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「日本周遊奇談」井上円了著 国書刊行会 [民俗学]


日本周遊奇談

日本周遊奇談

  • 作者: 井上円了
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2022/11/16
  • メディア: ハードカバー



井上円了は哲学館大学(現、東洋大学)の創設者である。その名を聞くと評者は、東京中野区にある哲学堂や妖怪学、それに卒業生である坂口安吾を想起する。本書をとおし「旅の巨人」としての井上について知ることができて評者は嬉しい。井上は講演のため日本全国、台湾、満州、樺太にまで赴いた。まだ交通手段が十分に発達していない頃である。まだ日本が均一化されていない時代である。それぞれの地域が互いに対して異国のような状態の頃である。暑さを理由に人力車の車夫に仕事を放棄されるというような経験をしながら、井上は旅をつづける。行く先々でオモシロイ話オモシロイ出来事に出会う。それを収集したのが本書である。425の話が掲載されている。いまはどこに行っても同じ商業施設があったりで、どこもかも同じような風景になってしまっているが、旅をするとはこういうことだと思い知らされる本でもある。本来は旧字旧かなだが、読みやすくされている。

以下は引用。

343 不得要領 // 千葉県東金町にて書斎の額面に「不得要領」の四字を記せんことを望まれた。かかる文字を額面に掛ける人の心底こそ不得要領なりと思い、その理由を尋ねたれば、年来世人の言う所、おこなう所、一つとして己の意に通じず、不平に堪えず、ために平素煩悶に苦みしが、ある時友人の忠告に、君は世間をもって要領を得たるものと思うゆえに、自ら招いて苦悶するのである。然るに世間は真に不得要領のものである、人間万事不得要領と思っているがよい、といわれて自ら大いに悟り、その後は不平も煩悶も起こらないようになった。よってこの語を書斎に掲げて慰安するつもりである、との答であった。広い世間には奇なる慰安法もあるものじゃ。

東洋大の創立者・井上円了没後100年 「諸学の基礎は哲学にあり」
https://www.sankei.com/article/20190606-A5GUBQOTTRKFNHXGGZDYGYUDPA/
(以下は、上記webページからの引用)
全国行脚し講演 / / 日本の近代化のためには哲学が最も大切と考えた円了は、高等教育の学生だけでなく、哲学の伝道者として民衆へ広める活動にも着手する。/  47歳で哲学館大学長を辞任し一介の教育者となった円了は、全国各地を回り講演を行う。それ以前にも各地で講演をしていたが、特に学長辞任後は、記録が残る死去前年までのわずか13年間に、全国の市町村の約6割を回り、5291回もの講演を行っている。

「宮本常一の旅学 : 観文研の旅人たち」福田晴子著 八坂書房
https://kankyodou.blog.ss-blog.jp/2022-11-30

日本人に哲学を広めた男 井上円了

日本人に哲学を広めた男 井上円了

  • 作者: 三浦 節夫
  • 出版社/メーカー: 教育評論社
  • 発売日: 2022/10/04
  • メディア: 単行本



井上円了: その哲学・思想

井上円了: その哲学・思想

  • 作者: 竹村 牧男
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 単行本



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