SSブログ

「明治礼賛」の正体 (岩波ブックレット): 斎藤 貴男著 [日本史]


「明治礼賛」の正体 (岩波ブックレット)

「明治礼賛」の正体 (岩波ブックレット)

  • 作者: 斎藤 貴男
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


天皇・皇后両陛下のお気持ちが分かるような・・・

「過ちは人の常・・・」と諺にもある。だから、ただの人間が、やたら持ち上げられ賞賛されたりすると首をひねらざるをえない。その人物が、個人的に知っている人間であればなおさらだ。それは、時代についても言えるだろう。所詮、人間がつくりあげたものである。不完全な人間が織りなした時代が完全であろうはずがない。それは、「明治」という時代についても、同じのはずだ。

著者は、今日、「礼賛」の対象となっている「明治」の正体を暴く。礼賛したいと願う人、礼賛していた人にとっては、たいへん興ざめにちがいない。それでも、事実は事実である。こうした、視座、視点があるから、世の中バランスが取れるのであろう。

最近、「明治150年記念式典」があった。ひとつのニュースを見て、思わず苦笑した。天皇・皇后両陛下がその式典に出席しなかったという記事だ。象徴天皇は政治に巻き込まれることを嫌ったのであろうと勝手に解釈した。それが、本来の立場だからである。しかし、それ以上に、老骨に鞭打って各地に慰霊の旅に足しげく通ってこられた戦中派天皇・皇后は、十分すぎるほどに〈「明治礼賛」の正体〉をご存知であるからのことであるようにも思った。これもまた勝手な解釈であるが・・・。

いずれにしろ、今日、国家的に、「明治」が「礼賛」される背後にはソレなりの意図があること。そして、実際の明治は、それほどのしろものではなかったことが記されて興味深い。

2018年10月31日にレビュー

***********

当該書籍には、作家・司馬遼太郎が映像化を禁じていた『坂の上の雲』についての論述もある。それもまた、興味深い。

司馬遼太郎没後10年
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2006-04-23


坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: 文庫



引用されているソウル出身の知識人の言葉が興味深い。というより、胸に刺さる。(p35)

「日清戦争でも日露戦争でも、日本は欧米列強のサロゲート(代理人)として戦い、彼らのアジア侵略の先兵として機能しました。明治維新以来の“脱亜入欧”の旗の下で同じアジア人を売ることで峠を上り、“名誉白人”として振る舞うことで民族の矜持とアイデンティティを維持してきた国です。その白人様に裏切られ、峠から転がり落ちたのが太平洋戦争であったけれども、戦後は再び、同じように行き続けていますね」



nice!(1) 
共通テーマ:

『在日異人伝』 高月 靖著 バジリコ [日本史]


在日異人伝

在日異人伝

  • 作者: 高月 靖
  • 出版社/メーカー: バジリコ
  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: 単行本


読みやすく、かつ、たいへん読み応えのある書籍

「在日」と聞けば、フツウ日本において「在日」ドイツ人、在日ロシア人などを意味しない。多くの人の思いに「在日」のあとに浮かぶのは、韓国、あるいは朝鮮にちがいない。本書を読むと、単一民族とされる日本に住まいするために、文化のハザマに苦しむ彼等の姿を見ることになる。日本では、アメリカ合衆国などの多民族国家とは異なり、ドイツ系アメリカ人、ロシア系アメリカ人という風に、自分の民族的・文化的アイデンティティを自覚しつつ、また、他者からソレを許容されてソノママでいることはむずかしい。日本においては日本の文化の中に浮遊するあくまでもマイノリティーに過ぎない。そして、同化を求められる。そうしなければ、生きていけないと感じられる。たいへんな圧力にちがいない。

本書でいう「異人」について著者は記す。〈「異人館」といった言葉が示す通り、日本語での「異人」は外国人を指すことが多い。また平均や主流からの逸脱を示唆する字面は、ネガティブなイメージも漂う。だが「異人」が持つ本来の意味は、すぐれた「異才」「異能」の持ち主といった肯定的なニュアンスも含んでいる。 / 本書はそんな「異人」たちの足取りに焦点をあてた。〉

著者はまた「在日」について、次のように記している。〈「在日」という言葉も「在日華僑」「在日米軍」など多様な層を含むが、ここでは朝鮮半島にルーツを持つ人々に絞っている。 / もちろん「在日韓国・朝鮮人」「在日コリアン」と呼ばれる人たちも一様ではない。自身や親の国籍ないし出生地、またそのルーツに対する考え方も百人百様だ。だがここに取り上げた人々の生き様はみな、日本という環境とその近現代史を写す鏡になっている〉。

