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『図説 近代日本土木史』 土木学会土木史研究委員会 鹿島出版会 [日本史]


図説 近代日本土木史

図説 近代日本土木史

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2018/07/05
  • メディア: 単行本


歴史が展開する足元・根っこの部分を知ることのできる「教養の書」

「必要は発明の母」という言葉がありますが、必要は開発(土木・技術)の母でもあるナという読後感です。現在、日本の国土に住んで、土木技術の恩恵に浴していることを改めて感じもしました。そうです。インフラはひとりでに生じません。自然発生いたしません。

本書『はじめに』を見ますと・・・、「ただ事実を羅列する」のではなく、「各分野を代表するプロジェクトを章ごとに一つ選定し、その構想や実現のプロセスを紹介することで、過去の経験を読者と共有することを企図し」たと記されています。目指したところは、〈1:教養の書であること・・・技術者が知るべき最低限の歴史情報(主要トピック、人物、データなど)を盛り込む 2:現在との繋がりを意識すること・・・歴史家を養成するための教材ではない。現在の業務や研究にいかしうる知の源泉としての教材をめざす。 3:「土木原論」再考のきっかけを与えること・・・文明や文化の形成において、土木が本来担うべき役割の再考を促す。〉と、あります。各章の各項はおおむね見開き2ページで解説されています。簡潔な記述で、目指すところを達成しているように思います。

明治以降(江戸時代の記述もありますが)、お雇い外国人の働き、土木史に名を残す人々の貢献を知ることができます。開発の受益者となる人々の気持ちも記述されています。当時は、恩恵を恩恵とすなおに感じられない部分も多々あったことも知ることができます。

歴史が展開する足元・根っこの部分、日本の国土の開発史を知っておくことは、深い教養となるように思います。(以下、目次)

01. 世界の中の近代日本土木(Civil Engineerの誕生/ 西洋における国土と都市の近代化/ 西洋における構造物の近代化/ 日本の国土の地理的特性/ 日本の開国/ 文明開化の時代/ 日本の社会資本の形成と技術者の育成)

02. 鉄道 ── 東海道本線(東海道本線の完成/ 東海道本線の改良/ 東海道新幹線の開業/ 新幹線ネットワークの形成/ 初期の鉄道政策/ 明治後期以降の鉄道政策の展開/ 都市鉄道の発達ー路面電車と近郊鉄道/ 都市鉄道の発達ー拡大する地下鉄網)

03. 開拓 ── 北海道開拓(北辺の未開地/ 北海道開発の始動/ 海陸の連絡と技術開発/ 開拓の持続と拓地殖民/ 拓殖から総合開発へ)

04. 河川 ── 淀川改修(近世から近代初期の大阪港と淀川/ 淀川改修計画/ 淀川の分流と放水路工事/ 近代治水事業の全国展開/ 分水堰技術の変遷)

05. 港湾 ── 横浜築港(横浜開港前後/ 横浜第一次築港/ 横浜港での近代埠頭の完成/ 日本における近代港湾の誕生/ 近代から現代の港湾整備へ)

06. 都市計画 ── 東京市区改正事業(近世城下町・江戸から近代都市・東京へ/ 市区改正計画策定の経緯/ 市区改正計画の実現/ 東京の新たな都市問題への対応)

07. 都市の再生 ── 琵琶湖疏水(琵琶湖疏水、建設の背景/ 琵琶湖疏水、建設と土木技術/ 第二琵琶湖疏水と都市の拡大/ 歴史都市・京都の近代化過程/ 近代疎水・運河と総合開発)

08. 水道 ── 神戸水道(近世以前の日本の水道/ 近代の衛生思想、水道建設の展開/ 近代水道の普及/ 神戸水道建設の背景と計画/ 神戸水道の技術と景観)

09. 干拓 ── 児島湾干拓(近世岡山の農業土木/ 児島湾への近代技術の導入/ 児島湾干拓事業の展開/ 戦後の児島湾と全国の農業政策)

10. 郊外開発 ── 阪急と沿線開発(私鉄による都市開発の軌跡/ 阪急のアミューズメント・デザイン/ 関西私鉄の沿線開発の多角化/ 私鉄と東京・大阪)

11. 道路 ── 国道1号(東海道から国道1号へ/ 国道1号と道路法の制定/ 国道1号における道路構造物のデザイン/ 国道の全国ネットワーク/ 高速道路の全国ネットワーク)

12. 災害からの復興 ── 帝都復興事業(江戸以来の防火対策と復興/ 関東大震災の発生と帝都復興院の発足/ 帝都復興計画と復興体制の変遷/ 土地区画整理の実施と街路・公園の整備/ 橋梁及び河川・運河の整備と防火地区の指定/ 市場新設、住宅供給と横浜の復興/ 帝都復興後の災害と復興)

13. 植民地経営 ──満州(「満鉄」設立/ 満州の鉄道建設と港湾整備/ 満州の都市計画/ 満州の国道計画/ 満州の産業計画/ 台湾及び朝鮮半島における植民地経営)

14. 発電 ──黒部渓谷開発(新たなエネルギーとしての電力/ 水力開発ブーム/ ダム技術の発達/ 黒部峡谷における電源開発と自然保護/ 戦後の電源開発とエネルギー源の多様化)

付録 東北開発計画

2018年9月15日にレビュー

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