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『ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ』 早川書房 [科学一般]


ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ

ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ

  • 作者: スティーヴン・W・ ホーキング
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/07/19
  • メディア: 単行本


最新の宇宙論に“触れた”だけでも仕合せ

ホーキング博士の「遺言」ともいえる最終論文:『永久インフレーションからの滑らかな離脱?』が翻訳されてマルゴト掲載されている。(翻訳監修は白水徹也氏/翻訳は松井信彦氏に拠る)。

以下は、論文の「要旨」。「インフレーションに関する通常の扱いは、永久インフレーションでは破綻する。われわれは永久インフレーションの双対的な記述を、永久インフレーションの閾における変形ユークリッド共形場理論(CFT)から導出する。・・中略・・ このことに基づき、われわれは永久インフレーションは無限のフラクタルな多宇宙を作り出さず、その宇宙は有限でほぼ滑らかだと予想する。」

「われわれ」とは、ホーキング博士とベルギーの理論物理学者トマス・ハートッホのこと。そのハートッホへのインタビューも本書に掲載されている。彼が答えているのは、以下の質問。「お二人は宇宙の起源について新たな理論を提唱しました。現状の理論は何が問題なのでしょう?」「お二人の新理論はその課題をどう克服して宇宙に関する理論を深めるのですか?」「お二人の理論はいつか検証可能になるとお考えですか?」「宇宙が有限であるというのはいったいどういうことなのでしょうか?」「宇宙の起源や構造を理解すること。これは科学者にとって野心的にすぎる難題ではありませんか?」「そうやって打ち立てられた宇宙論がこの世界における人々の見方や行動に影響を及ぼしうるとお考えですか?」。

ホーキング博士と個人的なつきあいのあったお二方による寄稿もある。『ホーキング博士の業績と思い出』を佐藤勝彦氏。『ホーキングの最終論文を読むー内容解説』を白水徹也氏。

白水徹也氏の丁寧な『内容解説』も、理論物理学の基礎知識の希薄欠落した評者にとっては、きわめて難解。「こんなスゴイことを考えている人たちがいるんだ」とため息つくばかりである。『内容解説』には、以下の見出しが立てられている。1 はじめに(永久インフレーションの描く宇宙?/ インフレーションと一般相対性理論/ ブラックホールとホーキング/ 宇宙とホーキング/ ホーキングの選択/ ブラックホールからホログラフィーへ) 2 宇宙の波動関数と無境界仮説 (宇宙の始まりと量子宇宙論/ 量子論/ 径路積分法/ 無境界波動関数) 3 インフレーション (インフレーションの提唱/ 宇宙の地平線問題/ モノポール問題/ スローロール/ 宇宙の大規模構造/ 永久インフレーション) 4 超ひも理論の発展ーーブレーンとホログラフィー (量子重力と超ひも理論/ ブラックホールエントロピー試験/ ホログラフィー/ ベッケンシュタイン=ホーキング公式から笠=高柳公式へ) 5 無境界波動関数とホログラフィーとインフレーション (M理論/ 準古典近似の破綻/ ホログラフィーの援用/ 宇宙の形の分布/ 多宇宙/ 残された課題) 6 さいごに

総じて、たいへん難解ではあるが、それでも掲載されている参考図書(講談社ブルーバックスの『インフレーション宇宙論』、『宇宙は本当にひとつなのか』、『大栗先生の超弦理論入門』など)を読みこめば、おおよその感触はつかめるのではないかと思ったりもする。とりあえず、印象に残ったのは、ホーキング博士のユーモアと寛大さとその研究室は「とても居心地のよいところだった」という白水氏の言葉。評者としては、最新の宇宙論に触れただけでも仕合せ。

2018年9月9日にレビュー

インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか (ブルーバックス)

インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか (ブルーバックス)

  • 作者: 佐藤 勝彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/09/22
  • メディア: 新書



宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

  • 作者: 村山 斉
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/07/21
  • メディア: 新書



大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

  • 作者: 大栗 博司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/21
  • メディア: 新書


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『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』 三田 一郎著 講談社 ブルーバックス [科学一般]


