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『世界史を変えた13の病』 原書房 [医学・健康]


世界史を変えた13の病

世界史を変えた13の病

  • 作者: ジェニファー・ライト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 単行本


世界史の裏面を知る

だいぶ暗い内容だ。なにしろ病気がテーマなのだから仕方ない。それでも、世界史のフツウのテキストではまず知りえない情報が満載だ。すこし観点をずらすと、歴史の相貌はこうも変わるのかと思う。また、西洋人の考え方の基底には、こういう事情が絡んでいたのだなと感じさせられたりもする。医療の進んだ今日の常識がゆすぶられる内容もある。

「アントニウスの疫病」について、それは天然痘か発疹チフスかという話の流れで、〈とはいえ、その疫病がなんだったにせよ、当時の人々にとってたいした違いはなかった。どの病気も治療できるような薬はなかった。1600年以前は、どんな種類の病気も区別するのが難しく、急速に広まるエピデミックはすべて単に疫病と呼ばれた」と、ある。

得体の知れない相手と戦うというのはタイヘンなことである。何かわからないモノによって続々と人が亡くなっていく。目にも見えず名もない相手との素手の戦いを強いられ、手をこまねいているうちに、さらに多くが亡くなって行く。想像するだけでも恐ろしい。そのような「世界史を変えた」病が扱われていく。

著者の文章はユーモアがあるのだが、シニカルで癖があり、訳注がないと分からない文章も散見される。そこが分からないと、この本の醍醐味は得られないだろうと感じるものも中にはあるが、それでも歴史の裏面を知るうえで一読の価値はある。

2018年11月13日にレビュー
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サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す スコット・カーニー著 白水社 [医学・健康]


サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す

サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す

  • 作者: スコット・カーニー
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2018/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


アイスマン・メソッド検証の旅、ノンフィクション文学として秀逸

表紙に描かれているのは氷の浮かんだ水に沈む人のカラダであるようだ。本来、人間のカラダは、それに耐えうるものであることを示すものらしい。らしいだけでなく、それを実践して「アイスマン」と呼ばれる人物がいる。ヴィム・ホフというのがその男の名だ。彼は、ニュースで知られ、有名になり、「アイスマン」になるためのメソッドを開発する。本書中にも紹介されているが、それは、さほど難しいモノではない。

著者は、そのメソッドを、信奉者を死に至らせかねないカネ儲けの胡散臭いモノであろうと疑う。そして、それを検証する旅にでる。ところが、実際にヴィム・ホフに会い、そのメソッドを体験して、「人類の失われた身体能力を取り戻す」効果のあるものであることを知る。「アイスマン」を検査した医学者に会い、「アイスマン」に影響された人物たちに会う。そうして得た医学的証拠、他の身体改造メソッドの事例が示される。それは驚くべきものだ。

そしてついに著者の検証の旅は、凍てつくキリマンジャロの山頂に達する。著者はヴィム・ホフと一緒に、高度順化なしの30時間で、それを成し遂げる。もっともそれは「高度の影響が忍び寄ってくる。周囲の世界がぼやけ、一歩ごとに足が少しずつ重くなってくる。自分が失神しかけているのに気づいて、速い呼吸を30回繰り返しているうちに、サングラスを外したみたいに周囲がまた明るくなってくる」という中での達成だ。

著者は、言わば「ミイラ取りがミイラにな」ったの言葉を地で行ったことになる。本書を読むなら、著者同様に「サバイバルボディー」を獲得することができるにちがいない。少なくとも、そのメソッドにしたがって、氷水の中に入っていくだけの動機付けを与えてくれる本である。きっと、そうしたいと思うようになるにちがいない。であるからこそ、本物のミイラになることのないように、巻頭に「警告」文が用意されているのだろう。ノンフィクション文学としても秀逸。

