『訳注 信長公記』 訳注:坂口善保 武蔵野書院 [日本史]
読みやすく助かります
文庫サイズのものが多く出まわっていますが、本書は、印字がおおきいので読みやすく助かります。訳文は漢文読み下しのような雰囲気で、辞書を引かないと理解できない場合もありますが、そうであるからこその、味わいがあるように思います。国語辞典でも歯が立たない部分は丁寧な訳注に助けられます。それが各挿話ごとに(巻末部分にではなく)まとめられているので読みやすく、それも助かります。
2018年8月2日にレビュー
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織田信長と戦国の世を知ることができる。
本書に見る日本人は、「首狩り族」といった印象だ。多くの者の命が奪われ、その首を切り取られる。首実検がなされ、褒美が与えられる。それがフツウだったのであろうからオドロキである。
それでも、ニューギニアの首狩り族の例にみるような(そういう写真をむかし見たのだが)、切り取った敵の首(頭)から頭蓋骨を取り除いて乾燥させ、小さくなったものを自分の杖のアタマ飾りにして誇示するといったものではない。もっと高尚である。そこに、感じるのは、様式・美である。
その延長にあるのだろうか。そうした戦いの合い間に、観能会や茶会が催される。その記述はけっこう詳細である。
信長が好んで謡い舞ったという「人生50年、下天のうちを・・・」が紹介されている。
そんなオソロシイ時代だったからであろうか、いつ果てるとも知らない夢のような人生をおくるなかで、現実感(?)をもつために、いろいろな生きる手がかりが必要であったようだ。人々の記憶に残る・残るような趣向を、自分の身辺に凝らすというのも、そうした生きるうえでの足掻きであったのかもしれない。
・・・などということを、今、感じつついる。
首実検(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%96%E5%AE%9F%E6%A4%9C
以下、武蔵野書院の関連ページ
http://www.musashinoshoin.co.jp/shoseki/view/2108/%E8%A8%B3%E6%B3%A8%E3%80%80%E4%BF%A1%E9%95%B7%E5%85%AC%E8%A8%98