『私たちは何を悩んできたかー高校生が語った子どものころの悩み』永野恒雄編著 [教育・学び]
思い起こせば他愛のない悩みではあるが・・
高校で社会科(倫理)を教えていた編著者が、生徒に「今だから言える昔の悩み」という題で作文を書いてもらった成果が本書である。回答しているのは高1年生で、学齢前から小学校(低・中学年)当時の悩みが多い。その作文に対してインタビューがなされる。子どもたちをリスペクトしている様子が伝わってくる内容である。
作文からは生徒たちが「くだらない」、「ばかばかしい」、他愛もない悩みと今では評価していることが分かる。しかし、その当時は真剣な悩みで、子どもは子どもなりに、周囲(親等)を気遣いながら、ひとり悶々としていた様子が分かる。健気だといえば健気だが、一緒に悩んでくれる(見守ってくれる)誰かが居れば、どれほど負担が少なくてすんだことだろうと思う。
彼・彼女たちは、その年齢なりの仕方で悩みを解決していく。ある意味、シタタカでもある。人間のこころの成長とはこういうものなのだろうと思う。評者も、子どもの頃の同様の悩みを思いだして懐かしく思いもした。子どもの生の悩みを取り上げた本は初めて読んだように思う。その点貴重である。すこし誤植があるのが残念である。
2022年3月9日にレビュー
まえがき
この本を読まれる方へ
第一章 カラダの悩み
〈作文①〉やめられない指シャブリ
〈作文②〉だんだんホクロがふえてくる
〈作文③〉階段が私の食卓だった
〈作文④〉とまらないオネショ
〔補足と解説〕◎身体の悩みあれこれ
第二章 疑問と悩み
〈作文⑤〉なぜヒトは死ぬのか
〈作文⑥〉「宇宙を創ったもの」を創ったものは?
〈作文⑦〉私以外はみんなロボット
〈作文⑧〉私の母はオナラをしない
〔補足と解説〕◎子どもは小さな哲学者だ/◎ニセ家族という疑惑
第三章 コダワリと悩み
〈作文⑨〉メンソレータムの少女の名前
〈作文⑩〉マンホールの誘惑
〈作文⑪〉消しゴムの使い方にこだわる
〈作文⑫〉命と同じくらい大切な布きれ
〔補足と解説〕◎子どもと強迫性障害
第四章 不安と悩み
〈作文⑬〉愛犬ヒミコよ死なないで
〈作文⑭〉母の浮気はワタシが防ぐ
〈作文⑮〉霊にとりつかれてしまう
〈作文⑯〉私は親の死に目に会えない
〔補足と解説〕◎死の不安と哲学的疑問/◎子どもの思想的開き直り
第五章 罪悪感と悩み
〈作文⑰〉ウソをつくと地獄に行く
〈作文⑱〉気がつくと大ウソつきになっていた
〈作文⑲〉私が殺した生き物たち
〈作文⑳〉なくした委員バッチ
〔補足と解説〕◎ウソとサトラレの関係
第六章 家族の悩み
〈作文㉑〉家族の笑い顔も今のうち
〈作文㉒〉私はエビトリ川で拾われた
〈作文㉓〉なぜ私にはお父さんがいないの?
〈作文㉔〉ベンツ・豪邸・キュウリサンド
〔補足と解説〕◎「捨て児宣告」という民俗/◎「貧富の差」と序列主義
第七章 イジメの悩み
〈作文㉕〉ついに相手をタコなぐり
〈作文㉖〉いじめられっ子のウラミは深い
〈作文㉗〉いじめていた子からの手紙
〈作文㉘〉学校でウンコをしただけで
〔補足と解説〕◎いじめた側からの証言/◎学校と排便をめぐる問題
第八章 成長と悩み
〈作文㉙〉どうしてもウサギになりたい
〈作文㉚〉私の背はもう伸びないの?
〈作文㉛〉昔の僕はヒーローだった
〈作文㉜〉土曜深夜に受けた性教育
〔補足と解説〕◎子どもを演ずる子どもたち
あとがき