科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで (ブルーバックス)

科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで (ブルーバックス)

  • 作者: 三田 一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/06/20
  • メディア: 新書


信仰の根拠として利用できる

著者は物理学者(専門は素粒子物理学)であると同時に「カトリックの聖職者」であるという。本書(特に第1、2章)には、「三位一体」など聖書の教義についての簡単な解説と著者の態度について記されている。評者はそれに与するものではない。つまり、その見解を聖書の教えるところとして受け入れない。

しかし、本書は、同じく聖書の「神」を信じる立場にあるものとして、たいへん評価できる。なぜなら、「神(創造者)」を信じると主張する、その根拠を本書は提供してくれるからである。20世紀、月に人間が実際に立つ科学の時代になって、ウサギと「神」について語るのは気恥ずかしいもののようになってしまった。しかし、それでも(ウサギは別として)〈「神(創造者)」はいる〉と主張するからには、その根拠が必要だ。根拠なしでは、妄想を抱いた狂人のたぐいになってしまう。しかも、本書は、その根拠として、現代科学の最先端(本年3月14日に亡くなったホーキング博士が、死の直前10日前に発表したインフレーションに関する論文)に言及してもいる。

著者は、コペルニクス、ガリレオ、ニュートン、アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、ディラック、ホーキングを章に立て、彼らと「神」との関係について、さらに、カトリック教会(ローマ法王庁)との関係について論じる。偉大な科学者たちは、自分の信仰をさまざまなカタチで表明してきた。一見、無神論を奉じているようであっても、実はそうではないと解釈することもできる。著者は、その辺をあぶり出しもする。

多くの逸話が取り上げられる。たとえば、有名なものでは、ニュートンが作らせた精巧な太陽系の模型を、誰が作ったのだと尋ねる無神論者の友人に、誰がつくったのでもない、と答えて、友人の抱く考えの愚かしさをニュートンが指摘したという話(p125,6)も取り上げられている。ほかにも、上記科学者らと同時代の科学者たち(たとえば、ガリレオとジョルダ-ノ・ブルーノ)だけでなく、彼らと関係した教会の主だった人物(たとえば、ガリレオと親しかったバルベリーニ枢機卿やヨハネ・パウロ2世)ついても語られる。

巻末に多数の参考文献が出ている。それらを確認しながらの著作は、たいへん労多いものであったと思う。その実を、自分の信仰の根拠として利用できることの感謝を表したい。

2018年8月20日にレビュー

ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ

ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/07/19
  • メディア: 単行本



舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本



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『シュメール人の数学: 粘土板に刻まれた古の数学を読む』 室井 和男著 共立出版 [科学一般]


シュメール人の数学: 粘土板に刻まれた古の数学を読む (共立スマートセレクション)

シュメール人の数学: 粘土板に刻まれた古の数学を読む (共立スマートセレクション)

  • 作者: 室井 和男
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2017/06/09
  • メディア: 単行本


古代ハスを開花させる以上の仕事

古代の遺跡から発掘されたハスの実が、2000年の時を隔てて、育成され開花したなら、ニュースになる。新聞、ネット上に写真も広まり、おおきな話題となって、それを見に多くの人が出かけることになる。

著者の仕事は、それに相当する話題性があると思うが、残念ながらニュースにならない。古代ハスの開花ほどに人目を惹くものではない。それでも、「紀元前2600年ごろから紀元前2000年ごろまでのシュメール人の数学の概要を一般読者に伝える(『はじめに』)」本書は、埋もれていた古代の数学の実を、衆目の面前で開花させたようなものだ。

残念ながら、評者は本書で展開されるシュメール人の数学の全貌詳細を知って、著者の解明した仕事の価値を喧伝する力はない。それでも、塾の数学講師の傍ら、古代の数学に関する論文を読み、それに飽き足らず、みずからアッカド語、シュメール語を独学し、古代の人々が現代人に優るとも劣らない知的(数学的)能力を持ち合わせていたことを明らかにしたことは、評価できる。数学の研究以前に、粘土板に刻まれた楔形文字やそれ以前の文字を解読するための格闘があったのである。

