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「ネット断ち」 斎藤孝著 (青春新書インテリジェンス) [読書法・術]


ネット断ち (青春新書インテリジェンス)

ネット断ち (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 新書


「沈潜」すれば、顔に出る。

著者はネットすべてをワルモノにしてはいない。注意を喚起しているのはSNSに関してだ。「似たような趣味嗜好の人間たちが集まり、閉塞した空間で、お互い酸欠状態になってアップアップしている」「ストレスを感じながら、半ば義務のようにやり取りされる会話。みんなどこかおかしいと感じながらも、そこから抜け出すことができない」モノとSNSを見なしている。イメージされるのは、小魚を多数入れすぎた底の浅い水槽。そこで水面に浮き上がって酸素を慕い求める小魚たちの姿だ。

著者は、SNSでなされる低レベルのやり取り・関わり合いから解き放たれる方法を教えてくれる。小人の思惑に囚われて身動きできない状態から脱するためには、偉大な人格を知り、自分の中に住まわせることが必要だと説く。そのために、スマホ、ネットに用いる時間から少しを取り分けるよう勧める。ところが、偉大な人格、「魂を揺さぶるような深い人格、高い精神性をもつ人格というのは、いまに限らず、めったにお目にかかれるものではない」。では、どうするか? そこで著者は、「本を読み、深くその対象にのめり込む=沈潜することが肝要です」と説く。

本書のキーワードは「沈潜」。その(旧制高校の学生たちが使った)言葉の意味を示しつつ、著者自身の「沈潜体験」が綴られていく。取り上げられる対象は、ソクラテス、イエス・キリスト。ドストエフスキー、マキャベリ、孫氏、ニーチェ、西田幾多郎、漱石、ゲーテ、太宰らの文学・散文作品。さらに、詩歌、俳句、絵画。また、さらには、テニスプレイヤーの錦織圭、歌手のザ・ピーナッツにも及ぶ。

著者は、「身体を伴わない文化は脆弱」という認識を示す。「『沈潜する』というのは、たんに情報を収集することではありません。テキストに入り込み、その世界を実体験のように感じることです。登場人物、あるいは作者の思想や人格に触れ、それらと交わり、ときに格闘することです」と述べる。「古今東西のすべての古典のあらすじを頭に入れたとしても、深い教養や人格は身につきません」とも言う。「沈潜」はあくまでも「体験」すべきものとして提示される。

著者は自身の体験とともに、「沈潜する」具体的な方法も示している。それを当てはめるなら、書籍・帯にあるように「深い教養は顔に出る」ことになる・・・。

2019年3月4日にレビュー

身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス)

身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 (NHKブックス)

  • 作者: 斎藤 孝
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2000/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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