本書では、「百人」は取り上げられていないが、たしかに「百様」であることが分かる。そして、その「異才」「異能」のひとりひとりを通して、読者は、日本という環境とその近現代史を「在日」をめぐって改めて悟り知る機会となる。個々の人々について記される前に、〈「噂」の背後に横たわる歴史〉と題する序章(見出しは「焼肉店「食道園」に通ったセレブたち」「「疑惑」をめぐる論争」「「国民的歌手」の条件」「帝国臣民に組み入れられた朝鮮人」「渡日者の急増と労働市場」「民衆蜂起の背景」「「不逞朝鮮人」に対する視線」「労働運動と「親日派」」「積極的に進められた同化政策」「朝鮮人の労務動員」「船に乗らなかった人々」「平和条約国籍離脱者」「特別永住者と帰化者」)が置かれている。個々の「異人」を記す中でも、その背景的環境・歴史が示される。全体に、読みやすく、かつ、たいへん読み応えのある書籍だ。

2018年10月23日にレビュー

日本コンプレックス

日本コンプレックス

  • 作者: 高月 靖
  • 出版社/メーカー: バジリコ
  • 発売日: 2019/02/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(1) 
共通テーマ:

本多平八郎忠勝(『歴史街道』 2008年3月号) [日本史]


歴史街道 2008年 03月号 [雑誌]

歴史街道 2008年 03月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/02/06
  • メディア: 雑誌


そんじょそこらにいない凄い人

家康を支えた「徳川四天王」のひとり本多平八郎忠勝を特集した雑誌。「家康に過ぎたる男」と称賛された人物について知ることができる。ほとんどの記事が、学術論文のようにではなく物語の体裁をとっている。であるから、講談、浪曲などの語り物の印象になる。つまり、人柄につけ活躍につけみな誇張されていると感じられる。それでも、そのハイライトされたモノから、誇張された余分を除き去るよう努めて、いわば人柄、活躍を貶めても、やはり、そんじょそこらにいない凄い人であったろうことは分かる。

(以下は、「特集」部分の目次)
起論「その働き比類なし」三人の天下人が認めた武辺者の魅力:童門冬二
運命の桶狭間、若き松平元康の側に末恐ろしき少年あり:永岡慶之助
「あの鹿角の兜は本多!」掛川城攻め、姉川で敵を怯ませた戦ぶり:江宮隆之
「死中にこそ活あり」蜻蛉切りを手に最強武田軍団の陣を強行突破:海道龍一朗
「まこと天下の勇士ぞ!」僅か五百の手勢で秀吉軍八万に挑む:工藤章興
天下分け目の関ヶ原、歴戦の東軍諸将を束ねてのけた軍監の手際:野村敏雄
「婿どのへの一分が立たぬ」義理のためには家康との合戦も辞さず:八尋舜右

VISUAL①八万の秀吉軍を眼前に、単騎挑発!②敵を震え上がらせた黒づくめの甲冑と蜻蛉切 ③武田軍団との激闘十四年 ④秀吉と直接対決!小牧・長久手の軌跡 ⑤忠勝が槍を交えた猛将たち ★家康を支えた「徳川四天王」

COLUMN①本多の家紋「立葵」へのこだわり ②長篠の勝利を導いたその知略 ③秀吉の籠絡にも全く動ぜず ④家を守った長男、神になった次男

2018年10月16日にレビュー

前田慶次と立花宗茂
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2018-10-15

『しんがりの思想』刊行 鷲田清一さん
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-07-25

『碇(いかり)の文化史』石原渉著(思文閣出版)
https://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04

徳川家康

徳川家康

  • 作者: 山本 七平
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 1992/11
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:

日本史・あの人の意外な「第二の人生」 PHP文庫 [日本史]


日本史・あの人の意外な「第二の人生」 (PHP文庫)

日本史・あの人の意外な「第二の人生」 (PHP文庫)

  • 作者: 「誰も知らない歴史」研究会
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: 文庫


人生100年時代。「第二の人生」のヒントに・・

「人生50年」の時代は、はるか遠くになって、いまや人生100年時代である。「第二の人生」をどう過ごすかが問われている。その点でよいヒントを提供してくれる本だ。歴史上の人物90名ほどが取り上げられる。各人に4ページほどが用いられ、読みやすく、なにかの時間つぶしにもいい。記憶にとどめて薀蓄をかたむけるにもいい。