本書には、著者の研究の経過も示されている。それは、学究としての生き様と言ってもいい。今、研究者とは、こういう人のことを言うのだろうなと感嘆している。本書コーディネーターの中村滋氏は、著者を『古代の精密科学』の著者オットー・ノイゲバウアーの「後をついで世界的なバビロニア数学史家になった」と書き、さらに、「その後の解読の成果の一部が『数学史』とこの「シュメール人の数学」に結実した」と記している。

時間をかけさえすれば、本書に展開されている著者の論理を追って『シュメール人の数学』の実と花を味わうことができると直観する。若い人は、どうぞ挑戦してください。

2018年8月19日にレビュー

バビロニアの数学

バビロニアの数学

  • 作者: 室井 和男
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 単行本


数学史 ―数学5000年の歩み―

数学史 ―数学5000年の歩み―

  • 作者: 中村 滋
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2014/11/22
  • メディア: 単行本



永久(とわ)に生きるとは―シュメール語のことわざを通して見る人間社会 (バウンダリー叢書)

永久(とわ)に生きるとは―シュメール語のことわざを通して見る人間社会 (バウンダリー叢書)

  • 作者: 室井 和男
  • 出版社/メーカー: 海鳴社
  • 発売日: 2010/07/01
  • メディア: 単行本



ノアの箱舟の真実──「大洪水伝説」をさかのぼる

ノアの箱舟の真実──「大洪水伝説」をさかのぼる

  • 作者: アーヴィング・フィンケル
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: 単行本


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『世界がわかる地理学入門―気候・地形・動植物と人間生活 (ちくま新書)』 水野 一晴著 [科学一般]


世界がわかる地理学入門――気候・地形・動植物と人間生活 (ちくま新書)

世界がわかる地理学入門――気候・地形・動植物と人間生活 (ちくま新書)

  • 作者: 水野 一晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/03/06
  • メディア: 新書


「私たちの生活は自然と密接に結びついているのだ」

本書の内容紹介に〈世界には、さまざまな場所があり、多様な人びとが暮らしている。そして、そんな各地の人間の暮らしは、気候、地形、植生など色々なものの影響を受けている。ふだんは気づかなくとも、私たちの生活は自然と密接に結びついているのだ〉とあるが、実際、その「ふだん気づかな」い、自然との結びつきを悟ることができるよう助けてくれる本だ。

著者は、気候区分の概説の後、熱帯気候、乾燥・半乾燥気候、寒帯・冷帯気候、温帯気候の気候区分ごとに、その自然、気候メカニズム、農業、住民生活等について解説していく。しかし、その解説は陳腐ではない。陳腐でないだけでなく、たいへん興味深い。2018年最新の情報も示されている。地理学的観点から“現在の”世界を知ることのできるたいへん有用でオモシロイ本であると思う。(専門用語も本文中で説明を加えつつ記述がなされていくので、単なる読み物としても十分たのしめる)。

他を知ることで自らをよりよく知ることができるものだが、日本という国に生まれて良かったと感じさせられもした。すこし引用してみる。〈そのため、ヨーロッパの植生は非常に単調となり、高等植物は全部あわせても約2000種ほどしかない。日本は小さな島国でありながら約5000種が存在するので、いかにヨーロッパの種類が少ないかがわかるであろう。イギリスが約1500種、アイルランドが約1000種なのだが、日本では東京近郊の高尾山(599m)だけで約1500種も存在するのだ(水野2015、2016d)〉という記述もある。

そして、この後、“ドイツ人”シーボルトが、ヨーロッパでは既に絶滅して化石でしか見いだせないイチョウが日本に生えていることを知って・・・という逸話が紹介されている。

2018年5月18日にレビュー

気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から (NHKブックス)

気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から (NHKブックス)

  • 作者: 水野 一晴
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/08/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



自然のしくみがわかる地理学入門

自然のしくみがわかる地理学入門

  • 作者: 水野 一晴
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 単行本


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『エレクトロニクスをはじめよう』 オライリージャパン [科学一般]


エレクトロニクスをはじめよう (Make: PROJECTS)

