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考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門 (幻冬舎新書) 梶谷 真司著  [哲学]


考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門 (幻冬舎新書)

考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門 (幻冬舎新書)

  • 作者: 梶谷 真司
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/09/27
  • メディア: 新書


哲学は体感するほどに身近な体験

本書は、「哲学を知識として学ぶもの」としてではなく、「対話において『体験』する」よう助けてくれる本。著者は「哲学対話」という集いを催し、価値観の異なる人々が集い、身近な疑問・問題(とりわけ、生活のなかでアタリマエと見なされているモノ)を(改めて)問い(直し)、皆で自由に発言し、互いに敬意をもって聞き、さらに問うなかで、考えること・考えを深めることを勧めている。「哲学対話」は、他者としての自分自身とも(つまり、一人でも)できる。本書には、「哲学対話」をすることの価値・有効性だけでなく、実践するための指針や具体的方法も示されている。

著者は哲学を体験するものとみなす。実際、つぎのように書く。「哲学は体育会系の学問だと思っている。すなわち、知的というより、身体的な活動であって、何をもって『哲学的』というのかは、スポーツと同じで、実際に自分で経験してみて、体で感じるしかないのだ。哲学対話をやるようになって、その確信はいっそう強まった(p40)」。

対話は、哲学するにおいて、ソクラテス、プラトン以来の伝統的手法である。そのプラトンは、ソクラテスとその弟子との対話という形で多くの著述を残した。その名前は、本来「アリストクレスであったが、体格が立派で肩幅が広かったため、レスリングの師匠に「プラトン」(幅広いという意味)と呼ばれ、以降そのあだ名が定着した」という。「青年期はアテナイを代表するレスラーとしても活躍し」たのだとも聞く。「健全な精神は、健全な肉体に宿る」というが、本書を読んで、哲学は、脳ミソだけでなく身体感覚・疲労を伴うほど、まさに身近なものなのだろうな。それが本来のあり方なのだろうなと感じている。そして、そのように哲学を体感・実感する著者は哲学の伝統にまさに連なっていると直観する。

当初本書を、沢田允茂著『考え方の論理』のような中高生を対象読者にした哲学入門書のように思ったが、はるかにやさしく実用的だ。本書をみると、タイトルにある「0歳から」もまんざら誇張でないことがわかる。嬰児も哲学に貢献できるのだ。生活に哲学をもちこみ、生活を哲学とすることが本書をとおしできるにちがいない。

2019年2月16日にレビュー


考え方の論理 (講談社学術文庫)

考え方の論理 (講談社学術文庫)

  • 作者: 沢田 允茂
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1976/06/04
  • メディア: 文庫



ラスト・ライティングス

ラスト・ライティングス

  • 作者: ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 単行本


問うことと考えること
問うことではじめて考える
「問い、考え、語り、聞くこと」としての哲学において、もっとも重要なのは「問うこと」である。「問い」こそが、思考を哲学的にする。たとえば、「今日は何しようかな、疲れてるしなぁ、今週中にあれ片づけなきゃいけないのに、・・・そういえば、昼ご飯、何食べよう?」--こういうのは「考える」ということとは違う。頭の中で何となく思いが巡っているだけである。「考える」というのは、もっと"自発的で主体的”な活動を指す。それは「問い」があってはじめて動き出す。問い、答え、さらに問い、答えるーーこの繰り帰し、積み重ねが思考である。それを複数の人で行えば、対話となる。 / 問いによって考えるようになるということは、何をどのように問うかによって考えることが変わってくるということを意味する。つまり、“問いの質”によって“思考の質”が決まるのである。そして、どのような問いをつなげていくかによって、”思考の進み方”が変わる。/ 漠然としたことしか考えられないのは、問いが漠然としているからだ。抽象的なことばかり考えるのは、問いが抽象的だからだ。明確に問うことができれば、明確に考えることができ、具体的に問えば、具体的に考えられる。考えが同じところばかりグルグル回っていて、先に進めないのは、問いに展開がないからだ。
(以上、『考えるとはどういうことか』P115,116から抜粋)

基本的な問い方
言葉の意味を明確にする ○○とは何か? ○○とはどういうことか?
理由や根拠や目的を考える なぜ○○なのか?
具体的に考える たとえば、どういうことか?
反対の事例を考える そうでない場合はないか?
関係を問う ○○と△△はどのように関係しているか?○○であると、△△ということになるのか?
違いを問う ○○と△△はどのように違うのか? どこまでが○○で、どこからが△△なのか?
要約する 要するにどういうことか?
懐疑 本当にそうだろうか?
時間軸で問う
空間軸で問う
具体的な問いを抽象的な問いに
抽象的な問いを具体的な問いに
(以上、『考えるとはどういうことか』P128~136から)

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