取り扱われる人物は以下の「目次」のとおり。本文では各人名のあとに2行ほどのコメントがついていて秀逸。たとえば、第1章の秋山真之は「世界最強の艦隊を殲滅した天才参謀。宗教世界にハマり、神秘を追求?」、第2章の毛利元就は「苦労多き前半生から一転!50代から『覇業』を始めた弱小大名」、第3章の大友宗麟は「夢はキリシタンの『理想郷建設』。大敗北後も最期まで信仰を貫く」、第4章の滝沢馬琴は「『放蕩生活』からの作家デビュー。締め切りに追われるライフワークに」といった感じ・・・。

第1章 隠居して「別の人生」を歩んだ実力者たち(伊達政宗、西郷隆盛、徳川家康、松平定信、徳川慶喜、勝海舟、上杉景勝、本居宣長、伊能忠敬、宮本武蔵、足利義政、足利義昭、秋山真之、前田慶次、服部半蔵、おね、那須与一、聖武天皇、小野妹子、西行、石田梅岩)

第2章 後半生に「最大の転機」を迎えた有名人(毛利元就、北条早雲、足利義視、紀貫之、遠山影元、明智光秀、松尾多勢子、新島八重、鑑真、皇極天皇、マシュー・ペリー、藤原定家、親鸞、立花宗茂、大岡忠相、新渡戸稲造、藤原不比等、安倍晴明、清水次郎長、斎藤一、千利休、良寛、一休宗純、二宮金次郎、柳生宗矩、栄西)

第3章 晩年になり「栄光の座」から転落した人たち(徳川吉宗、紀伊国屋文左衛門、伊藤若冲、宇喜田秀家、菅原道真、ダグラス・マッカーサー、斎藤道三、新井白石、松平容保、直江兼続、大友宗麟、蘇我馬子、後白河天皇)

第4章 意地でも「生涯現役」を貫き通した偉人たち(真田幸村、黒田官兵衛、武田信玄、後藤又兵衛、真田信之、吉備真備、東郷平八郎、和気清麻呂、葛飾北斎、徳川光圀、渋沢栄一、間宮林蔵、十辺舎一九、法然、雪舟、立花道雪、滝沢馬琴、前田利家、大隈重信、緒方洪庵、北条政子、高橋是清、榎本武揚、ジョン万次郎、細川幽斎、称徳天皇、小林一茶、白河上皇、シーボルト)

2018年10月13日にレビュー


東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣

東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣

  • 作者: 飯島 勝矢
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/01
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ:

『実証史学への道 - 一歴史家の回想』 秦 郁彦著 中央公論新社 [日本史]


実証史学への道 - 一歴史家の回想 (単行本)

実証史学への道 - 一歴史家の回想 (単行本)

  • 作者: 秦 郁彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/07/18
  • メディア: 単行本


「歴史の女神に魅入られて」

読売新聞に連載したものに加筆したもの。「一歴史家の回想」と副題にあるが、日経新聞の「私の履歴書」のような内容。いわば、自伝。目次に「歴史の女神に魅入られて」の見出しもある。たしかに、本人の意思を超えたところで、ある人々には特別な招待がかかる。官僚の道を歩みだした著者を、「歴史の女神」は放っておかない。おかげで、著者は二足のワラジをはくことになり、後に歴史家として専念することになる。そうした、選ばれた方(エリート)ならではの歩みが示されていく。また、歴史的事実を回想するだけでなく、著者自身が歴史の一場面に関わる事例も多々示される。やはり、「歴史の女神に魅入られて」いるのだろう。

そのような方でありながら、その回想には一抹のさびしさもつきまとう。実証された事実・情報が「正論」として通らないのである。政治に翻弄され、発表・公表を控えるよう要請される。そうしたことのあることは、著者自身、熟知している。司馬遷は宮刑となり、ヘロドトスやツキディデスは追放の憂き目にあった。かてて加えて今日は、歴史家にとって厄介な個人情報保護法の壁がある。事実・情報そのものに辿りつくのが難しくなっている。実証以前の問題である。そうした、具体例も示される。従軍慰安婦問題の問題性、虚構性について指摘した一連の活動は興味深い。

第Ⅱ部は「歴史の観察と解釈に向けた知恵」で著者の経験から歴史を見る上でのアドバイスが示される。第Ⅲ部は「旧陸海軍指導者たちの証言」は、巣鴨プリズンに収容されていたA級戦犯をふくむ人々へのヒアリングした重要な証言の抜粋要約。

