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『インド残酷物語 世界一たくましい民(集英社新書)』池亀彩著 [文化人類学]


インド残酷物語 世界一たくましい民 (集英社新書)

インド残酷物語 世界一たくましい民 (集英社新書)

  • 作者: 池亀彩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/11/25
  • メディア: Kindle版



『インド残酷物語』のタイトルを見て、宮本常一や山本周五郎が編集委員となって出版された『日本残酷物語(平凡社ライブラリー)』を想起した。そこでは江戸から明治あたりの話が集められている。「残酷」の中身としては、飢饉のときに間もなく亡くなる親を食べ合う約束をする隣人同士の話など出ていた。それに比べると本書の「残酷」は、予想の範囲ではあったが、それでもびっくりな内容である。なにしろ、こちらは今世紀しかも2010年代の話である。

「世界一たくましい民」とあるが、置かれている環境・状況がこのようであれば、たくましくならざるを得ない。その状況は、カースト制度に由来するものがもっぱら取り上げられる。バラモン、クシャトリア、バイシャ、スードラなどと学んだアレである。しかし、それとはまた別なモノもある。それらが複雑に絡み合っている。そして、社会にどっしり根を張っているから、上から法律でなんとかしようとしても、そうそう直るようなものではない。そういう中で、草の根から努力を積み上げているNGOの話が取り上げられる。

インドの今日、その現場の実況を見るような面白い本だが、そのことよりも、著者が親しく接するようになった人たちがたいへん魅力的に示される。家事手伝いのアムダ―、運転手のスレ―シュ、NGOを運営しているM・C・ラージ、それにシリゲレ・グル(シヴァムールティ・シヴァーチャーリア師)といった人たちである。なかでも、魅力的なのは、そうした現地で奮闘する著者自身かもしれない。現地で、たくましさを身につけて、著者あとがき(「おわりに」)を次のように締めくくる。「最後に、私が執筆に集中できるよう家事の大半を引き受けてくれた夫に感謝したい」。


日本残酷物語1 (平凡社ライブラリー)

日本残酷物語1 (平凡社ライブラリー)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1995/04/12
  • メディア: 文庫



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