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『蜃気楼のすべて! 』日本蜃気楼協議会 草思社 [科学一般]


蜃気楼のすべて!

蜃気楼のすべて!

  • 作者: 日本蜃気楼協議会
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2016/04/21
  • メディア: 大型本


蜃気楼を知るうえでよくまとめられた一冊

「蜃気楼への招待状」といった軽い気持ちで手にした。気軽に見られる写真集の形態をとっているのでありがたい。見たいとは思うものの、なかなか見る機会がないので、なおさらだ。

本書では、蜃気楼という言葉の由来、現象の起こる物理的背景、さらには歴史や文化など示されている。魚津市など、いわゆる名所(発生地)の紹介もある。ウンチクを傾けたい向きにはうってつけだ。

なんでも「蜃気楼研究は、今まさに発展期」で、研究が「大きく前進したのは、ここ最近」で、有名な「富山湾の蜃気楼」の発生原因について「広く信じられてきた定説」の間違いが判明し、新たな説が出ているが、「完全に解明されたわけではな」く、「まさに今、蜃気楼研究はようやく本格的にスタートした」状態なのだそうである。

「本書を片手に、全国の発生地に出かけてみる」よう勧められている。『天気予報を利用して、東京から日帰りで蜃気楼を見に行こう』という章もある。魚津、琵琶湖、小樽、斜里、苫小牧、猪苗代湖、大阪湾、八代海、中国・蓬莱、南極などが紹介され、発生しやすい気象条件(時期、時間、気温、風、気圧配置など)が示されてもいる。

軽い気持ちでよみ始めた読者は、見るだけでなく、研究への参加を呼びかけられもする。不知火(八代海)に関して、「親火(漁火などの光源)が上下に変化する場合は蜃気楼と同じように説明がつくが」、左右に分かれたり、水平線上に連なったりする「要因は明らかではなく」、「本書刊行時点では研究の空白地帯となっている。調査・研究を行う挑戦者の登場が待たれている」と、ある。

第3部は、まさに研究への招待。「蜃気楼を研究しよう!」と題され、「定点カメラ」や「再現実験」の話。第4部「蜃気楼の歴史と美術」は、文化面の紹介。第3部以降は、モノクロ印刷となっており、「日本蜃気楼協議会」のウェブサイトの紹介もある。

総合的に言って、蜃気楼を知るうえでよくまとめられた一冊といえる。

2016年7月11日レビュー
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「富士山噴火に備える」『科学』編集部編 岩波書店 [科学一般]


富士山噴火に備える

富士山噴火に備える

  • 作者: 『科学』編集部
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2023/02/24
  • メディア: 単行本


たいへん真面目な、いかにも岩波書店な本です。しかも編集は雑誌『科学』編集部によります。真面目さは天を衝きます(笑)。

内容については「はじめに」次のように記されています。《本書は、富士山噴火への社会的な備えに関心が集まりつつある中、雑誌『科学』に掲載された2022年7月号、2014年1月号の特集論文を中心に、関連論文を集めたものです》。目次は以下のようなものです。

はじめに
火山専門家の育成・確保が急務

Ⅰ 富士山噴火に備える// [概論] 富士山噴火に備える / 富士火山の噴火史 / [地下構造]富士山のモニタリング / 電磁気的観測で地下構造を探る / 富士山の地下構造を地震波から探る [噴火史]宝永山は降り積もってできた火砕丘である / 噴出物から読み解く富士山のマグマ供給系 / 富士山の景観 [地下構造を探る新手法]桜島のリアルタイム透視 / 世界初の多方向3次元透視が明らかにした大室山の内部構造 [防災]富士山ハザードマップの改定 / 宝永噴火の降灰シミュレーション / 都市が火山灰で覆われたらどうなるか / 火山灰で覆われた道路を車両は走れるのか / 富士山噴火の降灰が首都圏のインフラに及ぼす影響 / 富士山噴火と防災情報 / 富士山での突発的噴火の可能性と登山者対策 / 桜島2022年7月噴火と火山防災学の課題

Ⅱ 大噴火・巨大噴火を知るー巨大噴火がつくりだした日本列島 // 大噴火の溶岩流・火砕流はどれほど広がるか / 私たちは本当の巨大噴火を経験していない / カルデラとは何か:鬼界大噴火を例に / 阿蘇4巨大噴火のマグマ発生と噴火推移 / 超巨大噴火は予知できるか / 焦眉の急、巨大カルデラ噴火 / 7300年前に破局噴火を起こした鬼界カルデラに巨大溶岩ドームが成長 / 九州を南北につらなるカルデラたち / 北アルプスをつくった大噴火 / 北海道東部、阿寒~屈斜路火山群の成り立ち / 謎の箱根カルデラと過去に秘められた巨大噴火 / 大規模噴火データベースと噴火推移データベースで噴火の詳細情報を明らかに / 日本の火山データベース / 噴火と原発