2018年10月1日にレビュー

慰安婦問題の決算

慰安婦問題の決算

  • 作者: 秦 郁彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



狩野亨吉の生涯 (中公文庫)

狩野亨吉の生涯 (中公文庫)

  • 作者: 青江 舜二郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1987/09
  • メディア: 文庫



nice!(1) 
共通テーマ:

『図説 近代日本土木史』 土木学会土木史研究委員会 鹿島出版会 [日本史]


図説 近代日本土木史

図説 近代日本土木史

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2018/07/05
  • メディア: 単行本


歴史が展開する足元・根っこの部分を知ることのできる「教養の書」

「必要は発明の母」という言葉がありますが、必要は開発(土木・技術)の母でもあるナという読後感です。現在、日本の国土に住んで、土木技術の恩恵に浴していることを改めて感じもしました。そうです。インフラはひとりでに生じません。自然発生いたしません。

本書『はじめに』を見ますと・・・、「ただ事実を羅列する」のではなく、「各分野を代表するプロジェクトを章ごとに一つ選定し、その構想や実現のプロセスを紹介することで、過去の経験を読者と共有することを企図し」たと記されています。目指したところは、〈1:教養の書であること・・・技術者が知るべき最低限の歴史情報(主要トピック、人物、データなど)を盛り込む 2:現在との繋がりを意識すること・・・歴史家を養成するための教材ではない。現在の業務や研究にいかしうる知の源泉としての教材をめざす。 3:「土木原論」再考のきっかけを与えること・・・文明や文化の形成において、土木が本来担うべき役割の再考を促す。〉と、あります。各章の各項はおおむね見開き2ページで解説されています。簡潔な記述で、目指すところを達成しているように思います。

明治以降(江戸時代の記述もありますが)、お雇い外国人の働き、土木史に名を残す人々の貢献を知ることができます。開発の受益者となる人々の気持ちも記述されています。当時は、恩恵を恩恵とすなおに感じられない部分も多々あったことも知ることができます。

歴史が展開する足元・根っこの部分、日本の国土の開発史を知っておくことは、深い教養となるように思います。(以下、目次)

01. 世界の中の近代日本土木(Civil Engineerの誕生/ 西洋における国土と都市の近代化/ 西洋における構造物の近代化/ 日本の国土の地理的特性/ 日本の開国/ 文明開化の時代/ 日本の社会資本の形成と技術者の育成)

02. 鉄道 ── 東海道本線(東海道本線の完成/ 東海道本線の改良/ 東海道新幹線の開業/ 新幹線ネットワークの形成/ 初期の鉄道政策/ 明治後期以降の鉄道政策の展開/ 都市鉄道の発達ー路面電車と近郊鉄道/ 都市鉄道の発達ー拡大する地下鉄網)

03. 開拓 ── 北海道開拓(北辺の未開地/ 北海道開発の始動/ 海陸の連絡と技術開発/ 開拓の持続と拓地殖民/ 拓殖から総合開発へ)

04. 河川 ── 淀川改修(近世から近代初期の大阪港と淀川/ 淀川改修計画/ 淀川の分流と放水路工事/ 近代治水事業の全国展開/ 分水堰技術の変遷)

05. 港湾 ── 横浜築港(横浜開港前後/ 横浜第一次築港/ 横浜港での近代埠頭の完成/ 日本における近代港湾の誕生/ 近代から現代の港湾整備へ)

06. 都市計画 ── 東京市区改正事業(近世城下町・江戸から近代都市・東京へ/ 市区改正計画策定の経緯/ 市区改正計画の実現/ 東京の新たな都市問題への対応)

07. 都市の再生 ── 琵琶湖疏水(琵琶湖疏水、建設の背景/ 琵琶湖疏水、建設と土木技術/ 第二琵琶湖疏水と都市の拡大/ 歴史都市・京都の近代化過程/ 近代疎水・運河と総合開発)

08. 水道 ── 神戸水道(近世以前の日本の水道/ 近代の衛生思想、水道建設の展開/ 近代水道の普及/ 神戸水道建設の背景と計画/ 神戸水道の技術と景観)

09. 干拓 ── 児島湾干拓(近世岡山の農業土木/ 児島湾への近代技術の導入/ 児島湾干拓事業の展開/ 戦後の児島湾と全国の農業政策)

