『仲人の近代 見合い結婚の歴史社会学 』阪井 裕一郎著 (青弓社ライブラリー 104) [民俗学]
仲人の近代 見合い結婚の歴史社会学 (青弓社ライブラリー 104)
- 作者: 阪井 裕一郎
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2021/10/27
- メディア: 単行本
親、祖父母、曾祖父母に直結するだけに
たいへん面白い。当方還暦を少し過ぎたところだが、30年ほど前「仲人」を介することなく結婚した。まあ恋愛結婚といっていいだろう。それで周囲からとやかく言われることはなかった。今もそれが普通で、なんの問題もないにちがいない。
ところが、当方の(親はともかくとして)祖父母、曾祖父母の時代はそうではなく、好意をもつ男女が「仲人」を立てることなく結びついたなら、それは「畜生婚」「野合」「くっつき」と呼ばれて蔑まれたという。それで、そうならないよう、カタチだけでも「仲人」を立てた。「家」の体面を保つためである。本書では、「家」の体面・世間体を守る儒教的規範と欧化・文明化の波による個人の自由とのはざまで「仲人」という存在も揺れ動き移ろってきた様子を知ることができる。
江戸時代、(明治期)仲人を立てていたのは、もっぱら(元)武家、村では(元)庄屋など主だった家が「仲人」を立てていたようだ。そうではない村の普通の若い衆と娘たちが、どのように「くっつき」合っていたか本書に見ることができる。そこで、むすめ達が「村の共有物」として扱われていたという話もでている。驚きである。
そういうわけで本書は、自分の親、祖父母、曾祖父母がどういう風に結ばれたのかに思いを馳せることのできる本である。民俗学的関心のある方にとっては垂涎の的であり、若い方にとってはスリリングな本となるにちがいない。論議もよく整理されて分かりやすく、お勧めである。
2022年2月11日にレビュー