エレクトロニクスをはじめよう (Make: PROJECTS)

  • 作者: Forrest M. Mims III
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「エレクトロニクスをはじめよう」という気持ちに・・・

電子工作にあこがれ、いろいろな記号をもちいた配線図にあこがれ、あこがれだけで終わったように思っていた評者にとって、「終わりではないよ」とささやく本に出会ったように感じた。なによりも、解説がやさしい。

「1章 電気」は次のように始まる。「空から落ちる稲妻と、ドアノブを乾いた手で触った時にパチッと刺激が走ること、この2つはどちらも電気で、その違いは電気の量にすぎません」。

そして、解説とともに数多くの線画が用いられている。文字は決して大きくはないものの、適度に行間・スペースが空けられているので、(あくまでも主観に過ぎないが)決して見ずらくわずらわしい印象はない。

「空から落ちる稲妻」から始まった解説は、2章:電子部品、3章:半導体、4章:光半導体、5章:集積回路、6章:デジタルIC、7章:リニアIC、8章:回路組み立てのコツ、9章:電子回路 とたいへん高度なものにまで及ぶ。

本書すべてを通読したわけではないが、「エレクトロニクスをはじめよう」という気持ちにさせられた。ところが、当該書籍 アマゾン・カスタマーレビューを見てハタと、思いがとどまった。そこには、「誤記が多いのはいただけません」とある。

たしかに、「誤記」はいただけない。なぜなら、エレクトロニクス初心の評者は、「誤記」の誤りに気づくこともできないであろうから・・・。

それでも、とりあえず、読めるところまで読んでみようという気持ちでいる。そう思わせるだけでも、本書を「たいしたモノ」だと思う・・・

2018年5月12日にレビュー

Make: Electronics ―作ってわかる電気と電子回路の基礎 ((Make:PROJECTS))

Make: Electronics ―作ってわかる電気と電子回路の基礎 ((Make:PROJECTS))

  • 作者: Charles Platt
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2010/11/29
  • メディア: 大型本



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『コンタクトレンズと眼鏡の科学』 久保田 慎著 日刊工業新聞 [科学一般]


コンタクトレンズと眼鏡の科学 (おもしろサイエンス)

コンタクトレンズと眼鏡の科学 (おもしろサイエンス)

  • 作者: 久保田 慎
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2018/02/17
  • メディア: 単行本


難しい用語がでてきても、圧倒される感がない

コンタクトレンズと眼鏡 だけでなく、超高性能カメラのような視機能をもつ眼(球)を科学する本。文字が大きめで、行間も適度に空けられて見やすい。解説も図版が多く用いられ理解しやすい。その開発の歴史、そして現在の状況なども示されている。

説明は以下のような「です・ます調」。そのせいか、難しい用語がでてきても、圧倒される感がない。身近なたとえが多用され、図版の助けが大きい。索引が無いのが残念。

〈人が目的地を目指して移動するときには、最短距離よりも最短時間で到着するルートを選ぶのが世の常です。光にも似たような性質があります。それが有名な「フェルマーの原理」と呼ばれる法則です。遠方から来た光が目的地に到達するとき、光のもつ原理・原則です。(p14)〉

〈これは「スネルの法則」と呼ばれ、屈折率が異なる物体の境界に生じるものです。例えば、これが球面であった場合、球面に接する線である「接線」に対して、垂直な法線を立てます。レンズに光が入る、あるいは出る際にはこの「スネルの法則」の通りに「決まった角度の方向」にしか走ってゆけないのです。(p18)〉

以下、章立て目次

第1章 光を操って、視力を補正する!?
第2章 今のコンタクトレンズにできること!!
第3章 眼鏡もずっと進化を続けている
第4章 コンタクトレンズvs眼鏡どっちが・・?
第5章 特別な機能を持ったコンタクトレンズ・眼鏡

2018年4月21日にレビュー

人生が変わるメガネ選び (経営者新書 121)

人生が変わるメガネ選び (経営者新書 121)

