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「歴史をうがつ眼」松本 清張著 中央公論新社 [日本史]


歴史をうがつ眼 (単行本)

歴史をうがつ眼 (単行本)

  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/12/20
  • メディア: 単行本



歴史関連の多くの著作を残した松本清張の歴史を・見る(語る、書く)方法を知ることのできる本。中身は序論にあたる「思考と提出ー私を語る」、講演「日本の文化」、それに対談2つから成る。

対談のうち一つは、おなじく歴史に造詣の深い司馬遼太郎とのもので「日本の歴史と日本人」がテーマ。文藝春秋で両者の編集者でもあった半藤一利のいう黒カッパ(清張)と白カッパ(司馬)による対決である。もう一つの対談は、日本古代史を専門とする歴史学者青木和夫氏とのもので、本書タイトルと同じ「歴史をうがつ眼」がテーマ。

司馬さんは歴史を公園にたとえて、公共の場所を汚すことがあってはならないといったと記憶する。その点、清張さんも同じである。歴史を推理するのは愉しいことだが「それが勝手な憶測にならないようにいつも自分を戒めている。ひとりで想像するぶんならかまわないが、文章にして世間に出す以上、それだけ責任を感じなければならない。そこには客観的な実証性が必要とされる。はっきりとした物的証拠のようなものは提出できなくても、論証にはそれに近い普遍性がなければならぬ」という具合である。

紹介されている写真は見開き2ページのものが1枚のみ。それは司馬さんとの対談。愉しそうである。歯をだして笑っている。しかし内容はというと、鍔迫り合いの印象がある。対決である。「それはあなたの造語?」「ちょっとそこが司馬君と意見が違う。ぼくの言い方も悪かったから訂正する」「ちょっと違うなあ」「矛盾でしょうか、わりあいこの日本的仕組みは合理性の高いものですよ」「いやあ、それはねえ・・」「ところがね、松本さん」「幻想と片づけられるといささか不満だけれども・・」というように展開する。50年前(1972年)の対談でもあり、ふたりの話が今日のアカデミズムとの関係でどのように評価できるかわからないが、歴史好きにとっては将棋愛好家が名人戦をみるような愉しさがあるにちがいない。もう一つの対談は、序論に相当する部分を踏襲する内容といっていい。

読んで愉しい内容で清張さんの「歴史をうがつ眼」を知ることのできる良書なのだが、論じられている中身そのものについての解説が欲しく思う。たぶん、それが無いということは「公共の場所を汚す」おそれは無いと判断してのことなのだろうが・・。

清張さんと司馬さん (文春文庫)

清張さんと司馬さん (文春文庫)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/10/07
  • メディア: 文庫



松本清張の「遺言」 『昭和史発掘』『神々の乱心』を読み解く (文春文庫)

松本清張の「遺言」 『昭和史発掘』『神々の乱心』を読み解く (文春文庫)

  • 作者: 武史, 原
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/02/09
  • メディア: 文庫


http://www.book-navi.com/book/matumoto_hara.html
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