2018年11月12日にレビュー

【ミイラ取りがミイラになるの解説】
http://kotowaza-allguide.com/mi/miiratorigamiira.html
【注釈】 ミイラを取りに行った者が、その目的を果たせずに自分がミイラになってしまうことから、人を連れ戻しに行ったり探しに行ったはずの者が、先方にとどまって帰ってこなくなってしまうこと。
また、説得しに行ったはずなのに、かえって相手に説き伏せられてしまうことをいう。
「ミイラ」とは、防腐剤として用いられた油のことをさす。
ミイラ(木乃伊)は、アラビアやエジプトなどで死体に塗る薬のことで、この薬を布で巻いて箱に入れ棺におさめると死体が腐るのを防げた。
この薬を取りに行った者が、砂漠で倒れるなどして目的を果たせず、ついには自分がミイラになってしまったことが、このことわざの起源とされている。
「ミイラ」はポルトガル語で「没薬」という意味。 「木乃伊」は当て字で、オランダ語「mummie」の漢訳。


ICEMAN 病気にならない体のつくりかた

ICEMAN 病気にならない体のつくりかた

  • 作者: ヴィム・ホフ
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2018/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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逆流性食道炎を自力で防ぐ(扶桑社ムック) 大谷 義夫著 [医学・健康]


逆流性食道炎を自力で防ぐ   (扶桑社ムック)

逆流性食道炎を自力で防ぐ   (扶桑社ムック)

  • 作者: 大谷 義夫
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2018/06/18
  • メディア: ムック


「自力で」防ぐ・軽減する・治す 助けに

逆流性食道炎に「3人に1人が悩む」とありますが、実は、自分もその一人です。胸のあたりに重苦しい感じがして心臓病を疑ったりしました。ひどい時には、セキが喘息のように出るので横になって寝ることもできませんでした。それでも投薬を受けることなく、いわば「自力で」軽減してきました。ほとんどインターネット上の情報を参考にしながらそうしました。「自力で」“治した”と言えないのが残念です。

基本的に、食品・食習慣に注意が必要です。肥満しているなら、やせることも大切です。努力して、だいぶ良くなったのですが、「のど元過ぎれば・・・」なんとやらで、またまた太りだし腹圧が高まって症状が出だしました。これまで、控えていた間食、寝しなに食べるなどがタタッタようで、「元の木阿弥」になりそうです。実際、最近の検査で「食道裂孔ヘルニア」と診断されてしまいました。それで、コマッタモノダナアと思っていたら、本書に目が留まりました。

前置きが長くなってすいません。本書は、たいへん良くまとめられています。逆流性食道炎の原因、背景、セルフケアの方法。その方法のなかには、食事だけでなく体操(ヨーガ)もあります。権威ある先生が、ていねいにまとめてくださいました。すべてがダメではもちろんありませんが、インターネット上の真偽不明の情報とは異なります。

文字も大きく、多色刷りで見やすく、書籍の版型も大きいので、目につくところに置いて“自戒の助け”にしたく思います。

2018年9月26日にレビュー

腹腔鏡下アカラシア手術,GERD・食道裂孔ヘルニア手術 (消化器内視鏡下手術シリーズ~標準的手技を学ぶ)

腹腔鏡下アカラシア手術,GERD・食道裂孔ヘルニア手術 (消化器内視鏡下手術シリーズ~標準的手技を学ぶ)

  • 作者: 柏木秀幸
  • 出版社/メーカー: へるす出版
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 単行本



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『肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる!』 高岡英夫著 カンゼン [医学・健康]


肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる!

肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる!

  • 作者: 高岡英夫
  • 出版社/メーカー: カンゼン
  • 発売日: 2018/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「野生動物のような肩甲骨の状態」を、“誰もが”持ちうることを明らかにした本

大谷翔平選手や石川遼選手の肩まわりの柔らかさ、肩甲骨の可動域の大きさに驚愕して、そのパフォーマンスの高さと肩甲骨の可動域とが関係していると考える方は多いはず。

ウソ!?大谷翔平の肩が柔らか過ぎてありえない方向に
https://matome.eternalcollegest.com/post-2146877711724204601

しかし、うっかりマネをするとカラダを傷めたり、似た動きができたにしても、パフォーマンスを上げるどころか、下げてしまいかねない。

本書は、「人間は肩甲骨を自由自在に動かせるように生まれてきた」と主張する「運動科学総合研究所」の高岡英夫氏が『立甲』という「野生動物のような肩甲骨の状態」を、“誰もが”持ちうることを明らかにした本だ。

