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北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪 / 安田 峰俊著 [外交・国際関係]


北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪 (文春e-book)

北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪 (文春e-book)

  • 作者: 安田 峰俊
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/02/06
  • メディア: Kindle版



外国人技能実習制度、それは次世代の国づくりに役立つ発展途上国を助ける意図のもとに創設された制度であるらしいのだが、実質的には研修生を受け入れる日本の労働力を補強するものであるようだ。その労働たるやブラックにちかく日本人も忌避するような仕事が多いらしい。それに応じる実習生は、中国人がこれまで主だったものが、いまはベトナム人に移行している。彼・彼女たちは、本書表紙のようなキラキラしたピンク色の夢をいだいてやってくる。100万円もの大金を用意してプロモーターに渡し、それに手続きを頼んで渡航してくる。

いまプロモーターと書いて思い出したが、フィリピン人妻斡旋業者もプロモーターと言わなかっただろうか。本書中にプロモーターという言葉はでていないが、要するに仲介業者である。一番うまい汁を吸っているのはそれら仲介業者であるらしい。

そんなこんなでやって来た日本で、将来性のない仕事を奴隷のごとく強いられ(受け入れ先の会社には制度本来の意図に基づいて研修生を扱っている会社もあるが、そうでナイ会社も少なくないようだ)、ついに紹介された仕事先を逃亡する。そして、同じ母語を話す仲間をSNSで探す。すると仲間がみつかる。なかには「群馬の兄貴」などと称する者のいることがわかる。彼・彼女たちは、同じ母語、文化の仲間たちとコミュニティーを形成する。

本書は、その逃亡奴隷のごときアンダーグラウンドで生活する元技能実習生らを追う。不法在留、無免許運転、事故、事件。どういうわけか、あまり表立って報道されていないようだ。事件を掘り進むと技能実習制度の出来のワルさを表立たせないといけなくなるからかもしれない。どこかで圧力がかかっているのだろうか。著者は通訳とともにアンダーグラウンドに潜入し、報告する。

しばらく前、カトリックの女性によって書かれて話題になった本『置かれた場所で咲きなさい』を思いだした。元技能実習生たちも、結局、置かれた場所で咲くしかなかったということになるのではなかろうか。それがキレイな花ならいいが、そうではナイ場合もある。そうでナイ方の花が、いま日本のあちらこちらで咲かざるをえなくなっているようだ。そのコミュニティーが彼・彼女たちの救いの受け皿にもなっている。

21世紀の一大文明国の基層が変容している。基層がわるければ、上層に異変が生じても不思議ではない。彼・彼女たちは基部構造を食い荒らすシロアリのようなものカモしれない。

以前、サンカの話しを読んだ。北海道の名付け親となった松浦武四郎が旅のなかで病気になったときに、面倒を見てくれたのは当時の日本のアンダーグラウンドに住まうサンカだった。その世話になった人物「郡上の爺」を話題にすると行く先々で「涙こぼるるばかり」の助けを得られたという。そんな話を思い出しながら読んだ。

技能実習制度
ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%83%BD%E5%AE%9F%E7%BF%92%E5%88%B6%E5%BA%A6

762回 技能実習制度ようやく廃止へ。恥ずかしい現代の奴隷制度
髙橋洋一チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=Q0NEaZVjrKA&list=RDCMUCECfnRv8lSbn90zCAJWC7cg&start_radio=1

日本の「アジール」を訪ねて: 漂泊民の居場所

日本の「アジール」を訪ねて: 漂泊民の居場所

  • 作者: 功, 筒井
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/10/24
  • メディア: 単行本


日本の「アジール」を訪ねて: 漂泊民の居場所
https://kankyodou.blog.ss-blog.jp/2017-01-12-1
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