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「室町殿」の時代: 安定期室町幕府研究の最前線(山川出版社) [日本史]


「室町殿」の時代: 安定期室町幕府研究の最前線

「室町殿」の時代: 安定期室町幕府研究の最前線

  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 2021/12/25
  • メディア: 単行本


「研究の最前線」に立ち会うことができます

「室町殿」とは聞きなれない言葉である。本書は『はじめに――中世国家の最高責任者、「室町殿」とは何か?』から始まる。少し長くなるが、本書タイトルにある「室町殿」と「安定期」について知ることができるので、以下に引用してみる。

室町時代の“国家の最高権力者”は誰か?もちろん、天皇があげられようが、中世の太政官制(太政官を最高機関とする行政機関。古代の律令制に始まる)において天皇はあくまで最終決裁者であり、アクティブにあれこれ決めることはしない。それなら、室町幕府将軍か?しかし、将軍はあくまで武家の世界での棟梁である。// このような単純にみえ、かなり奥深い命題に対して、これまで数多くの研究者が挑んできた。室町期(室町時代は大ざっぱに南北朝期〔14世紀〕・室町期〔15世紀〕・戦国期〔16世紀〕に分割できる)、公家(朝廷)・武家(幕府)・寺社といった中世国家の運営集団を凌駕し君臨した権力体がある。それが「室町殿」である。// この言葉は、史料用語であり、分析概念でもある。本書で取り上げる「室町殿」とは、足利義満(1358~1408)・足利義持(1386~1428)・足利義教(1394~1441)・足利義政(1436~90)の4人である。(序章の久水論文を参照)。// 読者はなんだ「室町将軍」のことかと思うかもしれない。しかし、「室町殿」は「室町将軍」とは似て非なるものなのである。たしかに、4人全員が征夷大将軍を経験している。だが彼らは、将軍職を辞めても、もしくは将軍職に就く前でも「室町殿」であった。// 「室町殿」は足利将軍家の家長として、武家政権の長であるとともに、それまで公家がもっていた権限までも段階的に掌握し、公家・武家・寺社によって運営される中世国家の最高責任者として機能した(もちろん、理念的には天皇が頂点である)。// このように、「室町殿」の下で有力権門(社会的な特権を有した権勢のある門閥・家柄・集団)が統合され、比較的安定した治世が繰り広げられている時期を、本書では「安定期」と定義する(なお、本書執筆の著者のなかには、厳密な意味で「安定期」という定義に、別の考えをもつ方もいることを付記しておきたい)。***引用、ここまで***

第1部では「室町幕府の運営システムとそれに携わる人びと」について、第2部では「室町殿の地方支配について、地方の勢力との関係について」、第3部では「室町殿と宗教勢力(寺社権門)についての研究状況について」、第4部では「室町殿を取り巻くさまざまな階層について」取り上げられられている。

「研究の最前線」とタイトルにあるが、中・高の教科書等で教えられている歴史とは異なる、まだ定説化されていない過渡期の様相をみる思いがした。たとえていうなら、噴出した溶岩のまだ固まる以前のような学問の世界に触れることのできる書籍である。(以下、目次)

「室町殿」とよばれた四人の足利将軍/第1部 室町幕府の運営体制(室町殿と訴訟ー室町殿は、訴訟・紛争にどのように対処したのか?/将軍と天皇の関係ー足利家と天皇家の一体化は、どのように進行したのか? ほか)/第2部 室町幕府と都鄙(幕府と在京大名ー幕府の全国支配と「在京大名」の重要な役割とは?/幕府と東国情勢ー「鎌倉府」の盛衰を左右した幕府・鎌倉公方の対立 ほか)/第3部 室町幕府と宗教(幕府と武家祈〓-室町殿の“身体護持”を担う門跡寺院と護持僧/幕府と五山ー“巨大企業体”のような組織だった禅僧集団 ほか)/第4部 室町幕府を取り巻く社会状況(幕府と室町文化ー幕府とともに新興文化を支えた芸能者・被差別民/幕府と土一揆ー「土一揆」は、中世社会における「訴訟」行為だった ほか)

2022年3月11日にレビュー

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  • 出版社/メーカー: 戎光祥出版
  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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  • 出版社/メーカー: 岩波書店
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  • メディア: 文庫



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