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『わが青春 わが読書』コリン・ウィルソン著 [自伝・伝記]


わが青春 わが読書

わが青春 わが読書

  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2022/04/09
  • メディア: 単行本



1997年発行。昨年亡くなった立花隆と親交のあったコリン・ウィルソンの著作。立花隆同様の「本の虫」ぶりが示されている。

コリン・ウィルソンと立花隆
https://www.youtube.com/watch?v=wCzHeKmozko&list=PLE8FoiOTuihqiJtrNLtj5SRj4-bs4WB2w


同じく「本の虫」であった渡部昇一に『青春の読書』があるが、著者の人生と読書とを深く織り合わせた著作は他にないかとAmazon検索をして本書:『わが青春 わが読書』を見出した。ウィルソンの突き合った本の作品論であると同時に作家論であり、また、著者(当時:66才?)の人生観を示すものとなっている。

ウィルソンの人生観はきわめて「楽観的」である。その点において健全な精神の持ち主と言える。ウィルソンは、自ら悲観的なだけでなく、そこに安住し、そこに読者を誘いこむ作家たちに容赦ない。ノーベル賞受賞者であろうと関係ない。ヘミングウェイもサルトルもベケットも(もちろん、その著作のすべてがダメとは言わないものの)負の烙印を押している。たとえば、以下のようにである。

〔ところがサルトルは、そしてこれはグレアム・グリーンもそうだが、そこで得た叡智を悲観的な哲学によって否定し、それを長期的に生かす道を閉ざしてしまった。本書で私がくり返し強調したように、芸術家としての長期的な進歩、否定的な哲学、この両者は両立しないのである。そして私はまた、かくも多くの20世紀作家・思想家によって信じられたたぐいの否定的哲学が、“事実に即したものではない” ことも示してきたつもりである。悲観的な哲学は、すでに述べたように、怠惰と忘れっぽさが合体した産物にすぎない。客観的な正当性などありはしない。「覚醒」した状態で「事実」をきちんと客観的に眺めるならば、チェスタトンのいう「理不尽な朗報」という感覚や、生は無限の可能性に満ちているというグリーンの認識こそ正当だということが見えてくるはずなのだ(「あとがき」p495)〕。

そして、以下のように記す。〔私の著作の中核にあるのもこの点にほかならない。私が一番伝えたいのはこのことなのだ。20世紀という時代はともすれば、知性を軽んじ、直感や本能、時には行動力より下位に追いやってきた。しかし、もっとも深遠な問題の解決策は「知」のなかに、したがって、精神の力のなかにこそ存在するということを私はつゆ疑ったことがない。知性とは私たちが持つもっとも強力な道具である。だから、もし人間が進化の次のレベルに到達するとしたら、それは一瞬のまばゆい“ひらめき”を通して、すでに知っていることを突然把握し、それを「鳥の視点」で見る瞬間においてだろう。だとすれば、物事を鋭利かつ明晰に言い表わすことが、この目的にとってもっとも重要なことだということになる。そして、今世紀、このような理想を、ウィリアム・ジェイムズほど完璧に体現している人物はほかにいない。(「ジェイムズ兄弟」p347)〕。

ウィルソンの示す「覚醒」方法は、いのちの充実させるのに役立つにちがいない。巻末には本章中に取り上げられた書籍の13ページにわたるブックリストが付録となっている。

「知の巨人」立花隆の書棚に写った「殺伐」の正体 蔵書10万冊の書棚を撮り続けた話
2022.03.31 薈田 純一
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/93453?imp=0


至高体験―自己実現のための心理学

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  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2022/04/09
  • メディア: 単行本



アウトサイダー(上) (中公文庫)

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  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 文庫



渡部昇一 青春の読書

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  • 作者: 渡部昇一
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 単行本



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