著者は、表紙写真に示された「肩甲骨の状態」を、ただマネルようにと勧めるのではなく、肩甲骨を科学していく。カラダ全体における肩甲骨の意義・機能を理解したうえで、たいへん基礎的な“誰でも”出来るところから、『立甲』状態に至るよう助けてくれる。

これまで高岡氏の著作に親しんできた方にとっては、氏の提唱するディレクトシステムとしての「ベスト」「肩包体」「センター(軸)」、さらには「甲腕一致」「四足」いった内容を、『立甲』との関係からより深く理解する上で助けになる。

以下、陸上競技で重んじられる「腕振り」にかんする記述を抜粋引用してみる。見出しとして「立甲ができていないうちに肩甲骨から腕振りをしても・・・」と題する部分。 〈肩甲骨とその周りの筋肉を腕振りに参加させることは、簡単ではありません。肩甲骨が肋骨にへばりついて、あまり動かすことができない人は、肩甲骨を参加させたくても腕振りに参加させられないのです。 / そうした人に、慌て者のコーチやトレーナーや先輩は、「肩甲骨から動かした方がいいぞ」とついつい指導をしたくなります。 / そうした選手はどうなるかというと、アドバイスにしたがって一所懸命に肩甲骨を動かそうとし、その結果、肩甲骨と一緒に肋骨が回り出してしまうことがよくあります。肋骨を中心とした上体が身体の軸に対して、いつも行ったり来たりグルグルと回っているような動きになってしまうのです。 / こうした動きは最悪と言っていいでしょう。 / 何が最悪なのか? 肋骨をグルグル動かしてしまうと、体幹力の要=自由脊椎の格定が総崩れになってしまい、軸がズタズタハチャメチャになってしまうからです。 / そのことの何が悪いのか? ・・後略・・ (第4章 立甲と甲腕回旋力で「歩力・走力」を高める)から〉


究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫



センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

センター・体軸・正中線―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 単行本



丹田・肚・スタマック―自分の中の天才を呼びさます

丹田・肚・スタマック―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 単行本



上丹田・中丹田・下丹田―自分の中の天才を呼びさます

上丹田・中丹田・下丹田―自分の中の天才を呼びさます

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本



身体が求める運動とは何か 法則性を活かした運動誘導

身体が求める運動とは何か 法則性を活かした運動誘導

  • 作者: 水口 慶高
  • 出版社/メーカー: 文光堂
  • 発売日: 2017/05/10
  • メディア: 単行本



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《 レオナルド・ダ・ヴィンチの「解剖手稿A」 》 作者: マーティン・クレイトン グラフィック社 [医学・健康]


レオナルド・ダ・ヴィンチの「解剖手稿A」 人体の秘密にメスを入れた天才のデッサン

レオナルド・ダ・ヴィンチの「解剖手稿A」 人体の秘密にメスを入れた天才のデッサン

  • 作者: マーティン・クレイトン
  • 出版社/メーカー: グラフィック社
  • 発売日: 2018/05/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


その観察力に敬意を示したい

冒頭解説で、どのような経緯をたどって出版にいたったか、誰が所蔵してきたか、その来歴が語られる。

図版原版には、解剖図とレオナルドの記した鏡文字が記されている。鏡文字の翻訳が、もう1つのまったく同じ図版の上に、記されていく。つまり、読者は、同じ図版を原版と翻訳とで2つ見ることになる。そして、それら図版について著者マーティン・クレイトンによる解説が備えられる。

解説や図版、そしてレオナルド自身の文章をみていくと、完成稿にはほど遠いものであることが、分かる。文章のほとんどは、自らに対する課題ともいうべきものだ。さらにどういう観察・研究が必要かが示されている。研究者・探究者としてのレオナルドの姿を知ることができる。

