス主義に出会う 「理解できない本」を読まなければ読書力は上がらない キリスト教とマルクス主義の狭間で悩む 聖書を読み込むことで思考の深さや幅が生まれた 数学の奥深さに気づかせてくれた塾の先生 若いうちは多角的な読書を心がける 本と現実の“答え合わせ”が必要 「本を読む順番」を間違えてはいけない 聖書は西洋の歴史や文化の入り口

第4章 教育者をつくる本の読み方
受けてきたものを若い人に還元する 忘れられてしまっている「丸暗記」の大切さ 幼少期の親の教育が子どもの運命を変える 一番効果がないのは“読書の押しつけ” 大学入試制度改革で勉強の仕方が一変する 学力に直結する「自己コントロール力」 ゲームやスマホはできるだけ遠ざける 若くして依存症になってしまう時代 今こそ知っておきたい「音読」の効果 学力とは体験や人間関係も含む総合力 ますます高まっていく数学力の重要性 論理学を知らないと世界のエリートとは戦えない 哲学とは思考の「鋳型」である 型を知ると「型破り」な人間になれる

第5章 教養人をつくる本の読み方
「通俗本」は専門書に挑む前の重要なステップ 私が影響を受けた通俗本 戦前、戦中を象徴する一人の思想家 国家にとって都合がよかった田辺の理論 危険思想を知ることで知的免疫力がつく 補修されるべき戦前と戦後の思想的衝突 日本人の知的レベルは50年前より落ちている ミステリーやSFは思考を補強してくれる 専門書4割、エンタメ本6割でちょうどいい 今の漫画のクオリティを侮ることはできない 『うずまき』が描く出口のない世界 女性作家の小説は時代を鮮やかに切りとる ヒット作は時代の変化を先駆的に象徴している 自己愛の強い時代を象徴する小説 Vシネ作品は裏社会の現実を教えてくれる 国家とアウトローの世界は本質的に同じ

第6章 キリスト教者をつくる本の読み方
私をキリスト者へと導いた母の実体験 自分の中の「悪」を意識したきっかけ 罪悪感に苦しむ私を救ってくれたもの 人が人を救うことはできるのか 一人旅で『塩狩峠』の舞台を訪ねる 聖書に書かれた「自己犠牲」の本当の意味 信じることの重さを教えてくれた一冊 『沈黙』に見る価値観の相対性 キリスト教を客観的に見ようとしていた高校時代 宗教と資本主義は人間に幸福をもたらしたのか 労働者、従業員の賃金がつねに抑えられるカラクリ じぶんこそ正しいと考えた瞬間に思考は停止する 神は人間がつくり出したフィクションなのか 神学の深さと面白さを再確認する 神学とキリスト教を救った「弁証法神学」 実践的なフロマートカの思想 最も深い困窮の果てに神は現れる 一見そうとは思えない場所にこそ神性が宿る

佐藤優外伝  (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

佐藤優外伝 (紙の爆弾2009年10月号別冊 ) [雑誌]

  • 作者: 山本 信二
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2018/09/30
  • メディア: Kindle版



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