Q&A 火山噴火 127の疑問 噴火の仕組みを理解し災害に備える (ブルーバックス)

Q&A 火山噴火 127の疑問 噴火の仕組みを理解し災害に備える (ブルーバックス)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/18
  • メディア: 新書



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



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『ときめく化石図鑑』土屋 香著 山と渓谷社刊 [科学一般]


ときめく化石図鑑 (ときめく図鑑 Book for Discovery)

ときめく化石図鑑 (ときめく図鑑 Book for Discovery)

  • 作者: 土屋 香
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



この本を入り口に化石の世界にどっぷり・・・

著者の「わたし」こと土屋香さんは、ネット販売専門のお店:「恐竜・化石グッズの専門店 ふぉっしる」の店長ということです。「この図鑑に載っている化石はわたしがときめくものを中心に集めました。ひとつでもお気に入りの化石をみつけていただけたらこれ幸い。化石には本当にいろいろなものがあります。全部紹介しようとするとこの本が一体何冊必要になるか見当もつきません。・・中略・・化石は本当に奥が深いです。この本を入り口に化石の世界にどっぷりはまってみませんか?」と(「おわりに」)記しています。

写真がたいへん魅力的で、実物を見てみたい気持ちにさせられます。「化石ミュージアム案内」や「世界の化石に会える ミネラルショーの歩き方」という紹介もあって、実際に足をはこんでみたい気にもなります。

本の構成として、入門者に対する本なのであれば、〈「化石ってなんだろう?」をはじめに持ってきて欲しかったな・・〉とか、化石標本室の〈化石のカタカナの名前の意味を簡単に記してくれればいいのに・・〉、たとえば〈カテゴリーとしてのアンモナイトのなかに「ダクチリオセラス」、「ネオケトセラス」、「プラセンチセラス」などあるけど、この「・・・セラス」の意味はなんだろう・・〉など、疑問を感じつつ読みました。

疑問を払拭する仕方で、なにからなにまで書き連ねようとしたなら「この本が一体何冊必要になるか見当もつ」かないというのが本音なのでしょう。たいへん小さな活字も用いられていて、シニア・アイでは、ちょっとたいへんかもしれません。それでも、化石の世界へといざなう良い案内書になっているのではないでしょうか。

2016年5月15日レビュー


化石観察入門: 様々な化石の特徴、発掘方法、新しい調べ方がわかる

化石観察入門: 様々な化石の特徴、発掘方法、新しい調べ方がわかる

  • 作者: 芝原 暁彦
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2014/07/15
  • メディア: 単行本



化石ウォーキングガイド 関東甲信越版: 古代ロマンを求めて化石発掘26地点

化石ウォーキングガイド 関東甲信越版: 古代ロマンを求めて化石発掘26地点

  • 作者: 相場 博明
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2013/06/13
  • メディア: 単行本



中生代の生物 4巻セット (生物ミステリー (生物ミステリープロ))

中生代の生物 4巻セット (生物ミステリー (生物ミステリープロ))

  • 作者: 土屋 健
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2015/09/01
  • メディア: 単行本



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*はじめて学ぶ 海洋学』横瀬久芳著(朝倉書店) [科学一般]


はじめて学ぶ海洋学

はじめて学ぶ海洋学

  • 作者: 横瀬 久芳
  • 出版社/メーカー: 朝倉書店
  • 発売日: 2015/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



われわれが〈水の惑星に住む「すばらしい奇跡のひとりである」〉ことを理解できる

当該書籍の『出版社からのコメント』をみると、「海水はどうして塩辛いのか?」 「海岸に打ち寄せる波はどこからくるのか?」など…いまさら聞けない素朴な疑問に答えるべく、本書では海洋学初心者にもわかるように総合科学的視点から解説していきます」とあり、また、タイトルにも「はじめて学ぶ」とあるので、「初心者」とされる対象読者層は、高校生あたりかなど思って読み始めたのだが、序文には、「海洋学や地学を学んだことのない教養課程の大学生」とあった。実際、内容は、それ相応である。ネットで調べると、著者の教授する大学の講義で用いられているテキストであることを知った。