人間のカラダを、(そもそもはそのような意向もあったようだが)崇高な精神・魂の宿る場所としてではなく、純粋に機械的なものとして見ようという意図が実感できる。

まだ、全部を精読したわけではないのだが、20世紀の医学的・常識から見てヘンに思えるところにこそ、注意して見ていきたいと思っている。

2018年7月23日にレビュー

レオナルドxミケランジェロ展(三菱一号館美術館)から
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2017-09-04

マドリッド手稿 (1975年)

マドリッド手稿 (1975年)

  • 作者: レオナルド・ダ・ヴィンチ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975
  • メディア: -



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〈あのひとががんになったら - 「通院治療」時代のつながり方〉 桜井なおみ著 中央公論新社 [医学・健康]


あのひとががんになったら - 「通院治療」時代のつながり方 (単行本)

あのひとががんになったら - 「通院治療」時代のつながり方 (単行本)

  • 作者: 桜井 なおみ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/03/20
  • メディア: 単行本


たいへん頼もしい本

書籍タイトルよりも内容は広い。「あの人ががんになったとき」だけでなく、「自分ががんになったときに」役立つ知識・情報・知恵が、著者自身の(闘病の)経験・知見にもとづいて記されている。がんになった「あのひと」、友人、家族、同僚・・とどのように接したものか・・、また、自分がそうなったとき、どのように対応・処世できるか・・、医療を受けながら会社にとどまるための知恵・・、部下、同僚がそうなったときの配慮の仕方・・など示されていく。「がん対策基本法」、「高額医療費制度」も言及され、その利用の仕方も示されて、身体面、心理面、経済面でたいへん有用であり実践的である。がんにまつわるいろいろを理解したうえで、どっしり受け留めていく助けとなるにちがいない。たいへん頼もしい本だ。

2018年5月16日にレビュー

【目次】

はじめに
こんなご質問をよくいただきます
がん告知を受けて
世間は冷たい!? メール後の反応は
お互いに歩み寄るために

第1章 がんと患者の現在地-入院は短く、通院は長く
「お若いのにかわいそう」?─もはや高齢者の病気ではない
「がん=怖い」イメージが強いけれども
「どうして」と聞かれても─がんは生活習慣病?
私のがん発見記
「治ってよかったね」は合わない
がん治療の現在地
入院は短く、通院は長く
心と体が最も落ち込むのは通院治療中
増える「コミュニケーション」についての悩み

第2章 あのひとががんになったら―よりよいコミュニケーションを考える
いちばんは「普段どおり」
でも過度の期待はすべからず
言われてうれしい言葉
言われると傷つく言葉
「頑張れ」は諸刃の剣
【「家族」ががんになったら】 
1 ただ近くにいる、ただ話を聞くことがいちばん
2 ビッグイベントには付き合う
3 子どもには伝える? 伝えない?
4 高齢の親には伝える? 伝えない?
5 急に怒り出したら
6 「あなたに私の気持ちはわからない」と言われたら
7 夫婦間ですれ違いが起こったら
8 親や兄弟姉妹ががんになったら
【「友人」ががんになったら】
1 無視がいちばん辛い
2 気持ちを省略しないで
3 かける言葉がなかったら
4 「手術が終わった」と言われたら
5 患者以外の自分になれる時間がうれしい
6 お見舞いについて
7 孤独にさせない
【「職場の仲間」ががんになったら】
1 「実は……」と言われたら
2 早期かどうかを聞くのはやめて
3 部位について聞くのはセクハラかも
4 視線もセクハラになる
5 「ウィッグかな」と思ったら
6 コミュニケーションは密に
7 「大丈夫?」以外の聞き方を
8 ピリピリしていると感じたら
9 見た目と違う辛さもある
10 暑いの?寒いの?
11 「よかれ」が相手を傷つけることも

第3章 あなたががんになったら―必要なのは「患者力」
「患者力」を高めよう
患者力を上げるコツ① ─「知る」(自ら作戦を立てる / 「影響」「時間」「対処法」を聞く / 人生の棚卸しをする)
患者力を上げるコツ② ─「伝える」(自分で受けた治療を説明できるか / 職場に説明するには「仕事言葉」で / どこまで伝えるべきか)
患者力を上げるコツ③ ─「相談する」(まず立ち止まって深呼吸 / 「新しい日常生活」を見つけよう / 即断即決しない / がんの「オキドコロ」を考えよう

