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『コミュニケーションは正直が9割』田原総一朗著 [マスメディア]


コミュニケーションは正直が9割

コミュニケーションは正直が9割

  • 作者: 田原総一朗
  • 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
  • 発売日: 2022/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



田原総一朗さん(88歳)は11歳の時に敗戦を経験する。それまで神風が吹いて必ず勝利すると信じてきたにも関わらず、鬼畜とされていたアメリカに日本は負ける。それを機に田原さんは、親も教師も政府も信じられなくなる。田原さんより4歳年少の養老孟司さんも、戦後、教科書の神話的記述に墨塗りさせられた世代として、どれほど確かなものに思える考えであっても、懐疑的にならざるをえない心情をくどいほどに語る。今日、田原さんの同世代、敗戦を知る人びとはどんどん亡くなっている。

本書は、コミュニケーションの方法を論じる体裁をとってはいるが、実質的には、同世代を代表するかのようにしてなされる田原さんの叫びである。B29の空爆を受けるようになる中、なされる竹ヤリ訓練に愚かしさを感じていながら、誰もそれを表明することはなかった。多くが当時の空気にのまれていた。そして、盲従した。田原さんは、それではダメだ、盲従するな、疑問を表明せよ、と猛獣のように叫ぶ。

戦後、田原さんは、あらゆるものに突っかかってきた。武器は誠実さ、正直さである。やさぐれダメ男を自称しつつ、引っ掛かるものがあれば相手が総理総裁であっても真っ向勝負を挑む。そうして得たのは信頼である。この男には胸襟を開くしかない。そう相手に思わせた。そう相手に思わせるだけの気迫があった。

本書に示されるコミュニケーションの知恵は、学術的な理論理屈から引き出されたものではない。自ら体当たりで得たきたものだ。役に立たないはずはない。


小林亜星、両足を棺桶に入れる(矢崎泰久氏、追悼文から)
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-06-16
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