それゆえ、それ相応に難しくもあるが、わかりやすい叙述である。「全体としては、大学生のみならず、中・高校生にも楽しめる内容が含まれて」いると序文にあるのはウソではない。未知の(時には、既知の)用語でも、その意味(や、いわれ)が興味深く示されつつ叙述、説明が進められていくので、「初心者」であっても、無理なくついていけるように思う。もっとも、無理がないと言っても、「読めば、ただちにわかる」というのでなく、数式などもあり、理解を得るためには考えることを求められもするが、その作業を楽んでできるレベルになっている。

たとえば、第1章『人類の海洋進出』は、「周囲8km程度の視界で果敢に船出し」「数千kmを超える冒険のたびに、人類は命がけで挑戦してきた」こと。〈大海原で船の位置を決めるに〉あたり、「目標物のない海上でも、海図(chart)上の緯線(latitude)と経線(longtitude)の交点で位置を表」(P2)わそうとしてきたという説明から始まって、「近代的な測位システムや測深技術の発達に伴って、これまで何の目印もなかった外洋地域に様々な線引きが可能となりました。(・・略・・)無限に広がる大海原といった印象は過去のものとなり、現代は細かく区画整理された有限の空間であるという認識の方が的確かもしれません。とはいえ、書類の上で海が区分けされたとしても、地球上では1つにつながっているわけであり、国際協力のもと海洋の永続的な利用と保全に努めることが、人類にとって今後ますます重要な課題になっています」(p23)と、現状と課題をもって、章が締めくくられるまでに、緯度、経度の説明がはさまれるわけだが、経線の説明には次のようにある。「(経線は)子午線とも呼ばれています。それは、古来より日本では方位を12に分け、それぞれに十二支を当てはめたことに由来します。北は子(ね)、南は午(うま)の方角とされたので、南北方向は子と午を結ぶ “子午” の方角となります」といった具合である。

著者は『はじめに』の末尾で、〈全体を通して、皆さんが海洋学を面白いものだと認識していただければ幸いです。そして、私たち自身が水の惑星に住む「すばらしい奇跡の1人である」と理解した上で、「閉鎖的環境の地球人として背負うべき責任の重さ」を感じ取っていただければ、そのとき本書は皆さんにとって単なる教科書の枠を超え、「海の理解者」への第一歩を踏み出すガイドブックに変貌するでしょう〉と、記して締めくくっているが、当該書籍は、その目的を果たすに十分な一冊であると思う。

2016年2月12日レビュー

***********
熊本大学大学院自然科学研究科地球環境科学講座 
担当 横瀬久芳(海洋火山学)

はじめての海洋学 講義スケジュール
http://yrg.sci.kumamoto-u.ac.jp/lecture/B1.html


海洋学

海洋学

  • 出版社/メーカー: 東海大学出版会
  • 発売日: 2010/04/01
  • メディア: 単行本



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須賀 如川著 『自然風景の読み方 ―地球の魅力を再発見!』(ぎょうせい) [科学一般]


自然風景の読み方 ―地球の魅力を再発見!

自然風景の読み方 ―地球の魅力を再発見!

  • 作者: 須賀 如川
  • 出版社/メーカー: ぎょうせい
  • 発売日: 2015/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



「複眼」を得て、自然風景の深層を見る

勇壮な富士山の表紙写真に惹かれ、自然景観を見る上での新たな視点を得ることができそうに思い手に取りました。「読み方」というノウハウ本のようなタイトルから、「入門書」のように思いました。ところが、いざ読み始めると、けっこう難しい。路線としては、ロバート・ヤーハム著『自然景観の謎 (HOW TO READシリーズ) 』や斎藤 眞著『日本の地形・地質―見てみたい大地の風景116 』(いずれも当方、未読)に連なる書籍のように思いますが、当該書籍本文中に挿絵・写真はひとつも無く、用語解説も索引もなく、叙述も錯綜した感があり、パッと読み出しての印象は難解で、予想とはだいぶ異なりました。それでも、その難解であることが、かえって、魅力と感じられる書籍でもあります。

つきつめて本書の内容を要約すれば〈「複眼」を得るなら、自然風景の深層を見ることができるようになる〉ということに尽きると思いますが、その見えるようになると著者が想定している見え方が、フツウではありません。著者は土木工学を専攻された方ですので、地質学的情報や地球科学的情報の上に立って、「この風景は、こう解釈できる」「その風景の深層はこうである」といった解説がなされるのは予期されるところですが、それだけではありません。「複眼」については「一般的な地象・水象・気象等の自然現象に関する知見」「社会現象に関する知見は重要で」「特に、地質学的知見は基本面において役に立ちます」とありますが、そうした知見を得、「複眼」を所持することによって見えるようになる眼前の風景のその見え方については、フツウの域を超えていきます。