  • 作者: 梶田 雅義
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: 新書


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『起源図鑑 ビッグバンからへそのゴマまで、ほとんどあらゆることの歴史』 ディスカヴァー・トゥエンティワン [科学一般]


New Scientist 起源図鑑 ビッグバンからへそのゴマまで、ほとんどあらゆることの歴史

New Scientist 起源図鑑 ビッグバンからへそのゴマまで、ほとんどあらゆることの歴史

  • 作者: グレアム・ロートン
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2017/12/14
  • メディア: 大型本


「はなしのネタ」がたくさん

イラスト・図版が多いというより、書籍自体がイラストで成っているような本だ。一見、子どものための本と思ったが、実際はそうではなく、おとな向けである。

当初イラスト・色刷りがうるさく感じられ、対して文字は比較的小さく、読みにくい印象であった。が、慣れるとそうでもない。要点が太字になっていて、イラストと太字を追っていくと内容を推しはかれる。そして、気になるところをじっくり読んで楽しむこともできる。2016年(原書)発行だが、いざ慣れ親しんだ目で見ると、のちのち、インフォグラフィックのお手本として評価されるものとなるように思えもする。

何気なく序文(「存在:私たちはどこから来たのか?」)を読んでいたら、宇宙のはじまりについての記述で、「ロジャー・ペンローズと私が示したのだ。そしてこの特異点においてこそ、時間が始まったのである」とある。「私」とはホーキング博士のことだった。つまりは、本書は博士推薦と解してよいのだろう。

内容は盛りだくさんである。自然科学関連だけでなく、人文科学、社会科学関連の話題も取り扱われている。「ビッグバンからへそのゴマまで」とあるが、ほんとうに「へそのゴマ」の話もでている。耳あかを綿棒に取った大うつしの写真も出ている。関連して話題にできそうなコラムも用意されている。要するに、「はなしのネタ」を大量に見いだせる本である。紙質があまり上等ではない。索引はあるがより充実させたい。(以下、「目次」)

第1章 宇宙(物質、空間、時間の起源/ 星と銀河の/ 元素の/ 隕石の/ 暗黒物質と暗黒エネルギーの) // 第2章 地球(太陽系の起源 / 月の/ 大陸と海の/ 天候の/ 石油の)// 第3章 生命(生命の起源/ 複雑な細胞の/ 性行動の/ 昆虫の/ 恐竜の/ 目の/ 睡眠の/ 人間の/ 言語の/ 友情の/ へそのゴマの)// 第4章 文明(都市の起源/ 貨幣の/ 葬送の/ 料理の/ 家畜の/ 宗教の/ 酒の/ 所有の/ 衣服の/ 音楽の/ 衛生管理の)// 第5章 知識(文字の起源/ ゼロの/ 計測の/ 時間の測定の/ 政治の/ 化学の/ 量子力学の)// 第6章 発明(車軸の起源/ ラジオの/ 飛行の/ QWERTYキーボードの/ コンピューターの/ X線の/ 偶然の発見の/ 核兵器の/ 抗菌薬の/ インターネットの/ ロケット科学の) 参考文献 / 謝辞 / 索引

2018年3月31日にレビュー

対話の秘訣 話のタネになる本

対話の秘訣 話のタネになる本

  • 出版社/メーカー: 光文書院
  • 発売日: 2023/07/03
  • メディア: 単行本


超国家主義者に、トイレで会う
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2017-05-10
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『親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド』 創元社 [科学一般]


親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

親子で学ぶ科学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

  • 作者: キャロル・ヴォーダマン
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/10/11
  • メディア: 単行本


親子で驚きを共有し、科学への興味関心を高めていく格好の書籍

たいへんビジュアルな本です。まるで色見本帳のようです。見ていてわくわくして参ります。生物・化学・物理の範囲に属する項目が、各項目ごと見開き2ページで解説されていきます。

しかし、その内容は決してやさしいものではありません。訳者(渡辺滋人氏)の記しているように「簡潔でそれなりにわかりやすい説明を試みているものの、噛んで含めるように手取り足取りゆっくりと読者を導いていくタイプの本と(は)違うように思います」。実際、けっこう高度な内容で、ひとり独習して理解に至るには高校程度の知力・理解力が求められるのではないかと思います。