10. 郊外開発 ── 阪急と沿線開発(私鉄による都市開発の軌跡/ 阪急のアミューズメント・デザイン/ 関西私鉄の沿線開発の多角化/ 私鉄と東京・大阪)

11. 道路 ── 国道1号(東海道から国道1号へ/ 国道1号と道路法の制定/ 国道1号における道路構造物のデザイン/ 国道の全国ネットワーク/ 高速道路の全国ネットワーク)

12. 災害からの復興 ── 帝都復興事業(江戸以来の防火対策と復興/ 関東大震災の発生と帝都復興院の発足/ 帝都復興計画と復興体制の変遷/ 土地区画整理の実施と街路・公園の整備/ 橋梁及び河川・運河の整備と防火地区の指定/ 市場新設、住宅供給と横浜の復興/ 帝都復興後の災害と復興)

13. 植民地経営 ──満州(「満鉄」設立/ 満州の鉄道建設と港湾整備/ 満州の都市計画/ 満州の国道計画/ 満州の産業計画/ 台湾及び朝鮮半島における植民地経営)

14. 発電 ──黒部渓谷開発(新たなエネルギーとしての電力/ 水力開発ブーム/ ダム技術の発達/ 黒部峡谷における電源開発と自然保護/ 戦後の電源開発とエネルギー源の多様化)

付録 東北開発計画

2018年9月15日にレビュー

道路の日本史 - 古代駅路から高速道路へ (中公新書)

道路の日本史 - 古代駅路から高速道路へ (中公新書)

  • 作者: 武部 健一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 新書



歴史の謎はインフラで解ける 教養としての土木学

歴史の謎はインフラで解ける 教養としての土木学

  • 作者: 大石久和
  • 出版社/メーカー: 産経新聞出版
  • 発売日: 2018/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(1) 
共通テーマ:

『合戦地図で読み解く戦国時代  (SBビジュアル新書)』 榎本 秋著 [日本史]


合戦地図で読み解く戦国時代 (SBビジュアル新書)

合戦地図で読み解く戦国時代 (SBビジュアル新書)

  • 作者: 榎本 秋
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/08/07
  • メディア: 新書


戦国時代へのガイドブック

書籍タイトルにある「地図で読み解く」や書籍・帯にある漫画チックな体裁から、「歴史は苦手」と言う方にもとっつきやすいようイラストが大半を占めて、オマケのように説明が付された書籍かと思いましたが、けっこう活字量もおおく満足感のあるものでした。

評者自身が戦国時代初心者ですので、その内容の確からしさが心配でしたが、書籍巻末にある「主要参考資料」には、日本史に定評のある吉川弘文館発行の国史大辞典をはじめとした書籍や山川出版の書名が並んでいます。本文中の記述を見ますと「通説」とされているものでも疑義が表明されて、伝説にちかい信憑性のないものであることが示されたり、新説が披瀝されたりしていますが、ナルホドと読みすすめることができました。「応仁の乱」以降のいくつかの合戦からは馬琴の『南総里見八犬伝』の記述が歴史的記述を土台にしていることを思い起こしたりもできました。

戦国時代のハジメからオワリまで、その原因、展開、主だった人物が描きだされていきます。本文「見出し」の示し方も合戦の推移を簡潔に示していますので、時代劇、時代(歴史)小説など見ていて、「当時の状況はどんなだったか?」と参照したり、地図・イラストも示されていますので旅行好きの方であれば城巡りの旅などに携帯するに便利かと思います。戦国時代ガイドブックとして推奨できるのではないでしょうか・・・

2018年9月14日にレビュー

一冊でわかるイラストでわかる図解戦国史(SEIBIDO MOOK)

一冊でわかるイラストでわかる図解戦国史(SEIBIDO MOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 成美堂出版
  • 発売日: 2009/06/17
  • メディア: ムック



nice!(2) 
共通テーマ:

『訳注 信長公記』 訳注:坂口善保 武蔵野書院 [日本史]


訳注 信長公記

訳注 信長公記

  • 作者: 太田 牛一
  • 出版社/メーカー: 武蔵野書院
  • 発売日: 2018/04/20
  • メディア: 単行本


読みやすく助かります

文庫サイズのものが多く出まわっていますが、本書は、印字がおおきいので読みやすく助かります。訳文は漢文読み下しのような雰囲気で、辞書を引かないと理解できない場合もありますが、そうであるからこその、味わいがあるように思います。国語辞典でも歯が立たない部分は丁寧な訳注に助けられます。それが各挿話ごとに(巻末部分にではなく)まとめられているので読みやすく、それも助かります。