第4章 がんと会社-「通院治療」時代に働くということ
ステージ4でも働けます
なぜ起こる?  「がん離職」
がん離職①─4人に1人は診断後1か月以内に離職
がん離職②─復職後1年以上経ってからの離職も多い
がん離職③─中小企業では3人に1人が離職
権利主張ではなくスペック主張で
上司は「役割」「目標」を一緒に考えよう
患者さんをきっかけに「働き方改革」を進めよう
制度をどう使うべきか
個人事業主に立ちふさがる現実
自営業は〝自衛〟業
がん患者が働く目的は「生きがい」より「お金」

第5章 もっとつながるために―知っておきたい情報あれこれ
「がん対策基本法」を知っていますか
「改正がん対策基本法」で何が変わるのか
がん治療薬は高額?
知っておいてほしい「高額療養費制度」
いざというときに頼りたい産業医
がんを知ることが、いちばんのがん対策

おわりにーー「健康」とは何か

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『東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣』 飯島 勝矢著 KADOKAWA [医学・健康]


東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣

東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣

  • 作者: 飯島 勝矢
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/01
  • メディア: 単行本


具体的なフレイル予防対策、また、改善策が示されて

〈フレイルとは、年をとるにつれて筋力、認知機能、社会とのつながりを含む心と体の活力が低下した状態〉〈「虚弱」を意味する英語のフレイルティが語源で、日本老年医学会が提唱し〉た。

〈東京大学高齢社会総合研究機関が実施した大規模高齢者フレイル予防研究の結果、「しっかり噛んで、しっかり食べる」「運動する」「社会とのつながりを持つ」 / この3つのことがバランスよくできていれば、加齢に伴う体や心の衰え=フレイルを予防でき、改善につなげられることがわかってき〉た。

〈これからはフレイルを高齢者だけの問題と思わず、早くから先を見据えた健康対策を行うことが大切にな〉る。〈50代、40代、いえもっと早くから意識しても早すぎることは〉ない。〈本書を「フレイル」から、「将来は寝たきり」の心配から、抜け出すきっかけにして〉ほしい。

以上、「はじめに」から抜粋したが、本文では、具体的なフレイル予防対策、また、改善策が示されていく。個人的には、「BMIパラドックス」のこと、ある年齢から「メタボ予防からフレイル予防へ。180度のギアチェンジ」する必要性のあることが印象に残った。

啓発的で見やすく読みやすい。紙質はあまりよくないが、価格相応の普及版として評価できる。巻末には、『ひと目でわかる!427品目のたんぱく質データ事典」が綴じ込み付録となっている。カラー写真で該当食材(あるいは献立)が、併せてカロリー量、塩分、脂質量が示されている。こちらの紙質は比較的良い。

いちど読めばそれでイイようにも思うが、手元に置いておくならフレイル予防・改善の動機付けとすることもできるにちがいない。 

(以下、目次・章立て)

第1章 あなたのフレイル度は? リスクを知るカギは「ふくらはぎ」にあり!
第2章 きちんと食べているのに体がだるい、 新型栄養失調が増加中
第3章 ささいな口の衰えからずるずるる老化が進む オーラルフレイル
第4章 今すぐ実行! もっとたんぱく質がとれる食べ方
第5章 社会性のあるなしが、フレイル予防の大きな分岐点
第6章 同世代の人より、歩くのが遅いと思ったら要注意!
綴じ込み付録 オールカラーだから一目でわかる。427品目のたんぱく質量データ事典

2018年5月13日にレビュー

フレイル 超高齢社会における最重要課題と予防戦略

フレイル 超高齢社会における最重要課題と予防戦略

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 医歯薬出版
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 単行本



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『闘いつづける力: 現役50年、「神の手」を持つ脳外科医の終わらない挑戦』 福島孝徳著  徳間書店 [医学・健康]


闘いつづける力: 現役50年、「神の手」を持つ脳外科医の終わらない挑戦

闘いつづける力: 現役50年、「神の手」を持つ脳外科医の終わらない挑戦

  • 作者: 福島 孝徳
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/01/31
  • メディア: 単行本


