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『世界史を変えた13の病』 原書房 [医学・健康]


世界史を変えた13の病

世界史を変えた13の病

  • 作者: ジェニファー・ライト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 単行本


世界史の裏面を知る

だいぶ暗い内容だ。なにしろ病気がテーマなのだから仕方ない。それでも、世界史のフツウのテキストではまず知りえない情報が満載だ。すこし観点をずらすと、歴史の相貌はこうも変わるのかと思う。また、西洋人の考え方の基底には、こういう事情が絡んでいたのだなと感じさせられたりもする。医療の進んだ今日の常識がゆすぶられる内容もある。

「アントニウスの疫病」について、それは天然痘か発疹チフスかという話の流れで、〈とはいえ、その疫病がなんだったにせよ、当時の人々にとってたいした違いはなかった。どの病気も治療できるような薬はなかった。1600年以前は、どんな種類の病気も区別するのが難しく、急速に広まるエピデミックはすべて単に疫病と呼ばれた」と、ある。

得体の知れない相手と戦うというのはタイヘンなことである。何かわからないモノによって続々と人が亡くなっていく。目にも見えず名もない相手との素手の戦いを強いられ、手をこまねいているうちに、さらに多くが亡くなって行く。想像するだけでも恐ろしい。そのような「世界史を変えた」病が扱われていく。

著者の文章はユーモアがあるのだが、シニカルで癖があり、訳注がないと分からない文章も散見される。そこが分からないと、この本の醍醐味は得られないだろうと感じるものも中にはあるが、それでも歴史の裏面を知るうえで一読の価値はある。

2018年11月13日にレビュー
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