2018年8月2日にレビュー

**************

織田信長と戦国の世を知ることができる。

本書に見る日本人は、「首狩り族」といった印象だ。多くの者の命が奪われ、その首を切り取られる。首実検がなされ、褒美が与えられる。それがフツウだったのであろうからオドロキである。

それでも、ニューギニアの首狩り族の例にみるような(そういう写真をむかし見たのだが)、切り取った敵の首(頭)から頭蓋骨を取り除いて乾燥させ、小さくなったものを自分の杖のアタマ飾りにして誇示するといったものではない。もっと高尚である。そこに、感じるのは、様式・美である。

その延長にあるのだろうか。そうした戦いの合い間に、観能会や茶会が催される。その記述はけっこう詳細である。

信長が好んで謡い舞ったという「人生50年、下天のうちを・・・」が紹介されている。

そんなオソロシイ時代だったからであろうか、いつ果てるとも知らない夢のような人生をおくるなかで、現実感(?)をもつために、いろいろな生きる手がかりが必要であったようだ。人々の記憶に残る・残るような趣向を、自分の身辺に凝らすというのも、そうした生きるうえでの足掻きであったのかもしれない。

・・・などということを、今、感じつついる。

首実検(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%96%E5%AE%9F%E6%A4%9C

以下、武蔵野書院の関連ページ
http://www.musashinoshoin.co.jp/shoseki/view/2108/%E8%A8%B3%E6%B3%A8%E3%80%80%E4%BF%A1%E9%95%B7%E5%85%AC%E8%A8%98


地図と読む 現代語訳 信長公記

地図と読む 現代語訳 信長公記

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 単行本



首塚・胴塚・千人塚 日本人は敗者とどう向きあってきたのか

首塚・胴塚・千人塚 日本人は敗者とどう向きあってきたのか

  • 作者: 室井 康成
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2015/11/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(2) 
共通テーマ:

「戦国日本と大航海時代 - 秀吉・家康・政宗の外交戦略(中公新書 2481):平川 新著 [日本史]


戦国日本と大航海時代 - 秀吉・家康・政宗の外交戦略 (中公新書 2481)

戦国日本と大航海時代 - 秀吉・家康・政宗の外交戦略 (中公新書 2481)

  • 作者: 平川 新
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/04/18
  • メディア: 新書


戦国大名たちを取り巻く世界は動いていた。

オモシロイ本だ。群雄割拠の戦国時代、領地の取得に明け暮れる大名たちが天下統一をめざすそのさなか、その日本全体を征服し領有しようとする国際的な動きがあった。世界をふたつの領域に分割し征服しようとするスペイン・ポルトガルの野望があり、宣教師たちは、いわばその手先ともなっていた。

国内で、軍備拡張競争する諸大名たちを束ねた豊臣秀吉は、当時の国際情勢を鑑み「朝鮮出兵」を断行する。それはスペイン・ポルトガルの目に、自分たちのアジア拠点であるマニラ、マラッカをも脅かすものと映り、日本は、軍事的に不可侵の国であり、「帝国」とみなすに十分だった。

宣教師たちを遣わしたイエズス会、フランシスコ会、ドミニコ会が、スペイン、ポルトガルの世界征服(侵略)に果たした役割、また、彼らと信長、秀吉、家康、政宗、ほか大名たちとの関係がいま解き明かされる。

2018年7月27日にレビュー

以下『目次』

序章 戦国日本から「帝国」日本へ
なぜ秀吉は朝鮮に出兵したのか / イエズス会の野望 / 家康の外交 / 政宗の外交 / 「帝国」日本の登場

第1章 大航海時代と世界の植民地化
1 ヨーロッパの世界進出(1494年の世界領土分割条約 / スペインの南北アメリカ征服 / 太平洋航路の発見とフィリピン征服 / ポルトガルのアジア進出 / 1529年のサラゴサ条約 / ポルトガル人とスペイン人の日本上陸 / トルデシリャス条約500年記念事業 / イギリス・オランダの世界進出)

2 明国征服論と日本征服論 (ポルトガルとスペインの明国征服論 / イエズス会の日本宣教組織 / ポルトガルとスペインの日本征服論)

第2章 信長とイエズス会
1 フランシスコ・ザビエルの日本布教 (ザビエル、日本人の案内で鹿児島に上陸 / 最初の布教は仏教用語 / 日本の国王に会えず)