この本は「親子で学ぶ」とタイトルにあるように、親御さんの役割がたいへん重要であるように思います。目次は「科学って何?」「科学の方法」から始まり、それらが簡潔に説明されています。そこから見えてくるのは、自分の子どもの好奇心が単にオドロキとして終わるのではなく、科学的なモノの見方へとつながるよう導いていく務めが親には課せられていることであるように思います。そこには、こんにち確かなモノと見なされている科学的情報も、更新されつつ今日に至っていることを認めることも含まれてきます。たとえば、「科学って何?」の「知識を支える」の欄には〈周期表の配置〉に関して、次のようなコメントが付されています。「1989年に発表された周期表は、ロシア人化学者メンデレーエフの功績とされているが、現実には何世紀にもわたる元素研究の積み重ねの結果でもある」とあります。そのような見方は、いま学んでいる確かなものとされている知識も更新された積み重ねの結果としてあり、将来変化する可能性もある知識と見なしていくことにもなると思います。そうした見方は、子どもの思いに、将来 “自分が” 科学的知識を更新する可能性のあることを悟らせるものとなるかもしれません。

「まえがき」にある著者の言葉からは、本書を用いて子どもを導く親の側に科学の十全な知識が決して求められてはいないことが示されています。次のようにあります。「あらゆる科学的事象に対して、たとえ答えがわからなくても親自身が『へぇー!』という驚きの声を挙げることがどれほど大切であるか、二人の子どものシングルマザーである私も実感しています。科学では気づかせるべき『正しい答え』は必ずしも必要なものとはいえません。」「この本がすべての親たちのガイド役になることを、私たちは願っています」。

補足する解説は十分にできないにしても、親子で本書をのぞき込んで、子どもといっしょに「へぇー!」という驚きの声を挙げることは、いくらでもできそうです。そして、むずかしく思えるところは、もっと詳しくやさしい解説書に当たることもできるでしょう。それこそ、「調べ学習」の良い材料になるように思います。そのようにして、親子で驚きを共有し、科学への興味関心を高めていく点で、本書は格好の書籍であるように思います。

2018年1月22日にレビュー

物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

  • 作者: アン ルーニー
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2015/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-11-07

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『 面白くて眠れなくなる元素 』左巻 健男著  PHP研究所 [科学一般]


面白くて眠れなくなる元素

面白くて眠れなくなる元素

  • 作者: 左巻 健男
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


森羅万象を織りなす元素の世界へようこそ!

『はじめに』著者のつぎのような挨拶・招待の言葉が記される。《森羅万象を織りなす元素の世界へようこそ!》《本書は、元素の世界を面白く役に立つ話題に結びつけて、やさしく紹介しようとしました》。《元素についての本というと、化学式やくわしい原子構造などが次々と紹介される場合があります。しかし、本書は、学校で習った理科は苦手でも、知的好奇心をもって元素の世界を知りたい人に向けて書きました》。《どのページを開いて読んでいただいても楽しい本になるように努めたつもりです》。《それでは、一緒に元素の世界を楽しみましょう》。

事実、そのとおりの本で、よくぞここまでと思うほどに、《元素の世界を面白く役に立つ話題に結びつけて》いる。原子番号1の水素(H)から、118のオガネソン(Og)まで、順に取り上げられ、元素名の由来、それぞれの性質・特徴が示され、さらに、いろいろな話題に結び付けられていく。それは、身近な食品であったり、現在開発中の技術であったり、歴史的知識であったり、時事ニュースであったりする。中には世間を騒がせたニュースも取り上げられる。女性の靴にある薬品を塗って指を切断させたというニュースや友人に飲ませて視力障害を引き起こしたというような話だ。また、著者自身の経験から、(危険・有害なので)「絶対に真似しないでください」という話もでる。