その点で、「自然を見る眼が進化して高度の複眼となり」「自然が発する 『気』 に感応できた」有名画伯(小泉淳作氏)の経験が引き合いにだされ、「この進化の過程は凄いです。スケッチの最中に衝撃が走り、眼前のモヤが瞬時に晴れ、長い間判然としなかった山の活きた姿が突如として出現したとのことです」と説明されていきます。

基本的には、科学的アプローチによる自然解釈で、決して『気』のふれた内容ではありません。日本の風景と海外の風景とを対照させて、その違いを示していくという方針で一貫しています。造山運動など地球規模の動きを示しつつ、これほど身近に引き付けて解説している本が他にあるのだろうかと直観されもいたします。それでも思うに、著者自身、風景から読み取った(言語で表現できる以上の)モノを、なんとか表現しようと試み、うまく表現できないゆえの叙述の錯綜・混乱が生じているようにも思われます。(もっとも、これは、ただ単に、読者である当方にモンダイがあるだけのことかもしれません・・・)。

一見難解な印象の著作ではありますが、繰り返し読んでいくと、言語表現を超えた世界に通じる道が拓かれる『気』のする著作でもあります。

2015年12月27日レビュー

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
須賀/如川
1935年石川県生まれ。1959年東京大学工学部土木工学科卒業。旧建設省(現国土交通省)土木研究所河川研究室長、宇都宮大学工学部教授を経て、宇都宮大学名誉教授、河相工学研究堂代表、工学博士・技術士(防災)・土木学会特別上級技術者(防災)。専攻、河川工学、自然環境工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


自然景観の謎 (HOW TO READシリーズ)

自然景観の謎 (HOW TO READシリーズ)

  • 作者: ロバート・ヤーハム
  • 出版社/メーカー: 産調出版
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: 単行本



日本の地形・地質―見てみたい大地の風景116 (列島自然めぐり)

日本の地形・地質―見てみたい大地の風景116 (列島自然めぐり)

  • 作者: 斎藤 眞
  • 出版社/メーカー: 文一総合出版
  • 発売日: 2012/03/03
  • メディア: 単行本



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「偉人たちの挑戦(3)物理学編II (サイエンス探究シリーズ)」東京電機大学出版局 [科学一般]


偉人たちの挑戦(3)物理学編II (サイエンス探究シリーズ)

偉人たちの挑戦(3)物理学編II (サイエンス探究シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
  • 発売日: 2022/07/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



著名な科学者の評伝。各自どんな挑戦をしどんな仕事を成したか対話形式で示される。たいへん分かりやすく面白い。全部で8巻のシリーズになるはずだが、現在3冊目。第3巻の登場人物は以下の方々。

ニールス・ボーア(量子力学の創始者で現代物理学の父)
ヘンリー・モーズリー(X線で原子番号の謎を解き明かした)
エルヴィン・シュレーディンガー(「波動方程式」の提唱者)
仁科芳雄(日本原子物理学の”親方”)
ブラッグ親子(X線結晶解析で親子同時にノーベル賞を受賞)
ジェームズ・チャドウィック(中性子の発見者)
ルイ・ド・ブロイ(「物質波」の提唱者)
中谷宇吉郎(世界初の人工雪を作った物理学者)
エンリコ・フェルミ(初めて原子炉を作った物理学者)
アーネスト・ローレンス(サイクロトロンの発明者)
ヴェルナー・ハイゼンベルク(量子力学で大きな功績を残す)
ポール・ディラック(「ディラック方程式」の提唱者)
朝永振一郎(日本人で2人目のノーベル賞)
湯川秀樹(日本人で初めてノーベル賞に輝いた)
湯浅年子(日本初の女性核物理学者)
ウィリアム・ショックレー(トランジスタの発明で世界に衝撃を与えた)
坂田昌一(日本の素粒子研究で重要な功績を残した)
リチャード・ファインマン(量子電磁力学の研究でノーベル賞を受賞)


偉人たちの挑戦(1)数学・天文学・地学編

偉人たちの挑戦(1)数学・天文学・地学編

  • 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
  • 発売日: 2022/05/13
  • メディア: Kindle版



偉人たちの挑戦(2)物理学編I (サイエンス探究シリーズ)

