「土門拳の風貌」クレヴィス [アート]
(その1)と(その2)に分かれている。(その1)は見開きページの右側に著名人の写真、左側には著名人の自署と略歴、撮影データ、そして長めのキャプションが配されている。錚々たる方々が掲載されている。「歴史的な」と言っていい人々である。順次あげると次のようになる。尾崎行雄、幸田露伴、志賀潔、鈴木大拙、土井晩翠、島崎藤村、三代目 中村梅玉、上村松園、柳田國男、長谷川如是閑、二代目 實川延若、鏑木清方、永井荷風、會津八一、坂本繁二郎、斎藤茂吉、高村光太郎、阿部次郎、朝倉文夫、安倍能成、小林古径、志賀直哉、安田靫彦、初代 中村吉右衛門、富本憲吉、谷崎潤一郎、山田耕作、松本治一郎、安井曾太郎、梅原龍三郎、仁科芳雄、福田平八郎、十四世 千 宗室、近衛秀麿、吉田一穂、井伏鱒二、宮本百合子、川端康成、小林秀雄、武田麟太郎、イサム・野口、田村秋子、滝沢修、高見順、湯川秀樹、九代目 市川海老蔵、谷 桃子。ひとりびとりに付されたキャプションからは、各人との親交の深さや写真家としての息遣い、それに、撮影された時期(戦時中、後の窮乏時)の生活感が伝わってくる。写真論もある。/ (その2)は、写真のみでキャプションなし。巻末に被写体となった方々の略歴が付されている。
本書を見て、これまで意識せずにきたが、著名人の名前とともに浮かぶイメージが、土門拳の撮影画像であることに気づいた。幸田露伴、志賀直哉、永井荷風、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、川端康成といった方々である。それだけ、良い仕事をされたと言っていいのだろう。永遠の墓碑銘であるかのような写真群である。
毛穴のひとつひとつ汗ばんだ皮膚の質感などたいへんリアルである。顔のクローズアップには、迫力がある。
『名刀にあえる美術館・博物館・神社 国宝・重要文化財級の名刀鑑賞を楽しもう』「 刀剣ファン」編集部 [アート]
名刀にあえる美術館・博物館・神社 国宝・重要文化財級の名刀鑑賞を楽しもう (刀剣ファンブックス004)
- 出版社/メーカー: 天夢人
- 発売日: 2022/03/19
- メディア: 単行本
刀剣めぐりの旅を考えている方に絶好のガイドブック。/ 全国を7つのエリアに分けて各地域の名刀所蔵施設とその主要な刀剣が示されている。/ 巻頭には日本全図が見開きで掲載され、ピンポイントで各施設名とその掲載ページが明示される。/「美術館での刀剣鑑賞を楽しむ5つのポイント」と題して初心者向けの解説がある。それは以下のもの ①刀の刃は上向き?下向き? ② 刀に当たる照明を上手に使おう ③ Webサイトや展覧会図録を活用しよう ⓸ 刀剣鑑賞おすすめの持ち物とは? ⑤ 再入場OK? ミュージアムをゆっくり楽しもう / 各施設ごとに、その最たる所蔵刀の写真と解説があり、施設開設の由来など示される。/ 難読文字にはルビが振られているが、刀剣各部の名称や施設名にルビが振られていない。当然知っていることが前提とされているのかもしれないが、刀剣鑑賞初心者も手にすることを考慮するなら(総ルビとは言わないまでも)ルビを増やして欲しいところ。
日本刀が見た日本史 深くておもしろい刀の歴史 (刀剣ファンブックス003)
- 出版社/メーカー: 天夢人
- 発売日: 2022/02/17
- メディア: 単行本
『西洋美術は「彫刻」抜きには語れない 教養としての彫刻の見方』堀越 啓著 [アート]
芸術全般を好み、NHKの『日曜美術館』を毎回のぞき、展覧会にも足を運び、ブログに記事をアップなどしてきましたので、少しは「彫刻」を知っているツモリでしたが、本書を読んで、全然知らないことを自覚させられました。彫刻の見方(鑑賞の仕方)も学びました。「美術鑑賞の5つのフレームワーク」として ① 作家や作品情報を整理する「3P」、② 作品について感じたことを記す「鑑賞チェックシート」、③ 作家が生きた軌跡をたどる「ストーリー分析」、⓸ 作品が製作された背景や流れを読み解く「3K」、⑤ 作家や美術様式を俯瞰する「A・PEST」が紹介されています。それに沿って見ていくなら、彫刻ウルトラ初心者でもいっぱしの批評家になれそうです。どんな文体で本書の記述がなされているか、以下に(当方が一番記憶に留めたく思った部分を)引用してみます。ミケランジェロに関する部分です。
ミケランジェロが影響を受けた彫刻に《ベルヴェデーレのトルソ》があります。この作品は、彫刻のマッス(量塊)を非常によく著した傑作です。高さ約1.6メートル。写真〔引用者注:ページ下部にバチカン美術館にある同作品の写真〕からも「うわー、すごく重そう!」と感じませんか?実際に重いのでしょうが、実物以上の重さを想起させる感覚、それがマッスです。私なりに言い換えれば「オーラ」でしょうか。ミケランジェロはこの作品と出会い、大きな影響を受けました。例えば絵画ではありますが、顕著なのが《最後の審判》の一部分です。〔引用者注:ページ下部に〈最後の審判 殉教のナイフと剝ぎ取られた肌を持った聖バーソロミュー;システィーナ大聖堂 の写真〕圧倒的な量塊を持つこの作品は、ミケランジェロだけでなく、ルネサンス以降の芸術家たちの大きな霊感の源になりました。P148
《ベルヴェデーレのトルソ》
https://www.flickr.com/photos/consciousvision/3507051584
中国のテレビドラマ「宮廷画師 郎世寧」を見ながら思ったこと
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2015-04-14
『新しい写真の常識 あなたの写真は全部、正解。』わたなべりょう著 翔泳社 [アート]
生意気を言うようですが、被写界深度やらなにやら、だいたい写真技術の基本的なことは知っているつもりですので、最近の写真の本はどんなものか見てみようと手に取りました。目次の気になるところの、どこからでも読めて、それぞれが質のよいエッセイを読んでいる気分になります。作例もあげられ、どのような判断に基づいてシャッターを押すと、どう違いが出るのか示されています。読みやすく、押しつけがましくなくてイイですね。YouTubeで人気になるだけのことはあると思います。本書一冊カラダに入れば、イイ写真を撮れるようになること必定に思います。
『地球の歓喜』 作者: 陣内 一土 芸術新聞社 [アート]
当該ブログは、主に新刊書を扱っている。そのときどき出版された本のなかで、興味のある書籍を読んでは、読書日記のようなつもりで更新している。上記書籍もそのようにしてたまたま手にした。
「陣内一土(イット)」という名前をはじめて知った。
たいへんな画力である。抽象画、書、など掲載されている。ミロを思わせる、あるいは、片岡球子を思わせる作品もあるが、線がちがう。
色彩もさることながら、とりわけ、黒い線の生き生きうねうねぬらぬらした様はフツウではない。黒い線で囲われたところは永久運動をしているようにも見える。作品を実際に見たなら、運動する世界の中に取り込まれていくように感じるのではないかと思う。
「自然は愛 しぜんはいのち」 陣内一土
https://www.youtube.com/watch?v=58FFHwwMPTs