たとえば、身近な食品の話題としては、原子番号26のFe(鉄)に関して、《「鉄分の王様」とよばれたヒジキの鉄分が100gあたり55mgあったのに6.2mgと、9分の1になりました。これは、文部科学省が2015年12月25日、日ごろ口にする食品の栄養成分をまとめた日本食品標準成分表の改訂版のヒジキの表示です。・・・》。なぜ、王様の地位が大きく下がったのか?その理由は、本文に示されており、それを読むなら、鉄分を摂取するうえでの良い指針とすることができる。

はじめてPHP出版『面白くて眠れなくなる・・』シリーズを読む機会を得た。本書の内容から推して、他のモノも目を通して損はないかもしれないと感じている。

2016年8月31日にレビュー

ニセ科学を見抜くセンス

ニセ科学を見抜くセンス

  • 作者: 左巻 健男
  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2015/09/29
  • メディア: 単行本



よくわかる元素図鑑

よくわかる元素図鑑

  • 作者: 左巻 健男
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2012/09/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『 イザというときに身を守る 気象災害への知恵 』伊藤 佳子・鈴木純子著 求龍堂 [科学一般]


いざというときに身を守る 気象災害への知恵

いざというときに身を守る 気象災害への知恵

  • 作者: 伊藤 佳子
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 2016/07/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


お役立ち情報が、一冊にまとめられていて、便利

気象災害として取り上げられているのは ①大雨(局地的短時間大雨・ゲリラ豪雨)、②大雨(洪水・浸水害)、③大雨(土砂災害)、④雷、⑤強風、⑥竜巻、⑦花粉症、⑧熱中症、⑨光化学スモッグ、⑩黄砂 PM2.5、⑪台風、⑫霜、⑬大雪、⑭雪崩、⑮吹雪、⑯ヒートショック、⑰気象病

報道の現場にいる気象予報士アナウンサーによる執筆である。2015年9月に鬼怒川が決壊し、常総市に甚大が被害が出た。《振り返ってみると、栃木県で記録的な大雨となっている時点で、栃木県から茨城県に流れる河川が増水することは予測することができた・・・。だとしたら、気象情報の中で、「栃木から茨城にかけて流れる河川の下流にお住まいの方は、今後の情報にご注意ください」などの注意の呼びかけができたのではないかと、後悔が残ります》という口惜しい思いをしてきた方たちが「この本を読んでいただき、少しでも気象災害の被害を少なくしていただけたらうれしいです」との思いで記したもの。

文字は大きめ(5㍉角くらい)、行間も比較的余裕があり、一色刷りで大事な点だけ太字を用いている。各項目冒頭ページにはアナウンサーの似顔絵が掲載され、項目末には箇条書きの「まとめ」欄が用意されている。気になるのは、ほぼ白紙のページがままあることだ。「大雨のときに注意するべき気象情報」にいたっては、「大事なことなので、ここでもくりかえします」と全く同じ内容の掲載ページがある。編集に問題があると言われてもしようがないような体裁だ。

もっとも、そのムダ(に思えるよう)な紙面構成のおかげで、「大事なこと」に目がすぐに届く。「天気予報は命を守る情報だ!」の思いのもと、実際に起きた災害を取り上げつつ、身を守る術が示される。災害例は、著者たちの放送現場で起きてきたことであり、また、読者の記憶にも新しい。なまなましく思い出されて、地元のハザードマップを調べるよう、災害から身を守る点で「お役立ち」のネットサイトを訪問するよう促される。

ネット上の「まとめサイト」を探すなら本書に拠らずとも、お役立ち情報は得られるにちがいない。ただ、こうして一冊にまとめられてあると、便利ではある。イザという時、手元にあれば心づよいことだろう。ネット接続をしていない年配の方たちには特に有用かもしれない。親や祖父母へのプレゼントとすることもできるかもしれない。

2016年8月13日にレビュー

気象災害の事典: ―日本の四季と猛威・防災―

気象災害の事典: ―日本の四季と猛威・防災―

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝倉書店
  • 発売日: 2015/08/28
  • メディア: 単行本



お天気の科学 気象災害から身を守るために

お天気の科学 気象災害から身を守るために

  • 作者: 小倉 義光
  • 出版社/メーカー: 森北出版
  • 発売日: 1994/08/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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