偉人たちの挑戦(2)物理学編I (サイエンス探究シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
  • 発売日: 2022/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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目次『火の科学 (エネルギー・神・鉄から錬金術まで)』 西野 順也著 築地書館 [科学一般]


火の科学 (エネルギー・神・鉄から錬金術まで)

火の科学 (エネルギー・神・鉄から錬金術まで)

  • 作者: 西野 順也
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: 単行本



著者は「高度経済成長とともに育った世代」。「成長とともに世の中がどんどん豊かになり、周りに」ものが増えていくのを見てきた。「家で炭火や薪火が使われていたのを知る最後の世代」で、「小学校に入る頃まで、炊事には七輪が使われ」「小学校高学年まで風呂は薪で焚いていた」。

また著者は、急激な経済成長とともに公害の発生、蔓延を経験した世代でもある。就職先の石川島播磨重工業(株)では、「産業廃棄物装置の開発に携わ」ることになる。そのようにして、経済成長の正・負の両面を見るなかで、「文明の発達と環境破壊の歴史に興味をもつように」なる。そして、教職に転職してのちは「環境工学」を教えてきた。(専門は、環境化学・環境プロセス工学)。

著者は、いう。「長年、エネルギーと環境に関わってきた者として、火が人にもたらしてくれた恩恵と、それを使う側である人の身勝手な振る舞い、そして将来の人と火との関係について考える端緒になればと、筆を執った。人類の持続可能な発展が模索されているときに、少しでも多くの人に読んでいただき、これからの人間社会と地球の自然や生態系との関係について考えるきっかけにしていただきたい」。

以上は『あとがき』に記されたものを抜粋しつつまとめた。実際に読んでの印象は、たいへんスケールの大きな観点から、火をめぐる世界・日本の歴史、文化、習俗などなどが、項目ごとにたいへんコンパクトにまとめてある。評者にとっては未知のことがらも多く、興味深いものであった。

(以下、目次)

序章

第1部 暮らしと火
第1章 生活の中の火
火の使い方と炉の発達
日本の炉
灯火
採暖(暖房器具 / 住宅)
発火法(古式の発火法 / マッチ / ライター

第2章 火と神様
火の神格化
火の神(日本の神様 / 囲炉裏と竈)
世界の竈の話(ギリシア / ドイツ / 中国 / モンゴル / 竈の改良)
火と宗教
火の儀礼(火祭り / 死と霊 / 火の習俗)

第3章 戦いの火
神灾(シンサイ)人火
火の武器(銃器 / 大砲 / 火薬爆弾 / そして原子爆弾)

第4章 ものづくりの火
木炭
土器、陶磁器とガラス(土器と陶磁器、ガラス)
銅と鉄(銅の精錬 / 鉄の精錬 / 古代中国の鉄と製鉄 / 古代朝鮮の鉄と製鉄 / 石炭の使用と産業革命)
錬金術

第5章 日本の鉄文化
中世以前の鉄文化(大陸からの伝播 / 伝説に見る鍛冶 / 民衆と鉄 / 鋳物技術 / 武力への利用)
江戸時代の鉄と蹈鞴製鉄
近代製鉄の幕開けと鉄文化
戦争による鉄需要

第6章 エネルギーの火
動力への変換(産業革命以前の動力 / 蒸気機関 / 内燃機関 / ガスタービン)
原子の火(放射線の発見 / 発電)
電気への変換

第7章 現代の火と未来の火
現代の火と環境問題(火の社会的依存 / 火の利用と環境問題)
未来の火

第2部 人類と火

第8章 火の使用と文明化
火の使用の考古学的証拠(火の痕跡 / 火を使用した遺跡の広がり / 炉の出現 / 寒冷地への適応 / 土器の発達)
火を使用する前の人類の足どり(二足歩行を会得した時代 / 道具の発明と狩猟採集生活の始まり / 生活史の改善 / 脳の発達)
火を囲む生活
調理の恩恵
象徴的表現能力の開花
集団の組織化と文明化
火の使用と森林破壊(都市の発達と森林破壊 / 中世ヨーロッパの大開墾時代)

第9章 日本の先史時代
縄文時代以前の足どり
縄文時代(食糧 / 生活様式 / 住居)
弥生時代(集落 / 鉄器 / 墓と葬送 / 統治の手段としての信仰)
古墳時代(国家の成立 / 古墳 / 製鉄 / 大陸文化の受容)
中世以降と森林の利用

終章 あとがき 参考文献 索引


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