2 信長と宣教師たちの出会い (ルイス・フロイスと織田信長 / 信長、世界を知る / 信長の世界観 / 「安土城之図」にこめたメッセージ / 信長の明国征服構想 )

第3章 秀吉のアジア征服構想はなぜ生まれたか
1 秀吉とイエズス会 (朝鮮出兵をめぐる従来の理解 / 明国征服構想を抱いた時期 / 日本・ポルトガル連合による征明計画)

2 バテレン追放令 (軍事力への懸念 / イエズス会への疑心 / 神社仏閣の破壊 / 秀吉は信仰の自由を認めていた / 日本人売買の禁止について / イエズス会の反発 / 追放令後も活動を継続 / ポルトガル人とスペイン人の対立 / イエズス会への強力な牽制)

3 アジア支配への動き (寧波がアジア支配の拠点 / 朝鮮と琉球への服属要求 / ポルトガル領インド国王への書簡 / フィリピン総督への恫喝 / 怯えるマニラ / 高山国(台湾)への服属要求 / 「唐・天竺・南蛮」の征服構想 / 「予が言を軽視すべからず」 / 征服者スペインに対する怒り / 東洋からの反抗と挑戦)

第4章 家康外交の変遷
1 全方位外交の展開 (アジアとの関係修復 / 積極的なヨーロッパ外交 / 布教禁止の理由)

2 秘められたスペインの野望 (マニラとの駆け引き / 前フィリピン臨時総督ビベロと家康の交渉 / キリスト教政策の転換 / 貿易のためのビベロの条件 / ビベロの日本征服構想 / 「皇帝」と「帝国」の日本 / ビベロの戦略 / メキシコへの使者)

3 メキシコからの使者ビスカイノ (答礼使および貿易交渉使としての来日 / ビスカイノの江戸登城 / 将軍秀忠との会見 / 「皇帝」家康との会見 / 家康、禁教に転換 / アダムスの警告 / 岡本大八事件 / マカオからの抗議と反発 / 「わが邦は神国なり」)

第5章 伊達政宗と慶長遣欧使節
1 宣教師ソテロの誘い (政宗とビスカイノの出会い / 家康は長崎、政宗は仙台へ / 「布教特区」というアイデア / 改竄された家康親書)

2 支倉常長の旅 (貿易反対に転じたビスカイノ / 揺れるスペイン政府 / ローマでの歓迎 / イエズス会とフランシスコ会の対立 / 粘る支倉常長 / 支倉の帰国と政宗の対応)

3 政宗の意図をめぐる諸説 (スペインとの軍事同盟説について / 「政宗は次の皇帝」 / 「王国と王冠の献上」 / 「30万人のキリスト教徒」と政宗 / 政宗外交の意義と限界)

第6章 政宗謀反の噂と家康の情報戦
1 「仙台陣」の噂 (「仙台陣」の動き / 家康による「仙台陣」の指示 / 病床の家康との対話 / 伊達家を救った決断 / 松平忠輝による讒言 / 家康、政宗に後事を託す / 大久保長安討幕陰謀説 / 忠輝の排除 / 家康が仕掛けた情報戦)

2 二回目の謀反の噂 (宣教師をめぐる噂 / 秀忠による政宗討伐の噂 / 家康が使節派遣を容認した理由 / 秀忠の疑心 / 噂の背景 / 徳川の知力、政宗の忠誠)

第7章 戦国大名型外交から徳川幕府の一元外交へ
1 戦国大名による外交の展開 (二元外交としての遣欧使節 / 室町幕府の外交 / 戦国大名の外交 / 東シナ海交易からヨーロッパ外交へ / 「国王」としての大名たち / 徳川幕府の朱印船 / 鍋島氏の国際交渉 / 伊達と鍋島の違い)

2 鎖国への道程 (戦国大名型外交の定義 / 政宗外交の終わり / 幕府のスペイン断交)

終章 なぜ日本は植民地にならなかったのか
「帝国」とみなされた日本 / 群雄割拠克服の意義 / 「皇帝」の力 / 「帝国」日本の確立)

あとがき / 参考文献 / 関連年表


宣教師ザビエルと被差別民 (筑摩選書)

宣教師ザビエルと被差別民 (筑摩選書)

  • 作者: 沖浦 和光
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/12/13
  • メディア: 単行本



