「歴史で読む国学」國學院大學日本文化研究所編 ぺりかん社 [日本史]
國學院大學日本文化研究所による「国学」通史。内容も紙面構成も読みやすい。以下「はじめに」から本書発行の目的について記されているところを抜粋してみる。
「本書は(国学をめぐる理解がそれぞれの時代的な影響や研究者の立場により異なることを踏まえつつ)通史という叙述形態をとる」/「日本史の中に国学を位置づけて理解する、これが本書の目的である」とあり、そのようにする理由は次のように示される。「従来の国学の歴史の説明は国学四大人(荷田春満、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤)などの主要な国学者を中心にした人物の伝記・思想・著述を時系列順に配置して叙述していく形態が主であったのに対して、(本書では)国学の発生要因・成長過程が、同時代的状況の中で形成されてきたことを重視するためである」。
どのような記述がなされているか「第1章 元禄期 徳川光圀と契沖(三 徳川光圀と『大日本史』編纂)」から以下に引用してみる。《このように見てくると、『大日本史』の編纂方針や文献考証的な方法には国学との共通性が見られ、その編纂と並行して生み出された学術的成果も、『万葉集』の注釈や朝廷の有職故実、神道研究など、対象が国学の研究範囲と重なっていることがわかる。契沖とのつながりもあわせて考えるならば、光圀のもとでなされた水戸藩の学術的事業には国学の先駆としての側面があったといえるだろう。そもそも『大日本史』は六国史の後を継いである種の「正史」を編纂しようとする試みであり、大きく見れば水戸藩の学問は、それまで朝廷が専有していた文化を武家政権に取り込もうとする動向の一例であった。そのような動きが国学の誕生をうながしたともいえるのである(p30)》。
とにかく国学関係者の名前、事項が多数でてくる。索引が用意されてないのが残念である。