顔面けいれん・三叉神経痛に悩まされている方に

スーパードクター、ゴッドハンド、「鍵穴手術」で有名な脳外科医:福島孝徳先生の本。〈現役50年、「神の手」を持つ脳外科医の終わらない挑戦〉の副題から、先生の半生を縷々記した自伝(半生記)かと期待したが、「75歳の今でも1日も休」まずに世界を飛び回り、自ら手術をし、弟子を育て、レクチャーしている先生に、反省などしているヒマは到底なさそうだ。先生の生い立ち(父は明治神宮の神官で、内科医である叔父の影響で医学を志したこと)については伝え聞いているが、より深く(鍵穴手術を行うかのように)その精神形成に迫る内容を期待したのだが、そういう本ではない。

先生の圧倒的な生き様については本書からも実感できるが、巻頭に紹介されてあるように〈今回本書で取り上げる顔面けいれん、三叉神経痛の手術は、1回の鍵穴手術でほとんどの方が全治します〉というのが、その内容である。顔面けいれん・三叉神経痛に悩まされている方に、鍵穴手術の効果を示し、ご自分が手術を行う病院(12ヵ所)と、弟子たちを紹介する本だ。回復した患者さんらの「感謝の手紙」も掲載されている。

健康食品・療法に関する本で、その効能を示し、利用者の良い証言を集めて、その入手先を紹介し、結局は自分の販売する何かに勧誘するたぐいの本があるが、ワルク解釈するなら、その手の本と“カタチは”よく似ている。しかし、なにしろ、中央に控えているのは福島先生である。もはや何も言えない。

最後のページに示されているゴッドハンド、世界のラストホープの文章は以下のものだ。〈どんなに偉い人、大臣でもプロ野球の監督でも、1回の脳の病気で倒れてしまうのです。名誉、地位、お金、愛情、家庭、人生には手に入れたいものがたくさんありますが、一番大事なのは健康です。病気になると健康のありがたみがよくわかります。 / 赤ちゃんから高齢者まで国民全員、脳ドックを受けて、早期発見、早期治療で全治し健康で長生きしましょう。 / 日本は世界一検査費が安いのです。米国ではCT検査が1回20万円、MRIは50万円かかります(日本は1万円)。 / 初回の検査で特に異常がなければ、年1回か2年に1回程度の頻度で脳ドックを受けると安心です〉。そして、次のページには、ご自分の連絡先(米国の住所、ファックス・ナンバー、Eメール・アドレス)と公式サイトが掲載されている。しかも、そこには(優しい配慮が伝わってくるが)「Eメール、ファックスは日本語で受け取ることが可能です」の一文が添えられている。

2018-04-14

脳外科医・福島孝徳大先生は「ワーカホリック」?
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14


ラストホープ 福島孝徳 「神の手」と呼ばれる世界TOPの脳外科医

ラストホープ 福島孝徳 「神の手」と呼ばれる世界TOPの脳外科医

  • 作者: 福島 孝徳
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2004/03/20
  • メディア: 単行本



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*身体が求める運動とは何か 法則性を活かした運動誘導」水口 慶高著 文光堂 [医学・健康]


身体が求める運動とは何か 法則性を活かした運動誘導

身体が求める運動とは何か 法則性を活かした運動誘導

  • 作者: 水口 慶高
  • 出版社/メーカー: 文光堂
  • 発売日: 2017/05/10
  • メディア: 単行本


合理的で無駄のない動きが「生まれ出づる」よう参考にしてゆきたい

新しい運動理論のようである。著者たちの肩書きに「BiNIリハビリセンター」とあるのでネット検索すると、「バイニーアプローチ 統合的運動生成概念」というページが見つかった。独自の身体・運動理論をベースにリハビリテーションを実践してきた方々なのであろう。ただ、本書中では、それにとどまらずスポーツへの適用も示されていて興味深い。運動の主体が障害者であろうが健常者であろうが身体の構造は共通であるから、構築された理論はいかにでも運用できるにちがいない。そして、その理論に相当するのが「統合的運動生成概念」なるもので、生体力学と神経科学の知見に基づくものであるのだという。