「未解」のアフリカ: 欺瞞のヨーロッパ史観

「未解」のアフリカ: 欺瞞のヨーロッパ史観

  • 作者: 石川 薫
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2018/01/16
  • メディア: 単行本


https://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2018-03-02
nice!(3) 
共通テーマ:

『神道・儒教・仏教(ちくま新書)』 森 和也著 筑摩書房 [日本史]


神道・儒教・仏教 (ちくま新書)

神道・儒教・仏教 (ちくま新書)

  • 作者: 森 和也
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 新書



以下に引用する本書の紹介から、近代のはじまりを「徳川時代」とした加藤秀俊さんの著作(メディアの展開 - 情報社会学からみた「近代」)を思い出した。

「現代日本人の意識の深層は江戸時代と地続きであることが明らかにされつつある。したがって江戸の思想を支配していた三教―神道・儒教・仏教―にこそ、我々の内面の問題を解く鍵がある。幕藩体制に組み込まれた仏教。近世の思想界において主導的立場に立った儒教。国学の勃興と明治維新のイデオロギーとして機能した復古神道。これらはいかに交錯し、豊かな思想の世界をかたちづくっていたか。我々の基盤になっている思想の原風景を探訪し、その再構成を試みる野心作。」

本書は、その江戸時代を、たいへん欲張った仕方で照らしだそうとしている。雲母の剥片は光の照射角度で多彩にきらめくが、見え方が変化しようが雲母であることはまちがいない。こうした欲張った高見からの見物が、より本質を明らかにするということもあるように思う。

実は、まだ「序章」と「あとがき」しか読んでいない。それでも、これは!と思うものがある。直観である。読めば、発見が新たな視点が得られるように思う。目次を見ればそれが、分かる。大風呂敷を広げたなの感、大である。

以下、目次から

序章 近世の思想と宗教を見る視点
江戸時代の多様性 / 現代から近世を見る / 明治国家というフィルター / 仏教全盛の時代 / 三つの《堕落》 / 自らの視点を自覚する / 本書の構成

Ⅰ 交錯する思想たち

第1章 幕藩体制と仏教
1 仏教による統治と統治される仏教
2 徳川将軍家の仏教的精神
3 近世仏教と職分論
4 近世思想における《聖徳太子》という存在

第2章 儒教という挑戦者
1 儒者の仏教批判
2 仏教優位から儒教優位への移行
3 儒教による近世的政教分離
4 近世仏教の《横》の広がり

第3章 国学と文学
1 三教一致思想を語る《場》としての近世小説
2 国学と仏教・儒教との弁証法的関係
3 排儒排仏と容儒容仏の共存

Ⅱ 復古から生まれた革新

第4章 天竺像の変容
1 《古伝》の探究と三国世界観の変容
2 天竺からインドへ
3 ヨーロッパ人が教えたインドの実像

第5章 ゴータマ・ブッダへの回帰
1 研究対象としての《仏教》
2 《戒律復興》という原点回帰の運動
3 《雅》という場における交歓
4 儒仏を架橋する《言葉》への関心

第6章 仏教の革新と復古
1 仏教の徳目としての《孝》
2 中央と地方・改革と反改革
3 鎖国の時代の日中交流

第7章 宇宙論の科学的批判
1 西洋が三教に与えた衝撃
2 宇宙論をめぐる葛藤
3 死者との交流

Ⅲ 《日本》というイデオロギー
第8章 キリスト教との対峙
1 還俗という名の《投企(プロジェクト)》①--儒者への道
2 還俗という名の《投企(プロジェクト)》②--志士への道
3 本地垂迹的思考法とキリスト教
4 キリスト教邪教観の形成と展開

第9章 《日本》における他者排除のシステム
1 寺請制度の再評価
2 幕末護法論の陥穽

第10章 歴史と宗教
1 《王権》の正当性
2 神話と歴史
3 《歴史》という名の桎梏

Ⅳ 近世的なるものと近代的なるもの
第11章 庶民の信仰
1 世俗とともにある神仏
2 妙好人と近世社会
3 仏教系新宗教の近世的位相

第12章 近代への傾斜
1 水戸学から見た神儒仏
2 国学の宗教性の顕在化と仏教
3 仏教における近世から近代への継承

さらに理解を深めるための参考文献
あとがき
事項索引
人名索引


メディアの展開 - 情報社会学からみた「近代」

メディアの展開 - 情報社会学からみた「近代」

  • 作者: 加藤 秀俊
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 単行本



nice!(1) 
共通テーマ: