「明治維新とは何だったのか――世界史から考える」 半藤一利×出口治明 [日本史]
「モシ~でなければ、であれば」と考えさせられる
2018年は明治150年を記念する年となった。そのすこし前に『明治維新という過ち(原田伊織著)』が出た。副題に「日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」とあるとおり、 教科書では教えない意表をつくものだった。いわば、薩長暴力革命論のようなものだ。その嚆矢となり先鞭をつけたのが、半藤さんの『幕末史』(2012年発行)だったということを、本書を読んで知った。(ちなみに、評者はどちらも未読)。
本書は、たいへん啓発的で、幕末・維新時の(世界のなかでの)日本の立ち位置をよく知ることができる。徳川幕府だけで、近代国家をつくることは可能であった。情報・知識に通じた人材は幕閣に居た。モシ公家・皇室の権威をことさらに重要視しなければ、モシ最後の将軍が水戸の出でなければ、薩長勢力に政府をつくらせることはなかったろう。モシ大久保利通ら大物が時ならずして亡くなることなく、モシ小物(山形有朋ら)が力を得ることがなければ、日本には軍隊がシビリアンコントロールされたものとして存在し、無益で愚かな戦争に向かうことはなかったにちがいない。モシ日露戦争の勝利が「やっとこさ」得たものに過ぎず、アメリカの仲介の労があって講和に持ち込めたことを国民がしっかり理解していれば、同様に・・・と、いろいろ考えさせられる。出口治明氏という、経済に通じ、世界史にも明るい対談相手を得て、幕末維新時の状況がふくらみをもって語られる。
2020年7月15日にレビュー
竹越与三郎は、「明治維新」をどのように評価していたか(加藤秀俊著『メディアの展開』から)
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2015-09-23
明治「150年記念事業」について(徳川慶喜とからめて)
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2017-05-09
徳川様の世は、今よりもずっと上?
(磯田道史著『徳川がつくった先進国日本』から)
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2017-06-26
明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト〔完全増補版〕 (講談社文庫)
- 作者: 原田 伊織
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: 文庫