本書中、「運動は作るものではなく、生まれ出づるもの」、「紡がれ続ける」ものという表現がなされている。著者らに言わせると、「姿勢も運動である」ということになる。身体は胎内にいるときから、一度たりとも止まることなく運動し続け、動いていないようにみえても、体の中の各器官は営みを止めることなく継続し続け、心臓は動き血流を還流させ、骨格筋も状態を変化させ、呼吸運動は体幹の形状を大きく変化させ、よって身体は動きを止めることなく運動し、たとえ眠っていても身体重心位置は変化している。したがって、姿勢も運動である。姿勢の連続も運動である・・とある。そして、その運動の主体が脳・意識というより、身体そのものによる時、身体の「形と仕組みが動きを作」り、身体の選んだ運動こそがたいへん合理的なものとなるのだという。

評者は、運動科学研究所の高岡英夫氏や『動く骨』の著者:栢野忠夫氏の身体理論に親しんできたが、それらを(より科学的なものとして)補完する医学書として読ませてもらった。「腹圧調整をつかさどる先行随伴性姿勢調節という脳幹システム」など興味深く紹介されている。より合理的で無駄のない動きが「生まれ出づる」よう参考にしてゆきたい。

2018年3月24日にレビュー

究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫



動く骨(こつ) 手眼足編―重力と調和した動きを究める

動く骨(こつ) 手眼足編―重力と調和した動きを究める

  • 作者: 栢野 忠夫
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガシン社
  • 発売日: 2016/03/01
  • メディア: 単行本



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『創造&老年 横尾忠則と9人の生涯現役クリエーターによる対談集』 [医学・健康]


創造&老年 横尾忠則と9人の生涯現役クリエーターによる対談集

創造&老年 横尾忠則と9人の生涯現役クリエーターによる対談集

  • 作者: 横尾 忠則
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/01/20
  • メディア: 単行本


元気で創造的である秘訣を・・・

小説家、建築家、画家、音楽家、写真家、俳人、映画監督で一家を成した年齢80超の錚々たる方々へのインタビュー・対談集。しかも、インタビューアーは、横尾忠則氏である。それぞれ相互にリスペクトし合い、親愛の情も重ねてある中での対談であるから、和やかな雰囲気がおのずと醸しだされて、楽しい気分になってくる。そして、その内容は深い。タイトルどおり話題の中心は「創造と老年」、クリエイティビティと老齢との関係であるが、病気、死も話題となる。また「未来観」として「来世」、「他界」の話もでてくる。

3年がかりの対談を総括して横尾さんは記す。「80歳を迎える直前に、同じように80歳以上で、現役で創作活動を続けている皆さんがどう考えているのかお聞きしたくなってこの対談を始めたんですが、お話をうかがって、年齢とともに、身体感覚というか、身体知性というか、そういうものに自分の創作行為や芸術活動を委ねていこうとしておられるように感じました」。

「身体感覚」、「身体知性」というときに、その対として「脳」のこと、その言語・観念操作能力のことが語られる。芸術という世界は、「脳」よりも「身体」におおきく依存し、底の知れないような感動は、そこからしか出てこないという思いにさせられる。その点、李禹煥氏との対談にあるレンブラントとゴッホの自画像の話しは興味深い。

アーティストの方はもちろん、そうでない方も本書から、元気で長生きの秘訣を見いだせるにちがいない。


2018年2月25日にレビュー

アホになる修行 横尾忠則言葉集

アホになる修行 横尾忠則言葉集

  • 作者: 横尾忠則
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2018/07/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



言葉を離れる (講談社文庫)

言葉を離れる (講談社文庫)

  • 作者: 横尾忠則
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/12/15
  • メディア: Kindle版



見えるものと観えないもの―横尾忠則対話録 (ちくま文庫)

見えるものと観えないもの―横尾忠則対話録 (ちくま文庫)

  • 作者: 横尾 忠則
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1997/01/01
  • メディア: 文庫



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